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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
サークルオーナー: aoi32 | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 297 | 開設:2008.03.05 | ランキング:100(3927)| 訪問者:1356011/1893252
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抱きしめたい
元気で天然な美月、可愛い年下の大学生 航平                                            そして クールな大人の男 永瀬が織成す 明るい(?)三角関係…
No 12 HIT数 4679
日付 2009/04/05 ハンドルネーム aoi32
タイトル 抱きしめたい -12- 夜明けのキス
本文




-12- 夜明けのキス   

 

夜が明けていく。

うっすらと紫がかった空が夜の暗闇から開放されていく。

朝の空気を微かに感じて航平はぼんやりと目を覚ました。


ここは…?


いつもと違う部屋であることに気づいた航平は
その理由を思い出すために ゆっくりと考える。

 

ああ、そうか

昨夜はホテルに泊まったんだ

イヴは美月ちゃんと過ごそうとここに来て

そしたら突然電話がかかってきて……


  ………………


     ………………


そうだ! 美月ちゃんは???

 

はっと思い出した航平はベッドから起き上がろうとしたが
何か違和感を感じて顔を横に向けた。


え???


信じられない事に 航平のすぐ傍に美月がいた。

同じベッドの中で美月は寝ていたのだ。


え? えーーー! ……これは、えっと…


何が何だかわからない航平は 混乱しながらまた記憶の糸を辿ってみる。

…思い出せない。

航平は今度はそっと美月の顔を覗き込んだ。

いつものように 美月はあどけない顔をして眠っていた。

航平は両手で頭を抱えて必死に思い出そうとしていた。

 

えっと…もしかして 昨夜 僕は美月ちゃんを?

ついに美月ちゃんが僕のものに……?

 

嘘だろ???

思い出せない!

覚えてない!

これじゃ、美月ちゃんと同じじゃないかーーー!


…あのシャンパンのせいだ

美月ちゃんがなかなか戻ってこないから ルームサービスで頼んで
いつの間にかシャンパンを一本空けていた…?


混乱している航平をよそに
気持ちよさそうに軽い寝息をたてながら美月は眠っている。

しかも航平にぴったり寄り添うように。


「…美月ちゃん」

航平は美月の肩を揺り動かしてみる。


「う…ん」

美月は微かに口元を動かすが目を覚ます事はない。


「美月ちゃんってば」


「う…ん」


「美月ちゃん、起きて」


「う…ん、こうへい…なの?」


ここまではよくある光景だった。

だが、いつもと違うのは 寝ぼけている美月と同じベッドの中に
航平も一緒にいることだっだ。


「そうだよ」


「う…ん もう少し…寝かせ…て」


「だめだよ 起きて」

 

ごめん 美月ちゃん

悪いけど 今日は美月ちゃんの言う事を聞いてあげるわけにはいかない

だって もうすぐ朝なんだよ

僕達にはもう時間がない

 

航平は 眠っている美月の髪をそっとかき上げて その白い額に唇を押し当てる。

そして 閉じられた瞼、やわらかな頬にもキスを落としていく。

美月は微かに長い睫毛を震わせると くすぐったそうに口元に笑みを浮かべる。

 

目を覚まして…美月ちゃん  


航平が美月の耳元で囁きかけると うっすらと…美月の瞼が開いてゆく。


目を開けると 息がかかるほど近くに航平の顔があった。

美月はぼんやりと航平を見つめて まるで夢でも見てるように不思議な顔をする。


「こう…へい…?」


「やっと起きたね」


「えっと…ここは  わたし  どうして…?」


美月は 少し前の航平と同じような様子で考えている。

 

 ……………


   ……………


「あ!!!」

いきなり美月が起き上がった。


「そうだった! わたし 航平が起きるのを待ってて
 それで… 少しだけ休もうとして  つい…?」


航平もベッドから起き上がると 考え込んでいる美月の背中を見つめる。

 

そうよ!

昨夜はクリスマス・イヴで 航平と待ち合わせて

…イルミネーションがすごく綺麗で

その後 お洒落なレストランで食事して

そして 以前から泊まってみたいと思っていた 
この夜景が美しいホテルにチェックイン!

部屋は落ち着いた感じで品があって

しかも 一緒にいるのは王子様みたいな航平で

…うっとりするようなキスをして

そのままベッドに……


そしたら 突然 編集長から電話! 

わたしは…航平を一人残して……

 

 

「…ごめんね 航平」

美月は ゆっくりと航平の方に振り向くと小さな声で言った。


「…じゃあ、やっぱり まだなんだ…」


「え?」


「僕はまだ美月ちゃんを抱いてないんだ」


「え? あの、 えっと その…」


「良かった!」


「え?」


「だって 初めて美月ちゃんが僕のものになったのに覚えてないなんて
 …一生後悔するところだったから…」


「航平…」


「ずっと前から 美月ちゃんのことを思って…待ち続けて
 やっと振り向いてくれたのに……」


「こう…へい…」


切なそうに…航平の黒い瞳が美月をじっと見つめている。

航平の熱い思いがひしひしと伝わってくる。

ずっと真直ぐに、痛いほど真剣に美月を思ってる航平の思いが……


「…航平」

美月はそっと航平の方に手を伸ばすと彼を抱きしめた。

そして 航平の首筋に頬を寄せる。


「…ごめんね 航平」


「美月ちゃん」


「いつも待たせてばかりで…」


「うん」


「イヴは一緒に過ごすって約束したのに…一人にさせて…」


「うん」


「許してくれる?」


「…うん」


「ほんとに?」


「…昨夜の続きをしてもいい?」


「え……」


「そしたら許してあげるよ」


「……航平」


「いいよね?」


「うん……」


美月は航平を抱きしめたまま小さく頷いた。

航平の深いため息がこぼれる。

両腕で美月の華奢な体を包み込んで 彼女の髪に顔を埋めると
その甘い香りに目眩がしそうになった。


……胸のずっと奥からこみ上げてくる  熱い思い …

 

 

もうすぐ夜が明ける


空がうっすらとラベンダーカラーに色づき始めた頃 

真っ白なシーツの上で 美月はゆっくりと目を閉じる。

そして……切ないほど優しくてとろけそうなキスを待っていた…。




 

 

 

 

 

燃えるようなバラ色の朝焼けが東京タワーを照らしていた。

冬の朝の緩やかな光が窓から差し込んで 
純白のシーツに包まれたまま寄り添った二人の身体を輝かせていた。

 

航平は 美月の艶々とした白い背中に唇を押し当てる。

彼女の唇から甘い吐息がこぼれる。

両腕を回して 後ろからきつく美月を抱きしめる。

…苦しいわ 航平…

航平は少し力を緩めたが 美月を離そうとはしなかった。

やっと…ひとつになれた喜びを体中で感じていた。

航平の肌の温もりに包まれながら 美月はうっとりと目を閉じる。


「美月ちゃんの肌はすべすべしてるね…」

航平は 美月の肩先にキスを落とす。

「…ものすごく綺麗だ…」


航平の大きな手が美月のやわらかな胸をそっと包み込む。


あ…  感じやすくなっている美月は思わず身をよじる。

航平は嬉しそうに笑うと 今度は美月の首筋にキスをする。

 

くすぐったいわ 航平…  くすくす笑い出す美月。


可愛いな 美月ちゃんは…  航平も一緒にくすくす笑う。  


可愛いのは航平のほうでしょ?


僕が可愛い?


うん、可愛い


そんなこと言うとまた襲っちゃうよ


え?


今度は“可愛くないバージョン”で


え? ちょっ、ちょっと待って!


待てない

 

もう美月のことを待つつもりはなかった。

航平は美月を抱いていた腕を解くと体を起こして 彼女を見下ろした。

 

航平……?

戸惑ったような顔の美月が航平を見上げている


美月ちゃん 愛してる

告白する航平の顔には幸せそうな笑みが浮かんでいる。

 

航平……


前よりもずっと…愛してる  


…わたしも


美月ちゃん?


わたしも ……わたしも 航平のこと 愛してる


…………


…航平?


…ずるいよ 美月ちゃん


え?


今 そんなこと言うなんて


航平?


それじゃ 意地悪なんかできないよ……

 


航平の笑顔が崩れて泣きそうな顔になる。


美月は切なそうに微笑み返すと 航平の頬を両手で包み込んだ。


涙がこぼれないうちに…航平は美月の上に静かに体を重ねた……。

 

 

 



 


ホテルのカフェで 二人は遅めの朝食を取っていた。

美月は熱いミルクティーを一口飲むと はぁ~っと小さく息を吐いた。


「疲れた?」

向かい側に座っている航平が悪戯っぽく笑った。

たちまち美月の顔が真っ赤になる。


「だっ、大丈夫よ」 …誰のせいだと思ってるのー!


「そう?」

航平は涼しそうな顔をすると頬杖をつきながら美月を見つめる。

息苦しくなった美月は慌てて視線をそらす。


うう、そんな目で見ないでよ

航平にそんな風に見つめられると どうしたらいいかわからなくなる

昨夜、いえ 今朝だって航平がそんな真剣な顔するから つい…

気がついたら 何度も抱き合って……

航平ったら あんな優しそうな顔してるのに信じられないくらい激しいんだもの

あなた 本当に あの純粋で可愛い航平なの…?

…わたし 体がとろけちゃうかも…

 

「…若いってすごいことよね……」


思わず呟いた美月を見て 航平は声を出して笑ってしまった。


「何、それ?」


「え? …あ、航平はやっぱり若いなーってことよ。
 全然、疲れたように見えないんだもの」

…あ~あ、やっぱり5歳の年の差を感じちゃうわ


「違うよ 美月ちゃん」


「え?」


「ぼくが元気なのは 昨夜ぐっすり眠ったからだよ」


「え」


「誰かさんのせいで 僕はホテルに一人残されて
 自棄酒して寝るしかなかったんだ。
 だから体力は有り余ってる……」


「……」


「美月ちゃん? どうしたの?顔が赤いよ」

天使のように微笑む航平。

「可愛いな 美月ちゃんは」


この子は…! 
もしかして、わたしをからかって楽しんでるの???

「航平!」  

 

……え…?


すっと…思わずとがめそうになった美月の方へ航平の手が伸びてきた。

そして その大きな手は美月の髪に優しく触れる。

何度も何度も 長い指がいとおしそうに美月を撫でる。


「…航平…」


「…すごく嬉しかったんだ」


「え……」


「美月ちゃんの気持ちがわかったから…すごく嬉しくて
 だから幸せで…ますます元気になったんだ」


「…航平…」


美月はぼんやりと航平を見る。

見つめ返す 航平の綺麗な黒い瞳。

ゆっくりと目を閉じた美月の体を 心地よい疲労感が優しく包む。


綺麗だ 美月ちゃん  …航平が呟く。
 

美月は まるで羽が生えたように
体がふわふわと軽くなっていくような気がしていた。

 

 

 

「航平先輩!」

「やだ! ホントだ~!」


静かなざわめきの中、突然 かん高い声が辺りに響き渡った。

驚いた航平が顔を上げる。

見ると いつの間に来たのか いかにも女子大生とわかる女の子が二人
興奮した顔でテーブルの傍に立っていた。

同じ大学の後輩である彼女たちの顔には見覚えがあった。


「こんな所で先輩に会えるなんて!」

「嬉しいですー!」

きゃあっと騒ぐ彼女たちを見て 航平は困ったように笑った。


「今ね、パーティーからの帰りで このホテルの前を通りかかって
 似てる人がいるな~って思って確かめに来たんです」

「やっぱり先輩は目立つのよね!」

「そうよ、どんなに遠くからでも… …えっと あの…」


やっと、その時 航平と一緒にいる美月の存在に気づいた二人は
目をパチパチさせながら美月と航平を見た。

「やだ、…先輩 お一人じゃなかったんですね」

「……すみません!  えっと、あの もしかしてお姉さまですか?」

 

「………」

一瞬、言葉を失う美月。


こんな時に何と言えばいいのかしら?

明らかに航平より若い女の子達の前で わたしはやっぱり“お姉さん”なのね

航平と付き合うっていうことは これからも 
これと同じような場面に出会うかもしれないって覚悟することなの?

 


「違うよ。この人は僕の大切な人なんだ」


え…?


黙ってしまった美月の代わりに口を開いたのは航平だった。


「ずっと片思いだったんだ…
 でも… やっと 気持ちを受け入れてもらえて 今は一緒にいてくれる。
 まるでクリスマスの奇跡みたいで… すごいだろう?」

航平はそう言うとにっこり微笑んだ。

ふわふわと 幸せそうな笑顔が花開くように広がっていく。


「え?」
「……」

彼女達ははっとして…そして なぜか赤くなる。


何だー! そうだったんですかー?

もう、先輩ったら ホントに嬉しそう!

わかりましたー!お邪魔みたいだから
あたしたちは退散しますね! 

すみません お姉さんなんて言って…
あの ホントはとてもお似合いだと……
お幸せにーー!


航平の後輩たちは賑やかに手を振りながら去って行った。


しばらく唖然と その後姿を見ていた美月は
ゆっくりと口元をほころばせた。

 

…ああ そうね 航平はそんな子だった

その笑顔は周囲を春の陽だまりのように暖かくする

それは ずっと前から航平だけが使える魔法みたいなもの

 

 

凍てつくように寒いクリスマスの朝


穏やかな航平の温もりに包まれて 美月は泣きたくなるほど幸せだった……。























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