アジアのカリスマアーティスト、ジェイ・チョウが監督業に進出し、自ら主演(しかも高校生役!)し、自伝的要素を盛り込んで描いた青春ラブストーリーである今作。いくら童顔でも、10歳もサバ読んで高校生役って大丈夫なの?と勝手に心配していましたが、制服姿も違和感なく、不器用でまっすぐな思春期の男の子を自然体で好演。作品の方も、青春時代の淡く切ない恋を絶妙に描く前半、予想もつかない衝撃の展開を見せる後半、そして思いもよらない結末…と飽きさせることなく見せてくれ、初監督作品とは思えない力量を感じました。
なんと言っても楽しいのは、音楽学校が舞台なだけあって、ピアノ演奏が随所に出てくるところ。ジェイの超絶技巧が見られるピアノバトルや、ヒロインとの連弾、そしてクライマックスでのスペクタクルな演奏シーンなど、見どころ満載!撮影の舞台となったジェイの母校の雰囲気もクラシカルで素敵です。
ヒロイン役のグイ・ルンメイは、決して美人ではないのだけど、どこか寂しげな表情と憂いをたたえた瞳が印象的で、“秘密”を抱えた女の子役にぴったり。街でスカウトされて、青春映画『藍色夏恋』でデビューしたそうですが、独特の存在感があって、これからが楽しみな女優さんです。
そして、こちらも存在感を発揮しているのが、香港の名優アンソニー・ウォン。『頭文字D』に続くジェイ・チョウとの親子役で、ちょっと過保護で微妙にうっとうしい(笑)父親をチャーミングに演じています。嫌がる息子と無理やりダンスするシーンや、落ち込んだ息子をギターの弾き語りで慰めようとするシーンなど、茶目っ気たっぷり!個人的には素敵なナイスミドルを発見できて、密かに嬉しかったです。
それにしても、やっぱり青春映画には自転車は欠かせないアイテムですね。今作でも主人公シャンルンとヒロインのシャオユーが自転車に二人乗りするシーンは、とても美しく印象的なシーンになっています。青春映画の要素をしっかりと押さえつつ、きちんと自分の色を出している“ジェイワールド”を堪能させていただきました。
(ブロコリ通信編集長 関島)
|