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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
サークルオーナー: aoi32 | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 297 | 開設:2008.03.05 | ランキング:100(3927)| 訪問者:1367255/1904496
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ホテリアー創作
妄想爆走!ホテリアー二次創作。                                                     大好きなドンヒョクと 可愛いジニョンの物語…
No 92 HIT数 7888
日付 2010/08/04 ハンドルネーム aoi32
タイトル ひまわり -6- きっと 大丈夫
本文 ひまわり -6- きっと 大丈夫










   ―― ニューヨーク 早朝 ――



小洒落たアパートメントの一室で 電話のベルが鳴り響く。

その部屋の住人はベッドの中でモゾモゾと体を動かしていたが やっと手を伸ばしベッドサイドの受話器を取った。

「・・・Hello・・・。」
彼は眠たそうな声で言った。

『・・レウォンか?』
受話器の向こうで男の声がした。

「・・・Yes・・。」
彼はまだ寝ぼけている・・。

『僕だ。 ・・・おい、起きてるか?』

「・・・ネー・・。」

久しぶりに聞く母国語に カン・レウォンは無意識のうちに韓国語で返事をした。

   ・・・受話器から聞こえてきた懐かしい声。

        低くて よく響く 聞き慣れた声・・。  ・・・う・・ん・・いい声だな・・・。


     ・・・・・・・・・・・

            ・・・・・・・・・・・・



突然 レウォンは、がばっと起き上がった。



「ボボボボッ・・ボス~???」
レウォンは受話器をぎゅっと握り締めると大声で叫んだ。

『・・・やっと目が覚めたな。』
受話器の向こうで ドンヒョクがあきれたように言った。

「ボス~!! どっ、どうしたんですか~???」

『・・・声が大きい・・。』

「ボ、ボスが俺のアパートに電話してくるなんて初めてですよね!
 お、俺・・また何か失敗しましたか?・・いや、最近は何もないですよね~???」

『・・・うるさい男だな。 そんな大声を出さなくても聞こえる。』

「ボス~~・・・。」

『甘えた声を出すな。』
ドンヒョクが冷たく言い放す。・・・あの いつもの無表情の顔が浮かんでくる・・。

レウォンはベッドの上に正座すると 改まった声で言った。

「ボス・・。俺、ボスに会いたいです。」 

   ・・・レウォンは思った。 こんなことを言ったらまたボスに怒られるな・・。
        しかし、それは 彼の正直な気持ちだった。


『・・そうだな。 ・・僕もレウォンに会いたいよ。』


「え?」
あまりにも意外なドンヒョクの言葉にレウォンは後が続かない。 


『・・だから、ソウルに帰って来い。』


「え?」
レウォンはまだドンヒョクの言葉が呑みこめない。


『夏の休暇だ。・・確か今、途中のプロジェクトはないはずだ。
 ディック(NY支社長)にも連絡しておくから、今日中に引継ぎをして飛行機に乗れ。』


「ボス~~・・。うっ、うっ・・。」

『泣くな!』

受話器の向こうでドンヒョクが怒鳴った。

レウォンには その怒鳴り声も懐かしく、嬉しさのあまり本当に泣きそうになった。
そしてまた 大声で叫んだ。



「わかりました、ボス! 俺、飛んで帰りますから・・待っててください!!」


レウォンはベッドから飛び降りると クローゼットの扉を開けた。
そして スーツケースを引っ張り出した。 ・・・右手は受話器を握り締めたままだった・・・。







     カン・レウォン 25歳 ドンヒョクの会社のイケメン社員 






   





    ―― ソウル 夜 ――



携帯電話を切ったドンヒョクは どっと疲れたように車のシートに身を沈め、大きなため息をついた。
レウォンと話すだけでいつもペースが乱れるドンヒョクだった。


「・・レウォンさんに お姉さんが倒れたって言わないの?」
助手席に座っていたジニョンが不思議そうに聞いた。

「あいつにそんなこと言ったら パニックに陥って失敗するに違いない。
 慌ててパスポートでも忘れて飛行機に乗り遅れたら大変だからね。」
ドンヒョクは耳を押さえて、またため息をついた。

    ・・まったく・・あいつは声が大きいんだよ・・・。


「ふ~ん・・。」
ジニョンが探るようにドンヒョクの顔を覗き込んだ。

「・・何?」

「・・ドンヒョクさん・・って、結局 レウォンさんに優しいのよね。」

「よしてくれ。」
ドンヒョクはむっとする。

「だって レウォンさんのために何気なく気を配ったり、
 ・・・今だって NYが朝になるまで連絡するのを待ってたりして・・何だか妬けちゃうわ。」
ジニョンが少し拗ねたように言った。

「・・へえ・・。ジニョンが妬いてくれるなんて嬉しいね。」
ドンヒョクはジニョンの頬を撫でながら言った。

「もうっ・・!」
ジニョンはドンヒョクを睨むとすぐ笑った。




「じゃあ、わたし レナさんの所へ行って来るわ。」

「うん。頼んだよ。」

「病院に一人でいるのは心細いものね。 ・・誰かが傍にいるだけで安心するわ。」

「・・・ジニョン。」

「ドンヒョクさんが知らせてくれて良かった。」

「え?」

「・・あなたが レナさんの事をすごく褒めていたから気になってたの。 
 もしかしたら レナさんに惹かれてるのかなって思ったりして・・。 
 でも・・・今度のことをすぐに話してくれたから安心したわ。」

「・・・ジニョン。」
ドンヒョクは驚いてジニョンを見た。

「やだっ・・! わたし 変なこと言ってる・・。」
ジニョンはあわてて言った。

「そんな事ない。 ジニョンは正直で素直で 僕は好きだよ。」
ドンヒョクはやわらかく微笑んで また、ジニョンの頬を静かに撫でた。

ジニョンはその手を包み込むと 彼の長い指にそっとキスをした。
「・・わたしも・・誠実なドンヒョクさんが好き。」

ジニョンはそう言うとドンヒョクを優しく見つめた。

・・・つないだ手を離さなければならない時に 少しだけ胸の奥がきゅっと痛くなった・・・。














そして ジニョンは車のドアを開けて外に出た。
ドンヒョクに向かって笑いながら手を振ると 病院の玄関に向かって歩き出した。


ドンヒョクは黙って その後姿を見ていた。 ・・・ジニョンは 白い病院の中へ もうすぐ入って行ってしまう・・。
 

突然 ドンヒョクはドアを開けてジニョンを追いかけた。


「ジニョン!」

「・・・ドンヒョクさん?」

ドンヒョクはジニョンの手を引いて胸の中に閉じ込めた。 そして、強く抱きしめた。

「・・・ドンヒョクさん・・どうしたの?」

「・・・ジニョン。」

「ドンヒョクさん?」

「・・・何だか不安なんだ。 ・・ジニョンがまた、この病院の中に入っていくのかと思ったら・・。不安で・・・。」
ドンヒョクの声は震えていた。

「え・・・。」

「・・・病院は辛かったことばかり思い出させる。」

「ドンヒョクさん。」
ジニョンははっとしてドンヒョクを見た。 
そして 彼の苦痛に歪んだ顔を見て理解した。 ・・・何てことかしら・・。

「大丈夫よ。 わたしは何ともないのよ。 
 ・・・それに レナさんも赤ちゃんが出来たんだからとても嬉しい事なのよ。」
ジニョンは まるで子供に言い聞かせるようにゆっくりと話し、ドンヒョクの顔を両手で包みこんだ。

「・・・ジニョン。」

「あの時の・・一年前のあの事故があなたを傷つけてしまったのね。・・たぶん わたしが思ってるよりずっと・・。
 怪我をしたわたしより ずっとそれを見ていたあなたの方がもっと辛かったのね。」
ジニョンの声も震えていた。

「何、言ってるんだ。 怪我をしたジニョンの方が苦しかったに決まってるじゃないか。」

「・・・でも、ごめんなさい・・ドンヒョクさん。」

「ジニョンが謝る事はない。」

「・・わたしって鈍感だから・・苦しかった事も 時が経つとだんだん忘れていくの・・。
 ううん、それよりも あの時ずっと傍に付いててくれたドンヒョクさんのことばかり思い出すの。
 熱を出した時は一晩中手を握っててくれて 目を覚ました時は大丈夫だよって言ってくれた。
 ずっと・・優しくしてくれたから とても安心できたの。・・・わたしは 嬉しかったことばかり覚えてるのよ。」
ジニョンの瞳が揺れている。

「・・・ジニョンは鈍感じゃなくて強いと思うよ。 ・・・僕が弱いんだ。 昔の記憶が頭から離れない。
 忘れたはずなのに ふとした瞬間に思い出すんだ・・。」

「ドンヒョクさん・・?」

「ジニョンの事だけじゃない・・。もっと僕が子供だった時の事だ・・。」

「・・・ドンヒョクさん・・・。」
ジニョンは言葉を失った。 彼女は胸が苦しくなった。 ・・まるで 胸の奥をぎゅっと掴まれたような痛みだった。

ドンヒョクの心の傷・・。“病院”という場所への恐怖心。 
ずっと一人で生きて来た・・そう言い切った彼の張り詰めた心の闇。

プロポーズされた後に聞かされたドンヒョクの悲痛な告白は 時が経った今でも消えないのだろうか・・。
二人で・・時にはたくさんの仲間に囲まれて暮らしてきたのに ドンヒョクの心にはまだ孤独が影を落としてるのだろうか・・。



   ・・わたしがいるのに・・わたしが守ってあげると約束したのに・・。


ジニョンは 涙が出そうになるのを堪えてドンヒョクを見つめた。




「・・・大丈夫よ ドンヒョクさん。」

「・・ジニョン。」

「・・わたしがいるじゃない。 ・・前にも言ったわ・・わたしと出会ったじゃない・・・って。」

「ジニョン。」

「・・・あまり頼りにならないけど・・。 でも・・わたし・・傍にいるわ。 これからもずっと一緒にいるわ。」
ジニョンの声が震えている。

「・・・それに ドンヒョクさんは弱くなんかないわ。 ・・だって、いつもわたしを守ってくれるじゃない。
 他のみんなも守ってくれるじゃない・・。  ドンヒョクさんは優しくて強い人なのよ。
 ・・・・・みんな あなたを愛してるわ。 ・・・わたしも・・・ドンヒョクさんを愛してる。」


ジニョンはそう言うとドンヒョクを抱きしめた・・。


    「・・・だから・・大丈夫よ、ドンヒョクさん。 ・・きっと 大丈夫・・。」




  ドンヒョクは その言葉を黙って聞いていた・・・ジニョンの細い肩にもたれながら・・・。 




















レナが目を覚ますと そこには見知らぬ女性がいた。
彼女は レナが気がついたのを知ってにっこり微笑んだ。

「あ・・。」
レナは声を出そうとしたが まだ頭がぼんやりして何も言えなかった。

「気がつきましたか?」
彼女はそう言って レナの顔を見つめてまた笑った。 温かくて、人をほっとさせるような笑顔だった。
「大丈夫ですか? どこか痛い所はありませんか?」
彼女は優しくて涼やかな声で言った。

「あ・・ええ。大丈夫です。 ・・・あの・・あなたは?」

「あらっ・・わたしったら! ごめんなさい。・・初めまして、わたしは ソ・ジニョンです。」

「ソ・ジニョンさん。 ・・あ、もしかして ドンヒョクさんの・・いえ、シン社長の奥さま・・?」
レナは慌てて起き上がろうとした。

「あ、まだ寝てた方がいいわ。・・あの、ジニョンと呼んでください。 
 それから、夫のことも名前で呼んでくださっていいんですよ。」

「・・・すみません。いろいろご迷惑をおかけしてしまいました。」

「いいえ。 あの、さっきまで夫も一緒だったんですけど仕事に戻りまして・・それで代わりにわたしが・・。」

「まあっ・・申し訳ありません。」

「そんな・・。 わたしたちも レウォンさんにはとてもお世話になったので、そのお返しです。
 それに・・わたしは何も出来なくて ここにいただけなんです。」
ジニョンはそう言うと恥ずかしそうに笑った。

「まあ・・・。」
ジニョンの笑顔につられて レナも思わず笑った。





「・・・まあ、レウォンが・・?」

「ええ。明日には帰ってくると思います。 レナさんのご主人には連絡がつかなくて・・。
 レオさんが調べてくれたんですけど・・。移動中らしくて・・。」

「すみません。 ・・後でわたしから連絡してみますわ。」

「ご主人はきっと喜ばれるでしょうね。 ・・あの、おめでとうございます。」

「あ・・ありがとうございます。」
レナは思わず頬を染めた。 そして自分のお腹に手を当てた。

「・・・羨ましい・・。」
ジニョンは微笑んだ後、呟いた。

「え・・・?」

「・・・愛する人の子供が自分の中にいるって・・きっと、すごく幸せな気分なんでしょうね。」
ジニョンは少し寂しそうに言った。

「・・・ジニョンさん・・・。」
レナは驚いてジニョンを見たが すぐに微笑んだ。

「・・ジニョンさんは・・結婚してどのくらいですか・・?」
レナが静かに言った。

「え?・・・ あの・・1年と・・4か月です・・。」
ジニョンが躊躇いがちに言った。

レナは優しく微笑んだ。

「レナさん・・?」

「あ、ごめんなさい。 ・・・ジニョンさん・・わたしは結婚して4年経つんですよ。」

「え?」

「・・・なかなか子供に恵まれなくて・・病院に行って検査をしたり不妊治療もしました。
 でも、結局、出来なくて もう諦めていました。」

「レナさん。」

「だから・・とても嬉しい。 ・・主人も検査とかに協力してくれましたから・・。
 慣れない日本で きっと彼は戸惑ったと思います。 でも・・嫌な顔一つせずに、励ましてくれました。
 周りの重圧からも守ってくれました。・・だから感謝してます。」
レナはそう言うと綺麗に微笑んだ。

「素敵なご主人ですね。」

「・・・ジニョンさんのご主人も とても素敵です。」

「やっぱりそう思います?」

「まあ・・・。」

二人は顔を見合わせて笑った。




「  ・・・ジニョンさんは まだこれからでしょう?」

レナが慈愛に満ちた微笑をジニョンに向けた。



「え?」


「ね・・。まだこれからです・・。」


ジニョンははっとしてレナを見た。

「そう・・ですね・・。これからですね。 ・・いつかきっと・・。」
彼女は自分に言い聞かせるように言った。




「・・・それに・・彼も わたしのことを守ってくれますから・・きっと 大丈夫です。」




      ジニョンは確かな声で言うと お日様に向かうひまわりの花のように 明るく笑った・・・。
















                  背景・画像・コラージュ by akke













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