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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
サークルオーナー: aoi32 | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 297 | 開設:2008.03.05 | ランキング:100(3927)| 訪問者:1371285/1908526
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秘  密
大学講師の深沢潤と人気女優の青山優。                                                実は結婚していることは秘密。                                                       そして、優には誰にも言えないもう一つの秘密が…
No 4 HIT数 7711
日付 2009/04/02 ハンドルネーム aoi32
タイトル 秘密 4 初めてのキス
本文

    秘密 4  初めてのキス


 

 


大人びた表情をしたかと思うと 数秒後には少女のようなあどけない笑顔を向ける。

何もかも映し出すような透明で純粋な瞳を真直ぐに向けたかと思うと

時には はっとするような艶めかしい目を上目遣いで見つめてくる。

青山優は そんな不思議な存在だった。


数日後 彼女は潤の研究室へ躊躇することなく訪れた。


「先生、何かお手伝いする事はありませんか?

 教材を探すとか 資料をプリントアウトするとか・・何でもしますからおっしゃってください。」


優は明るい声で言った。

開け放した窓から入ってくるそよ風に 彼女の長いストレートの黒髪が揺れる。

さわさわと風に乗って 微かに甘い香りが漂ってくる。

初めて会った時もそうだった。


潤は ついぼんやりしてしまう自分の気持ちを切り替える。


「・・そんな事は助手の人がやってくれるから・・」

 

「君は勉強しなさい。・・でしょう? 先生。」

 

「そのとおり。」

 

「わかってます。 ちゃんと勉強はしてますから。

 ただ、この前先生には助けてもらったし・・だからお礼がしたいんです。」

 

「お礼なんて必要ない。君は学生で、僕は講師だ。

 だから 教え子の君を守る義務がある。・・それだけのことだ。」

 

「先生、冷たい。」

優は不服そうに唇を尖らせた。

 

「冷たくて結構。 さあ、授業が終わったのならもう帰りなさい。」

 

「じゃあ、せめてお茶をご馳走させてください。

 通りにある “カフェ J”・・ご存知ですよね?

 わたし・・待ってますから。」

 

「・・待ってても無駄だ。・・僕は行かない。」

 

「それでも待ってます!・・人目につく場所に座ってますから。

 ・・・また ファンの人に囲まれちゃうかも・・。

 でも、先生が守ってくれるんですよね。」

 

「君!」

 

「じゃあ、先に行ってます。・・先生が来てくれるまで待ってますから!」

 

にっこりと笑った優はそう言うと 手をひらひら振りながら部屋から出て行った。

 




     ――――――

 




午後八時を過ぎていた。

 

   今時の若い女の子の気まぐれだろう。


   それに 彼女は華やかな世界にいる芸能人だ。


   彼女の周りにはいないような人間が珍しいだけだ。

 


大学を後にして 潤は帰路に着いていた。

あれからもう3時間も経ったのだ。・・・いるわけがない。

それでも潤は ちょうど自宅への帰り道の途中にある そのカフェを覗かずにはいられなかった。

彼女を囲んで大騒ぎになっていたら・・きっと彼女は困ってるだろう。

潤はそんな事を考える自分が可笑しかった。

きっと彼女は ここにも来なかったのだろう。

からかって あんなことを言ってみただけだ。


では なぜ僕はここに来たのだろう。

潤は自嘲気味に笑うとうつむいた。


もうすでに辺りは暗闇に包まれていた。

間接照明でほのかに照らされたオープンカフェのテラスには ほとんど客はいなかった。


潤はガラス張りの店内に入り ゆっくりと見回してみた。

中には 数人の客が座っている。

ほとんどが二人連れだった。


・・・・いるわけない・・と思っていた。


しかし・・カフェの一番奥の席に・・・彼女は座っていた。

ひとりで ポツンとうつむいたまま座っていた。

静かに目立たないようにしているのか・・彼女は周りの雰囲気に溶け込んでいた。

それが不思議な気がした。

落ち着いたダークブラウンの木製の丸テーブル。

その上には 本が一冊 閉じたまま置かれ 白いティーカップには

もうすでに冷め切ってしまった紅茶が残っていた。


潤がゆっくり近づくと その気配に気づいた優が顔を上げて潤を見た。

 

「・・僕は行かないと言ったはずだ。」


自分でも冷ややかな声だと思った。

そして 潤はそんな声を出したことを後悔してる自分に もっと驚いていた。


だが 優はそんなことはまるで気にしてないのか 嬉しそうに笑った。


「でも、先生は来てくれたわ。」

 

「ちょうど帰り道だから寄ってみただけだ。」

 

「ふふ・・。」

 

「こんなことに時間を使うなんて・・もっと有意義なことに使いなさい。」

 

「はあい、先生。・・わかりましたから 座ってください。

 コーヒーがいいですか?ご馳走します。

 あとね・・ここ、紅茶のシフォンケーキが美味しいんですよ。

 一緒に食べませんか?」

 

「ケーキ?」

 

「あ、もしかして・・甘い物は苦手だったりして。」

 

「いや、そんなことはないが・・あ・・。」

思わず言ってしまったことに 潤はあわてて口を押さえた。

 

「先生・・ケーキ好きなんですか?」

 

「・・・・・」

 

「か、かわいーーー!先生ったらーー!!! 甘党なんですね?」

 

「そ、そんな大声を出すな。」

 

「きゃ~、赤くなってるーー。ますますかわいー!」

 

「こら、大人をからかうんじゃない。」

 

「あら、わたしだって大人ですよ。」

 

「僕から見れば 君はまだ子供だ。いいですか・・・」

 

「先生と君は十歳も歳が違う、でしょう?」

 

「そうです。」

 

「でも、今は20歳と30歳で ちょっと離れてるかなって思いますけど

 あと20年たったら 40と50です。・・30年後は50と60・・もうほとんど

 同じようなものですよ。ね?先生!」


「・・同じじゃないでしょう・・・。」

   ・・・って、何 真に受けてるんだ・・?

 

「先生は60歳になっても きっと素敵なんでしょうね。

 かっこいいだけじゃないもの。・・大人で知性も教養もあって

 その上 普段は冷たいけど、本当はとっても優しくて頼りがいのある男性だもの。」

 

「・・・・・」

 

「どうしよう・・。」

 

「何が?」

 

「先生のこと ますます好きになってしまいそうなんです。」

 

「え?」

 

「・・わたし・・先生のこと好きです・・初めて会った時から・・。」


優はそう言うと まっすぐに潤を見つめた。

 

目をそらすこともなく真剣に思いを告白する優に

潤は ただ首を傾げて黙って彼女を見ていただけだった・・・。 

 

 

 

   ―――――

 



「先生、待って!」


先をずんずん歩いて行く潤を 慌てて優が追いかける。

カフェを出て 表通りの歩道を行く潤は 振り返りもせず歩き続ける。


「待ってください!」


優はやっと潤に追いつくと彼の腕を取った。


潤はゆっくり振り向くと表情も変えずに言った。
                     

「もう帰りなさい。」

 

「嫌です。」


「人をからかってる時間があったら 他にやる事があるはずだ。」

 

「からかってなんかいません。・・本当の気持ちです。

 わたし・・先生が好きなんです。」

 

「・・・・・」

 

「どうして信じてくれないんですか?」

 

「・・・その言葉が事実だとしても 僕は何も言う事はない。

 僕には関係ない。僕は君には興味がない。」

 

「嘘です。」

 

「嘘じゃない。」


「じゃあ、今日 どうしてあのカフェに来たんですか?

 全然、興味がないのなら あそこに来たりしないはずです。

 先生・・わたしのことを心配してくれたんでしょう?」


「いい加減にするんだ。 そうやって何でも自分中心に考えるのはやめなさい。」


「でも、この前みたいにファンの人達に追いかけられてたら

 大変だと・・少しは思ってくれたでしょう?」


「・・・・・」


「先生!!」


優が必死な顔で潤に呼びかけてくる。

真直ぐに、一途に、何の躊躇いもなく ひたむきに感情をぶつけてくる。

だが 今の潤にはそれが眩しすぎて息苦しいだけだった。

彼の口から出てくる言葉は投げやりになる。


「・・・そんな事は思わなかった。君の勝手な思い込みだ。

 とにかく 今日はもう帰りなさい。もう少し冷静になって考えるんだ。

 ・・君は学生で僕は講師・・それだけの事だ。」


「嫌! わたしはあれからずっと先生のことを考えてきたの。

 ・・好きになるのは自由なんだから!」


優の言葉に堪りかねて 潤は何かを言おうと口を開きかけた時だった。

 

「あれ、女優の青山優じゃないか?」
「お、本物か?」
「こんな所で何してるんだ?」
「・・・ドラマの撮影じゃないわよね?」

通りを歩いていた人々が騒ぎ始めてた。


それに気づいた潤は 突然、優の手を取ると彼女の手を引っ張って走り出した。


「せ、先生ーーー?」

優は慌てて声をあげた。

 

「ここから離れるんだ!」

潤は振り返らずに叫んだ。                                  


 
 

   ――――――――――

 


二人は手を繋いだまま走っていた。

夜の街の中 道行く人々の間を縫うように走っていく。

人通りの少ない住宅街の公園まで来て やっと二人の足は止まった。


二人は息を切らし激しく肩を揺らしていた。

 

「・・せん・・せ・・・走るの・・・はや・・い・・。」

優が息も絶え絶えに言った。 

 

「・・こんなに・・全速力で走ったのは・・久しぶりだ・・。」

潤は ぐったりして膝を両手で押さえた。

 

「・・・また先生に助けてもらっちゃった・・。」

優は胸に手を当てて呼吸を整えながら言った。

 

「・・・だから・・君はもっと自覚しなさい・・。どうしてそんなに無防備なんだ。

 もっと考えてから行動しなさい。・・何か起こってからじゃ遅いんだ。」

潤は声を荒立てて言った。

 

「・・・ごめんなさい。・・先生。」

優は小さな声で言うとうつむいた。

細い肩が小さく震えているような気がした。


・・・潤はちょっときつく言い過ぎたかもしれないと後悔した。


もしかしたら泣かせてしまったのか・・・?


「と、とにかく 今日は送って行く。」


潤は口調を和らげて言った。

 

「本当ですか?」


それまでうつむいていた優が思わず顔を上げた。

・・彼女は泣いてはいなかった・・・。

 

「・・仕方ないだろう?・・それで家はどこだ?」


潤は自分の甘さに呆れながらも優に問いかけた。

 


「・・・え・・・?」


潤は思わず立ちすくんでしまった。


突然、優は潤の方に近づくと彼の首に両手を回した。

そして 優は踵を上げて背伸びをすると潤の唇を塞いだ。

あっという間のキスだった。

しかし、とてつもなく長い時間 二人の唇は重なっていたような気もした。


優は唇を離すと 一度うつむき、すぐに顔を上げた。

彼女は微かにほほえみ、少し潤んだ瞳で潤を見上げた。

 

「・・・・・」


潤は驚いて優を見つめた。 

 

「・・・初めてのキスは先生と・・って決めていたの。」


優はそう言うとにっこり笑った。

 

「・・先生、今日はありがとう。・・・先生にはまた助けてもらっちゃった。

 ・・すごく嬉しかった・・。あとはもう一人で帰れますから・・。」


優はそう言うと頭を下げた。

 

「・・・明日からまたドラマの撮影で先生には会えなくなるけど・・・。」

 

「・・?・・」

 

「・・・わたしとキスしたこと・・忘れないでね、先生。」

 

「なっ・・!」


「あ、違うーー。 ・・わたしが無理矢理、先生の唇を奪ったのかな?」

 

「・・君・・・!」

 

「君・・じゃありません。優って呼んでください、先生。」

 

「・・・・・」


「ふふ、先生ったらまた赤くなってる・・。・・いいなーーー!

 やっぱり・・大好きです、先生。」


  
優は本当に幸せそうな笑顔を向けると ひらひら手を振りながら去っていった。

 

数年ぶりに唇を奪われた潤は 呆然としてその後姿を見送っていた・・。

 

 
 

 

                       

 

 

 









背景 ゆとゆと







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