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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
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マイガール
恋した彼は親友の叔父さんだった!  クール&スマートな永瀬を取り巻くラブコメディー©
No 6 HIT数 6741
日付 2010/11/30 ハンドルネーム aoi32
タイトル マイガール -6- 期間限定のカレシ
本文 マイガール



-6- 期間限定のカレシ

 



彩は二つのティーカップを食器棚にしまうと
終わった…と小さく呟いてピンクの花柄のエプロンを外した。


そして、今度は自分のためにジャスミンティーをカップに注ぐと
ガラスウォールの傍に行って 椅子に座った。


つい数分前、永瀬と柚子が座っていた場所だった。

 


「…まさか、あんな展開になるなんて…」


さと叔父ちゃんが あんなこと言うなんて思わなかった!

 


複雑な思いで彩は呟くと マグカップを両手で包み込んだまま 
ガラスウォールから外の夜景を眺めた。

 

 

 


*  *  *  *  *

 

 

 


「…あの、今 なんて…?」

 


思わず立ち上がってしまった柚子は まじまじと永瀬を見つめた。


「ゆずと付き合う…って言ったんだ」


相変わらず余裕のある永瀬は座ったまま柚子を見上げながら言った。


「えーーー!!!」


「そんなに驚かなくても…」


「ホントに? ホントに付き合ってくれるんですか???」


「変な子だな。 君がそう言ったんじゃないか」


「でっ、でも まさかOKしてくれるなんて思わなかったし」


「じゃあ、初めから断られると思ってたのに あんなこと言ったのか?」


「はい…。 あの、当たって砕けるつもりで…」


「砕けてもいいのか?」


「はい… いえ、ホントは嫌…です…」


消え入りそうな声で もじもじしながら言う柚子を見て 
永瀬は思わず笑ってしまった。


「一つ 聞いてもいいかな」


「はい? 何ですか?」


「本当に一ヶ月でいいのか?」


「あ、はい… とりあえず、お試し…ですから」


「それって、使用済みでも返品可なのか?」


「え? それは、どういう… ???」


永瀬の質問に柚子の目がまん丸になった。

 


「だっ、だめよ!!! さと叔父ちゃんったら何言ってるの???」


興奮して真っ赤になった彩が二人の元へ駆け寄ってきた。


「さと叔父ちゃんのばか! そんなことしたら買取よ!
 っていうか、許さないんだから!」


「………」
「彩…? 何言ってるの?」


永瀬は黙ったまま、そして柚子はきょとんとした顔で彩を見ている。


「もう、もうーーー!
 さと叔父ちゃん、イタリアに行ってから性格変わった!
 以前の叔父ちゃんならそんなこと言わなかった!」


彩は興奮して永瀬に詰め寄った。


「何言ってるんだ、彩は。
 重要なことだから確認しておかないと…」


「もう、黙って!
 いい? 使用したら返品不可よ!
 責任取って、永久契約にしてもらいます!」


「すごい…」


「ゆずは何もわかってないから、代わりに交渉してるの!
 …ほら、ゆずの顔を見ればわかるでしょ?」


彩はそう言って柚子の顔を見るように促した。


「………」


なるほど… 永瀬は納得した。


相変わらず、柚子は訳がわからない様子で 目をパチパチさせて交互に二人を
見ている。


「わかった…」


永瀬は短く頷いた後、うつむいてくすっと笑った。

 


…何もわからない子供に さすがに手出しは出来ないな… 

 


仕方ない… どこかで残念に思っている自分がいる…


そのことに気づいた永瀬は顔をすっと上げて ゆっくりと柚子を見た。


ぽっ… それだけで赤くなる彼女がいた……。

 

 

 

 

 

「じゃあ、家まで送って行くよ」


「え??? いっ、いえ! だ、大丈夫です。まだ電車もあるし!」


「何度も同じことを言わせないで… 彩の友達を一人で帰すわけにいかないんだ。
 それに 僕が付き合っている女性を送らないような冷たい男に見えるのか?」


「え? …つっ、つきあってる???」


「違うの?」


「ちっ、違わないです! いえっ、違わなくない… あれ…」


永瀬の言葉に反応し続ける柚子の顔はずっと赤く、慌てふためいている。


「君と僕は 今日から付き合うんでしょう?」


「え? あ、あの… はい… オツキアイ…シマス… 」


「声が小さくて聞こえないな」


「あ…の…」


柚子はそれ以上何も言えなくて、黙ってしまった。


そんな柚子とは反対に 余裕の永瀬は容赦しない。


「じゃあ、行こう」


永瀬は柚子の腕を取ると玄関の方に向かって歩き出す。


「あっ、あの! じゃあ、彩も一緒に…」


「何言ってる?」


柚子の言うことなど気にも留めない様子で 永瀬は彼女を連れ出そうとする。


「あっ、あの 永瀬さん? きゃーーー!」


半ば強引に引きずられていく柚子を 唖然と見ていた彩ははっと気がついて 
慌てて柚子の鞄とコートを渡そうと後を追った。

 

 

 


マンションの地下駐車場に降りると 永瀬は車のドアを開けて
どうぞ、と柚子に促した。


以前、送ってもらった時とは違い 今回は助手席であることに
柚子は戸惑い 困ったように永瀬を見上げた。


「…何か問題でも?」


「いっ、いえ! はい… 乗らせていただきます」


相変わらず淡々とした永瀬の態度に 柚子は覚悟したのか
おずおずと遠慮がちに席に滑り込んだ。


永瀬も車の反対側に回ると、運転席に座った。

 


…どっ、どうしよーーー! 今度こそ二人っきりだわ!


柚子は緊張して逃げ出したくなった。


あんなこと言わなきゃ良かった! つっ、付き合ってくださいなんて!


あ~ん、助けて、彩ーーー!!!

 


え…?  その時、心臓が止まりそうになった。


不意に永瀬の手が柚子の方へ伸びてきたからだ。

 


「シートベルトを…」


柚子のそんな思いに気づいて、知らない振りをしてるのか 永瀬は柚子の方に
身を乗り出すと 慣れた手付きでベルトを引いて締めてくれた。


静けさの中で カチリと乾いた金属音が響いた。


「!!!」


柚子は まるで永瀬に捕まって縛られてしまったような錯覚に陥り、
身体が強張ってしまった。


…どっ、どうしよう!

 


「…何もしないから そんなに緊張しないで」 


永瀬はそんな柚子を見て またからかうように笑い、車を発進させた。

 

 

 


穏やかで ゆったりとした運転だった。

 


…きれいな手… 


ゆるやかに走っていく車の中で やっと落ち着きを取り戻した柚子は
軽く添えるようにハンドルを握る永瀬の手を見て、思った。


外の明かりに照らされて映し出された、すうっと伸びた長い指と 時々、それを
動かす度に 手の甲に浮き出る血管が神経質そうであり、大人の男性の力強さを感じた。


幼い頃に父を亡くした柚子は 今まで、こんなふうにじっくりと、車の助手席で
男がハンドルを動かしているのを見たことがなかった。


だから、余計に新鮮な感じがして胸がときめいた。


まるで 柔らかなものを包み込んでるように 永瀬の手は器用に、まろやかに
ハンドルを握り、操作している。

 


不意に… その手に触れてみたいと思った。

 


…ダメダメ! そんなことしたら嫌われちゃう…


せっかく付き合ってくれることになったんだから!


でも… どうして?

 


「あの… 永瀬さん」


柚子は思い切って聞くことにした。


「うん?」


永瀬は前方に目を向けたまま返事をした。


「どうして 付き合ってもいい…って言ってくれたんですか?」


「何て答えて欲しい?」


「え? あの… えーっと、そうですね…
 “ゆずが可愛くて好みのタイプだったから”とか… あ、それから
 本当はわたしと同じで “ゆずにひと目惚れしたから”とか…」


「………」


「なーんてことだったら嬉しいけど、でも違いますよね。
 だって お付き合いするのは とりあえず、一ヶ月だけだもん。
 本当に気に入ってくれたのなら、初めから ちゃんと付き合って…
 あ… やだ!」


最初はあれこれと楽しそうに、そして 次の瞬間には気落ちしたように
くるくると表情を変えながら話していた柚子が 突然、声を上げた。


「やだっ、わたしったら!
 今から一ヵ月後…って、ちょうどクリスマスの頃じゃないですか?
 えーーー、わたし クリスマスに振られちゃうの???
 超悲惨ーーー!!!」


その時、柚子は衝撃の事実に初めて気づきショックを受けた。


永瀬は驚き ちらっと柚子の様子を伺った後 ふっと笑った。


「…僕の方が振られるってことは考えないのか?」


「え? わたしが永瀬さんのことを?
 そんなことありえません!」


「そうかな。
 付き合ってみたら 想像とは違って幻滅したとか… よくある話だ。
 好きだと思ったのは勘違いだったってことも…」


「え? だから わたしと付き合おうと?」


「そのための一ヶ月なんだろう?」


「それは…」


「だから、これは違うと感じたら 先にゆずの方から終わりにしても構わない。
 たとえ明日気が変わっても 僕は気にしないから」


「…大人なんですね、永瀬さんって…」


「ゆずよりはね」


「でも、想像どおりです! 勘違いなんかしてませんから!」


柚子はそう叫ぶと 永瀬の横顔を見上げた。


「意地悪で、皮肉っぽくて、余裕たっぷりで 憎らしい気がするけど
 でも… でも やっぱり…」


すごく頼りになって、やっぱり どこか優しくて… 


最初は緊張でドキドキするけど、一緒にいると何だか安心する…

 


「…やっぱり わたし… 好きなんです、永瀬さんのこと…」


「それはどうも」

 


素っ気なく、平然と答える永瀬だったが その口元には微かな笑みが浮かんでいる…


そんな気がした。


「………」


柚子はまた顔が熱くなった。


…怒って…ないよね? 少しは嬉しいと思ってる…?


感情を表に出そうとしない永瀬の本心はわからない。


でも、柚子は 今はそれでもいいと思う。

 


嫌われてなければ それでいいの……

 

 

 


自宅の前に着くと 永瀬はまた車のドアを開けてくれた。


その仕草は やはり女性の扱いに慣れているに違いないと改めて感じた。

 


「あの… 今日は突然、お伺いしてすみませんでした。
 夕食までご馳走になって… とても美味しかったです。
 それから、送っていただいてありがとうございました」


柚子は礼を言うと、ぺこりと頭を下げた。


「どういたしまして」


永瀬は ほんの少しだけ口元を綻ばせたが、すぐに いつもの顔に戻った。


「…あの…」


「うん?」


「ちょっとだけ 握手してもいいですか?」


「え?」


「あ、やっぱり いいです!」


また無意識のうちに 大胆なことを言ってしまったのに気づいて 柚子は赤くなった。

 


…ばかばか! 何言ってるの? わたしは…


はっ、恥ずかしいーーー!!!

 


後悔で うつむいてしまった柚子を見て 永瀬はふっと笑うと 
すっと手を伸ばし 柚子の右手を取った。


…え??? 


驚く柚子をよそに 永瀬は彼女の手を右手で握り締めると
もう片方の手も重ね合わせて そっと包み込んだ。


小さくて華奢な柚子の手は 永瀬の大きな手ですっぽりと包まれている。


さっき助手席で きれい…だと見とれていたその手は 思ったとおり
温かくて大きくて力強い 大人の男性の手だった。

 


…あったか…い… 

 


永瀬の手の温もりに包まれて ぼ~っとしていた柚子だったが
しばらくすると はっと我に返った。

 

「あっ、あのっ… ありがとうございました!
 それじゃ、お休みなさい!!!」


柚子は慌てて 永瀬の手から手を解くと また深々と頭を下げ 
くるっと背を向けて走り出した。


恥ずかしさで逃げ出すように そこから立ち去った柚子の後姿を
彼女が家の中に入るまで永瀬は見届けると、安心したように一息ついた。

 


その時、ふと思い出したように永瀬は顔を上げた。


深い漆黒の空に ぼんやりと三日月が浮んでいるのが見えた。


そして 永瀬は 今夜はずっと自分の目線が下の方にあったのだと気づく。


自分をずっと真直ぐに見上げていた 大きな黒い二つの瞳…


まるでキラキラと輝く小さな星が散りばめられたような 透きとおるような瞳だった。

 


…何を考えてるんだ…

 


永瀬は 呆れたようにふっと笑うと 何もなかったように車に乗り込んだ。


月明かりに照らされた永瀬の車が ゆっくりと動き出す。


柚子は 二階の部屋の窓から 火照る自分の頬を両手で押さえながら
それが見えなくなるまで ずっと見送っていた……。 

 















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aoi32
kutauniさん、ありがとうございまーす^^こちらこそ遅くなってごめんなさい。面白い展開だと言っていただけて とても嬉しい~♪これからもお付き合いくださいね^^ 2010/12/16 17:55
kutauni
遅くなってすみません。思わずニヤケテしまいました。おばさんの私には面白い展開です。余裕のあいゆずちゃんがかわいいです。 2010/12/07 12:49
aoi32
でも、そろそろ切ない涙の展開もあったほうがいいのかな? 皆さん、どう思います?…なんて尋ねたりして(笑) 2010/12/03 22:16
aoi32
はんなーらさん、ありがとうございます。次も楽しい展開になっていると思いますので、またお付き合いくださいね。 2010/12/03 22:13
aoi32
pichuuさん、お久しぶりです。また読んでくださってありがとう~^^この楽しい年の差カップルを見守ってね♪ 2010/12/03 22:10
aoi32
あきちんさん、ありがとうございます。若い女の子のパワーで グイグイ押していきますので さすがの永瀬もどうなることか(笑)次回も実は。。。^m^ 2010/12/03 22:07
aoi32
mypiccoloさん、ありがとうございます。ふふっ、そうですね。無愛想な永瀬も柚子のおかげで 笑うことが増えました。彼はコメディーには似合わないかも~と思っていたので良かったです。 2010/12/03 22:03
aoi32
今回の画像を見て、私も ますます楽しいお話になったらいいなと思いました。これからもおつきあいくださいまし~^^ 2010/12/03 18:11
aoi32
れいもんさん、読んでてくれてありがとうございます。背景のようにふわふわとした柚子とスタイリッシュな永瀬のコラージュ。さすがですね。nimoさんの画像は 今の二人そのものです^^ 2010/12/03 18:09
aoi32
mizukyさん、ありがとうございます。そうです、その時はすぐにやってくるかも(笑)若い女の子のパワーに負けそうな永瀬です♪ 2010/12/03 18:04
はんなーら
次の展開を、またまた、楽しみに待っています。 2010/12/02 21:02
pichuu18
久しぶりにお邪魔していっきに読みました。ゆずちゃんのういういしい気持ちや態度、永瀬さんとのやりとりがいいですね。1か月感でぜひすてきなカップルになってほしいです! 2010/12/02 19:28
あきちん
淡々として大人ぶってる永瀬さんだけど、これから1ヶ月でどうなるのか楽しみだわ。 2010/12/02 11:09
mypiccolo
クールな永瀬さんが 口元を綻ばせたり、ふっと笑うことが多くなりましたね・・・(^^) 2010/12/01 11:52
れいもん
背景は、ふわふわな綿毛ゆずちゃんなのに、最後現れた永瀬さんの車はスタイリッシュ。このギャップがだんだんと埋められていくのかなあ。。 2010/11/30 21:26
れいもん
コメントはすっかりご無沙汰になってました@@が、ちゃんと読んでいましたよ。永瀬さんもちゃんとゆずに惹かれてるんですよね♪初々しいゆずと大人な永瀬さん、これからの展開が楽しみです*^^* 2010/11/30 21:24
mizuky
今のところ永瀬さんが優勢みたいだけどそのうちにゆずちゃんに振り回されたりして・・(笑) 2010/11/30 21:02
 
 

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