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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
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ホテリアー創作
妄想爆走!ホテリアー二次創作。                                                     大好きなドンヒョクと 可愛いジニョンの物語…
No 35 HIT数 7891
日付 2010/01/19 ハンドルネーム aoi32
タイトル 僕だけのヒロイン ― 彼女に似た人 ―
本文

僕だけのヒロイン ― 彼女に似た人 ―

 


 


今は秋。


ある晴れた日曜日。


どこまでもぬけるような青い空の下。


黄色に色づき始めた樹々に囲まれ、さわさわと揺れる葉の隙間からこぼれる
まぶしい光がテラスのテーブルの上で遊んでいる。


公園通りにある、オープンカフェ “モン・フォレ”


そこに、一人の長身の男が入って来る。


彼は迷う事なく真直ぐ進み、いつもの一番奥のテーブルにつく。

 


「こんにちは、ドンヒョクさん。今日はお一人ですか?」

カフェの店員、イ・ミナが声をかけた。


「うん。 ジニョンは今、美容院に行ってるよ」

ドンヒョクは少し笑って言った。


「わあ。 もしかして、そこのビューティーサロンですか?」

ミナが指で方向を指しながら言った。


「うん」


「あのお店、すごい有名なんですよ。
 芸能人もけっこう来てるみたい」


「よく知らないけど、ここに住んでから彼女は
 そこに行くようになったみたいだ」


「いいなあ、わたしも行ってみたい。
 でも、少し高いんですよね。
 オーナーにお給料上げてもらわないと行けないわ」


ミナの言葉にドンヒョクはふっと笑った。


「あ、すみません。お喋りばかりして。いつものコーヒーでいいですか?」


「うん」


「かしこまりました。
 終わったらジニョンさんも来ます?
 あ、やっぱり? いいなあ~、待ち合わせなんですね!」


ミナは明るく言うと店内に入って行った。

 

 

 


運ばれて来たコーヒーを一口飲むと、ドンヒョクはふと空を見上げた。


どこまでもぬけるような青空と木漏れ日。


おだやかな休日の午後。

 


思えば、こんなゆったりとした時間を過ごすなんて
以前の僕には考えられなかったな…


アメリカにいた頃は毎日が緊張の連続だった


他人に頼らず自分一人だけで生きていかなければならなかった


生か死か…


そんなニューヨークの証券市場での戦いに疲れ果てていた……


…それが 今の僕はどうだ?


休日の午後にカフェに入ってコーヒーを飲み、
本を読みながら、ゆっくりと妻が来るのを待つ


あの頃の僕を知ってる人物がこれを見たら、どんな顔をするだろう


何しろ こんなふうに無駄な時間を過ごしている人間を
最も軽蔑してたのは、まぎれもなく僕自身だからだ…

 


ドンヒョクはふっと笑うと、持ってきた本を開いた。


そして 見慣れない栞がはさんであるのに気づいた。


それを手に取って見てみる。


「!!!」


…まったく… ジニョン、君って人は…


ドンヒョクはクスクス笑い出した。


その時、突然、風が吹いてきて、その栞が飛ばされた。


そして、同じ時にカフェに入って来た一人の女性の足元に落ちた。


黒いブーツをはいた彼女はその栞を拾い上げ、何気なく見た。


「…これは…」


そして、彼女はその栞の落とし主の方を見て、サングラスを外す。。


ドンヒョクも何気なく彼女を見た。


驚クドンヒョク。

 


「…ジニョン…?」


思わず声を上げてしまったドンヒョク。


…いや、別人だ …でも 何て似てるんだ?


ドンヒョクは驚きの表情を隠せないまま、彼女を見つめた・・。

 

 

 


「…男性が、誘う時に使う手口かと思ったけど、違うみたいね。
 そんなに似てるのかしら?」

彼女が華やかで輝くような笑顔を向けた。


ドンヒョクは戸惑いながら少し笑い、改めて彼女の顔を見つめる。


テーブルの向かい側に座った彼女はコーヒーを飲んだ。

 


…それにしても、似ている

でも よく見ると違う

黒いワンピースを着ている彼女は

ジニョンよりも長い髪 

ジニョンより…少し年上?

ぬけるような白い肌と明るいローズ色の唇


…ジニョンよりも華やかな印象…

 


ドンヒョクは自分の不思議な感覚に戸惑っていた。


「…あまり見つめられると 恥ずかしいわ」

彼女が微笑んだ。


「あ、失礼。 …あなたが…その、本当によく似てるので…」

ドンヒョクはめずらしく動揺している。


「…それは その栞の彼女?」

彼女が本の上に目を向けた。


“くまのプーさん”のイラストとともに、メッセージが書かれた栞。


“いつも難しい本ばかり読んでないで、たまには外の景色も見てね”

 


「かわいいわね。そこはわたしと違うかも」


「…そんなことはないでしょう」


「なぜ?」


「あなたが彼女に似てるから…」


「…性格も似てると…?」

彼女はドンヒョクを覗き込むように見た。


ドンヒョクはふっと笑う。


彼女はまた微笑むとコーヒーを飲んだ。

 


「…じゃあ、性格も似てるという事にして…ひとつ質問してもいいかしら?」


「何ですか?」


「…あなたは 何か大切なものを手に入れるために
 他の全てを失った事がある?」


「………」

唐突な彼女の言葉に、一瞬ドンヒョクは戸惑った。


「ごめんなさい。 初対面の人にする質問じゃないわね。
 でも、何だかあなたには その、親近感?みたいなものを感じて。
 あなたは その彼女のために何か失ったものはないのかしら?」

彼女は大きな黒い瞳でまっすぐにドンヒョクを見た。


ドンヒョクはしばらく考えてから言った。


「ありますよ。 その時は、全てを失ったと思った…
 でも、後で考えると、僕は何も失ってなかった。
 かけがえのない最高のものを得ただけでした」


「そう、あなたは後悔してないのね。
 でも 彼女は? 彼女は…自分のためにあなたが犠牲になったと
 …後悔は…  そうね…後悔なんかしてないわね」


彼女はそう言うと、またその栞を見た。


「ありがとう。何だか最後の迷いが吹っ切れたような気がする」


彼女は立ち上がった。


「ごめんなさいね。読書の邪魔をして。一緒のお茶が飲めて楽しかったわ。
 お礼にご馳走するわね」


彼女はまた華やかな笑顔を向けた。

 


「実はね。あなたも、わたしの彼に少し似てるわ。
 長身で眼鏡をかけてて…わたしを、ただの一人の女として見てくれるところ…
 …でも あなたより彼の方が愛想はいいわね。
 “微笑の王子”って呼ばれてるのよ」

彼女がまぶしそうにドンヒョクを見た。


「………」


「じゃあ、わたしに似ている彼女にもよろしく」

彼女はそう言うとドンヒョクに背を向けた。


「訂正を……」

ドンヒョクが口を開いた。


「え…?」

彼女が振り向いた。


「彼女があなたに似てるんじゃなくて、あなたが彼女に似てるんですよ」

ドンヒョクが微笑んだ。


「まあ…」


彼女は楽しげに笑うとサングラスをかけ、またくるっと背を向けて歩き出した。

 

 

 


「…あ! ドンヒョクさん!!」


その時、ジニョンがテラスに小走りで入って来た。


そのまま 彼女とジニョンがすれ違った。


彼女は驚いてジニョンの方に振り向いた。


だが、ジニョンは彼女に気がつかなかった。


それは、ジニョンがドンヒョクだけを真直ぐに見ていたからだ。


ジニョンは立ち上がったドンヒョクに駆け寄り、体を預けた。


ずっと走って来たのか、息を弾ませていた。


「…良かった!!! まだ…いてくれて…」

ジニョンがドンヒョクを見上げた。


「ばかだな、ジニョンは… そんなに慌てて来なくてもいいのに」

ドンヒョクは笑ってジニョンの肩を優しく叩いた。


「だって…思ったより時間がかかってしまって…」


「ジニョンを待つ事には慣れてるよ。
 それに その分、ジニョンが綺麗になったから嬉しいよ」


「ドンヒョクさんったら…」

ジニョンは少し頬を染めると嬉しそうに笑った。


ドンヒョクは、少しカットして綺麗にブローされたジニョンの髪に触れると
まぶしそうに彼女を見つめ、やわらかく微笑んだ。

 


その様子を見ていた彼女はふっと笑うと、また歩き出した。


背筋を真直ぐに伸ばし、ブーツの音をたてながら
凛とした美しい表情で 真直ぐ前を向いて歩いて行った……。

 

 

 

 

 


数日後の夜。


リビングでテレビを見ていたジニョンが声を上げた。


「ねえ、見て、ドンヒョクさん!
 俳優のソン・ジュンヨンとチェ・ユンナが結婚するんですって。
 今、記者会見をやってるわ!」


「ふーん」

興味のないドンヒョクは、そのまま本を読んでいる。


「すごいわあ…4年越しの恋ですって!
 そうそう、確か、その頃テレビドラマで共演したのよね。
 あの頃から二人は付き合ってたのね。…素敵だわ。
 彼女は彼の俳優の仕事に影響が出るのが怖かったのね。
 …ふーん、そうだったのね」

ジニョンが賑やかに解説してくれる。


「…ねえ、ドンヒョクさん」


「うん?」


「わたし…この女優のチェ・ユンナに似てるって、よく言われるのよ」


「え?」


ドンヒョクはその時、初めてテレビ画面に目を向けた。


あの時の…彼女だった。


そして、隣には 眼鏡をかけた“微笑の王子”が並んで座っていた。 


二人はおたがいに見つめあって最高に幸せな笑顔を浮かべていた。

 

 

 


“それで、ずっと、ソン・ジュンヨンさんのプロポーズを断り続けていたあなたが、
 今回、結婚しようと思ったのは、何故ですか?”


“それは…この結婚によって、彼もわたしも
 何も失うものはないって、わかったからです。
 おたがいに、かけがえのない人だって再確認したからです”――

 

 

 

  
…どこかで聞いたセリフだな…


ドンヒョクはふっと笑った。

 


「…そんなに似てるかしら?
 嘘よね~、こんな美人女優に似てるなんて…」

ジニョンはクスクス笑った。


「どうかな? ジニョン、よく顔を見せて…」

ドンヒョクはジニョンを抱き寄せると、彼女の顔を両手で包み込んだ。


「…ドンヒョクさん?」

ジニョンは不思議そうな顔をしてドンヒョクを見ている。


「ジニョンの方が綺麗だし、可愛いし、魅力的だよ」

ドンヒョクはジニョンの唇に指で触れながら言った。


「ん、もう! 真面目に答えて」

ジニョンは頬を膨らませる。


「本当だよ。 …初めて会った時からジニョンは僕にとって
 たった一人の主演女優なんだ…」

ドンヒョクはじっとジニョンを見つめる。


「…映画の中のセリフみたいね?」

ジニョンは瞳をキラキラさせて、ドンヒョクに微笑みかけた。


「アカデミー賞、もらえるかな?」


「それは、ちょっと無理だと思うから。
 代わりにシン・ドンヒョクさんには 
 ソ・ジニョン賞の“主演男優賞”をあげるわ…」

今度は、ジニョンがドンヒョクの唇に指でそっと触れた。


「…最高に 名誉な賞だね…」

 


ドンヒョクは 彼だけのヒロインから祝福のキスを受け取った……。

 

 


















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