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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
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ホテリアー創作
妄想爆走!ホテリアー二次創作。                                                     大好きなドンヒョクと 可愛いジニョンの物語…
No 39 HIT数 11832
日付 2010/01/20 ハンドルネーム aoi32
タイトル November -4- マドンナの微笑
本文

November -4- マドンナの微笑


 
 

お粥を炊いている土鍋に時々目を向けながら、リンゴの皮をむくジニョン。


寝不足の体は少し疲れていたが、心の中は日だまりのように温かった。


…わたしって本当に単純ね…


ジニョンの顔に自然に微笑が浮かんだ。

そして、キッチンのカウンター越しに
リビングルームの窓の外に広がっている風景を見た。


まぶしい光。

燃えるような赤や鮮やかな黄色に色づいた樹々。


昨夜の雨に濡れて、その色は一段と輝いていた。

 


…昨夜の事は、もう忘れた方がいいの…


でも、あの時の悲痛な顔をしたレウォンさんのことを忘れられるの…?

そう あの切ない目は…いつか見たあの人の目と同じ…

 


また ジニョンの胸が痛む。


その時、電話が鳴った。

 


「…もしもし」


『…ジニョンさん…』


「レウォンさん?」


『お願いです。切らないで…話を聞いてください』


「……」


『あの、ボスの具合はどうですか?』


「ええ、もう大丈夫よ。レウォンさんは?雨に濡れて風邪ひかなかった?」


『俺は大丈夫です。…どうせなら雨に打たれて消えてしまいたかったけど
 俺って、あきれるくらい頑丈で…やっぱり単純だから、風邪もひかない…』


「…レウォンさん…」


『すみません、ジニョンさん。昨夜は本当にすみませんでした』


「……」


『俺 今度、アメリカに行くんです』


「え?」


『昨日、ボスに頼んで それで了解してくれたので…
 これで ジニョンさんの事、諦められるかなって思って…
 でも 思いがけず、ジニョンさんにまた会えて
 そしたら やっぱり、まだ忘れてないってわかって…
 もう会えなくなるんだって思ったら…やだな俺 何言ってるんだろう
 すみません、また混乱してきた。
 やっぱり俺は ボスみたいな冷静な男にはなれそうもないです』


「レウォンさん…ごめんなさい」


『謝らないでください。俺、ボスみたいな男になりたくて…
 だから ボスの好きなジニョンさんに惹かれたのかもしれない』


「…レウォンさん」


『俺、アメリカでまた最初からがんばってみます。
 少しでもボスに近づけるように…』


「ありがとう、レウォンさん。…あなたは、わたしの事をかばってくれたり、
 励ましてくれたりしたけど でも、やっぱり 頑張ってと言うしかできないの。
 だから、体に気をつけて 頑張ってね」


『はい。じゃあ、俺、これから会社に行きます。
 ボスに、お大事にと伝えてください。
 俺、今日 ボスの分まで頑張って仕事しますから…』


「ふふ、そうね。頼りにしてるわ、レウォンさん」


『はい、じゃあ 行って来ます』


「ええ、じゃあね」

 


ジニョンは電話を切るとうつむいた。

そして、小さくため息をつくと、また窓から外を見た。

 


空はどこまでも青く、まぶしい光が部屋の中に差し込んでいた……。

 

 

 

 

 


「…ごめん、ジニョン。もう食べられない」

そう言うと、ドンヒョクは木製のスプーンをトレーの上に置いた。


「え?…まだ、ほとんど食べてないじゃない?」


「…食欲ないんだ…」


「だめよ、もう少し食べなきゃ… もう、熱はないわよね?」

ジニョンはドンヒョクの額に手を当てた。


「ん?」

よくわからないジニョンは、今度は自分の額をドンヒョクの額に当てた。

睫毛が触れ合いそうなほど顔を近づけたジニョンは、首を傾げた。


「ん~、熱はないわね。 …あ、もしかして お粥…美味しくない?
 おかしいな、ちゃんと味見したんだけど。…やっぱり、だめ?」

ジニョンは泣きそうな顔をした。


ドンヒョクは思わず吹き出してしまった。


「違うよ、ジニョン。美味しいよ。でも、今は食べたくないんだ」


「でも、もう少し食べなきゃ 元気になれないわ。
 …わかった。じゃあ、わたしが食べさせてあげる」


「え?」


ジニョンはスプーンでお粥をすくうと、ふうふうと冷まし始めた。


「いいよ、ジニョン。僕は怪我してるわけじゃないから、一人で食べられる」


「何、遠慮してるの? はい、あ~んして…」


「あ…」


ジニョンの笑顔につられてつい口を開けてしまったドンヒョク。


「……」


「ふふ、ついに食べてくれたわね」


「……」


困ったような顔をするドンヒョク。


「だって、わたしが入院した時、ドンヒョクさんが食べさせてくれたじゃない?
 だから わたしも同じ事をしてあげたかったの。はい、もう一度、口を開けて」

 


ジニョンの笑顔に、ドンヒョクは降参するしかなかった……。

 

 

 


「はい、お薬も飲んだし、レオさんへの連絡も済んだし、またゆっくり休んでね」

ジニョンはそう言うとドンヒョクの携帯電話を取り上げ、ベッドに寝かせて毛布をかけた。


「もう、大丈夫なんだけど…」

ドンヒョクがジニョンを見上げて言った。


「だめだめ、まだ咽が痛いんでしょう?風邪はちゃんと治さないとね」


「…わかったよ」


めずらしくドンヒョクがジニョンのペースにはまっているが
なぜか、その顔嬉しそうだ。


「…それで、ジニョンは? 今日は仕事だよね」

ドンヒョクの瞳が少し揺れた。
 

「もう、お休みもらったわ。さっきテジュンさんに連絡したら、びっくりしてた。
 『ドンヒョクでも風邪をひくのか』って。滅多に見られないだろうから、
 後で様子を見に来るって言ってたわ」


「……」


「だから、今はゆっくり眠って、早く元気になってね」


「じゃあ、ジニョンも少し休んで。2階のベッドで眠るといいよ」


…2階のゲストルームのベッド?


ジニョンは、ジェニーやジニョンの両親が泊まった時に使った
ゲスト用のベッドを思い浮かべた。

ジニョンはまだそこで眠った事はなかった。


「…いやよ」

ジニョンは首を振った。


「え?」


「ここにいる。そうしないと、あなた わたしが寝ている間に仕事しそうだわ。
 …それに……」
 

…それに… 一人じゃ、寂しいもの…


「?」


「それに…わたし まだ眠くないから、大丈夫よ」


そう言って、ジニョンはニッコリ笑った。

 

 

 


― 数分後 ―

 


そんな事を言ってたはずのジニョンが、椅子にすわったまま居眠りを始めた。


…やっぱり疲れてるんだね… 無理してたんだ…


ドンヒョクは起き上がるとベッドから降りて
椅子に座って眠っているジニョンを軽々と抱き上げ、ベッドに寝かせた。


「…え…?」

ジニョンが驚いて目を開けた。


「僕が2階で寝るから、ジニョンはここで寝て」

ドンヒョクが少し笑って言った。


「だっ、だめよ。病人はあなたなのに ごめんなさい、わたしったら」

ジニョンはドンヒョクの腕をつかみ、またベッドに寝かせた。


「…ジニョンも疲れてるのに」


ドンヒョクの言葉を聞いて ジニョンは少し考えた後、明るく笑った。


「わかった!・・じゃあ、わたしもここで寝るわ!」


「え?」


ジニョンはベッドのドンヒョクの隣に滑り込むと
嬉しそうにぴったりと体をくっつけた。


「…ふふ、ドンヒョクさん あったかい…」


「風邪がうつるよ」


「いいの。 …そうすれば、ドンヒョクさんの風邪が治るでしょう?」


「え?」


…また 同じ事を言った?


「…それは嘘だと思うけど でも大丈夫。
 わたしは風邪はひかないの」


「だめだよ ジニョン」


「じゃあ、少し離れて眠るから」

ジニョンはそう言うと、ベッドの端の方に寄った。


「しょうがないな、ジニョンは」

ドンヒョクはあきれたように笑った。


「ドンヒョクさん、手をかして」


ジニョンが甘えたように右手を差し出した。

ドンヒョクも右手をその上に置いた。


「…残念だな、同じベッドに寝てるのに ジニョンにキスもできないなんて」

ドンヒョクがジニョンを見つめた。

「風邪が治ったら、まとめてしてもらうからいいの」

ジニョンもドンヒョクを見つめ返した。


「…また 熱が出そうだ」

ドンヒョクがやわらかく笑った。


「もうっ!」

ジニョンが恥ずかしそうに、明るく笑う。

 


ジニョンの笑顔が、夢の中に出てきたドンヒョクの母の笑顔と重なる。

明るくて、優しくて、人をほっとさせるような笑顔…


そして…

ドンヒョクは、自分がひとりではなく 誰かが側にいる幸せをかみしめる。


また、目の奥がつんと痛くなった。

 


…まずい また、涙が出てきそうだ…
  
久しぶりに風邪なんかひいて、弱気になってるのかもしれない

 


ドンヒョクは動揺していた。

ジニョンが心配するから見せたくなかったが その心配は無用だった。

 


ジニョンはすでに眠りについていた。


幸せそうに ドンヒョクと手をつないだまま……。

 

 


            つづく…

 








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