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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
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ホテリアー創作
妄想爆走!ホテリアー二次創作。                                                     大好きなドンヒョクと 可愛いジニョンの物語…
No 68 HIT数 8376
日付 2010/02/20 ハンドルネーム aoi32
タイトル 行かないで -16-(終) 守ってあげたい
本文

行かないで -16-(終) 守ってあげたい

 

 


思い出したよ、ジニョン

2年前の今日 僕はラスベガスのあの“300本のバラ”で君を見つけたんだ

君はあの時 とても怒ってたね

今のジニョンからは想像できないくらい…

え? 僕にだけ優しいの? 

嬉しい事を言ってくれるね ジニョン

その君が、今 僕の傍にいる

しかも、同じアメリカで… …信じられないな…

 


ジニョン、NYに来てくれて嬉しいよ

週末にはどこへ行こうか。

ああ、残念だな

もう少し時間があれば ロスにも、ラスベガスにも行けるのに…

でも いいよ

僕はジニョンと一緒なら どこでもいいんだ…

 


ジニョン、ソウル行きの航空券を用意したよ

もちろん、ファーストクラスにするよ

だめだよ ジニョンは どこでも寝ちゃうんだから…

エコノミーにして 隣に座ったのが、男だったらどうする?

そいつの肩にもたれて眠ったりして…

ああ、想像しただけで 心配で眠れなくなる

え?そんなにお金を返せないって?

ジニョン、本当に、君は面白いね

どんなに一緒にいても飽きないよ

もちろん褒めてるんだ 

だから お金のことなんて気にしなくていいよ

…わかったよ… じゃあ、こうしよう

僕がいつか失業したら、その時に返してくれればいいよ

ん? 何だか はりきってるね、ジニョン?

…そうか、その時は僕を守ってくれるの?

やっぱり、君はすごい人だよ…… 

 


ジニョン、ホワイトデーまでには帰るよ…必ずね

チョコレートのお返しは何がいい? 

…もう、いらない? …だめだよ

その時はソウルにいるんだから 韓国風にちゃんとプレゼントを用意するよ

いいかい? 僕が帰るまで 考えておいて


…ところで… とりあえず、今はキスしたいんだけど…いいかな?

 

 

 


ジニョンは目を覚ました。


ホテルの部屋のベッドの上だった。


泣きながら いつの間にか眠ってしまったらしい。


ジニョンはゆっくり起き上がり 自分の頬を両手で押さえた。

 


…夢だったのね…


ああ… それにしても…ドンヒョクさんの笑顔

ドンヒョクさんの優しい声

とても嬉しそうで 楽しそうだった

 


ジニョンは夢の中のドンヒョクを思い出して 思わず、くすくす笑い出した。

 


そうだった

わたしたち、毎日ここで いろいろな話をしたわね


子供の時の話…あなたは少し話せるようになったのね

これからも わたしに話してくれるわよね


わたしの初恋の話

あなたは 何だかむすっとしてたわね

そんな昔の男の子にやきもち妬いてどうするの?

それに、ドンヒョクさんの初恋の話は聞いてないわ

ソウルに帰ったら話すって言ってたわね

わたし、ちゃんと覚えてるんだから…

 

 

 


窓の外は マンハッタンの街並みがオレンジ色の夕日に染まり始めていた。


いつか ドンヒョクと一緒に飲んだ“マンハッタン”のような美しさだった。

 


そうよね…

何も寂しいことなんてないわ

ドンヒョクさん…あなたも いつかはソウルに帰ってくるんだもの

あなたは帰ってくるのよね?

わたしの所へ…帰ってくるのよね……

 

 

 


ジニョンは ぼんやりとベッドサイドの時計を見た。

そして ゆっくりとベッドから降りるとバスルームに向かう。

今夜はドンヒョクとブロードウェイでミュージカルを観る約束をしていたから…

 


“ジニョン、またお洒落をして来て欲しいな”

 


ドンヒョクさん、あなたからのお願いだもの…がんばってお洒落するわ


だから、今夜もわたしだけを見ていてね


わたしもあなただけを見てるから…

 

 

 

 

 

―― ホテルのロビー ――

 


背筋を真直ぐに伸ばし、立ち姿も優雅で美しい長身のドンヒョクが立っている。


そこへ パールピンクのドレスに身を包み 輝くように美しいジニョンが近づく。


少し切ない思いを秘めた黒い瞳と 濡れたように輝くばら色の唇が
彼女の白い肌を よりいっそう際立たせている。


ドンヒョクは そんなジニョンを見て 驚きの声を上げる。


「…ジニョン!」


「ドンヒョクさん。」


「何て綺麗なんだ、ジニョン。  
 困ったな。僕は今夜、ミュージカルよりもジニョンから目が離せないよ。」


その言葉を聞いてジニョンは幸せそうに微笑んだ。


少し青白かった頬が ほのかに桜色に染まった。


ドンヒョクは ジニョンの頬を両手で包み込んだ。


「…キスしてもいいですか?奥さま。」


「ルージュがとれてしまうわ…」


「何もつけなくても ジニョンの唇は最高。」


「もうっ…」

 


ジニョンは愛情に溢れた眼差しで ドンヒョクを見つめた後 

ゆっくりと目を閉じた……。

 

 

 

 

 


―― 二日後 ――

 


その日、国際空港へ向かう道路は渋滞に巻き込まれていた。

取引先との契約の後 ドンヒョクはジニョンを見送るため空港に向かっていた。

運転席のカン・レウォンは絶望的な顔をして 後部座席を振り返った。


「ボス、だめです。少しも動かない。事故があったみたいです。」


「そうか…」


腕時計を見たドンヒョクは 5秒間、目を閉じて考えた後 車のドアを開けた。


「ボス?」


「ここで降りる。」


「え? まっ、まさか、ボス!」


「空港まで、もう少しだ。走れば間に合う。」


「ほっ、本気ですか?」


「天気もいいし、走るにはもってこいの気候だ。」


「ボス~。」


「じゃあな、レウォン。 おまえはこのままオフィスに戻っていい。後はまかせる。」


「ボス?」

レウォンは驚いてドンヒョクを見つめる。


ドンヒョクは車から降りるところだった。


「ボス! まさか、このままボスもソウルに帰るなんて事 ないですよね?」


「………」


ドンヒョクは黙ったままふっと笑い スーツのジャケットのポケットから
それを取り出し レウォンに見せた。

パスポートだった。


「ボッ、ボス!!!」


「じゃあ。」

ドンヒョクはそう言うと 車から降りてドアを閉めた。


「ボス~!!!」

レウォンが慌てて車から降りた時には すでにドンヒョクはずっと先の方に走り去っていた。


「はっ、速い!!!」

 


うっ、嘘だろう? このまま帰るなんて!!!

でも…ジニョンさんのためならボスは…

そうだ、ボスはジニョンさんが相手だと 一瞬で熱い男になれるんだった!

 


レウォンは すでに姿が見えなくなったドンヒョクの方に向かって叫んだ。


「ボス~!Come back~!!! まだ、行かないでくれーーー!!!」


ドンヒョクには届くはずもなかった。


レウォンはため息をついて 空を見上げた。 


まるで春のような明るく優しい青空だった……。

 

 

 


ジニョンは 出発ロビーの椅子に座って外の景色を眺めていた。

青空に浮かんだ白い雲。

銀色のジェット機が まるで空に吸い込まれそうに飛んで行く。


帰りの飛行機は昼間の便にした。

夜間飛行で帰るなんて寂しすぎるから……

2週間前、ここに来た時はドンヒョクが待っていてくれたから 寂しくはなかった。

 


…あっという間だったわ

ドンヒョクさんと過ごした夢のような日々

とても幸せだった…


ドンヒョクは まだ来ない。


来なくてもいい…とジニョンは思っていた。


見送りに来たら ドンヒョクの顔を見たら…泣いてしまうかもしれない。


…だから…

それに わたしはもう大丈夫

ソウルであなたが帰って来るのを待ってるわ

だから… 大丈夫よ ドンヒョクさん…

 


…でも… 本当は 会いたい…… …

 


…あい…た…い……

 

 

 


「ジニョン!!!」


聞き慣れたその愛しい声に ジニョンは静かに振り返る。


そこには…苦しそうに息を弾ませたドンヒョクが立っていた。

かなり苦しそうだった。

うっすらと汗までかいている。


「ドンヒョクさん! どうしたの? 走って来たの?」

ジニョンは驚いてドンヒョクに駆け寄った。


「…ジニョンが…ゴールにいれば …フルマラソンも完走できるかもしれな…い。」


ドンヒョクは ゆっくりと呼吸を整えながら 途切れがちに言った。


「ドンヒョクさんったら…」

ジニョンは目の奥がつんと痛くなった。

 


そんな格好で走ったら疲れるに決まってるじゃない

ほんとに無茶をするんだから……

 


ドンヒョクは 少しふらつく足でジニョンの傍に寄ると 
ジニョンにもたれるように体を預けた。

ジニョンは 慌ててドンヒョクの体を支えた。


「ドンヒョクさん、大丈夫?」


「…大丈夫じゃな…い。 思ったより遠かったよ、この空港は…
 さすがに ほとんど寝てない体にはきついかもしれない。」


「ドンヒョクさん、しっかりして。」

ジニョンは バッグから小さなタオルを取り出すと ドンヒョクの額の汗を拭いた。

そして 心配そうにドンヒョクの背中をさすった。


「…昨夜 ジニョンが なかなか寝かせてくれないから……」
ドンヒョクは 目を閉じたまま少し笑って言った。


「もう!!」


…なかなか寝かせてくれなかったのは あなたでしょう?


ジニョンは真っ赤になって 今度はドンヒョクの背中を叩いた。


ジニョンに会えて、ジニョンの声が聞けて ドンヒョクの体力はすっかり
回復していたが、もう少しジニョンに支えて欲しかったドンヒョクは
目を閉じたまま彼女に寄り掛かった。

   
ジニョンは心配そうな顔で そんなドンヒョクの体を受け止めていた。


ドンヒョクの体の重みが なぜかとても愛しかった……。

 

 

 


「じゃあ、ドンヒョクさん 元気で… お仕事がんばってね。
 わたしがいなくなっても ちゃんとホテルに帰って…夜はゆっくり眠ってね。」


「わかってる。 
 ジニョンもちゃんと食べて、睡眠をとって…あ、大丈夫か、ジニョンなら。」


「もう!!!」


「一人で、髪を洗える?」


「え? やっ、やだ、できるわよ。」


「一人で眠れる?」


「だっ、大丈夫よ。」

ジニョンは また真っ赤になってしまった。


…もう、また思い出しちゃうじゃない……
 

 

その時、出発ロビーにソウル行きの便の搭乗案内のアナウンスが流れた。

 


ジニョンははっとしてドンヒョクを見つめ、明るく言った。


「…じゃあね、ドンヒョクさん。」


「うん。」


ドンヒョクはジニョンを抱きしめると その唇にキスをした。


ジニョンは目を閉じて そのキスを受け入れた。


長い時間をかけてゆっくりと静かに ドンヒョクはジニョンの唇を求めていった。

 


…愛しくて、かけがえのない 僕のジニョン

どうして君は 僕をこんなに夢中にさせるんだろう

離したくない… やっぱり離したくない…

 

       
…少しの間、このキスともお別れね…

大好きなドンヒョクさんの 大好きなキス

だめ… また迷ってしまいそうよ……

 


やはり涙が出そうになったジニョンは ドンヒョクの逞しい腕からすっと抜けて
ドンヒョクに背を向けた。


「もっ、もう行かなくちゃ…」


「…ジニョン。」


「……」


ドンヒョクがジニョンの名前を呼んでも返事ができない。


ジニョンの震える肩を見つめるドンヒョク。


ドンヒョクは耐え切れず ついに、その言葉を告げる。

 


「…ジニョン…」


「………」


「…行くな…」


「え…?」


「行かないでくれ…」


「ドンヒョクさん…!」


ジニョンは驚いて振り返った。


「行かないで…ここにいて…」


ドンヒョクは悲しく切なげに、ジニョンを見つめた。

 

 
…ジニョン… 僕はやっぱり ジニョンの前ではただの男だよ

パスポートまで持って来て、ギリギリまで迷ってる

いっそこのまま 本当にソウルに帰ってしまおうか……

 


ジニョンは大きな瞳を ますます大きく見開いてドンヒョクを見つめた。


「…ばか…ね、ドンヒョクさん。」


「ジニョン…」


「わたしは…どこへも行かないわ。」

ジニョンは目を潤ませていた。


「ジニョン…」


「だって、わたしは…あなたより少しだけ先に帰って わたしたちのホテルで
 あなたとわたしの家で あなたが帰って来るのを待ってるだけよ。」


ジニョンは 春の日だまりのような、優しさにあふれた微笑をドンヒョクに向けた。


「ジニョン……」

ドンヒョクの目も潤んでいた。


「ね、そうでしょう?」


ジニョンはそう言うと ドンヒョクに近づいた。


そして 少し背伸びをすると、ドンヒョクの首に両手を回し彼をぎゅっと抱きしめた。


ジニョンはドンヒョクの耳元で囁いた。

 


「…愛してるわ ドンヒョクさん。…だから 心配しないで……」 

 


あなたが帰って来る頃は きっと、ソウルも暖かい春を迎えてるわ

 

そうだね ジニョン …また君と一緒に 新しい季節を過ごせるね……

 

 


                          おわり

 

 

 

 

 

 








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