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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
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マイガール
恋した彼は親友の叔父さんだった!  クール&スマートな永瀬を取り巻くラブコメディー©
No 11 HIT数 7016
日付 2011/01/18 ハンドルネーム aoi32
タイトル マイガール -11- 二十歳のジェラシー
本文 マイガール




-11- 二十歳のジェラシー

 


ガラガラッと玄関の扉が開いて 艶やかな振袖を着た柚子が姿を現した。


鮮やかに染められた赤地に 美しい花々が華やかに描かれた古典柄の振袖は
色白の柚子を優美に見せている。


永瀬さん… 少し恥ずかしそうに頬を染めた柚子の髪には 薄紅色の一輪花の
花かんざしが飾られ、小花のつまみ細工がひらひらと揺れている。


…綺麗だな… 思わず、永瀬の胸が熱くなるが 実際に口から出てくる言葉は
気持ちとは裏腹になってしまう。


「今日は 柑橘系も七五三か」


「七五三じゃなくて成人式です!」


「いや、どう見ても…」


「もうっ!」


柚子はそう言うとぷ~っと頬を膨らませる。


いくら 綺麗な振袖を着て しとやかに振舞っていても 中身はいつもと変わらず
呆れるほどあどけない少女のままだ。


もう子供扱いしないでくださいね! 柚子は念を押すように言うと しっとりと
永瀬を見上げた。


「承知しました。では… お車にどうぞ」


永瀬は恭しくお辞儀をすると 柚子の方に手を差し伸べた。


途端に柚子はほんのりと頬を染め 一瞬迷った後 そっとその手の上に
自分の手を乗せた。


永瀬はやわらかく微笑み、柚子の手を握り締めると ふと何かを思いついたような
顔をして彼女を見た。


「そうだ、写真を撮ってあげよう。お母さんも呼んでおいで」


「え? でも、さっき、七五三…って」


「からかったんだよ。
 本当は よく似合ってると思うし… とても綺麗だ」


「え…」


「祝、成人…だな。 おめでとう」


「ありがとう、永瀬さん。
 あの… 永瀬さんもステキです。 …いつもだけど。
 そのジャケット… そんなふうに やわらかな色も似合うんですね」


「それはどうも」


新春の柔らかな薄い日差しを浴びて、いつもより明るめのキャメルの
ジャケットを着た永瀬は 艶やかな晴れ着姿の柚子を眩しそうに見つめていた。

 

 

 

 

 


「どうした? おとなしいね」


車の中で永瀬が柚子に声をかけた。


「え? あ、何でもないです」


柚子は慌てて首を振ったが、それでもまだ 何か気になるのか
浮かない表情をしている。


「何でもないって顔じゃないな」


「え? えっと… その、さっきの写真…」


永瀬に探りを入れられると すぐに白状してしまうところは やはりいつもの
素直な柚子のままだ。


「写真?」


「その… お母さんが すごくはしゃいで 永瀬さんと一緒に撮ったでしょ?」


「うん?」


「お母さんってば、やたら嬉しそうで
 二人で並んでるとすごくお似合いなカンジで…」


永瀬は驚いたように ちらっと横目で柚子を見た。


「娘のわたしが言うのも変かもしれないけど、お母さんってまだ若くて美人だし
 ちょっと悔しかったって言うか… やだ、わたし何を…」


柚子はそこまで言うと、きゅっと唇を噛み締めて黙ってしまった。


「ばかだな、ゆずは」


永瀬はふっと笑うと、今日は柚子の髪ではなく すべすべとした白い頬に手を当てた。


「だって… やっぱり、永瀬さんもお母さんとの方が話が合うみたいだし」


「確かに、年齢も近いし… 世間一般から見れば 似合ってるかもしれない」


「え…」


淡々と言う永瀬の言葉に 柚子はショックを受けたようだった。


「いじわる…ですね」


「ゆず」


「永瀬さんは わたしには意地悪したり からかったりするのに、お母さんにはいつも
 親切なんですね…」


「それは当然だろう?」


「え?」


「ゆずのお母さんなんだから大事にしないとね」


「永瀬さん…」


「お父さんが亡くなってから 一人でゆずを育ててくれた人なんだ。
 ゆずもわかってるだろう?」


「それは わかってます」
 

「お母さんには感謝してるんだ。こんなふうに優しく素直に ゆずを育ててくれて」


「永瀬さん…」


「だから、嫉妬なんかするな」


「え?」


「ゆずの勘違いだから」


「わたし、嫉妬… してたんですか?」


「………」


「わたし… お母さんにやきもち妬いてたの???」


自分の気持ちに初めて気づいた柚子は驚いて声を上げた。


永瀬はそんな柚子を見て 呆れたように笑う。


「えーー、そうだったの? やだっ! 何だか恥ずかしい…」


真っ赤になってしまった柚子を見て、永瀬は首を振りながら言った。


「まったく… やっぱり、ゆずは まだまだ子供なんだな」


「永瀬さん!」

 


もう子供扱いしないでください… って さっき、言ったでしょ?


柚子はまた頬を膨らませると、恥ずかしそうにうつむいた。

 


それは 当分、無理だな… 永瀬はそう呟くと 穏やかに微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

成人式の会場となる区民会館前の道路は混んでいたので、入口より少し前で
車を停めた永瀬は助手席のドアを開けた。


柚子は車から降りようとしたが 慣れない着物の裾が邪魔をして 上手く足を
地面に着けることが出来ない。


どうしよう… 柚子が焦っていると 突然 ふわりと身体が宙に浮いた。


きゃっ! 思わず声を上げた柚子は 永瀬に軽々と抱き上げられ
あっという間に車の脇に降ろされた。


おっと、いけない… 永瀬は 呆然としている柚子の後ろに回り、帯の羽根の
形を整えると 満足したように顔を上げた。

 


「帰りは? また迎えに来ようか?」


「え? あ、はい… 」


「どうした?」


ぼんやりしている柚子を見て、永瀬は怪訝な顔で訊いた。


「あっ、いえ! …その…
 せっ、成人式の後は 中学校の同窓会があるので」


「そう」


「でもっ、夜は家でお祝いしてくれるって… だから、夕方には帰ります!
 あの、永瀬さんも来てくれるんですよね?」


「そのつもりだけど」


「必ず来てくださいね!」


「うん」


「良かった」


「じゃあ、いくら成人式だと言っても ゆずは飲み過ぎないように。
 もし ゆずの帰りが遅かったら 待ってないで、先にお母さんとお祝いを…」


「絶対、永瀬さんより先に帰ります!!!」

 


永瀬が最後まで言い終わらないうちに 柚子は慌てて叫んだ。


そんな必死な様子の柚子を見た永瀬は また可笑しそうに くっくっと笑った。

 

 

 

 

 


「ねえ、ゆず? 相原柚子… よね?」

「やっぱり、ゆずだわ! 久しぶりーーー!」

「今の人 誰? すごくかっこよかった!!!」

「あれ? お父さん… じゃないよね? 親戚のおじさん?」

「えーーー! 叔父さんがお姫様抱っこ~???」

「きゃ~、嘘でしょーーー?」

 


永瀬の車が走り去り、しばらく柚子がその場でぼんやりと佇んでいると 
成人式会場に集まった中学校の同級生達が次々と現れ、声をかけてきた。


艶やかな晴れ着やスーツを着た女子達が、興奮して叫んでいるのは 真面目で
優等生だった柚子が 多分、自分達よりずっと年上の大人の男性に抱き上げられて
登場するという、当時では考えられない光景を目の当たりにしたからだ。

 


「おっ、お姫様抱っこーーー???」


それまで ぼ~っとしていた柚子は 今起こったことが何だったのかを 
やっと理解して 悲鳴に近い叫び声を上げた。

 

 

 

 

 

 

成人式の後の同窓会は出席率が高いという話のとおり、区民会館の近くにある
ホテルのバンケットルームは 大勢の若者達で賑わっていた。


そして、やはりここでも たくさんの女子達に囲まれているのは
中学時代 クラス委員だった相原柚子だった。

 


「ねえ、ゆずはさっきの人と付き合ってるの?」

「え? もしかして恋人???」

「うそー! 真面目なゆずにあんな大人のカレが?」


興味津々の女子達は 賑やかな歓声を上げながら柚子に質問を浴びせる。


「え? あ、あのね… その…」


さっきはぼんやりしてて 彼女達の声も耳に届かなかった柚子だったが
今度は逃げられそうもないようだった。


「その… えっと さっきの人は…」


今、お付き合いしてる人なの… そう言おうとした時だった。


「相原!」


突然、名前を呼ばれて 柚子は振り向いた。


「え?」


「久しぶり」


「… もしかして… 北川君?」


柚子が名前を呼ぶと、彼はうん、と軽く頷き、照れくさそうに笑った。


涼しげな瞳と人懐っこい笑顔が変わらない彼は 柚子と同じクラス委員だった
北川浩司だった。


「わあ、ホントに久しぶり! 元気だった?」


「うん。 相原は全然、変わってないな」


懐かしそうに顔を輝かせる柚子を 浩司は眩しそうに見つめる。


「え、そう?」


「うん。中3の時と まるっきり同じ顔してる」


「えーー、だから今日も七五三か?って言われたんだわ」


柚子は声を上げると 自分の頬を両手で包み込んだ。


「なになに? それって、誰に言われたの?

「さっきの彼でしょ?」


それまで静かに 柚子と浩司の様子を傍観していた女子達が
また話に割り込んできた。

 


…あ~あ。
 ただでさえ、永瀬さんはわたしよりずっと大人で…
 それなのに わたしが中3から全然、変わってないとしたら
 わたしは どうすればいいのーーー??? 
 


気落ちした柚子はまた質問には答えず うつむいてしまった。

 


「でも… やっぱり綺麗になったよな」


「え?」


「相変わらず童顔だけど、そう思う」


「………」

 


突然の浩司の言葉に 柚子ははっとして顔を上げると
目を丸くして彼を見つめた。


浩司は真剣な顔をして 黙ったまま柚子を見つめ返していた……。

 

 

 

 

 


*  *  *  *  *

 

 

 

 

 


日が落ちるとぐっと気温が下がり あたりは寒々とした夕闇に包まれていた。


柚子は家の前まで来ると、立ち止まって浩司を見上げた。


「じゃあ、送ってくれてありがとう」


柚子はそう言うと 笑顔を向けた。


「いや、うちも近いし」


浩司はまた照れたように頭をかいた。


「そうよね。 同じ中学だったんだから、そんなに離れてないのよね。
 でも、今まで、全然 会わなかったね?」


「俺は相原のこと 何度か見かけたことがあるんだ」


「え?そうなの?」


「高校の時、朝の通学時間に 駅の反対側のホームに立ってた」


「へえ、北川君も同じ時間帯の電車に乗ってたの?」


「うん」


「今はW大の理工学部でしょ? すごいわあ。
 中学の時も数学とか物理が得意だったものね!」


「そうでもないよ。 なあ、相原…」


浩司は笑いながら言うと、すっと手を差し出した。


柚子は 何?と言うように首を傾げた。


「今日、久しぶりに会えて嬉しかったから… 握手!」


笑顔を浮かべながら言う浩司に 柚子もくすくす笑いながら手を差し出した。


「わたしも… 楽しかった」


「じゃあ、また いつか会おうな」


「うん」

 


二人が笑いながら握手をしていると、通りの向こうから一台の車が近づいて来た。


そして車のライトが二人を照らしながら ゆっくりと柚子の家の少し手前で停まった。


眩しいライトに目を細めながら 柚子はその車の方を見たかと思うと
握手していた浩司の手からするりと抜けて、すぐにその方向に向かって走り出した。

 


「永瀬さん!」

 


慣れない着物と草履のせいで 早く走れない柚子は 小走りで向かって行く。

 


ライトが消えて、運転席からゆっくりと降り立った永瀬は 静かに柚子を見た。


そして その後、ぞくっとするほど冷やかな視線を 彼女の肩越しのその先に向けた……。

 

 
















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aoi32
Francoisさん、ありがとうございます。⑤ですね(笑) え、永瀬に大人として迫って欲しい? きゃ~、どうすればいいんでしょう^m^ あの~、具体的に教えてくださーい(笑) 2011/01/21 17:54
aoi32
takitubosanさん、ありがとうございます。そう、永瀬には悲しい過去が~(笑)だから、つい 二十歳の男子にもイラついてしまうのかも^^ 2011/01/21 17:50
aoi32
kutauniさん、ありがとうございます。ライバル登場! 今までは何の波乱もなく穏やか~に進んでいたので、この辺で少し、ね^^(笑) 2011/01/21 17:46
aoi32
bitaminさん、ありがとうございます。北川君、ちょっと若すぎて永瀬の敵ではないような気もしますが がんばってもらいましょう~(笑)永瀬には若い男子に負けたという過去もあるし^m^ 2011/01/21 17:42
aoi32
ヨンkissさん、ありがとうございます。ヨンですね(笑) 嫉妬する話って何だか書いてて楽しいの♪相手に対する気持ちも確認できるし、二人の中も接近していきまーす^^ 2011/01/21 17:35
aoi32
かえどんさん、ありがとうございます。これからの二人は… やっぱり可愛い(?)感じでしょうか。永瀬も若い女の子相手に苦戦しそうです^^ 2011/01/21 17:28
aoi32
mizsakiさん、ありがとうございます。③ですね(笑) 負けるな永瀬… 相手は二十歳の男子、永瀬が気にすることもないんですけどね。でも、やっぱり嫉妬してしまう、しょうがないですね^m^ 2011/01/21 17:23
aoi32
mizukyさん、ありがとうございます。>おっと大人のはず?の永瀬さん、嫉妬ですか?②、ですね?(笑)その時の冷たい表情を想像すると、ステキ~♪と思う私です^^睨まれてみたい~^m^ 2011/01/21 17:19
aoi32
あきちんさん、ありがとうございます。大人でも永瀬は嫉妬するんです~(笑) 嫉妬は甘く危険な香り… う~ん、柚子が相手だともっと可愛いものでしょうか^^ 2011/01/21 17:15
Francois
おっと大人のはず?の永瀬さん、嫉妬ですか…⑤  柚子ちゃん相手に、可愛くなってく永瀬さんもいいわ~  でも大人の永瀬さんとして柚子ちゃんに迫って欲しいような気も…   この先も楽しみにしてますヨン♡ 2011/01/21 00:54
takitubosan
大人の永瀬氏でもそうか~~。ま~~~以前にもあるものな~、悲しい過去が! 2011/01/20 21:05
kutauni
ライバル登場ですか?大人のはずの永瀬さんの冷たい視線・・。次の展開が楽しみです。すっかりおばさん思考になってます。もてるナァ柚子ちゃん! 2011/01/19 17:35
bitamin317
手強そうな 北川浩司さんが現れましたね 慌てる永瀬さん  俄然面白くなってきました 可愛い柚子ちゃんはどうなるのでしょう 2011/01/19 14:41
ヨンkiss
おっと大人のはず?の永瀬さん、嫉妬ですか・・ヨン♪ 妬き持ちで子供扱いした永瀬さ~ん 柚の事言えないですね!! 2011/01/19 02:56
かえどん
これから二人はどうなるのぉ~今年も読ませていただきます。よろしくお願いしますね。 2011/01/18 21:57
mizsaki
おっと大人のはず?の永瀬さん、嫉妬ですか?③ いや・・可愛いね! 嫉妬にも気づかず、鈍感?うぶ?な柚子ちゃん大すきです。 がんばれ柚子 負けるな永瀬?  2011/01/18 17:54
mizuky
おっと大人のはず?の永瀬さん、嫉妬ですか?②むふふ・・お互いに嫉妬しちゃってぇぇぇ~似たもの同士ねー♪かわいいっ!!!!! 2011/01/18 16:43
あきちん
おっと大人のはず?の永瀬さん、嫉妬ですか(笑)。 2011/01/18 13:51
 
 

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