ブロコリ サイトマップ | ご利用ガイド | 会員登録 | メルマガ登録 | 有料会員のご案内 | ログイン
トップ ニュース コンテンツ ショッピング サークル ブログ マイページ
aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
サークルオーナー: aoi32 | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 297 | 開設:2008.03.05 | ランキング:100(3927)| 訪問者:1337653/1874894
開設サークル数: 1238
[お知らせ] 更新のお知らせ
容量 : 30M/100M
メンバー Total :297
Today : 0
書き込み Total : 957
Today : 0
マイガール
恋した彼は親友の叔父さんだった!  クール&スマートな永瀬を取り巻くラブコメディー©
No 14 HIT数 6657
日付 2011/02/08 ハンドルネーム aoi32
タイトル マイガール -14- 抱きしめないで
本文 マイガール




 -14- 抱きしめないで

 

 

「…ジェシカ…」


「ハイ?」


「いつまでこうしてるつもりだ?」


「ナガセがその気になるまでデス」


「ふざけるな」


「ァ…」

 


ずっと、抱きついたまま離れようとしないジェシカに耐え切れなくなった永瀬は
ついに怒り出して、やや乱暴に彼女の腕を掴んで引き離し、その身体を押し退けた。


「もうすこし抱きあって、あたたまりまショウ ナガセ。
 トーキョーはとてもさむいデース。雪もふってきたし…」


ジェシカはそう言うと、いそいそと永瀬の方に手を伸ばして また抱きつこうとする。


「ウソつくな。フィレンツェとここは似たような気候のはずだ」


永瀬は冷たくあしらうと ぷいっと横を向いた。


「…?…」


途端に永瀬は怪訝な顔をして、何かを確かめるように遠くを目で追う。


「どうかシマシタ?」


「え? ああ、何でもない」

 


…気のせいか?


一瞬、木々の間に見えた 走り去る後姿が 柚子に似ていたような気がした。

 


「…それで、わざわざ呼び出した理由は何だ?」


気を取り直した永瀬はジェシカに目を向けた。


「決まってるデショ? ナガセとデートしたかったんデス」


「悪いが、そんな暇はない」


「そんなこと言わないでクダサイ! ワタシには時間がないのデス!
 今日ぐらいつきあって、ネ? ナガセーーー!」


今日も永瀬の素っ気ない態度にもめげず、ジェシカは強引に彼の腕にしがみつくと
引っ張るように歩き出した。


…しょうがないな… 永瀬は仕方なく一緒について行く。


どうしても完全に突き放すことができない


この、やたら明るくて陽気なイタリア娘には借りがある…  


無愛想な永瀬の顔を見たジェシカは くすくす笑い出すと、そっと空を見上げた。


いつの間にか 雪も本格的に降り出し、辺りをうっすらと白い色に染めていく。

 


「ワォ…! ロマンティックですネーーー!
 こんな日にナガセと一緒だなんて 最高にうれしいデス!!!」


ジェシカはそう言うと、うっとりとした様子で永瀬に寄り添った……。

 

 

 

 

 


その夜。

 


「…叔父ちゃん? いないわよ。出かけたみたい。携帯? 忘れてったみたいね、
 テーブルの上にあったもの。なあに? ずっと連絡が取れないの?」


外から帰って来たばかりの彩は 柚子からの電話を受けながら部屋の中を見回した。


「どうしたの? ゆず、何だか元気ないみたいだけど… 叔父ちゃんと喧嘩でもした?
 …って、そんなはずないね。 え? 何でもない? そう、うん わかった。
 …やだ、大丈夫よ。きっと原稿を書き終えたから夜遊びしてるのよ。そのうち帰って
 来るんじゃない? うん、じゃあね…」


電話を切ると、彩は怪訝そうに携帯を見た。

 


…ゆずってば、どうしたのかな? 何だか様子が変だったわ…

 


彩が首を傾げて考えていると ちょうどその時、永瀬が帰って来た。


「叔父ちゃん、どこ行ってたの? ずっと連絡が取れないって ゆずが心配してたよ」


「ああ、携帯を持っていくのを忘れて…」

 


永瀬はコートを脱ぐと、すぐに携帯電話を取ってキーを押した。


数件、着信があり その中に柚子からのものもあった。


永瀬は携帯を耳に当てて呼び出し音を聞いていたが、そのうちにくるっと振り向いて
様子を伺っている彩の顔を見た。

 


「…おかしいな。 出ない…」


怪訝な顔で永瀬が呟いた。


「変ね、今 話したばかりなのに?」


再び、彩は首を傾げると まじまじと永瀬の顔を見た。


「…やっぱり、何かあったんだわ。ゆず、元気なかったの。
 叔父ちゃんったら、何かゆずを怒らせるようなことでもしたんじゃない?」


彩はさぐるような目つきで永瀬を見上げた。


「………」


永瀬はそれには何も答えず じっと考え込むように顎に指を当てると
ゆっくりと視線を落とした……。

 

 

 

 

 


*  *  *  *  *

 

 

 

 

 


翌朝、柚子が部屋で大学に行く準備をしていると 母親の理沙子が永瀬が迎えに
来たと下の階から柚子を呼んだ。


驚いた柚子が慌てて階段を駆け下りると 永瀬が玄関に佇んでいた。

 


「おはよう」


永瀬は柚子の顔を見て 体調が悪いわけではないとわかると 少し安堵したように
微笑んだ。


「おはよう…ございます…」


柚子はぎこちない笑みを浮かべると小さな声で言った。


「昨夜から彼女が電話に出てくれないもので…」


困ったような顔で 少し大げさに言う永瀬に 理沙子は まあ…と驚いたが
柚子は何も言わず、戸惑ったように永瀬を見つめている。


「だから昨夜から元気がなかったのね? 永瀬さん、この子ったら朝ごはんも
 あまり食べてないんですよ、食欲がないなんて言って…」


理沙子は納得した様子で いつもよりおとなしい娘を見た。
 

「やっぱり、直接会って話した方がいいと思いまして… 
 行こう、ゆず 大学まで送るよ」


永瀬はそう言うと柚子の手を掴み、玄関の外に連れ出そうとする。


「それなら ここでお話ししてくださいな。わたしはこれから仕事なので。
 ゆずはまだ時間があるでしょ? お母さん、出かけるから 後はお願いね」


理沙子はそう言うと二人の顔を見て笑った。


「おっ、お母さーん!」


「じゃあ、永瀬さん どうぞごゆっくり。娘のことよろしくお願いしますね」


柚子は困ったように母親に助けを求めたが、理沙子は知らん振りして肩をすくめると
そのまま さっさと出かけてしまった。


後に残された二人は どこか楽しげなその後姿を ぼんやりと見送っていた。

 

 

 

 

 


ソファに座った柚子はうつむいていたまま、じっとしていた。


時折、落ち着かない様子で 何度か膝の上で手を握り締めている。


隣に座った永瀬はそんな柚子を見て ため息をついた。

 


「ゆず、言いたいことがあるなら ちゃんと言ってくれないか?」


永瀬は柚子の横顔をじっと見つめた。


「黙っていたら 何もわからない」


「……」


いつもより強い口調で言われたせいか、永瀬に問い詰められたような気がして
柚子は悲しくなってきた。


そして 昨日の雪が降る中で見た光景を思い出して、涙が出そうになったが
じっと我慢して小さく唇を噛んだ。

 


「…わたしも… わからないんです。
 永瀬さんのこと、わたし、本当は何も知らないんだなって… それがわかって。
 だからと言って どうすればいいのか、それもわからなくて…」


やっと、口を開き始めた柚子の声は 弱弱しく、震えていた。


「永瀬さんは大人で、だから 今まで、いろいろあったのは当然で… わたしの
 知らない女の人とお付き合いしてきたってことも わかってるんですけど…」


…やはり、あの時 公園で見たのはゆずだったのか… 永瀬は確信した。


「永瀬さんは とっても優しくて、大切にしてくれるけど… わたしのことを
 どう思っているのかわからなくて… 永瀬さんの本当の気持ちがわからないんです」


そこまで言って、ついに柚子の大きな瞳から涙がこぼれ落ちた。


永瀬は驚いて言葉を失った。


柚子が泣くのを見たのは初めてだった。


今までも感激して目を潤ませたり 泣きそうな顔をしたことはあったが
こうして、頬を濡らすような柚子の涙を見たことはなかった。

 


…泣かせてしまった… 


華奢な肩を震わせて、悲しそうに泣いている柚子を見て 永瀬はかなりうろたえた。


今まで柚子を子供扱いして、冷静に余裕のある態度で接してきたはずなのに…


柚子が嬉しそうに笑っている顔を見たくて あれこれとしてきた永瀬だったから
彼女の涙は彼をひどく後悔させた。

 


「ゆず…」


いつになく気弱になった永瀬は 恐る恐る手を伸ばすと 柚子の頬に光っている涙を
指で拭い取った。


「…永瀬さん…」


戸惑ったような柚子の顔を見た永瀬は そのまま彼女を抱き寄せると その白い頬を
両手で包み込み そっと唇を重ねた。


途端に柚子の身体はぴくっと小さく動き、ほんの少しだけ抵抗する素振りを見せたが
短いキスを何度も重ねているうちに 次第に静かになっていった。


今までのような軽く触れ合うようなキスではなく、永瀬のやわらかな唇が柚子のそれを
深く、甘く、情熱的に包み込んで 体中を熱くしていく。

 


… 永瀬さ…ん …

 


キスの合間に見せる柚子の目は潤んでいて、何か言いたげな表情だったが 寛容も理性も
無くした今、永瀬は何も受け入れようとはせず、感情の赴くまままま 震える華奢な身体を
抱きしめ、キスを重ねていく。


もう何も考えられなくなった柚子は 永瀬の背中におずおずと両手を回すと 自分の身体が
崩れ落ちないように必死でしがみつきながら その熱い思いを受け止めようとしていた……。

 

 

 

 

 


「なんだー、そうだったんだ! あの女の人はお友達だったんですね?」


それまで泣いていた柚子はどこにいったのか、すっかり安心した彼女はにっこり笑うと
永瀬の肩に顔をそっと乗せた。


頬はうっすらとピンクに染まり、潤んだ瞳はぼんやりと遠くを見つめている。


うん… 永瀬はうなずくと柚子の肩を抱き、もう片方の手で頭を撫でると
彼女はうっとりと気持ち良さそうに目を閉じた。


以前、本を書けなくなって旅に出た時に イタリアで会ったのがジェシカだったと
説明すると 柚子はすぐに理解して納得したようだった。


「その頃の僕は この世の終わりだ… というような顔で落ち込んでいたらしいから
 明るくて陽気な彼女には何度も助けられた」


永瀬はその頃のことを思い出して苦笑いをした。


「そうだったんですか。 イタリアから来た方なんですね。 じゃあ、本当に親愛を込めたハグ…
 だったんですね。 …なのに、わたしったら またやきもち妬いて…」


「ゆず」


「やっぱり まだまだ子供なんだ、わたし。ごめんなさい、一人で拗ねたりして…」


柚子はそう言うと、また昨日のことを思い出してジ…ンとしたのか 目尻にたまった涙の
粒をそっと指で拭った。


雪が降っていたから… よけいに情熱的に見えたのかもしれない… 柚子は思った。


「…永瀬さんとわたしは相思相愛だって… そう言ってくれたのに…」


嬉しそうに頬を染める柚子に 永瀬は思わずはっとした。


そしてまた そっと指を近づけて 柚子の白くやわらかな頬を撫でた。

 


「永瀬さ…ん?」


永瀬が黙ったままじっと見つめているので 柚子はぎこちなく笑うと
遠慮がちに彼を見つめ返した。


「僕の言うことは 何でも信じるんだな」


「え?」


「僕が嘘を言ってるとは思わない?」


「そんなこと… だって、永瀬さんは冷たそうに見えるけど 本当は誰よりも
 優しいって知ってますから。 だからジェシカさんっていう人にも… 」


永瀬は自分の胸が震えているのがわかった。


素直で、素直で、呆れるくらい素直な柚子…

 

永瀬はまた柚子の腕を引き寄せて きつく抱きしめた。


小さな悲鳴を上げた柚子は 永瀬の胸に頬を寄せた。

 


…でも… わたし 本当は思ってる


こんなふうに永瀬さんが抱きしめる人は わたしだけだったらいいのに…って


そんなことを願うのは わたしのわがまま?

 


永瀬の胸の中で 柚子は顔を上げるとすがるような目で彼を見つめた。


「あの… 永瀬さん」


「うん?」


「ひとつだけ、お願いが… あります」


「何?」


「これからは もう… 他の女の人を抱きしめたりしないでください」


「え…?」


「親愛のハグも だめ…です」


「…わかった」


「ホントに?」


「ああ、ゆずの頼みなら聞くしかないな」


「嬉しい…。 ありがとう、永瀬さん。
 …でも、その代わり… わたしのことは いつでも抱きしめていいですから」


「それは… 光栄だな」


ふわり…と永瀬はやわらかく微笑むと 早速、柚子を抱きしめ 柚子は永瀬の胸の中で 
とても幸せそうに目を閉じた。

 


「…でも…」


やわらかくて甘い香りがする柚子を思いのまま抱いていた永瀬は ふと何かを
思いついたのか、ぼそっと呟いた。


柚子が不思議そうに顔を上げると 永瀬はじっと何かを考えてるようだった。

 


「でも… そんなこと言って後悔しないか?」


「はい?」

 


何のことかわからず目を丸くした柚子に 永瀬はまるで何かを企んでいるように
悪戯っぽく笑いかけた……。

 

 






 



 







前の書き込み マイガール -15- チョコレ...
次の書き込み マイガール -13- 相思相愛...
 
aoi32
kutauniさん、ありがとうございます。ナイスフォローの永瀬とかわいい柚子… そう言っていただくと すご~く嬉しいです^^これからもお時間ができましたら また読んでくださいね♪ 2011/02/16 22:25
kutauni
すっかり出遅れてすみません!永瀬さん、ナイスフォロー、流石です。ハグもだめというゆずちゃん、かわいいです。なんかくすぐったい! 2011/02/15 11:41
aoi32
mypiccoloさん、ありがとうございます。誤解が解けるのが ちょっと早すぎるかとも思ったのですが。でも楽しんでいただけて良かったです^^次回もお付き合いくださいね。 2011/02/13 22:11
aoi32
hiroさん、ありがとうございます。ああ、そうですね。柚子のように純粋すぎる子は 今まで永瀬の周りにはいなかったので 彼も戸惑い、今までと違う行動に出てしまうんですね。次回もお付き合いくださいね^^ 2011/02/13 22:09
aoi32
あきちんさん、ありがとうございます。素直な柚子は ちょっとひねくれた永瀬にとっては貴重な存在なのかも^^ 次回もお付き合いくださいね♪ 2011/02/13 22:02
aoi32
bitaminさん、ありがとうございます。次回はもっと甘いですよ~^^何たってバレンタインだから♪ 永瀬の企みも甘いものです(笑) 2011/02/12 22:51
aoi32
takitubosanさん、ありがとうございます。永瀬の悪だくみ? それは可愛いものですよ(笑)次回もお付き合いくださいね。 2011/02/12 22:48
aoi32
ヨンkissさん、ありがとうございます。柚子の誤解はすぐ解けたけど、この後がね~(笑) いまのところ 永瀬は何とか理性を持っているでしょうか。 2011/02/12 22:46
aoi32
pichuuさん、ありがとうございます。永瀬の企み、悪戯、なぜか子供っぽくなっていく彼の行動をお楽しみに~♪ 2011/02/12 22:39
mypiccolo
すぐに誤解が解け仲直りできて良かった~(*^_^*) さて、永瀬さんの企みって・・・? 2011/02/10 14:51
hiro305
永瀬さんの言葉は何でもそのままに信じてしまう柚ちゃん、あまりにpureすぎてかえって永瀬の方が戸惑うかも・・・^^彼も可愛くてつい真剣になってしまうのね。うん、良い傾向だわ~(笑) 2011/02/09 22:48
あきちん
素直で、素直で、呆れるくらい素直なゆずちゃん・・・抱きしめて懐から出したくなくなったでしょ、永瀬さん(笑) 2011/02/09 15:29
bitamin317
甘くてとろけそうなお二人ですね 永瀬さんの企み? さて何でしょう? 企みも返って楽しみです 2011/02/09 11:35
takitubosan
よかった、よかった。でも永瀬の悪だくみ、ふふふ楽しみだな~~。 2011/02/09 08:45
ヨンkiss
ゆずちゃん、誤解が解けて仲直り出来て良かったね♪ゆずの事はいつでも抱きしめていいなんて・・・永瀬さん、何かを企んでいる?理性飛ぶ日が近いのかなあ?!!(#^.^#) 2011/02/09 02:10
pichuu18
仲直りできてよかったですね。永瀬さんの悪戯っぽい笑顔に含まれているのは。。。キャー、展開しちゃいますか? 2011/02/08 20:33
 
 

IMX