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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
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秘  密
大学講師の深沢潤と人気女優の青山優。                                                実は結婚していることは秘密。                                                       そして、優には誰にも言えないもう一つの秘密が…
No 7 HIT数 7484
日付 2009/04/02 ハンドルネーム aoi32
タイトル 秘密 6 愛が育まれる時 後
本文

 五月にしては気温が高い日だった。


結川に誘われるままに 潤と優は横浜の元町にあるビア・カフェに来ていた。

その店内は、1920年代のベルギーに実在したビア・カフェをリアルに再現し、直輸入された 

テーブルや椅子、アンティークタイル、バーカウンターなどのインテリアから、内装、電飾

壁にディスプレイされた装飾品にいたるまで 本場ベルギーの雰囲気が広がっていた。


落ち着いてくつろげると評判のその店はいつも賑わっていて その日も満席に近かった。


十代の頃から芸能界という限られた世界で過ごし、大学の合コンにも行ったことがない

世間知らずの二十歳になったばかり優は 初めて見る光景に目を輝かせていた。


「・・・わたし・・こんな所に来たの初めてですーー!」

優は嬉しそうに叫ぶと 結川お奨めのホワイトビールをごくっと一口飲んだ。

「・・・にがーい・・・。でも、さっぱりしてて美味しいーー!」


「・・・・・・」

潤は呆気に取られて目を丸くした。


「お・・。青山君はけっこういけるようだね。さ、どんどん飲んで。

 ここはね、フライドポテトが美味いんだよ。こ~んなビッグサイズなんだ。

 好きなものを頼んでいいからね。今夜はわたしのおごりだからね、遠慮しなくていいよ。」

結川は満足そうにニコニコ笑っている。

 

   ・・・・・・


       ・・・・・・・・

 


「結川教授ってとってもいい方なんですねーーー!」

優は嬉しそうに言うと すでに酔ったとろんとした目で見上げた。


「そうでしょう?・・よく言われるんだよ。」

結川も楽しげに答える。


「だから、その教え子の潤先生も素敵な人なんですねーー。」


「そうそう。深沢君はとても優秀な学生だったよ。真面目だし研究熱心で・・。

 何と言っても男前だしね・・。私の若い頃と似てるんだよ。」


「えーー! 教授と先生が似てる???・・・それはちょっとーーー。」

優は大げさに言うとくすくすと笑い出した。


「似てるでしょう、今だって。ま・・ちょっと足の長さは負けるけどね。」


「やだ、もうーー!・・全然違いますよーー。」

優は結川のユーモアあふれる会話に声を出して笑った。

 

 

 

「・・・・・」


・・・潤は後悔していた。

あんなに酒を飲んで・・優は大丈夫だろうか?

二十歳になって間もない優は、おそらくこんな機会は初めてに違いなかった。


結川に誘われるままにビア・カフェに来てしまった。

この教授とは長い付き合いで、学問上も影響を受けることが多く尊敬していた。

結川の方も潤が大学生の頃から知っていて 何かというと目をかけてくれていた。

 

 

優は楽しそうに笑いながらごくごくとビールを飲んでいた。

結川も嬉しそうに次々とビールを追加注文した。

 

優と結川はかなり酔っているようだった・・・。

向かい合って座っている二人のテーブルの上には 空になったビールのジョッキが二つ。

 

「すみませーん、ホワイトビールお代わりーー!」

人気女優のはずの優が声をあげる。


「・・優・・もうそろそろやめた方が・・・。」

優の隣に座っている潤は困ったように声をかける。


「えーー!なんでーー?・・・・潤先生・・あまり飲んでませんねーー。」

人気女優のはずの優が潤にからんでくる。


  ・・・こんな状態で飲めるか・・・?


この後 酔っ払った二人をどうするか・・・真面目な潤は思案していた。


それにしても・・まさか 女優の青山優がこんな所でビールをがぶ飲みして酔っ払ってるなんて・・・。

だが、誰も彼女に気がつかないのはかえって都合が良かった。

 

「・・・だからね・・青山君、さっきの話の続き・・。

 深沢君には学生の頃から付き合ってた彼女がいたんだよ。そう、水野くんっていう子でね。

 今の君と同じくらいの歳だったはずだ。その子も私の教え子だったんだ・・。二人ともいい感じで・・。

 それが・・6年前だったかな・・突然の交通事故で・・・・。」

 

いつになく結川は饒舌で 過去のそんな話まで語り始めたので、潤は慌てた。

「教授、その事は・・・。」

 

「いや、今夜はお節介でも言わせてもらうよ。・・・君が水野君が亡くなってから、ずっと苦しんできたのを

 私は知ってる。そんな君にもまた大切な人ができたってことが、私は嬉しいんだよ。

 うん、私は心配してたんだ。このまま深沢先生は女性なしの味気ない人生を送るのかってね・・。

 一教師として教え子の将来を心配してたわけで・・・。」

結川がしみじみと話す。

 

「・・・うっうっ・・・」

優が突然、泣き出した。

彼女の白い頬に 涙がぽろぽろ落ちてくる。


「優・・?」

潤は慌てて彼女の顔を覗き込んだ。


「か、かわいそうーーー!・・・潤先生も・・その彼女も・・

 きっ、きっと・・彼女は心残りだったでしょうね・・こんな潤先生を残して・・

 わ、わたしだって・・もしそうなったら・・後悔だらけで・・

 悲しくて・・寂しくて・・先生が幸せになるのを見届けてからでないと

 あの世になんて行けないーーー!!!」

 

優は涙でぐしゃぐしゃになった顔で潤を見て、そして彼の手を両手で握りしめた。

 

「・・大丈夫よ、潤先生!・・わたしが先生のこと大切にするから。

 その彼女の分までわたしが潤先生のことを もっともっと好きになる!

 だから・・大丈夫!・・だから元気出して生きていこうね!!」

 

「あ、ああ・・そうだね。」


    ・・・励まされてしまった・・・?

 


酔った勢いで深く考えずに言っているのか それとも心からそう思っているのか

今までの繊細な彼女とは違うような気がしていた。


それでも まっすぐに潤をみつめる 優の大きな黒い瞳は澄んでいて綺麗だと彼は思った。

 

「・・・大丈夫だからね・・・先生・・。」


「・・そうだね・・。」

 

もう一度繰り返す会話。


潤の返事を聞いて安心したように笑う優。


しかし、次に瞬間 彼女の身体がゆらりと大きく揺れたかと思うと そのまま潤の肩にもたれかかってきた。


潤は慌てて優の身体を抱きとめて胸の中へ包み込んだ。


優は 酔って眠ってしまったのだ。


彼女の長い黒髪が潤の胸でさらさらと波打つ・・。


少女のようなあどけない寝顔で 深い眠りに落ちていく優。

 

 

そうだった・・。


潤は初めて優と出会った時のことを思い出した。


あの時も 優は躊躇うこともなく潤の胸に飛び込んできた・・・。

 

彼女の まっすぐで純粋な気持ちが潤の心の扉を開けてくれた。

 

    ・・・・・・・・・

          ・・・・・・・・

 


「・・・彼女となら大丈夫だね 深沢君・・・。」

ずっと黙って二人を見ていた結川が口を開いた。

 

「・・・はい・・・教授。」

潤は静かに答えた。

 

「・・それは良かった。」

結川はまたニコニコ笑い出した。

 

「・・そう言えば・・・かなり酒には強い方でしたよね 教授は・・?」 

潤は 自分が学生だった頃から 結川が酔っているのを見たことがなかったのを思い出した。

 


「え?・・あ、いや・・今になって酒が回ってきたかな・・・あ~、フラフラする。」

結川は慌てて頭を押さえると椅子にもたれて目をつぶった。

 


   ・・・今さら酔ったふりなんかしても遅いですよ・・教授・・。

       でも、せっかくだからもう少し酔ったふりをしていてください。

 

潤は結川に感謝しつつ、ふっと笑った。


そして彼は こちらは本当に熟睡している優をしっかりと抱きしめた。


彼女の髪を撫でて顔を埋めて・・そっとキスを落とした。


優の身体の温もりを全身で受け止める。


彼女は何の躊躇いもなく潤に身を預けている。


潤にはその重みが心地よかった。 

 

 

   ・・・可愛くてひたむきで純粋な優・・。


        いつから僕は こんなに彼女のことをいとおしいと思うようになったのだろう。

 

        
        

 

          また こんなふうに ひとりの人を愛してしまったことを・・・

 

             菜々子・・・君は・・・許してくれるだろうか・・・・・。

 




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