ブロコリ サイトマップ | ご利用ガイド | 会員登録 | メルマガ登録 | 有料会員のご案内 | ログイン
トップ ニュース コンテンツ ショッピング サークル ブログ マイページ
aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
サークルオーナー: aoi32 | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 297 | 開設:2008.03.05 | ランキング:100(3927)| 訪問者:1385893/1923134
開設サークル数: 1238
[お知らせ] 更新のお知らせ
容量 : 30M/100M
メンバー Total :297
Today : 0
書き込み Total : 957
Today : 0
ホテリアー創作
妄想爆走!ホテリアー二次創作。                                                     大好きなドンヒョクと 可愛いジニョンの物語…
No 80 HIT数 8230
日付 2010/06/18 ハンドルネーム aoi32
タイトル 雨の降る風景  ― ドライブに連れてって ― 前編
本文 このお話は2006年の6月に 創作一周年記念として
ホテリアーファンにUPしたものです。
ということは今年で5年になるんですね。
相変わらずの拙い創作を読んでくださってありがとうございます。
これからもよろしくお願いします^^  


雨の降る風景  ― ドライブに連れてって ― 前編

 



雨が降り始めていた。


仕事を終えて社員通用口から出たジニョンは 雨が落ちてくる暗い空を見上げた。

 


…タクシーで帰ろうかしら…


ジニョンはそう呟くと水色の傘を広げた。


そして ホテルの正面玄関の方へ歩き出した。


空からの雨が傘に降りそそぎ 透明の粒になって落ちてくる。


ジニョンは 思い切り深呼吸をする。


彼女は 雨の匂いが好きだった。


乾いた土が濡れて匂いたつ。


紫陽花の葉が濡れて 夜のライトの下で艶やかに光り みずみずしい緑の匂いを放つ。

 


その時 一台の車がジニョンの近くに滑り込んできて止まった。


車のウィンドーが下りて ハン・テジュンが顔を出した。


「ジニョン」


「あら、テジュンさん」


「これから帰るのか? 家まで送ってやるよ」


「え? でも…」


「いいから。 ちょうど これから行く所があって、おまえの家は通り道なんだ」


「でも…」


「ふん、またドンヒョクの事を気にしてるのか?」


「そっ、そんなこと!」  …実はそうだったりして…


「だったら 乗れ。 タクシーは混んでるぞ」


テジュンに言われて ジニョンは小さく頷いた。

 

 

 

 

 


テジュンの車の助手席に座って ジニョンはシートベルトを締め
シートに少し深く身を沈めた。


いつもと違う車の中 足を曲げた時の間隔 シートの感触 そして…香り… 慣れない空気。


ジニョンは何となく落ち着かなかった。


久しぶりに テジュンが運転してる姿を見た。


ドンヒョクとは違う ハンドルを持つ手の形。


バックミラーを見るタイミング。


そして ジニョンに話しかける時の視線の行方。


テジュンは ジニョンを見ることなく 前を見たまま話す。 

 


「最近、どうだ? ドンヒョクは」


「元気よ。 でも、相変わらず忙しいみたい」


「あいつが暇だっていう時はないな」

テジュンは苦笑する。


ホテル以外の場所で、仕事以外の話となると ドンヒョクの話題になってしまうのが
可笑しかった。

 


「スターライトのピアノマンの話題で持ちきりだな」


「………」

 


ジニョンの誕生日の翌日には イ・スンジョンによって ホテル中に広まってしまった
ドンヒョクのピアノの弾き語りのプレゼントの話。


それが よりドラマティックに、もっとロマンティックに 華やかに伝えられていた。

 


「よくやるよな、ドンヒョクも。俺には真似できないな。
 完璧主義のあいつの事だから、そのうちピアノを手に入れたりして。…はは… まさかな」


「もう、家にあるわ」


「え?」


「あれからすぐ、注文したみたい」


「………」


「…彼は シン・ドンヒョクなのよ、テジュンさん」

ジニョンは穏やかに笑って テジュンに言った。


テジュンは小さく溜息をつく。


「…幸せ…なんだな、ソ・ジニョン…」


「ええ」

ジニョンは短く答え、その後 言葉につまる。

 


今、隣にいる ハン・テジュン。…昔 好きだった人…


とても好きで、愛していて 自分からプロポーズまでした人


別れた後でも忘れられなくて、ずっと 心の片隅で思い続けた人…

   
…でも 今は…?


その人の横顔を見ても 心の痛みを感じる事はない


月日が経って、ドンヒョクと一緒に暮らして 彼と過ごす時間の方がずっと多くなって


もう、失った恋が影を落とす事はない…

 


…なぜ 今日に限って こんなことを思い出すの?


雨だから? こんな雨の日には 過去の切ない恋を思い出すの?

 

 

 


ジニョンが思いにふけっていると 車は大通りからそれて右折し
なだらかな坂道を登り始めた。


すると、前方の高台に大きな建物が見えてきた。

 


「え? どこへ行くの?」

ジニョンは 自宅へ向かう道とは違うことに気がついた。


「…ちょっと寄り道…」

テジュンは軽く答える。


「え?」


車はレンガ造りの門を入って行った。


ジニョンはフロントガラスから見える建物を見て驚いた。

 


“ソウル グランド ヒルトンホテル”


…え? ホテル?

 

訳がわからないまま、戸惑っているジニョンを気にも留めず
テジュンは黙ったままハンドルを握っている。


車は外のパーキングに滑り込み、ゆっくりと止まった。


テジュンは ジニョンを見て真剣な顔で言った。

 


「降りてくれ、ジニョン」


「え?」

ジニョンは 驚いてテジュンを見つめた。


「降りて…って …どうして…?」

 


車のワイパーがせわしなく動いている。

 


雨は ますます激しく降り出していた……。

 

 

 


―――――――

 

 

 


自宅の前に止まっている車には 見覚えがあった。


ドンヒョクはゆっくりとブレーキをかけ、少し距離をおいて車を止めた。


そして 固唾を飲んで前方を見つめた。


その車の側には 傘をさしたジニョンが立っていた。


ジニョンは ウインドーの隙間から覗き込むように何かを話している。


そして 車はゆっくりと動き出した。


ジニョンは 車に向かって手を振っていた。


何度も、何度も その車が見えなくなるまで手を振り ずっと見送っていた。


車が去った後でも その場に立ったまま何かを考えているようで 
家の中に入ろうとはしないジニョンだった。

 


…ジニョン… …

 

         
小さく呟いたドンヒョクの声は擦れていた……。

 

 

 


ドンヒョクは 車のワイパーで流れていく雨の雫を見る。


そして、雨でぼやけているジニョンの姿を見る。


眼鏡の奥の彼の目が鋭く光った。

 


ジニョンの近くに車が滑り込んだ。


ドンヒョクが車のウィンドーを下げると ジニョンが驚いて寄って来た。

 


「ドンヒョクさん、お帰りなさい! わたしも今、帰って来たのよ!」

ジニョンが嬉しそうに笑いかける。


ドンヒョクはそれには応えず、ジニョンに言った。


「乗って ジニョン」


「え?」


「早く乗って」

ドンヒョクは無表情のまま言った。


「え? ええ」


ジニョンは 助手席の方に回ると 車に乗り込んだ。


ジニョンの少し濡れた服から 外の空気と雨の匂いがする。

 


「どうしたの、ドンヒョクさん。まだ 家に入らないの? 
 あのね、今日はテジュ…」

 


…突然だった。


ジニョンが言い終わらないうちに ドンヒョクはシートベルトを外し
ジニョンの方へ身を乗り出した。


そして 話をしようとしているジニョンの唇をふさいだ。


予期せぬ出来事に ジニョンは声も出せなかった。


ドンヒョクは そんな事には構わずジニョンの肩を押さえつけ 
強引に唇を合わせてきた。

そして、乱暴にキスを求めてくる。


…高揚した感情を そのままぶつけるような激しいキスだった。


ジニョンは 戸惑いながらも ゆっくりと目を閉じて 
ドンヒョクのキスを受け入れていた。


ジニョンは ドンヒョクのジャケットの脇をぎゅっと握り締める。


そうしていないと体が震えてしまいそうだった。


ジニョンは ドンヒョクの狂おしいまでの熱情のキスに陶酔していった。


ドンヒョクは このままジニョンがどこかへ行ってしまうのではないか…と
訳もなく不安になった。


だから ドンヒョクは ジニョンが消えてしまわないように
力で押さえつけるしかなかった。

 

 

 


…長い、長い口づけの後…


やっと唇を離したドンヒョクを見つめるジニョンの瞳は揺れて、息が僅かに乱れていた。


「ドンヒョクさん…」

ジニョンは ゆっくりと時間をかけてドンヒョクを見つめた。


その澄んだ目は慈愛に満ちていた。


「…ごめん」

ドンヒョクは 静かに言うと目を伏せた。


彼は 大切なジニョンを力で支配した事を後悔していた。


「…何かあったの?」


「………」

ドンヒョクは黙ったまま首を横に振った。


ジニョンは そんなドンヒョクを見ると彼を抱きしめずにはいられない。


心細くて 不安げで 何かに迷っているドンヒョクの目を見ただけで
ジニョンは 彼の全てを包み込んであげたい…と思ってしまう。


ドンヒョクは 自分を抱きしめているジニョンの髪を撫でて 額にキスをした。


「…ジニョン」 


「はい」


「ドライブしようか」


「え?」


「雨の夜のドライブ… 好きだったよね?」


「ええ、そうね。…そうだわ。
 ドンヒョクさん… わたしをドライブに連れてって…」


ジニョンは やわらかく微笑んだ。


ドンヒョクは ジニョンを抱きしめた……。





                      後編につづく…





前の書き込み 雨の降る風景  ― ドライブに連れて...
次の書き込み 男女5人恋物語 -5- (終) ドンヒョクの純情 後編
 
 
 

IMX