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IZMCLUB別館(https://club.brokore.com/kurumitom2)
IZM CLUB 
サークルオーナー: kurumi☆ | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 261 | 開設:2007.10.18 | ランキング:66(6784)| 訪問者:1377270/1609952
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D&Jの物語Ⅱ
創作ドンヒョクとジニョンの物語Ⅱ2005.6.25~9.15まで連載
No 15 HIT数 7928
日付 2010/02/12 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル 物語Ⅱ 15.ユソクの愛
本文
 



            collage & music by tomtommama

 


                                   story by kurumi






ジニョンはサファイアヴィラのヤンの部屋を訪ねていた

「ソ支配人、どうぞ・・・会長がお待ちしていました・・会長・・・
 ソ支配人がお見えです」 ヤンの秘書が玄関先で奥の部屋で待つ
ヤンに声を掛けた
秘書の名前は、ロイ・スミスと言った

「お通ししなさい」 奥からヤンの声がした

「お邪魔致します」 ジニョンはロイに案内されて、奥へと向かった

「ジニョンさん、さあ、どうぞ・・・お待ちしてました」
ヤンの顔がジニョンを見つけて柔らかくほころんだ

「では、会長、私はビジネスセンターへ行って参ります
 ソ支配人、どうぞ、ごゆっくり・・・」
ロイがジニョンににこやかに挨拶すると部屋を出ていった

「あいつ・・・随分機嫌がいいでしょう?・・・
 何故だと思います?
 あなたがここへいらっしゃると、私が機嫌がいいからです
 自分が怒られなくて済む・・・そう思ってる」

「まあ・・・あの方ヤン様の甥ごさんだとか・・・」

「ええ、妻の弟の息子です・・・鍛えて欲しいと・・・
 義弟が私に預けました」

「頼もしいですね・・」

ジニョンは、ヤンがソウルホテルに来てから、ヤンの要望で毎日のように
話し相手を努めていた

ドンヒョクにこのことを話したら、機嫌が悪くなることがわかっているので
出来るだけ彼の話題は避けていた

不思議と、ヤンと過ごす時間が窮屈でないということも、
敢えてジニョンはドンヒョクに話さなかった

  

「ヤン様、私、今日はこれで退勤の時間になります・・・
 それから、明日から二日間休暇を取らせて頂いていますので
 私がいない間は、当ホテルの社長が担当させて頂きます
 何かございましたら、どうぞ何なりとフロントへお申し付け下さい」

「そうですか・・・あなたとこうしてお話することが、私の楽しみでした
 二日間もお会いできないんですね・・・・残念です・・」
ヤンは本当に残念そうに眉を下げた
「あ・・今日は・・・もう退勤時間とおっしゃいましたね
 それじゃあ少し、私の話にお付き合い頂けませんか?」

「ええ・・・喜んで」 ジニョンは満面の笑みをヤンに向けた

「どうぞ・・こちらへ・・・お掛け下さい」
ヤンはベランダに向かってふたつの椅子を並べて、ジニョンに促した

「失礼致します」

「ソウルホテルは本当にいいところですね・・・・
 雰囲気も、従業員の接客も・・・
 アナベルもいい所で、勉強させて頂いた」

「ありがとうございます」

「ジニョンさん・・・」

「はい」

「私、いくつに見えますか?」

「さあ・・・おいくつでしょう・・・」

「55になります」

「お若く見えますね」

「そうですか?・・・私はもう、仕事を娘の婿に任せて
 リタイヤするつもりです」

「アナベルの?」

「あの子はもう直ぐ、結婚することになりそうです」


   ジニョンさん、ごめんなさい

   あなたは、その時、深く傷つくね・・・・

   でも・・・・許してください・・・・

   私とアナベルにはフランクがどうしても必要なんです・・・


「そうですか・・・そんなにお若くしてリタイヤなんて・・・勿体無い」

「もう、十分働きましたから・・・・
 私は、余生を愛する人のそばで過ごしたいと思ってます」

「・・・・・・・・」

「ジニョンさん、この前、あなたと同じ名前の女性のお話しましたが、
 覚えてらっしゃいますか?」

「ええ・・」

「その人のそばで・・・・」

「えっ?もう、お亡くなりになったのでは?」

「ええ・・・だから、その人との思い出の場所で・・・」

「思い出の場所って?」

「ソウルです」

「ソウル?」

「ええ、ここで余生を過ごしたいと・・・」

「まあ、そうですか・・・
 でも、ごめんなさい・・・余計なこと伺ってもよろしいかしら・・・」

「どうぞ・・・何でも」

「アナベルのお母様は亡くなられたんですよね・・・」

「ええ・・・8年になります」

「同じ、亡くなられたのに・・・奥様のおそばではなくて?」

「妻は私を愛していませんでした・・・
 私達は最初から最後まで愛し合ってなかった・・・」

「そうですか?でも・・・・何だか、可哀相・・・」

「可哀相?」

「ええ・・・奥様は本当にヤン様を愛していらっしゃらなかったでしょうか」

「どういうこと?」

「アナベルをお生みになって、育てられて・・・アナベルを愛してらした
 あのこ・・・何でも出来てどこも隙がない、大人に見えるけど
 お母様のこと話す時、まるで子供のように無邪気に笑うんです
 お母様が私にこう言ったんです・・・こういうことをしてくれたんです・・
 お母様が・・・って、よく私に話してくれました
 あの子・・・お母様の愛をしっかり受けて育ってる
 とてもいい子だわ・・・心に太陽を持ってる」

「太陽?」

「ええ、私の母の持論です・・・親が愛情を持って育てた子供は
 心に太陽が必ずある、と・・・“だから、あなたも、太陽持ってるでしょ?
 私達が愛情持って育てたから”って
 “私があなたに愛情を持てるのは、あなたのお父さんを心から
 愛してるからなのよ・・・

 だから・・・結婚は必ず愛する人としなさい
 そしたら、子供達はみんな太陽を持って育つ・・・
 世の中、そんな人達ばかりだったら、平和でしょ?”って
 母は、どんどん話を大きくしちゃう人なんです・・・」

「いいお母様だ」

「ええ、大好きです」 ジニョンは満面の笑顔でヤンを見た

「太陽か・・・」 ヤンはジニョンの言葉を繰り返して呟いた

「はい・・・・だから、アナベルも太陽を持ってる
 ということは、奥様はあなたを愛してらした・・・そういう結論です」

ヤンはそう話すジニョンに驚きが入り混じった感動の眼差しを向けていた

「ジニョンさん・・・・」

「はい」

「あなたと話していると・・・・」

「えっ?」 
ジニョンがヤンを見ると、ヤンは正面を向いたまま、言葉を繋げた

「あなたと話していると・・・
 本当にそうなのかも・・・と思えてきます・・・不思議な人だ」

「主人も同じようなこと言いますわ・・・私そんなにおかしいですか?」

「あなたのご主人が、あなたに惹かれたわけが・・・
 わかるような気がします」

「そうですか?私達は・・・運命ですから・・・理由なんてありません」

「運命?」

「はい、私にとって・・・あの人にとって・・・互いに代わる者が無い
 主人はよく、半身という言葉を使います」

「半身?」

「ええ・・・互いをもぎ取ったら、互いに人間ではないんだそうです」

「半身・・・・」

「あ、失礼しました・・・私達のこと関係ありませんでしたね・・・
 それに余計なこと話すと主人に叱られます」

「私の・・・私のジニョンも・・・私にとって半身だったんだ・・・
 だから、私は人間で無くなった・・・・
 そういうことなのか・・・」 ヤンはまるで自問自答しているように俯き呟いた
「ジニョンさん、聞いてくれますか?
 私のジニョンのこと・・・

 昔、アメリカから遠く韓国に留学に来ていた私はジニョンと知り合いました
 彼女はとても明るい人で、いつも私を励まし、くじけそうになる私を叱った
 私は、そんなジニョンを心から愛しました・・彼女も私を深く愛してくれた
 彼女だけだったんです・・・私には・・・・

 それなのに・・・私は彼女を裏切った・・・
 彼女を置いて、アメリカに戻ったんです
 事情はありました・・・父の会社の状態が悪くなって、
 私は資産家の娘である女性との結婚を余儀なくされた

 よくある話でしょ?
 でも直ぐに、後悔しました
 何とか状況を改善して、彼女の元に戻ろう・・・
 その女性とは婚約はしたものの、結婚するつもりはありませんでした
 いつか必ず、ジニョンの元に戻ろう、そう思ってました

 でも・・・遅かった・・・
 私が戻る前に、ジニョンは亡くなりました
 私は、そのまま婚約者と結婚し、仕事に生きました
 その女性が、アナベルの母親です・・・

 そして・・・私はジニョンを忘れようとした・・・でも・・・・・」

「忘れられなかった?」

「ええ・・・どうしても・・・・
 彼女の笑顔が・・・彼女の泣き顔が・・・彼女の言葉が・・・
 私の心で生きていた・・・
 彼女も私を待っている・・・そんな気がしたんです
 だから、いつか必ず、彼女の元に戻ろうと・・・

 あなたの言葉を聞くと・・・まるでジニョンに言われているような気がする・・・
 やはり・・・血が繋がってるんですね・・・・」
ヤンはしみじみとジニョンを見つめてそう言った

「えっ?・・・・それじゃあ・・・やっぱり?」

「ええ、ごめんなさい・・・嘘をついてしまって・・・
 そんなつもりはなかったんです・・・でも突然で・・・
 驚いてしまって、つい・・・間違いなく
 あなたの叔母様です・・・私のジニョンは・・・・・」

「そうでしたか・・・」

「だから、と言うわけではありませんが、あなたの言うことが
 信じられそうな気がします・・・
 妻が私を愛していた、ということ・・・だとしたら
 私は彼女の心を見ていなかったんですね・・・
 もう今では聞くことは出来ないが・・・・」

「余計なことを・・・もうひとついいですか?
 私が叔母なら・・・あなたの愛したジニョンなら・・・
 どうか、奥様のそばにいらしてください、とお願いしたと思います」

「本当に?何故?」 ヤンは子供のような目をジニョンに向けた
「本当にそう思う?
 ジニョンは・・・・君はもう僕が必要じゃないと?」

「いいえ・・・互いに愛し合ってらしたのなら・・・・
 どこにいても、心は通じ合っていますから・・・・
 長年連れ添った方を置いて・・・その方を寂しくさせてまで・・・
 私のところに来てくれなくても・・・いいわ・・・
 あっ、ごめんなさい・・・・私ならそう言うかなって・・・・」
ジニョンを見つめるヤンの目から、みるみる涙が溢れた

「ヤン・・様?」

ヤンが見ていた目の前にいるジニョンは、自分が心から愛した
あの日のジニョンだった

ヤンは突然席を立ち、ジニョンに近づくと、彼女を強く抱きしめた・・・
そして、声をあげて泣き出した

「ジニョン・・・ジニョン・・・ジニョン・・・・
 僕は・・・・君のそばに・・・・・本当は・・・
 君のそばに・・いたかったんだ・・・・許して・・・・・」

ヤンの行動にジニョンは驚いたが、彼女は彼の手を振り解くことが
できなかった
そればかりか、黙ってヤンの背中に手を回し、背中を優しく撫でた
今は自分がそうしてあげるべきだと、素直に思った

ヤンはいつまでも泣いていた・・・

   叔母さん・・・この人があなたの愛した人なのね・・・

ジニョンは自分の腕の中で泣く男が哀れでならなかった

 


部屋の外に人影が有った・・・アナベルだった
彼女はドアの向こうの父とジニョンの様子を伺いながらも
中に入ることができず立ち尽していた

   お父様・・・可哀想な人・・

   お母様はあなたをとても愛していらしたのに・・・

   そうよ・・・お母様は・・ただ、自分のプライドが許せなくて、
   あなたに関心のない振りをしていただけ

   お母様はそれをとても後悔していらした

   私によく言ってたわ

   あなたは好きな人が出来たら、

   一生懸命、“あなたを愛しています”・・と伝えられる人になりなさい・・と

   只、ひとこと・・・愛してると言えばいいのよ・・・
   悲しい顔でいつも・・・そうおっしゃっていた・・・

   お父様・・・
   お母様があなたに愛してると言えなかったわけ、わかる?

   それは・・・ジニョンさん・・・あなたがたったひとり愛し続けた・・・

   その人の影が・・・お母様のプライドを傷つけていたのよ


   ジニョンssi・・・・

   母や私が、長年掛けて癒せなかった父の心・・・

   どうして・・・あなたは・・・そんなにも簡単に癒してしまうの?

   ジニョンssi・・・・

   あなたは・・・私の大切なもの・・・もう持っているでしょう?

   お父様まで・・・・

   お父様の心まで


      ・・・持っていかないで・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


   


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