美容師さんにはメートル法が通じないんだろうか？

毎度美容院に行くたびに、そう思ってきました。
５センチ切ってくださいといったら　50ミリ切ってくれればいいだけなのに
どうみても３センチだったり、７センチだったり...

この夏のイベントで、
サッカーのユニフォームを着るならちょっとスポーチーにしなくちゃね、と思い、近所の美容室へいったのですが、カットを頼んで３０分後、
鏡の中にいたのは.......　ザンギリ頭の　林真澄容疑者でした。涙
なんで５センチって言ったら５センチ切ってくれないんだよおー！
と、小石けりけり帰る道すがら思い浮かべるのは、韓国人カリスマ？美容師のキムヨンジャさんのことでした。
「彼女さえ日本にいてくれたら、こんな頭にはならんのに....」と。

キムさんの店は新大久保にあります。今は職安通りに移転してしまいましたが以前は、シャンプー美容室といって駅のすぐそばでした。

私はここ８年くらい美容院にいったことがありませんでした。
インドと仕事をするようになってからは、行く必要が無くなったんです。
インドのきちんとした階級の人たちに敬意をもって接するためには、
長く伸ばした髪をきちんと三つあみにしてオイルをたっぷりつけた髪型にするのが礼儀なのです。ですから、私の髪は腰まで届くストレートになりました。

しかし...人間って、飽きるんですよね....。そこで、この長くて重い髪をおもいっきりチリチリのクルクルにしたくなりました。ところが、日本の美容室へ４軒もいきましたが、どこもこれができなかったんです。長い間オイルをつけてきた私の髪はバージンヘア同様、健康の上にも健康すぎて、どんなにきついパーマ液をつけても、三角のロッドや特大のロッドで何時間かけて巻こうとも、ストンとカールが伸びてしまい、うまくパーマがかからないのです。

「お客様の場合、髪が健康すぎるので　髪の重さでカールが伸びてしまうんですよ。昔はきついパーマ液を使っていたので、こういう髪でもかけることができたんですが、今は髪が痛んでいる人が多いもので、日本のパーマ液は、どんなに強い液でも昔の半分くらいに弱くしてあるんですよ...。アジアの国にいけば、まだそういう強いの使っているかもしれないですけどね....」との美容師さんの一言にピン！ときました。
そうだ！それなら韓国式のパーマ屋さんに行けばいんでないかい？

そう思って飛び込んだのがキムさんのシャンプー美容室でした。
そして、それは正解でした。
デジタルパーマを使って腰まである長い髪を見事にチリチリにしてくれました。
それから何度かキムさんの美容室に行くようになってから、私はメートル法の呪縛から開放されました。だって、彼女には何センチ切ってくださいなんていっても無駄だからなんです。彼女は絶対にこちらが頼んだようにはやりません。
こんな風にしてほしい、といっても、それだったらこっちの方がダンジェンかわいいから！といって、ズンズン切って行ってしまいます。時には、「ああ、わかったわかった、こうなのね？」と言って切りながら　こちらが思ったのとまったく違う髪形が出来上がることもあります。確信犯かな？と思ったりもするのですが、この犯罪の素敵なところは、出来上がったときに、その人の顔や雰囲気に絶対に似合うようにできているということなんです。

大長今の中で、韓尚宮がチャングムに、素材から味を描く訓練をしますが、彼女には髪型を描く才能があります。イメージだけを伝えれば、その人の顔形にあわせて一番似合う髪形を思い描き、それを現実にしていきます。そして、出来上がった髪型は自分がオーダーした以上もの、自分では思いもよらなかった自分の姿にしてくれるんです。
彼女は胸をはっていいます。

「この美容師さんは（自分のこと）カリシュマだけど、お客さんの言うこと、
じぇんじぇんきかないカリスマなーんだ♪このスタイルが　じぇーったいにいいと思ったら、どんどんきれいにしちゃうんだ！そうでなきゃおもしろくないでしょ。韓国ではみんなそうなんだ。もちろん、お客さんのいうこと聞いてよくできれば、もっといいけどね。でも、言われたとおり切るだけじゃつまんないんだ♪」　と、まったく悪びれていません。

うーん...そっか..。確かに、人間は自分のもっているセルフイメージから抜けられないところがあって、それが他人からみえる自分との間にギャップがある場合も多いですよね。そのギャップを埋めて、お客様の想像力の及ばないようなプラスアルファーを付け加えてこそ、プロ、と考えるわけですね。
それが、センスの悪いプロだったら最悪ですが、彼女の場合はとってもセンスがいいので、何も言わずに「おまかせ」で頼みます。で、どんな姿になるのか、こちらも楽しみに２時間をすごすわけです。

隣にいた韓国のお客さんが私たちの会話にさらに付け加えました。
「韓国ではね、みんなよく見せたいのよ！せっかくお金使ってきれいになるんだから、きれいになって目立ちたいのね。それが目的だから、ハッキリしていてわかりやすいの。でも、日本人はそこが面倒くさいのよねー。みんなあんまり目立ちたくないでしょ？でも、やっぱり地味なのはいやなのよね。そこが複雑でよくわかんないのよ。ミニスカートはいておきながら、見たらいやらしいとか言われてニッポンのおじさんたちかわいそう．見られたいからミニスカートはいてるんでしょうに！そういう複雑なのは私たちわかんない。パパッと目立つようにきれいにするの。それしかないから、難しくないのよ。」

なーるほどね。とにかく華やかにとか、上品にとか、あるいは手入れが簡単なように、とか、ひとつの方向性だけ伝えればその方向性で一番似合うものを見つけるのは美容師の仕事、というわけです。

甘いか？辛いか？のひと味だけが得意で、甘辛いのとか複雑な味は苦手、という韓国的な味の嗜好にも通じるものがありますよね。

さて、昨日は運良く、今年に入ってはじめて　彼女に髪を切ってもらうことができました。何も言わずに「おまかせ」と、言うと、冬だから寒くないように長さは切らずに、手入れが簡単なように手櫛だけですむようにして、ちょっと太ったから顔見えないようにこのへんをかわいくしますよ、　とか自分で言って　もうさっそく仕事にかかります。

２時間後、うまくいいあらわせませんが、１０年ぶりくらいに前髪を切って、隣に座っていたお客さんが「キムハヌルみたいな髪型ねー」と、言うヘアスタイルが出来上がりました。へへっ。キムハヌルといわれちゃあ悪い気はしません。（髪型のみです.....、わかっています.......＾＾：）

ダンナから電話があったので、「今、美容室にいるのよ。キムハヌルになったよー」と、いうと「え？キン...なに？キンカクシ？］と、悪意のある空耳が。

「キムハヌルだよっ！うちにかえったらよく見てね！」

と、電話を切って家に戻ると、ひとめ見るなりダンナがいいました。

「なーんだ、キヌカツギって言ったのかあ！」

.........新大久保のカリスマに、この言葉は伝えられません....

　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｌｏｖｅ　ｆｏｒｅｖｅｒ　ｓａｔｏｖｉｃ