ブロコリ サイトマップ | ご利用ガイド | 会員登録 | メルマガ登録 | 有料会員のご案内 | ログイン
トップ ニュース コンテンツ ショッピング サークル ブログ マイページ
aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
サークルオーナー: aoi32 | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 297 | 開設:2008.03.05 | ランキング:100(3927)| 訪問者:1370390/1907631
開設サークル数: 1238
[お知らせ] 更新のお知らせ
容量 : 30M/100M
メンバー Total :297
Today : 0
書き込み Total : 957
Today : 0
ホテリアー創作
妄想爆走!ホテリアー二次創作。                                                     大好きなドンヒョクと 可愛いジニョンの物語…
No 36 HIT数 8381
日付 2010/01/19 ハンドルネーム aoi32
タイトル November -1- 迷路に落ちた夜
本文

November -1- 迷路に落ちた夜 
 

 


ボス、あの…以前、話していた ニューヨーク支社への転勤の話…

あれは、まだ有効ですか?

もし そうなら、俺 考えてみようかと思って…

ウォール街で、少し いえ、本気でがんばってみようと思ったりして

俺、やっぱりボスみたいになりたいと思ってるんですよね

まあ、2,3年行ったくらいで、ボスみたいにすごい男にはなれないと

思ってますけど…


あれ? ボス、何だか残念そうですね?

俺がいなくなると寂しかったりして

じょっ、冗談ですよ!

もう、すぐ怒るんだから…


…ただひとつ心残りなのは ジニョンさんにもう会えなくなる事かな

ニューヨークに行く前に 一度、ジニョンさんとデートしていいですか?

じょっ、冗談ですよ! これも…

もう、ジニョンさんの事はあきらめましたから…

本当ですよ

そんなに 睨まないでください


でも 何だか、いつもより迫力ないですね

気のせいかな…


ボス? どうかしたんですか?


ボスーーー???

 

 

 

 


11月に入ったばかりの、ある日の事だった。


夕方から降り出した雨は、あたりが暗くなった今でも止まなかった。


ジニョンは、家の窓から外を見ていた。


「…ドンヒョクさん、今日も遅いのかしら」


窓ガラスにぶつかる雨の粒を見ながら、小さなため息をつくジニョン。


その時、部屋の電話が鳴った。


「…もしもし? あら、レウォンさん?」

その電話は、ドンヒョクの会社の社員、カン・レウォンからだった。


「あっ!ジニョンさん? 良かった、もう帰ってたんですね?
 実は、ボスの具合が悪くなって 熱があるみたいなんです!」

レウォンがあわてている。


「え? …そ、それで、ドンヒョクさんは?」

ジニョンが悲鳴のような声をあげた。


「とりあえず、車の運転は無理みたいなので、俺がお宅まで送って行きます」


「わかったわ…お願いね、レウォンさん」


電話を切ると、ジニョンは自分の体を両手で抱えた。


体の震えが止まらなかった……。

 

 

 


ますます、雨足が強くなり風も出てきた。


レウォンがドンヒョクを抱えるようにして送ってきた。


「ドンヒョクさん! 大丈夫? しっかりして!」

ジニョンはドンヒョクの体を受けとめると顔を覗き込んだ。


「…大丈夫だよ、ジニョン。ちょっと寒気がするだけだ…」

しかし、ドンヒョクの体はふらついていた。


「と、とにかく、ベッドへ…
 レウォンさん、ありがとう。あちらのリビングで待っててね」


ジニョンはドンヒョクを抱えると寝室の方へ向かった。


レウォンはその場で立ち止まり二人を見送った……。

 

 

 


ジニョンはドンヒョクをベッドに座らせると、彼の眼鏡を外し服を脱がせた。

何とかパジャマに着替えさせると、ベッドに寝かせ毛布をかけた。

力が出ないのか、ドンヒョクはジニョンのされるままになっている。

寒気がするのか、目を閉じて体を震わせている。


ジニョンはドンヒョクのさらさらの前髪を上げて額に手を当てた。

彼女は顔を曇らせ、ベッドサイドのテーブルの引き出しから体温計を取り出す。


「ドンヒョクさん、熱を計るわね」


「うん…」


「大丈夫?苦しくない?」


「…大丈夫だよ、ジニョン…そんなに心配しないで…」


ドンヒョクはぼんやりと目を潤ませ、微かに笑った。

辛そうなドンヒョクのかすれた声を聞くだけで、涙がこぼれそうになるジニョンだった。


「…ごめん、ジニョン」


「何で謝るの?」


「熱が出たくらいで情けないよ」


「何言ってるの。熱がある時がどんなに辛いか わたし、知ってるもの。
 大丈夫よ。ゆっくり休めば熱は下がるわ」


ジニョンは、めずらしく弱音を吐くドンヒョクの手を握り締めた……。

 

 

 


ジニョンがリビングに入って来た。


「ごめんなさい、レウォンさん。お待たせしちゃって。
 本当にありがとう。送ってもらって良かったわ」


「いえ、ボスの具合はどうですか?」


「ええ、やっぱりちょっと熱が高いみたい。
 でも 今、薬を飲ませたし、冷やしてるから。
 このまま熱が下がればいいけど…でも…」

ジニョンの声がだんだん小さくなっていく。


「ジニョンさん?」

レウォンが声をかけた。


しかし、彼女には何も聞こえないようだった。


「ジニョンさん?どうかしましたか?」


レウォンの声にはっとするジニョンだった。


「…あ、ごめんなさい…彼が…ドンヒョクさんが
 熱を出すなんて 初めてだから、驚いちゃって…
 しっかりしなくちゃね、わたしったら…」

ジニョンはそう言うとうつむいた。


華奢な体を震わせ、不安そうなジニョンはいつもより頼りなげに見えた。

 


「ジニョンさん 俺、もう少しここにいます」


「大丈夫よ、レウォンさん。もう遅いから帰って」


「でも 熱が下がらなかったら、病院へ連れて行かないと…
 俺、送って行きますから」


「でも…」


「ほっ、ほら…ボスって超わがままだから ジニョンさん一人だと大変だし…」


「まあ…」


「あ、今 言った事はボスには内緒ですよ」


「ありがとう、レウォンさん」

ジニョンは弱弱しく微笑む。

 


こんな不安げなジニョンさんを残したまま帰れない……


レウォンはそう思った……。

 

 

 


スタンドのほのかな明かりの下で眠るドンヒョク。


顔は青ざめ、長い睫毛が影を落とし、息苦しいのか、唇が少し開いている。


ジニョンは、ドンヒョクの首の部分に水枕を当て、
汗で張り付いた彼の前髪を上げて、額に冷たいタオルをそっと当てた。

そして、パジャマのボタンを外すと胸元の汗を乾いたタオルで拭き取った。


…こんなに汗をかいて…着替えさせないと……


ジニョンはクローゼットからドンヒョクのパジャマを出すと
彼の体を横に向けて、今着ている物を脱がし始めた。

 

 

 


いつまでもジニョンが戻って来ないので、
ドンヒョクに何かあったのかもしれないと、レウォンはリビングを出た。

そして、少しドアが開いている部屋を見つけた。

何気なく中を見るレウォン。

そして、はっとした。


オレンジ色の明かりが照らす部屋。


大きなベッドの上で、ジニョンは上半身裸のドンヒョクを
抱きかかえるようにしてパジャマを着せていた。

体が言う事を聞かないのか、ぐったりして
何もかもジニョンに任せているドンヒョク。

そして、そんな彼を必死で抱きとめるジニョン。


「大丈夫よ、ドンヒョクさん。わたしがついてるわ…」


彼女は彼を抱きしめ、彼の頭を何度も撫でた。


まるで、母親が子供を慈しむような 愛情に満ちた仕草だった。


先程見せた、不安げなジニョンの姿はどこにも見られなかった。

 


レウォンは息をのんでその光景を見ていた。

そして、後ずさりするようにその場から離れた。

 


レウォンはリビングに戻ってくると ふらっとめまいを感じてソファに座り込んだ。

そして、目を閉じた。

レウォンは動揺していた。

心が落ち着かなかった。


…何なんだ、この気持ちは…?


胸が痛い…


彼の胸のずっと、ずっと奥に閉じ込めていた思いが
また少しずつ溢れ出して来るのを感じていた。


そして また…


出口のない迷路に落ちていくような予感がした……。

 

 


              つづく…

 

 








前の書き込み November -2- 抱きしめられない彼女
次の書き込み 僕だけのヒロイン ― 彼女に似た人 ―
 
 
 

IMX