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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
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ホテリアー創作
妄想爆走!ホテリアー二次創作。                                                     大好きなドンヒョクと 可愛いジニョンの物語…
No 112 HIT数 8045
日付 2011/01/21 ハンドルネーム aoi32
タイトル 待ってるよ -後編-
本文

待ってるよ -後編-

 

 

ソウルホテルの正面玄関に シルバーの車が滑り込む。

見慣れたその車を ドアマンはにこやかに迎える。


“無事にご帰国ですね”


ドアマンは 緊張感の中にも安心している自分に気がつく。

車のドアが開いて、中からひとりの長身の男が降りてくる。

そして 車の傍にスッと立つ。


「お帰りなさいませ。 …え?」

途中まで言って ドアマンは思わず言葉をなくす。


「すまない。後は頼む」

彼は短く言うと 馴染みのドアマンにいつものように車のキーを渡す。


「は、はい。かしこまりました。」

ドアマンはあわてて答える。


彼は驚いて自分を見ているドアマンの事を気にもせず 颯爽とホテルの
ロビーへと消えて行った……。

 

 

 


最初に気がついて 声をかけてきたのは イ・スンジョンだった。


「まあ! 理事ですの??? まっ、今日はいつもと違うお姿で!
 まあまあ、ぴしっとしたスーツ姿はいつも完璧ですけど そんなラフな感じも
 素敵ですわぁ~! ジーンズもよくお似合いですのね! 脚が長くて… 
 シャツはボタンが二つも外れて、何て言ったらいいのか… あらっ、あたくしったら! 
 ああ、でも 美しいものを見たり聞いたりするのって胎教に良いんですのよ。
 ジニョンは幸せね。毎日、見られて! そうそう、おめでとうございます!
 本当に良かったですわ。ほら、以前 あたくし勝手に勘違いしましたでしょう? 
 気にしてましたの。…ところで その黒のジャケットはどちらのブランドですの?」


いきなりのイ支配人のマシンガントークに ドンヒョクは絶句した。


「いけない、あたくしったら、またお喋りが… ところで、今日は
 どうなさったんですか? 理事はクリスマス休暇中ですの?
 社長とお約束でも?」


「いえ、ちょっと、人を待ってるんです。だから、僕のことは気にせず
 仕事にお戻りください。イ支配人」

やっと答えられたドンヒョクの声は静かに響いた。


「まあ! どなたかとお待ち合わせですの? かしこまりました。
 では、ごゆっくりなさって。 あたくしは失礼しますわ」

スンジョンは心残りだったが、これ以上立ち入って冷たくされるのも
嫌だと思い お辞儀をしてその場を去ろうとした。


「イ支配人」

思いがけず、ドンヒョクが彼女を呼び止めた。


「はい?」


「ジニョンの事をよろしくお願いします。彼女にとっては初めての
 ことなので、いろいろ助言してやってください」


その時のスンジョンの驚きはすごいものだった。

彼女は 大喜びで叫んだ。


「まあ!何てこと! 理事があたくしに?ええ、わかりました!
 ジニョンのことは、あたくしにお任せください! 今はつわりが
 苦しい時期ですもの、助けてあげますわ。大丈夫。今のあたくしみたいに
 安定期に入れば、以前のような元気なジニョンに戻りますわ!」


「ありがとう、イ支配人」

スンジョンの言葉を聞いて ドンヒョクはやわらかく微笑んだ。


その微笑を見た彼女は 目眩とともに気絶しそうになった。

 

 

 


いきなり疲れたドンヒョクはロビーのソファに座っていた。

次に現れたのは オ総支配人だった。


「これはこれは、理事。 いつNYからお帰りですか?」


「昨夜遅くです」


「そうですか。ソ支配人の妊娠がわかったのも昨日ですから これは、素晴らしい
 偶然ですな。理事、おめでとうございます」


「ありがとうございます。早速、病院のリストを使わせていただいたようで
 助かりました」


「いやあ。お役に立てて良かった。理事もついに父親になるんですね」


「実は、まだ実感がわかなくて… 戸惑っているんです」


「はは… 最初は皆、そんなものです。生まれた子供の顔を見た瞬間に 
 ああ、父親になったんだと実感するんですよ」


「そうなんですか」

ドンヒョクは静かに頷いた。


「それから…」


男二人の会話は静かに続いていった。

 

 

 


「ドンヒョクさん!」


制服に着替えたジニョンが驚きながらロビーを走ってくる。

ドンヒョクは慌ててジニョンに駆け寄り彼女を止める。


「ジニョン。走っちゃいけないって言っただろう? 慌てて転んだら
 どうするんだ」

ドンヒョクは少し怒ったようにジニョンを見つめる。


「あ、ああ、そうだったわ。ごめんなさい。つい、あわててしまって…
 ドンヒョクさんがロビーにいるって 先輩から聞いて。どうしたの?
 家に帰ったかと思ったのに。約束があるなんて、さっきは何も言って
 なかったわよね? 誰を待ってるの?」


「うん、とても大切な人を待ってるんだ」


「え? 大切な人って、誰?」


「後でわかるよ」

ドンヒョクは それ以上は何も言わず ジニョンに優しく笑いかけた。

ジニョンは不思議そうな顔をしてドンヒョクを見上げた。

そして、はっと気がついた。


「そうだわ! これをどうにかしないと!」

突然、声をあげたジニョンは ドンヒョクのシャツのボタンを留め始めた。


「え?」


「イ先輩が興奮してたのよ。“あなたの理事のシャツのボタンが二つも外れて
 すごいセクシーだったわ! ちらっと胸が見えたりして… 胎教、胎教!”なんて
 訳のわからないこと言って。もう、だめじゃないドンヒョクさんったら。
 ここは家じゃないのよ」

ジニョンも次第に興奮してくる。


「………」

ドンヒョクが困ったようにジニョンを見た時だった。


「あ!!! ボス~~!! ジニョンさ~ん!!!」

その声だけでわかる男が現れた。

ドンヒョクの会社の社員で、今はNY支社勤務だが この二週間はクリスマス休暇で
ソウルに戻っている カン・レウォンだった。

そして 走り寄る彼の後から歩いてきたのはジェニーだった。


「…また来た」

ドンヒョクは絶望的になり、そして不審に思う。


…何だ? このツーショットは?

なぜ、ジェニーがこいつと一緒なんだ?


「ジニョンさ~ん、会いたかったです~!!」


いつものように レウォンが両手を広げて ジニョンに駆け寄ってくる。

そして 同じように ドンヒョクはレウォンの前に立ちはだかる。


「両親の所へ帰ったんじゃないのか?」

ドンヒョクは冷たく言い放す。


「あ、そうしようと思ってたんですけど ジェニーさんからジニョンさんのことを
 聞いたものですから! おめでとうございます! …でもっ、俺は大ショックです!
 ついに、ジニョンさんもご懐妊なんて~! ああ、俺の青春もこれで終わった~!」

レウォンは大げさに両手で顔を覆った。


「………」

ドンヒョクは呆れて何も言えない。


「兄さん!」

ジェニーは レウォンのことは無視してドンヒョクに抱きついた。

「お帰りなさい! それから、おめでとう! 良かったね!」


「ありがとう、ジェニー」

ドンヒョクは笑いながら妹を抱きしめた。


レウォンは 仲の良い兄妹を笑顔で見ていたが 突然、真剣な顔をして言った。

「ボス、俺と勝負してください!」


「は?」


「これで本当にジニョンさんのことは諦めますから。最後に俺と勝負して
 もし俺が勝ったら 一度でいいから、ジニョンさんとデートさせてください!」


「断る」

即答するドンヒョク。


「あ、もしかしてボス… 自信がないんですか?」

怖いものなど この世に存在しないレウォンは言ってしまった。


「…誰に言ってる?」

ドンヒョクの冷たい目が氷のように光る。


「じゃあ、勝負しましょう! ボスの得意な水泳でいいですから!
 さあ、行きますよ!」

レウォンが明るい笑顔とともに叫んだ。


「…ほんとに懲りない人ね」

ジェニーが呟いた。


ジニョンは目を丸くして二人を見ていた……。

 

 

 

 

 


「…ふん、口ほどにもない男だ」

ドンヒョクはそう呟くとコーヒーを飲んだ。

彼は まだ少し濡れている髪を無造作にかきあげた。

額に前髪がはらりと落ちてくる。

 


…思わず本気になってしまった… レウォン相手に大人げない…

 


あっけなくレウォンを倒したドンヒョクは ホテル内のカフェに来ていた。

 


ずっとロビーにいるのも退屈だし…

まあ、いい… 夜遅くにならないと 待ち人は来ない

本人は気づいてないみたいだが…


ドンヒョクは 不思議そうな顔をしたジニョンを思い出して やわらかく微笑んだ。

 


「兄さん、楽しそうね」

その時、ジェニーが現れた。


「ああ、ジェニー。 まだ、泳いでたんじゃなかったのか?」


「うん。でもね、今はレウォンさんを 一人にしてあげようかと思って」


「え?」


「仰向けのまま一人で水に浮いてたわ。でも、時々笑ってるの。変よね?
 彼が言う、甘酸っぱい青春の決別ってものなのかもね~」


「………」

ドンヒョクは ジェニーのレウォンに対する何気ない思いやりに首を傾げた。


「ジェニー、もしかしてレウォンと何か…」


「兄さん!」

ドンヒョクの言葉を遮るように、ジェニーが叫んだ。


「え?」


「実は、あそこにいる女の子達が、兄さんと一緒にお茶したいって言ってるの。
 みんな、このホテルのスタッフなのよ」


「………」

突然の事に ドンヒョクは少し離れた席にいる女の子達を見た。


ジェニーと同い年位の彼女達4人は ドンヒョクと目が合って きゃ~!!っと
悲鳴に近い声をあげた。


ドンヒョクはびくっとした。


「みんな友達なの。ね、いいでしょう?兄さん」

ジェニーは手を合わせてドンヒョクを見上げた。


「………」

この必殺技はジニョンに教わったものに違いないと ドンヒョクは苦笑いをした。

 

ジェニー合図すると 彼女達はきゃあきゃあ言いながら寄って来て あっという間に
ドンヒョクを取り囲んだ。


「こ、こんにちは、シン理事!わたし、客室係のハン・ウニョンです。
 一度、理事とお話したかったんですけど、ほら、いつも 理事ってスーツをびしっと
 着てて、何だか怖そうで… でも、今日は ふわふわ~!って感じで素敵です~!
 きゃ~どうしよう、ジェニー 言っちゃった!」


「同じく、客室係のイ・ヒョンジュです。シン理事もこんな服を着るのね~って
 わたしたち感心してたんです。あの・・ほんとうにお似合いです~!」


「コンシェルジュのハ・ソヨンです。あの、わたし… いつも理事のこと 柱の陰から
 見てて、理事って隙がなくて颯爽としてて… ああ、どうしよう~ 理事には
 ソ支配人がいるのに~!!!」


「何言ってるのよ、ソヨンってば! あ、わたし、キム・ヒジンです!
 レストランでフロアー担当してます。あの… ソ支配人みたいに ドンヒョクさんと
 お呼びしてもいいですか?」


「きゃ~!!!」
「何言ってるの!」
「ヒジンのバカ!!!」
「何てこと言うの~???」


「…いいですよ。 僕もその方が返事をしやすいし ジェニーの友達なら、尚更だ」

ドンヒョクは静かに言うとやわらかい笑みを浮かべた。


ジェニーは え?っという顔をした。


カフェ内に彼女たちの興奮した叫び声が響き渡った。

 

 

 

 

 


再び ソウルホテルのロビー

 


ドンヒョクは長い脚を組んで ソファに座っていた。

すでに 午後10時を過ぎていた。

彼は心地よい疲労感を感じていた。

あの後、ハン・テジュンがにこやかに寄ってきた。

そして 「どうせ、待ち人は夜にならないと来ないんだろう? フォーシーズンの
春の新作メニューを一緒に試食してくれ」と頼まれた。


「生まれてくる子供は 外見がドンヒョクで 中身はジニョンだったら最強だな。
 でも それが逆だったら… ああ、考えただけでも恐ろしい……」

テジュンはニヤッと笑った。


 

 

 

ドンヒョクにとって退屈する暇もないくらい 忙しい一日だった。

遅番のジニョンを送って来た時 ふと思いついたのが始まりだった。

 


“流産の多い期間なので負担の少ない生活を…” 

  
今朝、読んだ本のその部分が頭に残っていた。

心配だったから ここで見守っている事にした。

しかし、今日一日 ソウルホテルで過ごしてわかった事があった。

 


ジニョンは守られている… 世話好きで心優しい、ここのホテリアー達に。

 


ジニョンが このホテルを大切に思う気持ちがわかるよ

だから、君は毎日ここに来るんだね

ジニョンのおかげで 僕も楽しかったよ

意外といいものだね、こうして過ごすのも…

気がついたら いつも そんなホテリアー達に 囲まれていた……

 

 

 


「ドンヒョクさん!」


やっと ドンヒョクが待ちわびた大切な人が来た。

制服から明るいオレンジ色のワンピースに着替え 髪をふわりと下ろした
ジニョンが立っている。

ソウルホテルのソ支配人から 彼だけのジニョンに変わった時だった。


「あのね、 何だかみんなが早く帰れってうるさいの。ドンヒョクさんを連れて
 早く帰れって。 でも、あなたは誰かを待ってるんでしょう?
 わたし、先に帰ってましょうか?」


「………」

 


世話好きで、心優しくて、お喋りで、気が利くホテリアー達


君たちのサービスは この鈍感なジニョンには通用しないらしい…

 


「ドンヒョクさん?」

ジニョンが困ったような顔をする。

 


…ばかだね、ジニョンは…

僕が こんなに長い時間待つのは ジニョンだけだって まだ わからないのかい?

もう少し 自惚れてもいいんじゃないか…?

 


「大丈夫だよ、ジニョン。大切な人は もう来てくれたから」


「え?」


「待ってたよ、ジニョン」


ドンヒョクは そう言うとジニョンをふわっと抱きしめた。

 

 
ソウルホテルのロビーの真ん中で 再び 二人… 三人は ひとつになった……。  

 

 

 


                        END









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