ブロコリ サイトマップ | ご利用ガイド | 会員登録 | メルマガ登録 | 有料会員のご案内 | ログイン
トップ ニュース コンテンツ ショッピング サークル ブログ マイページ
aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
サークルオーナー: aoi32 | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 297 | 開設:2008.03.05 | ランキング:100(3927)| 訪問者:1353331/1890572
開設サークル数: 1238
[お知らせ] 更新のお知らせ
容量 : 30M/100M
メンバー Total :297
Today : 0
書き込み Total : 957
Today : 0
遠距離恋愛
「抱きしめたい」の続編。                                                           甘くて切ない三角関係に また新しいメンバーが加わって…
No 8 HIT数 7620
日付 2009/10/07 ハンドルネーム aoi32
タイトル 遠距離恋愛 -7- 二人
本文






-7- 二人

 

   

 

「え? 航平なの???」

力強く抱きしめられた腕の中で美月は言った。


「そうだよ、美月ちゃん!」

「え?」

「会いたかったーーー!」

「ちょっ…」

美月はその大きな胸と長い腕の持ち主を確かめようとするが
ますますきつく抱きしめられて顔を上げる事もできない。


「美月ちゃーん!」

「くっ、くるしい…」

「ああ、ごめん」


ほんの少しゆるんだ腕から やっと逃れた美月は両手で航平の胸を押して
ゆっくりと見上げて顔を見た。

そこには満面の笑顔を浮かべ熱っぽい眼差しを向ける航平がいた。



「…航平… どうして? どうしてここに?」

「さっき着いて…すぐ、ここに来たんだ」

「え…」

「美月ちゃん会いたくて…」

「航平…」

「どうしても 会いたくなったから」

「…ばかね…航平は…
 そんな無理しなくても…すぐに会えたのに…」

「美月ちゃん」


今にも泣きそうなほど潤んだ瞳で じっと見つめている美月のしっとりとした美しさに
感動して 航平の胸はまたいつものように震える。


「…それでも…今日 会いたかったんだ…」


航平はそう言うと美月の頬を両手で包み込んで そっと唇を重ねた。

そのやわらかな感触に 目を閉じて浸っていた美月だったが
すぐに はっとして航平から離れた。


「だめよ、航平! ここを どこだと…」

「おじさん達ならいないよ」


顔を真っ赤にしている美月を見て 航平はにっこりと微笑んだ。


「うちの親と一緒にカラオケに行くって」

「え?」

「…皆で気を利かしてくれたのかな」

「う…」

「ホント、両親公認の仲っていうのはいいよね」

「……」

「…だから…ね?」

「な、何?」

「美月ちゃんの部屋に行こう!」

「え?」

「ね?」

「へっ、部屋に行って何をするつもり?」

「…今、美月ちゃんが考えてること」

「わっ、わたし そんなこと考えてないわよ!」

「………」


思わず叫んでしまったことに ますます美月の顔は赤く染まっていく。


「いえ、違う! 何も考えてないって言おうと…」

「…だから、隠してもダメだって いつも言ってるでしょ?」

「こ、航平~…」

「隠し事ができない美月ちゃん…大好きだよ」

「………」

「だから、早く行こう」

「はっ、早く…って」


慌てふためく美月の手を掴むと 航平は引っ張りながら歩き出した。


「でも! お父さん達が帰って来るかも!」

「まだ帰って来ないよ」

「え…」

「おばさんが 二人でゆっくり話をしなさいって言ってた…」

「…話…」

「でも、話よりも先にすることがあるよね?」

「!!!」


話より先って???

あのっ、航平ったら そんなに嬉しそうな顔されると…

でもでもーー! ああ、どうすればいいのーーー!!!

 


「美月ちゃん」


航平は名前を呼ぶと いとおしそうに美月の頬を撫でた。

ふわり…と笑顔が浮かんでいる。

その瞬間、大騒ぎをしていた美月の胸の中が穏やかに静まっていく。


「だから 二人だけでゆっくり過ごそうよ」

「……」

「ね?」

「…ゆっくりできないかも」

「え?」


驚いて首を傾げた航平を 美月は悪戯っぽい目で見上げた。

そして 両手を伸ばして航平の首に回すと 今度は美月からキスをした。

いつまでも負けていられない美月の反撃が始まった……。

 

 

 

 

 
…はっ!


突然、目を覚ました美月がゆっくりと顔を横に向けると
綺麗な顎が目の中に入ってきた。

いつものように航平の腕を枕にして眠ってしまったらしい。


こう…へい… 美月はそっとその裸の胸に顔を寄せた。

航平の匂いがするわ…

あったかくて気持ちいい…

ずっとこのままでいたいけど…


美月は静かに起き上がると 航平の顔を覗き込んだ。

天使がぐっすりと眠りこけている…

まさにその表現がぴったりだった。

無防備であどけない寝顔は綺麗で まるで思春期の少年みたいだ。


「…かわいい…」


思わず呟いてしまった美月は 慌てて口を押さえた。


うん、本当にかわいい…可愛すぎるけど  …起こさなきゃ

そろそろ親たちが帰ってくるかもしれない


美月は航平の肩を揺すろうとして手を伸ばしたが
ふと、途中で迷って指が止まる。


「………」 


確か 週末に学会で神戸に行くって言ってたわよね

毎晩遅くまでレポートを仕上げて 睡眠時間も少ないはずだわ

それなのに 無理して京都から新幹線に乗って会いに来た航平…


「………」


う~ん、ちょっとお母さんたちの反応が恐ろしいけど

きっと 何とかなるわよね

 


美月は 航平を起こさないようにそっと起き上がると
彼の剥き出しの肩が冷えないように上掛けをかけた。

そして、ベッドから静かに下りると
名残惜しそうに もう一度、航平の寝顔を覗き込んだ。


…今度こそ ゆっくり休んで…


美月はやわらかく微笑むと たっぷりと愛情をこめて航平の額にキスをした……。

 

 


シャワーを浴びて部屋着に着替えた美月が 居間のソファに座っていると
両親が帰って来た。


「…お帰りなさーい!
 カラオケはどうだった?楽しかった?」

美月は愛想笑いをしながら 母の美沙子に尋ねた。


「楽しかったわ~!
 孝子さんと二人でピンクレディーとかキャンディーズなんか
 歌っちゃったわよ!ちゃんと振りも付けてね。
 あとは百恵ちゃんと聖子ちゃん…孝子さんはテレサ・テンが…
 …ねえ、美月?
 玄関に航平君の靴があったけど…?」

はしゃいでいた美沙子が ふと思い出したのか核心を突いてきた。

ドキン!っとする美月。

適当にごまかそうと思っていたが所詮無理のようだった。


「え、あの、それは…えっと」

美月がまごまごしていると、父の亮一がゴホンと咳払いをした。


「あのね、航平は その…今、眠ってるの。
 毎晩レポート書いてて、あまり寝てないから疲れてるみたい。
 (…疲れたのは他にも理由があるんだけど…)

 …熟睡してるから、起こすのもかわいそうだと思って…」


美月はもじもじしながら両親に言い訳をする。


うう、恥ずかしいーーー!

絶対…ばれてるわよね、これはーーー!

 


「……」

「……」


美月の父と母は困惑して顔を見合わせた。


「…美月の部屋で寝ちゃったってことよね?」

「う、うん…そうね…  …」


引きつった笑顔を浮かべる美月を複雑そうに見つめる両親。

数秒の沈黙の後、最初に口を開いたのは父の亮一だった。


「ま、まあ、そう言うことなら仕方がない。
 そのまま寝かせてあげなさい」

「そっ、そうね!
 航平君なら泊めてあげればいいわ。
 美月は…下の部屋で寝ればいいわね」

「う、うん そうする…」

3人ともなぜか早口で捲し立てると それぞれぎこちなく笑った……。

 

 

 

 




…美月ちゃん、美月ちゃん

 
名前を呼ばれ、肩を揺らされて 美月はゆっくりと目を開けた。

ぼんやりした視界の中に航平の顔が見えた。


「…こう…へい?」

「そうだよ …美月ちゃん起きて」

「………」


まだ美月がぼうっとしてるので 航平は美月の腕を掴んで
身体を起こしてあげ、いつものように美月の乱れた髪を優しく撫で付けた。


「…航平…二階で寝てたんじゃ…」


やっと目が覚めた美月は それまでの事を思い出していた。

昨夜 航平に部屋のベッドを占領された美月は 時々、客間として使っている
和室に布団を敷いて寝たのだった。

枕元に置いた時計を見ると 朝の6時を過ぎたところだった。


「うん、ごめん 美月ちゃん。
 …すっかり眠り込んじゃって…」

畳の上できちんと正座した航平は 照れたように頭をかいた。 


「疲れたんでしょ。 よく眠れた?」

「うん、久しぶりに熟睡した」


航平はにっこり笑うと眩しそうに美月を見た。


「ばかね、そんなに無理しなくていいのに。
 レポートは大丈夫なの?」

「うん、今日戻ってやれば完成するから」

「それならいいけど」

「美月ちゃんと直接会って話がしたかったんだ」

「話?」

「…ほら…この前の電話のこと」

「ああ、あれね…」

 


 “僕はもう美月ちゃんを離さない

  だから よそ見なんて許さない

  美月ちゃんは僕のものだ”

 


すぐに思い当たった様子の美月を見て 航平はきゅっと唇を噛んだ。

「…やっぱり…驚いたよね?」

「え? あ、ううん そんなことないわよ」


沈んだ顔をしている航平に気づいて 美月は安心させるように笑いかけた。


「それは ちょっとは驚いたけど…
 航平もやっぱり男なんだなって思った。
 もう、可愛い~なんて言っちゃいけないような気がしてきたわ」

「そうだよ、いつまでも子供扱いしないで」

「ふふ、そうやって口を尖らして拗ねるところは
 まだ子供みたいで可愛いのにね」

「美月ちゃん!」

「航平」

「うん?」

「…話って、それだけじゃないでしょ?」

「え?」

「…本当は 永瀬先生のことを聞きたいんでしょう?」

「美月ちゃん」

「先生が帰国したことは 鎌倉のお店で会うまで知らなかったの。
 …久しぶりに会って…懐かしくて…それで、色々 話をして…
 またうちの出版社で書いてくださいねって交渉したりして…
 わたし…永瀬先生の書く小説が好きなの…だから また書いて欲しいなって
 読めたら嬉しいなって…それだけなのよ」

「うん、わかってる」

「航平」

「頭の中ではわかってるんだ。
 美月ちゃんは僕のことを好きでいてくれるって
 もう揺れたりしないって…信じてるんだ。
 でも、離れてるから…会えないから …不安だったんだ…」

「じゃあ、安心した?」

「え?」

「わたしの顔を見て安心した?」

「……」

「航平は わたしのことを嘘をつくのが下手だって言ったわよね?」
 
「…うん」

「じゃあ、今は嘘ついてないって わかるでしょ?」

「うん、わかる」

「良かった」

「本当は 昨夜、美月ちゃんの顔を見て すぐに安心したんだ。
 美月ちゃんは大丈夫だって」

「航平」

「安心したらすごく嬉しくなって…
 驚いている美月ちゃんの顔を見たら ものすごく可愛くて
 喜んでくれてるってわかって…そしたら我慢できなくなって…」

「きゃー、航平!
 もうそれ以上は言わなくていい!」


美月は真っ赤になって航平の口を押さえた。
  

「もうっ、誰かに聞かれたらどうするの」


慌てている美月を見て航平はくすくすと笑い出した。


「美月ちゃんって、すごく大胆な時と 今みたいに純情な時があるね」

「え?」

「どっちが本当の美月ちゃんなんだろう…」

「さあ、どうかしらね?」


美月は悪戯っぽい瞳を向けると口元をほころばせた。


「航平が元気な時 わたしは航平を頼って寄り掛かってしまうし
 航平が元気がない時は大胆になって…でも、優しくしてあげてるでしょ?」

「…うん」

航平はくすっと笑うとうつむいた。

そして少し経つとゆっくりと顔を上げた。

まるで何か楽しいことを思いついたように目が輝いている。


「…美月ちゃん」

「なあに?」

「僕はまた元気じゃなくなってきたような気がする」

「え?」


どう見ても力いっぱい元気な航平の笑顔を見て 美月は何かあやしいと
首を傾げたが、そんな事には構わずに航平は彼女を覗き込んだ。 


「こんな時は優しくしてくれるんだよね」

「……」

「ね?」

「もう、航平ったら」

「そうだよね?」

「…何をして欲しいの?」

「…そこに頭を乗せてもいい?」

「え…?」


航平はわくわくした顔で 座っている美月の膝元を指差した。


「いいよね?」

「…航平ったら」


子供の頃から変わらない得意の上目遣いで哀願してくる航平のお願いを
断れない美月は 呆れたように笑った。


「…もう、しょうがないわね」

「やった!」

「言っておくけど、わたし今まで膝枕をしてあげたことなんてないのよ。
 だからありがたく思いなさい」

「うん」

「じゃあ、はい」


美月はそう言うと自分の膝をぽんぽんと叩いた。

航平はゆっくりと寝転がると美月の膝の上に頭を乗せた。

仰向けのまま体をずらして いちばん心地良いポジションを探すと
嬉しくて思わず笑ってしまう。

美月も笑みを浮かべながら航平の髪をゆっくりと撫でると
航平は気持ちよさそうに目を閉じた。


…やっぱり可愛いね、航平は……


美月は 航平のやわらかな髪に指を入れて巻きつけたり
何度も何度も頭を撫でながら微笑みかけた。

 


航平とこうして一緒にいるだけで暖かな陽だまりにいるみたい

このままずっと 穏やかに優しい気持ちのまま暮らしていけたら

それって…すごく幸せなことよね


ずっと二人で…ね?

 

 

「…航平…」

 
涼やかな…美月の声が名前を呼ぶ。

 

「うん?」


幸せそうに…目を閉じたまま航平が答える。

 

 

 

そして…深い愛情に満ちた声で美月が囁いた。

 

「…わたしを…  わたしを…航平の奥さんにして……」













 


前の書き込み 遠距離恋愛 -8- 約束
次の書き込み 遠距離恋愛 -6- 面影
 
 
 

IMX