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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
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遠距離恋愛
「抱きしめたい」の続編。                                                           甘くて切ない三角関係に また新しいメンバーが加わって…
No 23 HIT数 5017
日付 2010/01/05 ハンドルネーム aoi32
タイトル 遠距離恋愛 -21(終)- 最愛 後編
本文




-21(終)- 最愛 後編



 

 

12月のある晴れた日曜日、美月と航平にとって 永遠に忘れられない日を迎えた。

 
美月は雪のように真っ白なウエディングドレスを着て鏡の前に座っていた。


幾重にもオーガンジーを重ねたドレスは純白の花びらのように繊細で可憐で 美月の
細いうなじと透き通るように白い肌を よりいっそう、しっとりと艶やかに見せていた。

 


花嫁の控え室の中には、著名な作家や同僚、友人から贈られた色とりどりの花が
飾られ、美しく咲き誇っている。


ドアがノックされ、航平が遠慮がちに中を覗き込んだ。


「…美月ちゃん 準備できた?
 みんなが式の前に写真撮ろうって すごく騒いで…わ…お!」


鏡の前に座っていた美月がゆっくりと振り向くと、航平は驚きの声を上げた。


「…美月ちゃん…すごく綺麗だ…」


「ふふ、ありがと…航平も素敵よ(うう、女のわたしより綺麗かも…)」


部屋に入って来た航平は これほど真っ白なタキシードが似合うのは彼をおいて
他にはいないと思えるほど綺麗で純粋で 部屋に飾ってある花よりも清らかに見えた。


そんな航平がウェディングドレスを着た美月を見て感動している。

 

「…どうしよう…」


「航平?」


「何だかドキドキしてきた…美月ちゃんが眩しすぎて…」


「やあね、航平ったら 何言ってるの…
 もしかして、緊張してる?」


「うん、そうかもしれない」


ぎこちない笑みを浮かべている航平が愛おしくなって美月は思わず微笑んだ。


「…航平…ちょっと、ここに座って」


「あ…うん」


くすくす笑う美月に呼ばれて、航平は美月の傍に座り
また改めて美月の姿をじっと見つめた。


感激して目をうるうるさせた航平は やっといつものような天使の笑顔を浮かべ 
それがまた何とも言えず愛くるしくて、見とれてしまいそうになった美月は
慌ててコホンと咳払いをすると航平の顔を覗き込んだ。


「あのね、航平」


「何? 美月ちゃん」


「今日からわたしは航平の奥さんになるでしょ?」


「…え…? 奥さん?」


「そう、奥さん…」


「美月ちゃんが…僕の…奥さん? …奥さん  いい響きだな…」


「…だから…美月って呼び捨てにしていいのよ」


「え?」


「ほら、美月って呼んでみて」


「え? でも、そんな急には言えないよ」


「そう?」


「そうだよ。…もう20年以上も呼んできたから、今さら変えられないよ。
 今までどおり、美月ちゃんでいいでしょ?」


「でも、おばさんになってもそう呼ぶの?(…今はまだお姉さんよね?)」


「そうだよ、これからもずっと…美月ちゃんは僕の美月ちゃんだから」


航平はにっこり笑うと、まるで大切な宝物を包み込むように
やわらかく美月を抱きしめた。


ふわり…と 純白のウェディングヴェールが航平の頬に触れる。


「…う…ん… じゃあ、わたしがおばあちゃんになっても 航平に
 美月ちゃんって 可愛く呼ばれるように頑張らないといけないわね」


耳元で美月の涼やかな声を聞いた航平は嬉しそうに微笑む。


可愛いな、僕の美月ちゃんは…

 

「…今のままで十分だよ…」


「いつも甘やかしてくれるのね、航平は」


「僕の奥さんになったら もっと甘やかしてあげる」


「航平ったら…」

 

優しくて無邪気で屈託のない航平の愛情に包まれて胸がいっぱいになった美月は 
航平の背中にそっと手を回し 大きな胸の中に頬を寄せた。

 

ありがとう 航平…大好きよ… 


美月ちゃん…それは僕のセリフだよ


二人で もっともっと幸せになろうね


うん…これからも ずっと二人で…

 


ゆっくりと顔を上げた美月は最愛の恋人をじっと見つめた。


航平も愛おしそうに、切なげに、まっすぐに美月を見つめる。

 

子供の頃からずっと 愛し続けてきた大切な宝物 


それが もうすぐ航平だけのものになる……

 

 

 

永遠の愛を誓い、清らかなキスを交わした二人は
参列者から祝福の花びらのブライダルシャワーを浴びながら教会から出てきた。


美月はきらきらと笑い声を上げながらくるっと後ろを向くと 
純白の薔薇のブーケを投げた。


きゃあっと歓声を上げながら一斉に手を伸ばした独身女性の固まりの上を
ぽんっと弾んだかと思うと、ブーケは思わぬ方向に飛んでいった。


それを反射的に、軽く受け止めたのは 作家の夏目小枝子や編集長の森田と
談笑していた永瀬だった。


いつもと違って、フォーマルスーツを見事に着こなした永瀬は薔薇のブーケを
物珍しそうに眺めると、ふっと唇の端を少しだけ上げて微笑んだ。

 

「ナガセー、ワタシにクダサイ!」

艶やかなブルーのドレスを着たジェシカが 鳶色の瞳をキラキラ輝かせ
大騒ぎをしながら駆け寄って来た。


「嫌だ」

永瀬はあっさりと拒否をする。


「エー!」


「…記念に持って帰る」

平然としたまま答える永瀬はなぜか楽しそうだ。


「どうしてデスカーーー!
 ナガセが持っててもしかたないデショ?」


だが、永瀬は不適な笑みを浮かべると面白そうにブーケを美月の方へ掲げた。


あらら…美月は目を丸くして永瀬を見た後、隣にいる航平と顔を見合わせた。

 

「ちょっ、ちょっと美月!あの人は誰なの?
 え? 永瀬聡? あの人が?
 本当にそうなのーーー?

 …わたし、あんたのこと浮気者なんて言って悪かったわ。
 ついフラフラしちゃうのもわかる気が…あっ、あら 違うのよ航平君!
 もちろん、わたしは航平君の味方だから……」

 

半年前に結婚したばかりの麻美が 興奮して不謹慎なことを早口で捲し立てた。


美月は慌てて麻美のお喋りな口を押さえたが 時はすでに遅く
航平は拗ねたように頬を膨らませた。


そして、また永瀬と目が合った航平は 思わず美月の細い腰に手を回し
ぐっと引き寄せて 両腕で美月の後ろからしっかりと抱きしめた。

 

「こっ、航平?」


突然の出来事に美月は驚いて声を上げた。


「…ブーケはあげてもいいけど、美月ちゃんは渡さない」


美月の耳元で航平が囁いた。


「航平ったら…やきもち妬いてるの?」


抱きしめられた腕の中で 美月は恥ずかしそうに頬を染めた。


「…絶対、誰にも渡さないからね」


航平はきっぱり宣言すると 美月をもっときつく抱きしめる。


やっと手に入れた最愛の人を…もう離さない!

 

 

 

…もう、どこにも行かないで…ずっと僕の傍にいて…

 

うん…一生、離さないでね…

 

…愛してる 美月ちゃん…

 

わたしも愛してる…  航平だけを…愛してる……

 

 




 










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