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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
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マイガール
恋した彼は親友の叔父さんだった!  クール&スマートな永瀬を取り巻くラブコメディー©
No 4 HIT数 6859
日付 2010/11/11 ハンドルネーム aoi32
タイトル マイガール -4- 恋の始まり
本文 マイガール





-4- 恋の始まり

 


彩はソファに膝を抱えて座り じっと一点だけを見ていた。


リズミカルにパソコンのキーボードを叩く綺麗な長い指。


端整な横顔と 真剣な眼差し。


時折、手を止めて傍に置いてある資料に目を向け、再びパソコン画面を見つめる。

 


「…すごい集中力よね」


可愛い女の子が こんなに熱~い視線を向けているのに、ちっとも気づかない人。


女泣かせの とんでもない罪作りな男よね…


ホントに あの真面目なゆずが こんなさと叔父ちゃんのことを?


彩はまだ納得のいかない様子で首を傾げた。

 

 

 


それはその日の昼間の出来事だった。


彩が睡魔を抑えるのに必死だった西洋文化史の講義がやっと終わり
「ゆず、お昼何食べる~?」と柚子に聞いたのだが 何も返事がない。


柚子は講義室の椅子に座ったまま 頬杖をついて、ぼんやりと考えごとを
しているようだった。


「ゆずってば、どうしたの? ぼ~っとして!」


彩は柚子の顔を覗き込むと、その目の前で手をひらひらと振った。


はっと気づいた柚子は 目をパチパチさせて彩を見た。


「やだ、ゆずって もしかして目を開けたまま寝てたの~?」


「や~ね、そんな器用なこと出来ないわ」


「じゃあ、どうしたの? 何だか 今日は朝から変だよ?」


「う…ん、あのね… 」


「うん?」


「わたし…ね、最近 すごく気になる人がいて…」


「え?」


「その人のことを考えると、胸がドキドキして…
 その人の顔とか、仕草とか、声を思い出すと どうしようもなく落ち着かなくなるの」


「ゆず、それって…」


「夜、寝ようとしてベッドに入っても 今頃、何してるのかな~、なんて
 思ったりして…
 ね、彩 これって もしかして…」


「恋よ、恋! ゆずはその人のことが好きなのよ!」


「やっぱり… そうかな~」


「そうよ! ゆずは恋しちゃったのよ!
 …でも、ホント? ホントに好きな人ができたの???
 ゆずからそんな話を聞くの初めてだから、信じられない!」


「う…ん」


「ゆずってば 男子学生にも全然興味がないって顔してたから
 もしかしたら女の子が好きなのかもって疑ってたの~!
 でも、それなら何で わたしに迫ってこないのかと不思議だったし…」


「………」


「でも、安心したわ!
 良かった! ゆずもやっぱり普通の女の子なんだね?
 …で、ゆずの好きな人って誰?」


「え?」


「わたしの知ってる人? それとも…」


「えっ…と、彩はよ~く知ってる…」


「え? 誰、誰? 爽やかな三浦君? キュートな佐藤君? 
 …それとも 最近、人気の向井先輩???」


「違う」


「え? それじゃ、誰なの? 教えてよーーー!」


「でも、恥ずかしい…」


「何で? あ、もしかして 秘密の恋とか?
 やだっ、もしかして不倫???」


「ちっ、違うわよ!」


「じゃあ、いいじゃない? 教えて!」


「あのね…」

 


必死で訊いてくる彩の様子を見て柚子は諦めたのか、小さなため息をつくと
彩の耳元に顔を寄せた。


その時、柚子は今まで見たことがないような恋する少女の顔をして
うっすらと頬をピンクに染めて その好きな相手の名前を囁いた。

 

 

 


“彩の叔父さん… 永瀬さん”

 


そう囁かれた時は 思わず自分の耳を疑っちゃったわよ!!!


ホントに? ホントにさと叔父ちゃんのことが好きなのーーー?


それは… 肉親の目から見てもかっこいいけど…


でも、でも! さと叔父ちゃんは36歳なんだよ???


ゆずは20歳になったばかりで、16も年上なのよ!!!


おまけにバツイチなんだよーーー!

 


“年齢も過去のことも関係ないの。 …好きになっちゃったんだもの!”


いつも真面目で、どちらかと言うと冷静なゆずが 大きな黒い瞳の中に
ピンクのハートを浮かべている。


可愛い… ホントに恋しちゃったんだね


男の人のことで 頬をピンクに染めるゆずを見たのは初めだもん!

 

 

 

 

 


「…顔に何かついてる?」


それまでキーボードを叩いていた永瀬は ふと、手を止めると、パソコンの画面を
見たまま訊いてきた。

「そんなにじっと見てられると気が散る」

永瀬はそう言うと、今度は彩の方に目を向けた。


「………」

彩は何も答えないまま、永瀬をじっと見つめている。


「彩?」


「…さと叔父ちゃん」


「だから、その呼び方は…」


「さと叔父ちゃんは ゆずのことをどう思う?」


「ゆず?」


「そう、ゆず…」


「そうだな。 好きか嫌いかで答えるなら、好きな方だ」


「え?」


「果汁を絞って焼き魚にかけてもいいし、鍋料理に柚胡椒を使っても…
 でも何と言っても美味いのは柚子味噌で…」


「あのね~、そっちじゃなくてーーー!」


「…わかってる。 からかったんだ」


「………」


「柚子風呂とか柚子茶は 身体が温まるから これからの季節にはいいかもしれないな」


「叔父ちゃん!!!」


「普段は地味で目立たないが、ある場面になるとスパイスが効いて
 しっかりとその存在をアピールするんだ」


「え…」


それって… 彩が言いかけようとすると、永瀬は黙ったまま またパソコンに
視線を戻した。

 


「それで… さと叔父ちゃんは…」

彩は少しドキドキしながら言葉を続ける。


「彩の友達だろう?」


「うん」


「すぐムキになるところは可愛いと思うが、それ以上は何とも思わない」


「そうなの?」


「まだ子供じゃないか」


「ホントに、ホントに 何とも思ってない?」


「ああ」


「でも 可愛いとは思ってるのよね?」


「………」


「もう… じゃあ、今はそれでいいわ。
 とりあえず、つかみはOK!と言うことで」


「何がOKなんだ?」


「いいの、いいの。 叔父ちゃんは気にしないでお仕事を続けて。
 そして、早く原稿を仕上げて 時間を作って」


永瀬は首を傾げるが、彩はニコニコ笑っているだけだ。


何かを企んでるらしい… 永瀬はそう感じたが、彩が一人であれこれ考えながら
ぶつぶつ言ってるのを見て 思わず笑ってしまった。


思えば ずっと一人で暮らしてきた殺風景なこの部屋も 彩が同居するようになって
明るく華やいだ雰囲気に変わってきた。


少女の持つ ふんわりと甘くて、やわらかな香りが部屋全体に漂っている。


あの“柑橘系”にも、そっと近づいたら 花のような甘い香りがするのだろうか…


昔、観た映画に出てくるような 短い髪からのぞく真っ白なうなじと 
まっすぐに見つめてくる澄んだ大きな黒い瞳…

 


その時 永瀬は キーボードに置いた自分の指が止まっているのに気づいて
何を考えてるんだ…と首を振りながら苦笑いをした。

 


あれ… さと叔父ちゃん、笑ってる?

 


意外と鋭い彩はそれを見逃さなかった。


これは もしかして、もしかするかもーーー???

 


「じゃ、わたし もう寝るね! お休み… あ、そうだ!」


母親に似て、世話好きの彩は わくわくしながらソファから立ち上がったが
ふと、あることを思い出し また永瀬に尋ねた。


「おととい、カフェで一緒にいた女の人って誰?」
 

 

 

 

 

*  *  *  *  *

 

 

 

 

 


「今回もまた連載を引き受けていただいて ありがとうございました」


予約を入れた青山のレストランに きっちりと約束の時間に現れた永瀬に向かって 
かがみ出版文芸部の編集長 高橋由布子は礼を述べると ふんわりと微笑みかけた。


「いえ、こちらこそ… またお世話になります」


永瀬も同じように口元にやわらかな笑みを浮かべながら言った。

 


やっぱり… 編集長にはそんな笑顔を見せるのね…


由布子の隣で永瀬の様子を見ていた佳奈子は 少し気分が落ち込んだが
相手が編集長なんだから仕方ないと自分に言い聞かせて頭を下げた。

 


ワインを飲み、美味しい料理を食べながら 談笑が続いていた。


聞き上手の由布子が巧みに話を合わせているせいか 無口な永瀬がいつもより
饒舌な気がした。


数年前、スランプに陥って執筆活動を休止して海外に行ったこと、そして
長期滞在したイタリアでの出来事など 佳奈子にとっては初めて耳にする話が多かった。


「…それで、永瀬さんがまた小説を書こうという気になったのには 何かきっかけが?」


由布子は興味津々の様子で永瀬に尋ねた。


「そうですね… 日本から離れて 外の世界に出て 一人になったら
 今まで見たこともない風景が見えるようになった…ということでしょうか」


「風景、ですか?」


「ええ。 と言っても、心を奪われるような絶景というわけでもなく
 どちらかというと ささやかな、ありきたりなものです。
 でも なぜか、泣きたくなるほど美しい…」


「美しい…」


「その時、気づきました。
 飾り立てた綺麗な言葉を使うより、自然で易しい、素朴な表現で
 自分の頭に浮んだものを思いのまま表現しても それはそれでいいのかもしれないと…」


「永瀬さんはご自分で気づいて それを素直に受け入れられたんですね」


「学生の時に出版社の新人賞をとってから、僕は夢中で走ってきました。
 あの作品はまぐれだったと世間から言われるのが悔しくて…
 意地でも誰もが納得するようなものを書いてみせる、なんて突っ張って。
 今思えば ただの世間知らずで生意気な若造に見えたでしょう」


「あら… 実際、若造だったのだから仕方ないでしょう?」


さらっと言う由布子の隣で 佳奈子はヒヤッとしたが
相変わらず 永瀬の口元にはやわらかな笑みがこぼれている。


「わたしから見れば 永瀬さんはまだまだ若造ですけど、もう世間知らずで
 生意気な方ではありません。ちゃんとご自分を客観的に見てらっしゃるし
 謙虚で、でも ご自身を否定しない所が とても魅力的だと思います」


「…高橋さんにそう言っていただくなんて光栄だな」


「だって、永瀬さんはうちの売れっ子作家さんですから…
 褒めておだてて、たくさん書いていただかないと」


「ご期待にそえるように努力します」


「まあ、本当ですか? …ね、あなたも聞いたでしょ?
 永瀬さん、これからもたくさん書いてくださるって!」


由布子は子供のようにはしゃいだ声を上げると、両手を合わせて
佳奈子の方に笑顔を向けた。


「は、はい」


佳奈子は少し戸惑いながらうなずくと、永瀬の顔を見た。


彼は目を丸くしていたが しばらくすると面白そうに笑い出した。


「まったく… 高橋編集長にはかなわないな」

 


その日の永瀬は 佳奈子が今まで見たことも無いような一面を
驚くほど無防備な様子で素直にさらけ出していた。

 

 

 

 

 


「…じゃあ、永瀬さんをちゃんとお送りしてね」


由布子はタクシーの傍で佳奈子にそう言うと、今度は永瀬の方に向かって
頭を下げた。


「今夜は いろいろご無礼なことを申し上げて すみませんでした。
 どうかお許しくださいね」


「いえ、とても楽しい時間を過ごさせていただきました」


永瀬は礼を言うと、二人は軽く握手をして別れた。


佳奈子は 永瀬と一緒に乗ったタクシーの後部座席から振り返り 
二人を見送っている由布子の姿を見た。


タクシーがゆっくりと動き出すと その姿は次第に小さくなっていく。


佳奈子は顔を前に戻そうとして、隣に座っている永瀬と視線が合うと
慌てて目を逸らし小さく咳払いをした。

 


「…今夜の永瀬先生は別人みたいです」


前を向いたまま、遠慮がちに佳奈子は言った。


「そうですか?」


永瀬は思い当たらないと言いたげな顔で答える。


「今まで聞いたこともないようなお話ばかりで… ほとんど初耳でした」


「それは… あなたが今まで何も訊いてこなかったから」


「わたしが質問すれば 答えてくださったのですか?」


「もちろん、話せる範囲でね」


「そうなんですか…。 編集長じゃなくて、わたしでも?」


「それはどういう意味?」


「駆け出しの編集者のわたしでも ちゃんと答えてくださるんですか?」


つい、きつい口調になっていく佳奈子に気づいて 永瀬は首を傾げ
ふと何かを思いついたように彼女の顔を見た。


「…もしかして、拗ねてる?」


「ちっ、違います! 拗ねてるなんて、そんな大人げないことはしません」


「じゃあ、なぜそんなの怒ってるんですか?」


「怒ってなんかいません!」


「…やっぱり怒ってるじゃないですか」


「………」


永瀬に言われて、佳奈子ははっとして口をつぐんだ。


…やっぱり… 怒ってるかも…

 


永瀬は 諦めたようにため息をつくと そのまま黙ってしまった。

 


「あ、あの… 先生、 その… すみませんでした。
 わたし、つい興奮してしまって…」


佳奈子は 永瀬の言うとおりだと思った。


今日、永瀬と由布子の対等な様子を目の当たりにして 彼が自分よりも
由布子の方を信頼してるような気がして、落胆とともに 苛立ちと焦りを
感じて拗ねてしまったのだ。

 


「…ごめんなさい…」


佳奈子はやっと平静さを取り戻し、素直に永瀬に謝罪した。

 


「いいですよ、慣れてますから」


永瀬は憎らしいほど冷静に、淡々と答えたが 口元にはやわらかな笑みが
浮かんでいる。


佳奈子はそんな永瀬を見て慌ててうつむくと、やっぱり別人だわ…と呟いた。

 


…先生、その顔は反則です…


















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aoi32
拗ねる佳奈子の気持ちがわかります?ありがとうございまーす^^ 永瀬は彼女にももう少し優しくしてあげられるといいですね^^え?冷たいところがいい?(笑) 2010/11/16 17:49
aoi32
kutauniさん、ありがとうございます。ホントに↑の顔は反則ですよね^^やわらかそうな頬が可愛くて なでなでしたいくらい(*^_^*) 2010/11/16 17:43
aoi32
今回も続きが遅れてすみませ~ん。皆さん、今日も来てくださってるのかな。ごめんなさい(^_^.) 2010/11/16 17:40
aoi32
あきちんさん、ありがとうございます。はい、次第に盛り上がっていく?永瀬を待っててくださいね。 2010/11/16 17:37
aoi32
子供に興味はないと言ってる永瀬ですが 知らず知らずのうちに意識してるのかも^^ 次回は急展開かな?今、ポチポチしてまーす(^_^.) 2010/11/16 17:34
aoi32
bitaminさん、ありがとうございます。↑みたいな反則な(?)顔をもっと見てみた~いですよね^^ 2010/11/16 17:32
aoi32
周りの人には冷たいけど、好きな相手にだけ優しい ツンデレな人がいいな~と常日頃から思ってるのですが~♪ 2010/11/16 17:27
aoi32
mizukyさん、ありがとうございます。そうですね、今回 永瀬は微笑み過ぎだったでしょうか?いけない、いけない またいつもの無愛想な彼に戻さなきゃ~(笑) 2010/11/16 17:22
kutauni
ほんとにその顔は反則です。佳奈子の拗ねる気持ち、わかるなぁ。とつぶやいていました。どんな展開になるのか楽しみです。 2010/11/16 12:45
あきちん
さと叔父ちゃん・・いえ永瀬先生の気持ちがこれからどんな風に盛り上がっていくのか(笑)。楽しみだわ。 2010/11/15 11:06
bitamin317
そうです その顔は反則です(笑) ただ…キーボードに置いた自分の指が止まっているのに気づいた永瀬さん 気になりますねえ 2010/11/14 19:05
mizuky
誰にでも優しい笑みを浮かべて女性を悩殺!?する永瀬先生・・でもほんとうの笑顔は柚子ちゃんだけにしよう(笑) 2010/11/12 08:15
 
 

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