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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
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マイガール
恋した彼は親友の叔父さんだった!  クール&スマートな永瀬を取り巻くラブコメディー©
No 19 HIT数 5080
日付 2011/04/05 ハンドルネーム aoi32
タイトル マイガール -19- 春の予感
本文 マイガール




-19- 春の予感

 

 

哀愁を背負った永瀬がバーカウンターで飲んでいた。


それに付き合わせられているのは 友人で大学准教授の深沢潤。


「つまり… ピュアな柚ちゃんには 奈緒さんの存在は刺激が強すぎたってことか。
 そうだよな、いくら君に結婚歴があると知ってても、実際その相手を目の当たりにしたら
 かなり動揺するに決まってるさ。
 あの年頃特有の潔癖さも加わって… きっとショックだっただろうな」


深沢はしみじみ言うと、さっきから隣で黙々とカクテルを飲んでいる永瀬の顔を覗き込んだ。


「おっと… 落ち込んでる奴はここにもいたか」


「からかうな」


永瀬がつまらなそうにぼそっと呟くと、深沢はふっと笑った。


「まあ、そんなに気にするな。 柚ちゃんもそうだけど、女っていうのは
 男が思ってるより強いし、柔軟性もある。それに 優しくて可愛い」


「それは 深沢の個人的な意見か?」


「まあ、そうだ。 だから 大丈夫さ、明日になれば いつもの元気な彼女に戻ってるよ。
 本人が言ったように…。あの子は永瀬が思っているより、ずっと大人だよ」


「それならいいが…」


「何だ、君にしては かなり弱気だな」


「弱気にもなるさ。あんな顔を見たら…」


「そうか」


「いつもまっすぐに見つめてくる、あの呆れるくらい素直な彼女が もう目も合わせなくなって
 離れてしまったら… そう思うと たまらなく怖いんだ」


「永瀬…」


いつもクールで、どこか冷めた永瀬の心の内を知ったような気がして 深沢は驚いて彼の
憂いを含んだ横顔を見た。

 


本気なんだな… 

 


「そうか。 …まっ、今夜は飲もう。 付き合うよ」


深沢はそう言って笑うと 永瀬の肩を軽く叩いた。


ああ…と力なく答える永瀬を見て、深沢は苦笑した。

 


まったく… 何て顔をするんだ?


以前にもこんな顔をした永瀬を見たことがある


そう… 奈緒さんとの結婚生活ですれ違いが多くなって 相手の考えてることが理解できずに
もうだめかもしれないと悩んで すっかり自信をなくしていたあの時だ


でも 今回はそうじゃないだろう?


君は心から何とかしたいと思っているはずだ…

 


深沢は昔のことを思い出して、あれから もう何年も経ったのだと感慨深かった。

 


「ところで… 話は変わるが、奈緒さんと言えば いつだったか案内状を送ってきたことが
 あったな。再婚相手がイタリアンレストランを開いたとかで…」


深沢は 沈んだ雰囲気を少しでも変えようと別の話を始めた。


「そうなのか? 知らなかったな」


「気を遣ったのかもしれないな。さすがに永瀬には送れなかったんだろう」


「そうだな。…それで、場所は?」


「確か… 京都だったはずだ」


「京都?」


「そうだ。 だから青山で奈緒さんに会ったって聞いて意外な気がした。
 京都にいるはずの奈緒さんが東京に出て来たのかと…」


「詳しくは聞いてないが、今も装丁の仕事をしてるって言ってたから その打ち合わせか
 何かで こっちに来たんじゃないか」


「そうか、そうだな」


深沢は納得したのか 静かにカクテルを口に含んだ。


永瀬は顎に指を添えて何か考えてるようだったが、しばらくするとマティーニの
入ったグラスを手に取った。

 

 

 

 

 


「ゆず? 帰ってたの?」


仕事から帰って来た理沙子は 二階の柚子の部屋の明かりがついてるのを見て
ドアを開けて顔を覗かせた。


「…お帰りなさい」


ひっそりとベッドに座っていた柚子は ゆっくり顔を上げると力のない声で返事をした。


「早かったのね。今日は永瀬さんと食事してくるって言ってなかった?」


「うん…」


「なあに? 元気ないのね。 今日は何をご馳走になったの?
 今度はまたうちに来てもらって、一緒に食事しようね」


「そうね…」


「ゆず? 何か変ね。 ケンカでもした?」


「ううん」


「また ゆずが誤解して 一人で怒ってるんでしょ?」


「違うの… あのね、お母さん…」


一人で悩んでいるのが辛くなった柚子は理沙子に話し始めた。

 

 

 

 


「…だから、お母さん 最初に言ったでしょ?
 そんな16も年上の離婚歴がある人とお付き合いするなんて 大丈夫なの?
 周りにはもっとゆずに合うような人がたくさんいるのに…って」


「………」


「もう永瀬さんはやめて、他の同年代の人とお付き合いしてみれば? 今なら そんなに
 悲しい思いをしないですむし、これから色々なことを経験すれば視野も広がるわよ」


「お母さん… …」


きっと慰めてくれると思っていた理沙子の思いがけない言葉を聞いて 柚子はショックで
言葉を失ってしまった。


「…なーんて言うと思った?」


「え?」


柚子が驚いて顔を上げると 理沙子は悪戯っぽい笑みを浮かべて柚子の肩に手を置いた。


「あの時ゆずは 大丈夫、過去も年齢も気にしない…って言ってたわよね。
 正直、お母さんは まだまだゆずは子供で何もわかってないなって思ってたの。
 もしかしたら いつか辛い思いをするんじゃないかと心配だった」


「お母さん」


「でも… そう思いながらも 何とかなるんじゃないかって思ったりもした。
 だって、ゆずはお母さんの娘だもの。たった一人の男の人を思い続ける気持ちは
 誰にも負けない… そうでしょ?」


「うん」


「二十歳で結婚してゆずが生まれて、3年後にあなたの父親は亡くなってしまって 
 とても短い結婚生活だったけど お母さんはとても幸せだった。その後、何度か再婚話もあったけど
 その気になれなかった。…こんなお母さんって すごく一途でけな気だと思わない?」


「…自分で言ってる」


柚子はふふっと笑い 得意げな顔をしている理沙子を見た。


「本当のことだもの。子持ちの未亡人だけど、まだ若かったし 今のゆずより
 もっと美人で可愛かったからモテモテだったのよ?」


「はいはい、わかりました。お母さんは今でも可愛くて美人です」


「でしょ? …って、違う。 つまりお母さんが言いたいのは」


「わかってる… 永瀬さんのことを好きな気持ちに変わりはないの。
 初めて会った時からずっと好きで… 永瀬さんのことを知れば知るほど
 もっと好きになっていった」


「ゆず…」


「だから… わたし、忘れてた。 永瀬さんが結婚したことがあるって… 
 永瀬さんにはすごく愛した人がいて、その人と一緒に暮らしてたんだってこと。
 …ううん、違う。 きっと考えないように、忘れた振りをしてたんだわ」


「……」


「それは過去のことで 今は何でもないんだって… わかってる。
 今の永瀬さんは わたしのことを大切に思ってくれているってわかってるの。
 でも、実際にその人に会ったら ああ、本当だったんだなって実感して…
 本当にそんな人がいたんだって… 嫉妬とかじゃなくて、すごくショックだったの…」


一つ一つ言葉を選びながら話す柚子を見た理沙子は娘の頭を何度か撫でると
その白くすべすべした頬を両手で包み込んだ。


「お母さん…」


「それでも… ゆずは永瀬さんのことが好きなんでしょ?」


「うん」


「ほんとに?」


「うん… だから、もう大丈夫」


「そうね、大丈夫よね。 今回のことを乗り越えれば、ゆずはもっと強くなれるわね」


「そうかな」


「これから先も色々なことがあると思うけど、それは今から心配しても仕方ないことだし…
 その時に考えればいいことね」


「…何だかよくわかんないけど、お母さんが すごく楽観的な人で良かったかも」


「そうよ。 でなきゃ、お母さん一人でゆずを育てられなかったわ」


「ありがとう、お母さん」


「やあね、ゆずったら 何? あらたまって」


「うん、なんとなく…」


「変な子ね」


二人は顔を見合わせると同時に笑い出した。

 


…そうね、あれこれ考えてもしょうがないもの…

 


「よし、また明日から頑張ろうーーー!」


「そうよ。頑張りなさい」


「うん。 …ところで、お母さん わたし、安心したら何だかお腹空いちゃった!」


「やっぱり… 食事しないで帰ってきちゃったのね?」


「うん、実は…そうなの」


「しょうがないわね… じゃあ、何か作ってあげるから 待ってて。
 それから、明日になったら ちゃんと永瀬さんと会ってお話するのよ。
 きっと気にしてるわ」


「うん、わかってる」

 


会ったらすぐに ごめんなさいって言うから…


ちょっとショックなことがあると いつも逃げてしまうわたしを許してください


そしたら… またいつものように笑って 抱きしめてくれますよね?

 


柚子は永瀬のことを思うと 今すぐにでも会いたかった。
 
 

 

 

 

 


*  *  *  *  *

 

 

 

 

 


朝の日差しが降り注ぐ中 公園通りを走り抜ける永瀬がいた。


白いトレーニングウェア姿の永瀬は 気のせいか いつもより走るスピードが速い。


まるで何かを吹っ切るように 自分を限界まで追い込んでいるようにも見える。


ふと見上げた視線の先に佇んでいたのは柚子だった。


真っ白なタオルとミネラルウォーターを持って、ほんの少しだけぎこちなく微笑んで…


そんな柚子の傍まで来た永瀬は ゆっくりと足を止めて彼女の前に立ち止まると
息を弾ませながら いつものようにやわらかく笑いかけた。

 


「おはよう…」


「おはよう…ございます」


「今日はまた早いな」


「はい… 少しでも早く会いたくて」


「いいセリフだな」


「そうですか?」


「うん、胸が熱くなる…っていうのかな。 かなり嬉しい…」


子供のように無邪気に笑う永瀬を見た柚子は ドキッとして恥ずかしそうに頬を染めると
おずおずと彼に近づき、その大きな胸におでこをくっつけた。


そして 今にも消え入りそうな声で ごめんなさい… と囁いた。


「何が?」


柚子の頭の上で 永瀬のやわらかな声が響く。


「いろいろ… 昨日、わがままなことを言って突然帰ってしまったこと…
 それから永瀬さんを困らせてしまったこと… きっと、悲しかったですよね?」


「ゆず…」


永瀬は安堵したように ふ~っと深く息を吐くと 柚子を両腕で包みこんだ。


タオルとペットボトルを両手に持った柚子は 手を下ろしたままじっと永瀬に
抱きしめられている。


「そうだな… 確かに昨日はゆずに僕の昔のことで責められて、挙句の果てに途中で逃げられて
 この寒空の下、置き去りにされて凍え死にしそうだったな」


永瀬の胸の中で 彼の恨みがましい言葉を聞いて 柚子は「大袈裟なんだから…」とぼやき
そして くすっと笑った。


「…だから今朝は眠いのを我慢して こうして早起きしてタオルとお水を持って来たでしょ?」


柚子は顔を上げて抗議すると 永瀬を軽く睨みつけた。


「わかってる」


「え?」


「目が赤い… 昨夜は眠れなかった?」


「…そんなことないです」


「そうなのか? 僕はずっと気になって 食事も喉を通らないし、ほとんど寝てないのに」


「え? そうなんですか?」


驚いた柚子は心配そうな顔で永瀬を見つめた。


「酒は浴びるほど飲んだけどね」


「もうっ… だめです、そんなに飲んだら… っていうか、そんなにお酒を飲んだのに
 こんなに朝早くから走っても大丈夫なんですか?」


「大丈夫さ。日頃から鍛えてるから」


「どうして そんなに鍛えてるんですか?」


「それは… 例えば これから先 結婚して子供ができたとして… その子が幼稚園に行ったら
 運動会で父親が走ることがあるだろう?」


「はい?」


「その時 周りにいる若い父親には絶対負けたくないんだ」


「………」


「本気にしてる?」


「…いえ… それは冗談かと…」


「当たり前だ。こんなこと冗談に決まってる」


「やっぱり…」


柚子は小さくうなずくと 呆れたように笑った。


「もう… 永瀬さん、真剣な顔して冗談を言うから…。 でも、いいですね 今の話」


「え?」


「永瀬さんが子供のために一生懸命走るなんて…。 そしたらわたし、子供と一緒に
 必死で応援しちゃうかも。 周りの人に あの人がパパなんですよって自慢したりして…」


「………」


「あ…」


「…それって…」


「え? あっ、あの! ちっ、違います!!! そうじゃなくて! あの…!
 冗談っ、そう 冗談ですーーー!!!」


いつもより更に真っ赤になった柚子が大慌てで叫んでいる。


「冗談ね…」


「そうですっ、冗談ですっ!!!」


「そんなに興奮しなくても…」


「だだっ、だって… 本気だと思われたら、こっ、困るしーーー!」


「なんだ、やっぱり冗談か。 …それは残念だな」


「え?」


「ゆずからプロポーズされたのかと思ったのに… がっかりだな」


「なっ、永瀬さん???」


「はは… これも冗談だ」


「もうーーー!」


「まっ、子供のゆずには10年早い話だな」


永瀬はそう言うと可笑しそうに笑い いつものように柚子の髪をくしゃっと撫でた。


「また子供扱いして…」


柚子は言い返した後、永瀬を軽く睨んだが 永瀬と目が合うと 真っ赤になってうつむいてしまった。


プロポーズ… 永瀬の口から出たそのフレーズが頭の中でぐるぐると回っている。


柚子は 恥ずかしさとときめきで胸が高鳴って、これ以上ないくらい頬が熱くなって
体中がドキドキするのを抑えきれそうもない。

 


…どうしよう… ああ、どうしようーーー!


動揺した柚子は 今の自分の状態を永瀬に悟られないように 手に持っていた白いタオルで顔を覆うと
うつむいたままくるっと背を向けた。


慌ててごまかそうとする柚子に気づいている永瀬はふっと笑うと 後ろからぐっと片手で
彼女を引き寄せて そのままぎゅっと抱きしめた。


「こらーーー 顔を隠すな」


「だっ、だめです! 見ないで、恥ずかしいーーー!」

 


じたばたとタオルで必死に顔を隠そうとする柚子と 面白そうにそれを取り去ろうとする永瀬。


どこか春めいてきた日差しの中で じゃれあう二人の笑い声は いつまでも続いていた……。 

 

 











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aoi32
pichuuさん、ありがとう~!そんなふうに春を感じていただいて良かった♪とても嬉しいです^^お嬢さんによろしく~(*^_^*) 2011/04/10 22:13
aoi32
mypiccoloさん、ありがとうございます。>春のように明るい恋人達、そして柚子の母も明るくて強い女性です。そう言っていただくと すご~く嬉しいです^^こちらこそ感謝です♪ 2011/04/10 22:08
aoi32
かえどんさん、ありがとうございます。こちらこそ また読んでいただいて嬉しいです^^もう少しお付き合いくださいね。 2011/04/10 22:04
aoi32
ヨンkissさん、ありがとうございます!少しでも春を感じていただけたら嬉しいです^^これからも明るい二人をお楽しみに~♪ 2011/04/08 23:24
aoi32
kutauniさん、また読んでくださってありがとうございます。けっこう早く元の二人に戻れたでしょ?と言うか、早すぎたでしょうか(笑) 2011/04/08 23:20
aoi32
mizsakiさん、こちらこそありがとうございます。そう言っていただくと嬉しいです^^また次もお付き合いしてね♪ 2011/04/08 23:14
pichuu18
ゆずちゃんのお母さんとのやり取り、私も娘にこんな風に言いたいなぁと思います。永瀬さんも本当に心から柚子ちゃんを思ってるんですね。ほんわか春らしい気持ちになりました。 2011/04/07 09:03
mypiccolo
おかあさんもとても温かい人ですね!そして春のように明るい恋人達!心がホッと癒されるお話・・・aoiさんに感謝です♪ 2011/04/06 10:45
かえどん
また読むことができてとてもうれしいです。私も癒されました!! 2011/04/05 20:28
aoi32
皆さん、早速ありがとうございます。春の予感… nimoさんが作ってくれたこちらの画像も、お部屋の扉も春です。少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。 2011/04/05 17:52
ヨンkiss
じゃれあいながら微笑む二人を見ていると・・・春なんですね❤ (#^.^#) 2011/04/05 17:16
kutauni
久しぶりにaoiさんのお話を読めて嬉しいです。いつものふたりに戻れてよかった。ゆずちゃん、ちょっぴりおとなになりましたね。 2011/04/05 17:13
mizsaki
癒されます! ありがとう・・・ 2011/04/05 14:52
 
 

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