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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
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マイガール
恋した彼は親友の叔父さんだった!  クール&スマートな永瀬を取り巻くラブコメディー©
No 18 HIT数 5574
日付 2011/03/08 ハンドルネーム aoi32
タイトル マイガール -18- 彼の過去
本文 マイガール




-18- 彼の過去

 

 

「…ちょっと、何か聞こえる?」

「何も聞こえないよ、ママ 」

「部屋で二人きりで何してるのかしら」

「そんなコト、きまってマスネ! キスしてるんデスネ!」

「ちょっと、ジェシカちゃんったら声が大きいわよ」

「大丈夫よ。中の話し声が聞こえないんだから、ここで話してるのも聞こえないわよ」

「あの、でも 立ち聞きはやめた方が…」

「でも、相原さんもご心配でしょ? ゆずちゃん、大丈夫かしら。
 あ~、もう さと君ったら 何でドアを開けておかないのよ」

「ママったら、中学生じゃあるまいし…」

 


彼女達の考えは甘かった。


部屋の中にいる二人は 頬が触れ合いそうなほど近くで見つめ合って、お互いが
聞こえるくらいの小さな声で囁き合っているのだから 外まで聞こえてくるはずがない。


そして 賑やかな彼女達の声は それとは比べものにならないほど大きかったということ…


だから いきなり永瀬が部屋のドアを開けるとは思ってもみなかった。


どっとなだれ込んだ彼女達に 永瀬はひんやりとした視線を向けながら言った。

 


“この僕が こんな大勢の人間がいる中で そんなことをするような無神経な男に見えますか?”

 


その場にいた女性達は どこか腑に落ちない様子だったが 永瀬の部屋の前で聞き耳を
立てていたという負い目もあり、有無を言わせない彼の鋭い眼差しにゾクッとしたこともあって
何とか納得したような素振りを見せた。


だが、ただ一人 恐れを知らない彩だけは ふんっと笑った。

 


「叔父ちゃん、以前 彩に言ったこと忘れてない?」


彩はそう言うと偉そうに腕を組んだ。


「ゆずは隠し事が出来ない…って、そう言ったのよ。
 …で、今 そこにいるゆずの顔を見ても 今と同じことが言える?」


「………」


思わぬところを突かれた永瀬が はっとして後ろを振り返ると そこには顔を赤くして
もじもじしている柚子がいた。


「え? あっ、あの…」


自分のことを言われた柚子はますます慌てて口ごもった。


柚子の白い頬はうっすらとピンクに染まり 大きな黒い瞳と小さな唇はうるうると
艶やかに濡れている。


永瀬はそれを見てふっと笑い 忘れてた… と諦めたように肩をすくめた……。

 

 

 

 

 


*  *  *  *  *

 

 

 

 

 


「何か可笑しいですか?」


いつものカフェで 永瀬は向かい側に座っている編集者の佳奈子を訝しげに見た。


つい思い出し笑いをしてしまった彼女は慌てて口元を押さえたが 我慢できないのか
すぐにまた笑みがこぼれてしまう。


「失礼しました」


何とか気を取り直した佳奈子はコホンと小さく咳払いをすると 永瀬をゆっくりと見上げたが
またぷっと吹き出した。


「………」


たちまち永瀬は不機嫌になり、佳奈子を睨みつけた。


「すっ、すみません… 先生の顔を見ると あの時のことを思い出してしまって」


「………」


「いつも不機嫌そうな顔で人のことを冷めた目で見ている永瀬先生が… 嘘がばれて
 とても困ったような顔をして戸惑っている姿を見たら… 何だか可笑しくて…」


ますます苦々しい顔になっていく永瀬を見て、佳奈子はにっこりとした。


「でも… 何だか安心しました」


「安心した?」


「はい。 いつもクールで 何でも完璧にこなす永瀬先生にも あんな人間的な所が
 おありだったのかと…」


佳奈子の楽しそうな顔を見た永瀬は苦笑いをすると、深くため息をついた。


「僕の弱みを掴んで喜んでるのはわかりましたから、そろそろ仕事の話をしませんか」


半ば投げやりな様子で 永瀬は冷たく言い放った。

 


…先生ったら、あの子には信じられないくらい優しいのに わたしにはこれだもの…

でも、そこがいいのよね…


佳奈子は諦めたように首を横に振ると はい、とうなずいた。

 

 

 


ガラス越しにカフェの中を覗くと すぐに永瀬を見つけた。


向かい側には編集者の佳奈子がいて、何やら書類を見せながら説明している。


永瀬は腕を組んで話を聞いていたが 何度かうなずくと顎に指を当てて考えているようだった。

 


「…まだお仕事中なのね」 今、行ったら怒られそう…


柚子は戸惑い、小さく息を吐いた。


どうしようかな… もう少し外で待ってようか…

 


3月になったとはいえ、肌寒い日々が続いていた。


まだ春の暖かさを十分に感じられないのか 街路樹を行き交う人々の足取りは早い。


頬に冷たい風を感じた柚子は ぶるっと震えながらジャケットの襟をぎゅっと掴んだ。

 


「…相原?」


突然、後ろから声をかけられて 柚子は振り向いた。


「北川君?」


「ここで何してるんだ?」


中学校の同級生 北川浩司が驚いた顔で柚子を見ていた。


「あ、うん。 ちょっと待ち合わせしてて… でも 早く来過ぎちゃって」


「店の中で待ってればいいのに」


「うん、ちょっと事情があって… それより北川君は?」


「俺はバイトに行く途中なんだ」


「え? どこでバイトしてるの?」


「その先の学習塾で講師してるんだ」


「すごい~!数学とか教えてるの?」


「うん」


「北川君なら何でも丁寧に教えてくれそうだから、生徒達に人気あるでしょ?」


「そんなことないよ。毎回、小テストばかりしてるからブーブー言われてる」


「わぁ、それはわたしも嫌かも」


柚子が声を上げると、浩司は笑い出し そして しばらくするとそれを止めて彼女を見た。


「…相原」


名前を呼ばれて 柚子が見上げた時だった。


「ゆず!」


いきなり腕を掴まれて 柚子が驚いて振り向くと そこには険しい顔をした永瀬がいた。


「永瀬さん!」


「ここで何してる?」


永瀬は柚子を見てそう言うと、ゆっくり視線を移して浩司を見た。


そのひんやりとした眼差しに 彼はぞくっと身震いをしてしまった。


「え? あ… 永瀬さん、まだ打ち合わせしてるみたいだったから」


「それは終わったから 行こう」


「え?あっ、あの…!」


慌てる柚子にはそれ以上何も言わず、永瀬は彼女の手を掴んだまま 強引に歩き出した。


柚子は永瀬に手を引っ張られるようにして、後から小走りでついて行く。


まるで風にさらわれたかのように、あっと言う間にその場からいなくなった柚子の
小さな後姿だけが 遥か遠くに見えた。


後に残された浩司は 呆然としたままその場に立ちすくんだ。

 


「… あなた、もしかして 北川君?」


突然、名前を呼ばれて 浩司がびっくりして振り向くと そこには一人の女性がいて
ニコッと綺麗に笑いかけてきた。


「え? どうして名前を…?」


「それは 女子会… いえ、あなた ゆずちゃんと同級生だった人でしょ?」


「え? 相原のことも知ってるんですか?」


「ええ。 それから… ゆずちゃんには今の彼がついてて… しかもその彼は 相当
 嫉妬深いから、北川君も大変だな~と同情してるの」


「確かに… さっきも もの凄く怖い顔で睨みつけられました」


「やっぱりね」


「俺… これから先もずっと 相原と話すこともできないんですか?」  


情けない顔をして訊いてくる浩司を見て、佳奈子はう~んと首を傾げて腕を組んだ。

 

 

 


「なっ、永瀬さん 待って! 苦しい… です」


ずっと手を引っ張られたまま連れて行かれる柚子は とうとう苦しくなって声を上げた。


はっとした永瀬は振り返り、やっと気づいたのか立ち止まった。


「ああ、ごめん… 大丈夫か?」


「永瀬さん… 歩くの速い…から…」


息を弾ませながら見上げると 少し戸惑ったような永瀬の瞳が柚子を見ていた。


「また北川君を置いて来てしまいました」


「………」


「もしかして… また ヤキモチ…ですか?」


「…そんなはずないだろう?」


「あ~! やっぱりそうなんですね?」


「違う」


永瀬は何とか平静を装おうとしているが、そんな彼の姿も見慣れてきた柚子は
思わずぷっと吹き出してしまった。


「もう、永瀬さんったら…」


ホントに子供みたい… でも、その言葉は胸の中にしまって言わない。


そんなことを言ったら たちまち永瀬が不機嫌になることはわかっているから…


永瀬がまだ何か言いたげな顔をしているを見た柚子は 彼の腕につかまって背伸びをすると
そのひんやりと綺麗な頬にチュッと軽くキスをした。


「!!!」


突然の出来事に さすがの永瀬も驚いて柚子を見た。


柚子はくすっと笑い、そのまま永瀬の腕に両手を回してそっと寄り添った。


「わたしには永瀬さんだけです… わかってますよね?」


「…そうだな」


うっとりと目を閉じた柚子の頭の上で 永瀬の低い声が心地良く響く。

 


…やっぱり可愛い… 絶対、言えないけど…


最初会った時は 永瀬さんはすごく大人で、頼りがいがあって、とても遠い存在だったのに


今は 何だか子供みたいに無邪気なところもあって親しみを感じるの…

 


その時だった。


どこか ハッとした永瀬の気配が柚子にも伝わって来た。

 


「…久しぶり」


永瀬の声に ふと柚子が顔を上げると そこには明らかに驚いた様子の彼がいた。


「本当に久しぶり… 聡さん、元気だった?」


永瀬の視線の先にいた 一人の女性も驚き、顔をぱっと輝かせて笑った。


「ああ、奈緒は? 変わりないか?」


「ええ、相変わらず風邪もひかないわ」


彼女はそう言うと 永瀬と腕を組んで ぴったりと寄り添っている柚子に気づいて
まあ…と やわらかく微笑んだ。


「可愛らしいお嬢さんと一緒なのね。聡さんのガールフレンド?」


目を見張るほどの美しい笑顔を向けられて柚子も驚き 慌てて永瀬から離れると
恥じらいながら頬をピンクに染めた。


「こんにちは。 わたし、藤木… 藤木奈緒といいます」


「こんにちは。 あの… 相原柚子です。はっ、初めまして」


「本当に可愛いのね。聡さんったら、いつの間に… やるじゃない?」


奈緒にからかわれた永瀬は 無言で少し照れたように笑っただけだったが それを見た奈緒は
悪戯っぽく微笑むと、永瀬を軽く睨み またクスクスと笑った。


「聡さんの… そんな顔を見たのは久しぶりだわ」


ふと懐かしそうな顔をした奈緒を見て 永瀬も目を細めた。


「奈緒は… まだ装丁の仕事をしてるのか?」


「ええ、今の夫はとても理解がある人だから… 誰かさんと違って」


「………」


「冗談よ。昔の彼も仕事に関しては とても理解がある人だったわ」


奈緒はそう言うと楽しそうに笑い出し、永瀬の顔を覗き込んだ。


困ったような顔をしている永瀬の隣で 柚子がきょとんとしている。


奈緒は柚子に向かって微笑むと、何度か頷いた後 納得したように言った。


「じゃあ、わたし そろそろ行くわね」


「ああ、元気で」


「聡さんもね」


奈緒はそう言うと またにっこり微笑み 背を向けて歩き出した。


永瀬は黙ったままその後姿を見送っていたが、柚子が自分を見上げているのに気づくと
彼女の肩を抱き寄せた。


行こう… と言って、永瀬は柚子の肩を抱いたまま 一緒に歩き出した。


柚子は何か言いたげに永瀬を見上げる。


何かを考えているような どこか寂しそうな横顔。

 


今の女の人は誰だろう… 永瀬さんのことを“聡さん”と親しげに呼んでいた
わたしよりもずっと年上で大人の美しい人…


「すごく綺麗な人でしたね! 知り合いの方ですか?」


何となく、彼女のことが気になった柚子は軽い気持ちで尋ねた。


「え? あ、ああ… 彼女は昔からの知り合いで…」


いつもと違って歯切れが悪く、途中で口をつぐんでしまった永瀬に 柚子は首を傾げた。


「永瀬さん?」


柚子が聞き返すと 永瀬はそれまでの歩みを止めてその場に立ち止まった。


そして 柚子の顔をゆっくりと見つめた。


「違う… 彼女は単なる知り合いではなくて 僕の妻だった人だ」


言葉を選びながら言う永瀬の声が 躊躇いがちに低く響いた。


「え…?」


思いもよらない答えに 柚子は驚いて声を上げた。


「10年前に結婚して… 3年間、一緒に暮らして 別れた…」


「そう…だったんですか」


頭の中が真っ白になった柚子は声を震わせている。


「…ゆず?」


「やだっ! わたしったら、何でこんなに驚いてるのかな。 
 ちゃんと知ってたのに… 永瀬さんが結婚したことがあるって… 知ってたのに…」


何とか平静を取り戻そうとするが、それも空しく柚子の顔は見る見るうちに歪んでいく。


「ゆず…」


永瀬もそんな柚子を見て、どうすればいいのかわからないまま彼女の腕を掴んだ。


戸惑い、困惑した永瀬は何も言わずに柚子を見つめている。


「永瀬さん… そんな顔しないでください」


今にも泣きそうなのに、それでも柚子は悲しげに微笑んだ。


「何を考えてるんだ?」


「わたし… 頭の中ではわかってるんです。もう、過去のことなんだって…
 今の永瀬さんはわたしのことを好きでいてくれるんだって… わかってるんです。
 でも… どうしても気になってしまう… 永瀬さんが愛して、結婚までした人なんですよね?」


「ゆず…」


「ああ… でも、心配しないでください。わたし、単純だから… 一晩ゆっくり寝て、明日になれば
 きっと元気になってるから… 今はちょっと混乱してるけど、大丈夫ですから…」


「ゆず、ちょっと待って…」


「ごめんなさい。 だから… 今日は帰ります… …」


柚子はそう言って 引き止めようとする永瀬の手から離れると くるっと背を向けて 
そのまま逃げるように走り去った……。

 





 











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aoi32
kutauniさん、ありがとうございます。永瀬にガツンと決めてほしい… どうでしょうか、どちらかというと 永瀬よりも柚子のほうが。。続きを読んでね。 2011/04/05 17:46
aoi32
ヨンkissさん、ありがとうございます。このコメントを頂いた時は…と思うと、言葉がありません。永瀬の理性が飛ぶ日?そうですね、近いかも~??? 2011/04/05 17:43
aoi32
ちのっちさん、ありがとうございます。ちのっちさんの言葉は柚子の気持ちそのものです。柚子の複雑な思いはどうなるのか、続きを読んでくださいね。ありがとう~^^ 2011/04/05 17:38
aoi32
違う、ヨン週間でした!え~、そんなに経ったんですね。。。 2011/04/05 17:35
aoi32
かえどんさん、ありがとうございます。一週間どころか三週間にもなってしまいました。ごめんなさい。続きを入れましたがどうでしょうか。。。 2011/04/05 17:30
aoi32
mizukyさん、ありがとうございます。そう、その通りなんです。柚子も頭ではわかっているんですが、元ヨメの存在は大きいです。 2011/04/05 17:28
aoi32
BABARさん、ありがとうございます。一番のりでした^^ さと君、さとチャン 柚子の誤解を解かなくちゃね。でも彼は意外と情けない??? 続きを読んでね。 2011/04/05 17:26
aoi32
お返事が遅くなってしまいました。もう続きもUPしてしまったりして~。本当にごめんなさい。 2011/04/05 17:23
aoi32
皆さん、コメントをありがとうございます。いろいろあって ちょっと気持ちが揺れていますので、後ほどお礼のコメントを入れさせていただきますね。すみません。。。 2011/03/12 22:32
kutauni
ゆずちゃんの動揺、わかっていても複雑ですよね。永瀬さんここはひとつガツンと決めてくださいね!! 2011/03/09 13:10
ヨンkiss
偶然とはいえ元妻に会った永瀬さん動揺したけど・・ゆずちゃんは元妻の事を思うと普通じゃいられないよね。永瀬さんの理性が飛ぶ日が近い?かも・・^_^; 2011/03/09 03:10
ちのっち
自分の知らない永瀬さんを知っている人・・・。永瀬さんが一度は真剣に愛し一緒に暮らした人・・・。わかっちゃいても頭ん中ぐちゃぐちゃだよね、ゆずちゃん^_^; 2011/03/08 23:48
かえどん
え~どうなるのお・・・・・次回のお話まで、一週間がとても長く感じそうです。 2011/03/08 22:06
mizuky
元ヨメに会っちゃったのね。。そりゃあ~ゆずちゃんもやきもちも妬くわ。頭でわかってても心はついていかないよね。何とかしてあげてほしいわ。。 2011/03/08 18:13
BABAR
さと君のやきもちの次は柚ちゃんだ~~!柚ちゃんの不安を早く解消してあげてよね。クールなさとチャン(><;)はぁ~一番のりかな? 2011/03/08 12:33
 
 

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