そしてそのジニョンという女がソニーの昔馴染みである
ソ・ヨンスの娘だということを程なく知った
私の秘かな計画が頭の中で構築されていったのは・・・
その時からだ
「古くからの友人を裏切ることにならないか」
「なるでしょうね」
「それでも・・・何故引き受けた?」
ソニーが韓国に渡り、ジニョンの父親と会う前に
私はソニーにそう聞いた
「・・・・・・あなたのお母様の笑顔は本当に美しかった
そのお母様の笑顔を最後に奪ったのは私です
あなたをお母様から引き離すこと・・・
それをあの方に告げたのも私・・・
あの方から・・生きる糧だった仕事を奪ったのも私・・・」
ソニーは何故か遠くを見つめるようにして
私の質問と関係のないことを話し始めていた
「・・・・・お前は命令されただけだ」
「それでも!・・・
私の目の前であの方の笑顔が消えてしまった
それは衝撃的なことでした
ですから・・・
私はあの方の命だったあなたを
守らなければ・・・なりません
一生を掛けて、守らなければなりません」
ソニーは初めて僕の前で涙を流した
「母を・・・愛していたのか?」
「・・・・・」
「だから・・・私の頼みは何でも聞く・・・
そういうことか・・・
それが・・・私のやることが・・・
間違ったことだとしても?」
「あなたがおやりになることに
間違いはありません」
「それは・・・どうかな・・・・・・
また傷つく人がいる・・・
お前もまた自分の本意としないところで
人が悲しむ顔を見ることになる
それでも・・・いいのか・・・」
「あなたとなら・・・地獄へでも落ちましょう」
「ふっ・・・地獄には・・・母はいないぞ」
「・・・あなたの母上が待ってらっしゃるのは
私ではなく・・・お父上ですから・・・」
ソニーがそう言いながら俯いた姿が悲しげに見えた
「ソニー・・・」
「はい」
「お前が・・・母と生きてくれていたら・・・
母も幸せだっただろうな・・・」
「いいえ・・・若・・・それは違います・・・
愛するということと、愛されるということ・・・
その違いはあまりに大き過ぎる
あなたの母上は・・・
お父上を心から愛しておられた
お父上もまた、母上を愛されていた
なのにおふたりはこの世で添うことができなかったんです
哀れでした・・・そばでお仕えしていて・・・
切なかった・・・胸が苦しかった・・・
もう・・いいでしょう・・
いつの日か・・・本当にいつの日にか・・・
・・・添わせてあげましょう・・・おふたりを・・・」
「私がすることを・・・父はどう思うだろう」
「あなたを跡継ぎにと頑として引かなかった父上の
そのお気持ちがあの方の答えかと・・・」
「本当に?」
私はソニーに振り返ると
彼に遠い昔にそうだった少年の目を向けていた
「ええ・・・私はそう思います」
彼のその言葉に
私は自分の頬が少し緩んだように思えて
それを彼に隠すように視線を逸らせた
母さん・・・
父さんは本当にあなたを愛していたらしい
母さん・・・あなたもそこで・・・
あの人を待ってる?
ソニーが好きだといったあなたの笑顔
僕も・・・大好きだった・・・
あなたの笑顔・・・
その笑顔のままで
・・・あの人を待っている?・・・