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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
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マイガール
恋した彼は親友の叔父さんだった!  クール&スマートな永瀬を取り巻くラブコメディー©
No 8 HIT数 7013
日付 2010/12/16 ハンドルネーム aoi32
タイトル マイガール -8- 遊園地デート
本文 マイガール


 

-8- 遊園地デート

 

 

真冬のテーマパークには やわらかな日差しが降り注いでいた。


都内のテーマパークの中でも カップル向けのアトラクションが多く
日が落ちて宵闇に包まれる頃のクリスマスイルミネーションのライトアップが
評判のその場所は 日曜日ということもあって かなり賑わっている。

 


「永瀬さん! こっち、こっち!」


柚子は元気よく叫ぶと 後から悠々と、多少 面倒そうに歩いて来る永瀬の
腕を取り、半ば強引に引っ張って行く。

 


「次はこれに乗りますよ!」


「………」


ニコニコと笑う柚子とは対照的に、永瀬は無言のままそれを見上げて固まった。


「ビルや観覧車の中心をくぐり抜けるんですって!
 ああ、そっか! リングをくぐり抜けるイルカみたいだから この名前なんだわ。 
 楽しそうーーー!」


柚子は目を輝かせてきゃあっと歓声を上げた。

 


「…ひとつ、提案があるんだが…」


絶叫マシンの前でアトラクションのマップを眺めていた永瀬は 珍しく躊躇した
様子で 興奮している柚子の顔を覗き込んだ。


「これはすごい行列で時間がかかりそうだから 別のにしないか?」


「え?」


「あっちの大観覧車とか… あ、あの噴水ショーみたいのも楽しそうだ」


「…もしかして、永瀬さん… 怖いとか?」


「え? そんなことは…ない」


「じゃあ、これにしましょう!
 あのね、カメラが2箇所にあって、二人が同じポーズで決められたら
 ずっと仲良しでいられるんですって!
 きゃ~ん、どうしよう~!」


ますますはしゃぐ柚子を見て 永瀬は目眩がしそうになったが ここは堪えて
ぐっと我慢した。


「大丈夫です。 この後、永瀬さんが好きな観覧車にも行きますから。
 あ、それから プリクラも一緒に撮ってくださいね!」


「………」

 





“今日はゆずが行きたい所に連れて行くよ”

 


永瀬はほんの一時間前に そんな言葉を軽い気持ちで言ってしまったことを 
今までの人生の中で 一番後悔し始めていた。


だが、それに反して 柚子の様子は今まで見た中で一番楽しそうだ。


永瀬と一緒に遊園地に来られるなんて思ってもいなかったので
柚子はそれだけで嬉しくて ずっと楽しそうに笑っている。

 


「永瀬さん、こっちですよ!」


柚子はそう言うと 永瀬の腕に手を回して そっと寄り添った。


「…わたし… すごく嬉しいです」


柚子が小さな声で囁いた。


「………」

 


…まあ、いいか… 


うっすらとピンクに染まる柚子の頬を見た永瀬の中では いつの間にか
後悔という言葉は消えていた。

 

 

 

 

 


「…やっぱり、やめておけば良かった…」


永瀬はぐったりとベンチに座り込むと呟いた。


あの澄んだ瞳でうるうると見つめられて つい、頷いてしまった。


未だに、自分の体内のあらゆる内臓が体中をうねりながら
ぐるぐると回っているようだ。

 


絶叫マシンなんて… 大嫌いだーーー!

 


こんな物騒なものを考えついた奴の気が知れない…


こみ上げる怒りと胃液を感じて 永瀬はぐっと胸を押さえた。

 


「…永瀬さん、大丈夫ですかーーー?」

 


その時、急いだ様子で柚子が駆け寄ってきた。


「はい、紅茶です。甘くないから すっきりしますよ」


柚子はそう言うと 温かい紅茶のボトル缶を永瀬に差し出した。


「大丈夫ですか? まだ顔色が悪いですね」


柚子は心配そうに永瀬の顔を覗き込むと、彼の隣に座った。


「大丈夫だ、少し休めば治るから…」


「ホントに? ホントに大丈夫ですか?」


柚子はそれでも、不安そうな顔をして永瀬にまとわりついてくる。


顔色が悪いのはどっちだ? 永瀬は苦笑した。

 


「それより… 情けない姿を見せてしまった」


「え?」


「呆れただろう?」


「そんなことないです!!!」


「え?」


「それよりも、安心しました」


「安心した?」


「はい。 いつも何でも出来る永瀬さんにも
 苦手なものがあるんだなって知って、何だか親近感が…」


「………」


「といっても、わたしから見れば まだまだ永瀬さんはパーフェクトな人だから
 呆れるなんて 絶対、ないです!」


永瀬を気遣いながら、懸命に話す柚子の様子を見て 永瀬は黙ったまま
彼女を見つめ返した。


「永瀬さん? どうしました? まだ気分が悪い?」


何も言わない永瀬が心配になって、柚子は今にも泣きそうな顔で訊いてくる。


「いや、もう すっかり治ったから大丈夫。
 それで… 次はどこに行く?」


永瀬は 柚子を安心させるように言うと、ふっとやわらかく笑った……。

 

 

 

 

 

 

*  *  *  *  *

 

 

 

 

 


するりとベッドから抜け出した彩は 床に落ちている下着を拾い上げ
身につけると 白いニットを着て ピンクの小花模様のプリントスカートを
はいた。


そして ニットの襟の中に入った長い栗色の髪を両手で引き出すと
乱れたそれを手で何度か撫で付けた。

 


「…彩? 帰るのか?」


ベッドの中から眠そうな声がした。


「あ、ごめん… 起こしちゃった?」


彩は振り向き 目を擦りながらこっちを見ている祐輝と目が合うと
悪戯っぽく笑いながら 寝ている彼の上に覆いかぶさった。


「泊まっていけばいいのに」


祐輝は不満そうに口を尖らせながら言うと 彩の髪を撫で
すべすべの白い頬に手を当てた。


「そうなんだけど… でも、ママにバレたら鎌倉に連れ戻されちゃうから。
 さと叔父ちゃんはママに嘘つけないの」


「彩のお母さんって強そうだもんな」


「そうよ。 パパもママには頭が上がらないの。だから、帰るね。
 でも、前よりは遅くまでいられるようになったから、いいでしょ?」


「そうだな。彩は鎌倉のお嬢様だから、仕方ないな」


「わたしが? 何言ってるの」


祐輝の言葉に、彩はくすくすと笑い出した。


「わたしより、ゆずの方がお嬢様だよ。
 何も知らないし、天然だし… すっごく可愛いの。
 今まではゆずの方がしっかりしてると思ってたけど、違うの。
 頼りなくて、何だか放っておけないわ」


「そう言えば、昨日、大学の近くでゆずを見かけたな。
 誰かに車で送られて来たみたいで、すっげー、嬉しそうな顔してた」


「…たぶん、さと叔父ちゃんよ」


「え? ホントに ゆずは彩の叔父さんと付き合ってるのか?
 俺、冗談かと思ったよ!」


「冗談なんかじゃないよ。ホントに付き合ってるの」


「それが本当なら三浦の奴ががっかりするだろうな。
 あいつ、いつもゆずのこと可愛いって言ってるもんな」


「そうね、でも ゆずは叔父ちゃんに夢中なの。
 今日だって、ゆずがマンションに来てるから 気を利かせてユーキの所に
 来たんじゃない」


「何だよ、俺じゃなく ゆずと叔父さんのために来たのかよ」


「違う、違う。 ばかね、ユーキに会いたいからに決まってるでしょ?」


「じゃあ、泊まっていけよ。もっと気を利かせてさ」


「それが違うのよね。いろいろ事情があって そうもいかないの。
 それに、二人はとってもプラトニックな関係だし…
 わたしが釘を刺したんだけどね」


「マジ? 信じられねーーー!」


「でもホントのことよ。
 二人のデートは 遊園地、水族館、映画館だもん」


大げさに驚く祐輝を見て、彩はふふっと笑い、肩をすくめた。

 

 

 

 

いつだったか、彩がマンションに帰ると 柚子が来ていたことがある。


永瀬はいつものように ガラスウォールの傍でパソコンのキーを叩いていた。


締め切り間近のいつもの光景だ。


永瀬は自分の書斎ではなく、いつも 広々として、明るい日差しが降り注ぐ
そのリビングルームで執筆活動をするのだ。


誰かが傍にいると気が散ると言って迷惑そうな顔をするので、彩は永瀬が
仕事をしている時は 邪魔しないように 極力 自分の部屋で過ごすようにした。


それは自然に発生したルールのようなものだった。


だが、ある時 それは相手にもよるのだということに気づいた。


その日、仕事をしている永瀬の傍で 柚子は彼に背を向けてソファに座って
本を読んでいた。

 


「永瀬さんの書庫にある本を借りて読むことにしたの。
 色々な本があって面白いよ。コミックもあるし…」


柚子はそう言って恥ずかしそうに笑った。


真面目で 永瀬に対しては弱気だった柚子が 彩がいなくても、一人でここに
来られるようになったのだと驚いた。


「ふふっ、ゆずったら恥ずかしがらなくてもいいよ」


そして、彩は柚子の耳元で囁いた。


“さと叔父ちゃんも 何だか楽しそうだしね”

 


途端に 柚子はぽっと赤くなって目をまんまるにして彩を見つめ
そしてまた 恥ずかしそうに笑った……。

 

 

 


「…さと叔父ちゃんも ゆずのこと好きなのかも…」

 


家まで送ると言ってくれた祐輝と一緒に 夜の街を手を繋いで歩きながら
彩はぼそっと呟いた。


「…なんだか落ち込んでるな。まるで失恋したみたいだ」


祐輝は そんな彩の様子を見て呆れたように笑った。


「…そんなんじゃないよ」


彩は小さな声で否定する。


「彩はいつも叔父さんの話ばかりしてたもんな」


「うん、叔父ちゃんは初恋の人なの」


「………」


「あ、今 わたしのこと 可愛くて、けな気だと思った?」


「何言ってるんだか」


「ふふっ、ユーキったら照れちゃって。かわいーー!」


「ばっ、ばか! 可愛いなんて言うな」


慌てている祐輝を見て 彩はしばらく笑っていたが、不意にやめると
また話を続けた。


「… 何だか、叔父ちゃんとゆず… 二人とも わたしから離れていくみたいで
 ちょっと寂しいっていうか、複雑な気分なの」


「…彩には俺がいるじゃないか」


「やだっ、ユーキったら何言ってんのーーー???
 恥ずかしいーーー!!!」


「何が恥ずかしいんだよ」


「だって、そんなセリフ… お子ちゃまのユーキには似合わな… あ…」


「どうした?」


「今、叔父ちゃんの車が通り過ぎた…」


「え?」


「ゆずも乗ってたのかも…」


彩はそう言うと 車が走り去った方を振り返ったが すでに それは
見えなくなっていた。

 

 

 


…彩? 咄嗟に柚子はそう思った。


歩道をこっちに向かって歩いてくる二人にすぐに気づいた柚子は
通り過ぎてから 隣で車を運転している永瀬をちらっと見た。


永瀬は何も気づかなかったのか いつものように静かにハンドルを握っている。


柚子はほっと胸を撫で下ろした。


そうして油断したのがいけなかった。

 


「… 今の彼、名前は?」


「あ、はい… 山下祐輝君で… え???」


それまでと何の変わりもない様子で 突然、永瀬に訊かれたので
柚子は何の躊躇いもなく答えてしまった。


「彩は彼と付き合ってるんだな」


「え??? あ、いえっ! あのっ!」


「そうか、彩に口止めされてるのか」


「いっ、いえ! …えっと…」


慌てて口を押さえた柚子とは反対に 視線を動かすこともなく
淡々と言う永瀬の横顔を 柚子はまじまじと見つめる。


そんな柚子の様子に気づいた永瀬は ちらっと彼女を横目で見ると 
すぐに前を向き ふっと軽く笑った。


「正直でいいね、ゆずは」


「え?」


「素直で嘘がつけないところ… けっこう気に入ってるよ」


「え??? あっ、あの…」 


「動揺すると すぐに赤くなるところも可愛いし…」


「!!!」


隠し事がばれてしまったことにハラハラしながらも、柚子は永瀬の言葉に
つい、ときめいてしまった。


「あっ、あの… 永瀬さん」


「そんなに心配しなくても大丈夫だ。
 このことを知っても 僕は彩をからかったり、責めたり… 
 まして、彩の母親に言うつもりはないから」


「え?」


「そうか。 彩がこっちに住みたかった理由は それなのか」


あ… 柚子はいつか 彩が言っていたことを思い出した。

 


“ユーキと付き合ってることは叔父ちゃんにも言わないでね! 
 彼と付き合うために家を出たかったなんて知れたら 
 ママに連れ戻されちゃうから!”

 


「どっ、どうして わかるんですか?」


「………」


「あ…」


また墓穴を掘ってしまったことに気づいた柚子は 今度は両手で
自分の口をぎゅっと押さえた。

 

「まったく…」


永瀬は呆れたように言うと くっくっと笑い出した。


「それじゃ ゆずは隠し事も出来ないな…」


どこか優しげに言うと 永瀬はすっと片手を伸ばして柚子の頭を
クシャクシャッと撫でた。


子供扱いしないでください… 柚子は小さな声で抵抗しながら、それでも
恥ずかしそうにうつむく。


そして しばらくすると顔を上げて 永瀬の方を見上げた。


どことなく楽しそうな横顔… 口元にはやわらかな笑みが浮かんでいる。

 


「…あの、永瀬さん…」


「うん?」


「わたしのこと… 好きですか?」


「………」

 


いつになく優しげな永瀬に 柚子がずっと訊きたかったことが言葉となって
出てしまった。


柚子ははっとしたが遅かった。


「やだっ、わたしったら…
 あの… 今のは聞かなかったことにしてください!」


柚子は必死で手を振り、打ち消そうとした。

 


もう、ばかばか! 何言ってるのーーー!


この前の遊園地デートで、何だかぐっと距離が近くなったような気がして


つい言っちゃったのよね…


“何とも思ってない”なんて言われたら立ち上がれないのに


約束の一ヶ月まで あと1週間あるのに…


もう会えなくなるじゃない!

 

 

柚子の頭の中で 後悔の渦がぐるぐると回って 混乱していた。


なのに、永瀬はさらりと答えた。 それは 驚くほど、呆気なく…

 


「好きだよ…」

 








 













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aoi32
やっぱり あの彼がモデルになってしまう~。だから つい、気障なセリフも言わせたりして(笑)  2010/12/22 22:26
aoi32
kutauniさん、ありがとうございます!ふふっ、実は私、DJ編でも、ドンヒョクは絶叫マシンが苦手、というお話を書いたことがあるんです^^ ま~、同じやないかい!(笑) 2010/12/22 22:21
aoi32
takitubosanさん、ありがとうございます!「takitubosan… 好きだよ❤」 by永瀬。。。 2010/12/22 22:16
aoi32
かえどんさん、ありがとうございます!ドキドキするなんて、とても嬉しい言葉です♪次回、二人はどうにかなりますので(?)またお付き合いくださいね^ 2010/12/22 22:12
aoi32
あきちんさん、ありがとうございます!永瀬の心の中で 柚子はかなり大きな存在になっています。次回、進展がありますので またお付き合いくださいね^^ 2010/12/22 22:09
aoi32
bitaminさん、ありがとうございます!破棄にすればいい… はい、そうします(笑)クールに見えて 意外と情熱的な永瀬は 次回に。。。この続きはお楽しみに♪ もう少し待っててね^^ 2010/12/22 22:05
aoi32
そんなことができるでしょうか^m^ まわりくどくて、めんどうな性格なので もう少し待っててね~^^ 2010/12/22 22:01
aoi32
mizukyさん、いつもありがとうございます!…返品不可にするということはあれですね?(笑) でも イタリアから帰国してから性格が変わったと言われるようになったとしても、真面目な(?)永瀬に 2010/12/22 22:00
kutauni
読んでるわたしが思わず照れてます。絶叫マシンに弱いのはいい男の条件?な~んて。あと1週間をゆずちゃんファイト! 2010/12/21 11:02
takitubosan
「好きだよ…」 あ~~いいな~~♪ 2010/12/18 19:47
かえどん
あ~ドキドキです。どうなっちゃうのこの二人・・・・・・・次回が待ち遠しいです。 2010/12/17 14:59
あきちん
もうあと一週間になってしまったの。今、永瀬さんの心のどのくらいをゆずちゃんがしめてるんだろう。 2010/12/17 10:53
bitamin317
あと一週間の契約期間? 破棄にすればいい…静かに柚子のいいなりになってる永瀬先生が素敵だわ 柚子ちゃんは可愛い! 2010/12/17 09:38
mizuky
ふふっ。。そっか・・・永瀬先生は絶叫マシンが嫌いだったのね。(笑)だけどほんとにゆずちゃんのペースにはまっちゃってるね。契約まであと一週間・・・もう返品不可にしちゃえ!!爆。に 2010/12/16 19:47
aoi32
しばらくは余韻に浸りながら、また楽しいお話を書きたいと思っています。ハッピーエンドを目指して頑張りますので これからもお付き合いくださいね♪ 2010/12/16 17:46
aoi32
遅くなりました。偶然ですが、おととい ここに出てくる絶叫マシンと観覧車を見てきました(笑)楽しい時間を過ごすことができました。 2010/12/16 17:43
 
 

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