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aoiルーム
aoiルーム(https://club.brokore.com/hollyhock)
aoi32の創作ストーリーを集めたお部屋です。 どなたでもご覧いただけます。 どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ。
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マイガール
恋した彼は親友の叔父さんだった!  クール&スマートな永瀬を取り巻くラブコメディー©
No 9 HIT数 6969
日付 2010/12/25 ハンドルネーム aoi32
タイトル マイガール -9- クリスマスまで待てない
本文 マイガール


 

-9- クリスマスまで待てない 

 



 

「好きだよ」

 


「そうですよね、いまだに子供扱いするし。やっぱり、何とも思って…
 …え…?」


柚子は息が止まりそうになった。


永瀬は少しだけ彼女を見て笑うと、また前を向いた。


「え??? あの… 今、なんて?」


「好きだよ。彩と同じくらい…ね」


「………」


柚子は言葉を失い、ポカンと口を開けた。


そして 数秒後、深くため息をついた。


「…そうですよね。 彩と同じくらい… 同じ、ですよね」


永瀬に“好きだ”と言われて 一瞬、息が止まりそうになったが
やっぱり、オチはこんなもの… 柚子はひどくがっかりして落ち込んでしまった。


…あ~あ、ホントにわたしってばかみたい


何を期待してるんだか… 


あ~ん! もう、穴があったら入って 底まで落ちて 消えちゃいたい…

 

 

 


「…毎年、大晦日の夜は 鎌倉にある友人の店でカウントダウンパーティーを
 しながら新年を迎えるんだ」

 


うな垂れている柚子の隣で 不意に永瀬が言い始めた。


「…?…」


彼は何を言ってるんだろう? 柚子は顔を上げると 不思議そうに永瀬の方を見た。


永瀬は前方を見つめたまま ハンドルを握っている。


「今年は ゆずも一緒に行く?」


「え?」


「海で見る初日の出は なかなか感動的だよ」


「…あの、わたしが行ってもいいんですか?」


「ゆずが良ければ」


「はい! もちろん、行きます! 大晦日ですね?」


「うん」


「わぁ、今から楽しみです。
 クリスマスもまだなのに… でも、あっという間ですよね!」


「そうだな、すぐに年も明ける」


「はい」


それまで落ち込んでいた柚子だったが、思いがけない永瀬の誘いに
一気に天にも昇るような気持ちになった。


「やったーーー! 嬉しいな、一年の最後に こんな素敵なことがあるなんて。
 ふふっ… 楽しそうーーー!」


あれこれと想像している柚子は とても楽しそうに頬を紅潮させている。


「カウントダウンパーティーなんて初めて… 何を着ていこうかな。
 初日の出を見るんだから、あったかくしていかなきゃ…」


「………」


永瀬はそんな柚子をちらっと横目で見て、呆れたように笑う。


「大晦日から年明けまで… ……  あ…れ? えっと…」


ウキウキした様子で舞い上がっていた柚子が ふと気づき、永瀬を見上げた。


「あの… 永瀬さん?」


「うん?」


「えっと… 永瀬さんとわたしがお付き合いするのは…
 その… お試し期間はクリスマスまで、でしたよね?」


「そうだったな」


「あの… それじゃあ、大晦日のパーティーっていうのは…
 あれ…?」


「やっと気づいた?」


「え? あの…」


「ゆずは 本当に鈍感だな…」


「え???」


「その時、友人達に ゆずのことを紹介するよ」


「は? あの… それは… どういう…」


「それよりも先に ゆずのお母さんに挨拶に行かないといけないな」


「え???」


「…お嬢さんとお付き合いさせてください… かな?」


「え? あの… えーーー???」

 


柚子の悲鳴に近い叫び声が 静寂な闇を通り抜ける車の中で
響き渡った……。

 

 

 

 

 


*  *  *  *  *

 

 

 

 

 


「じゃあ、今夜は遅いから また日を改めて来るよ」


「は…い」


まだ信じられない気持ちでいっぱいの柚子は ぼ~っとしたまま永瀬を
見上げた。


柚子の自宅の前で 二人は向かい合っている。


「どうした? ぼんやりして…」


「はい。 あの、まだ信じられなくて…」


「ばかだな、ゆずは」


永瀬はふっと笑うと、また彼女の髪をくしゃくしゃっと撫でた。


「でも、お母さんには かなり反対されそうだな」


永瀬は苦笑いをしながら言った。


「そんなことありません! お母さん、永瀬さんの大ファンだし
 いつも永瀬さんのことステキだって言ってますから!」


「そうは言っても、実際 自分の娘の相手ともなれば
 やっぱり抵抗があると思う」


「永瀬さん…」


「でも、ゆっくり説得していくから ゆずは心配しないで」


「は…い」 …やだ、何だか すごく感動… 


「大丈夫?」


「はい。 わたし、信じてます… 永瀬さんのこと」


「うん」


二人はお互いを見つめ合うと、一緒に笑った。


柚子はとても幸せな気分になって、じんとしてしまった。

 


…ホントに頼りになるステキな永瀬さん…


わたしのこと… 好きになってくれたんですよね?


今は彩と同じでもいいから これからはもっと好きになってくれたらいいな

 


「あの… 永瀬さん」


「うん?」


「わたしを… 抱きしめてください」


「え?」


「いつかみたいに… そしたら、もっと信じられるから…
 何があっても、きっと永瀬さんについて行けます!」


すがるような瞳で見つめてくる柚子を見て、永瀬はふっと笑い そして
ゆっくりと手を広げた。


一瞬、柚子は戸惑った後、おずおずと永瀬に近づき そのまま 目の前の
大きな胸の中に飛び込んだ。


永瀬は柚子の身体を両手で包み込むと 優しく抱きしめた。


柚子はその胸の温かさに つんと目の奥が熱くなって そっと顔を埋めた。

 


何よりも幸せなひと時… 多分、今のわたしは この世界でいちばん幸福だわ…

 


そんなことを思いながら 柚子は大好きな永瀬の胸の中で目を閉じた……。

 

 

 

 

 


「お帰りなさい」


マンションに戻って来た永瀬を出迎えた彩は どことなく決まり悪そうに笑った。


永瀬は うん、と軽く頷くと 車のキーをデスクの上に置いた。


「あ…の、さと叔父ちゃん?」


「うん?」


「その… さっき… 見た?」


「何を?」


「だから、ゆずを送って行く時に… その…」


「何も見てないよ。
 …彩はもちろん、山下君なんて見てない」


「!!!」


慌てる彩を見て、永瀬は思わず笑ってしまった。


「ゆっ、ゆずったら! 喋っちゃったのねーーー!」


「…ばかだな、彩は。 あの子に隠し事が出来るはずないだろう?」


「う~っ」


「…と言っても、答えるように仕向けたのは僕だから
 彼女を責めたりしないように」


「………」


永瀬の言葉に 彩ははっとして、そしてふふっと笑った。


「?」


「やだ、叔父ちゃんったら… ゆずのことをかばってるのね?」


「そうじゃなくて、あの子は嘘をつけないからと言ってるんだ」


「ふふん、そんなこと言っちゃって…
 叔父ちゃんは そんなゆずを好きなんでしょ?」


「ばかなこと言ってないで、もう遅いから寝なさい。
 それから あまり、夜遊びばかりしないように」


「何よー! 叔父ちゃんだって、夜遊びしてるじゃない!
 遅くまでゆずのこと連れ回してーーー!」


「彩はまだ子供じゃないか」


「…それを言うなら、ゆずだって…」


「あの子には僕がついてるから…」


「!!!」


「どうした?」


「よく、そんな恥ずかしいセリフをーーー!」


「………」


「でも、さと叔父ちゃん… ゆずの保護者みたい」


「保護者?」


「そうよ、まるでパパの代わりみたい。すごく大事にして、守ってあげて…」


「そうか?」


「何だか羨ましくて妬けちゃうな」


「何言ってるんだ、彩は」


「彩のことももっと大事にしてよ」


「何、甘えてるんだ?」


「だって… 最近、叔父ちゃんったら ゆずとばかり出かけて
 つまんないんだもの」


彩のこともかまってよ… 彩はそう言うと、不満そうに頬を膨らませた。


「やっぱり彩も子供だな」


「ふ-んだ。叔父ちゃんは立派な大人ですよ」


憎まれ口をたたく彩を横目で見ながら 永瀬は部屋を出て行こうとしたが
途中で何か思い出したように立ち止まり、振り返った。


「そうだ、彩」


「なあに?」


「これからも ゆずと付き合うことにしたから」


「え???」


「一応、彩にも言っておく」


「どっ、どうして? だって、まだ一ヶ月たってない…
 どうしてなのーーー???」


突然の永瀬の告白に 綾は驚いてしまった。

 


どうしてかって? そうだな… 


永瀬は悪戯っぽい笑みを浮かべると さらりと言った。

 


「ただ、クリスマスまで待てなかった…っていうところかな…」

 

 

 

 

 


*  *  *  *  *

 

 

 

 

 


「では また来週にお伺いします」


かがみ出版の結城佳奈子はそう言うと 書き終えた原稿を
書類袋に入れた。


「それと… こちらが 阿川先生から預かってきたピアノリサイタルの
 チケットです」


「ああ、阿川先生が用意してくれたんですか?」


「はい、先生の息子さんのリサイタルなんですね。
 永瀬先生が演奏会に行かれると聞いて、とても喜んでいました」


「そうですか。ありがとう」


「いえ… 先生もコンサートにいらっしゃったりするんですね?
 しかも… クリスマス・イヴに… 
 あの… どなたとご一緒に?」


「………」


佳奈子は気になっていたことを つい口に出してしまったが
永瀬は黙ったまま首を傾げた。


「す、すみません。 余計なことでした」


「… 今、付き合っている女性と行こうと思っています」


「え? 付き合ってる…???
 そっ、そんな方がいらっしゃるんですか?」


「そんなに驚かなくても…」


「え? あっ、はい… それはそうなんですけど…」


「僕に恋人がいたら おかしいですか?」


「いっ、いえ! そんなこと!
 すみません… ちょっとびっくりしてしまって…
 今までそんなお話を聞いたことがなかったものですから」


永瀬の口から“恋人”という言葉が出て 佳奈子はかなり動揺した。


「まだ始まったばかりですから」


「そうなんですか…」


「もしかして がっかりしてますか?」


「いっ、いえ! そんなことありません!
 わたしは… ただの編集者ですから!」


永瀬の言葉に 思わず反応した佳奈子は慌てて声を上げた。


佳奈子の剣幕に永瀬は目を丸くし、そして しばらくすると口元を綻ばせた。


「そうですね。あなたは僕の担当編集者でした」


「そうです。先生の担当だから気になるだけです。
 先生の… その…相手の方はどんな女性なのか…」


「………」


「きっと洗練された魅力的な方なんでしょうね」


「どうでしょう… 洗練された、と言うより 飾り気がなくて、素直で
 不思議な魅力のある人です」


綺麗な顎に指を添えながら 照れる様子もなく淡々と言う永瀬だったが
その口元にはやわらかな笑みが浮かんでいる。


…そうなんだ… 佳奈子は その時になってやっと 永瀬に恋人がいるのは
まぎれもない事実だということがわかって またショックを受けた。

 


…そう言えば… ふと、永瀬がデスクの上のデジタル時計に目を向けた。


「そろそろ来る頃じゃないかな」


「はい?」

 


まさしくその時、玄関のチャイムが来客を告げた。

 

 

 

 

 


扉を開けると、いつものように柚子が駆け込んで来た。


そして また いつものように、柚子は永瀬の胸の中に飛び込み
しっかりと抱きついてくる。


先客がいるということなど頭にない柚子は しばらく永瀬の胸に顔を
押し付けながら息を整えると、満足したように顔を上げ 彼を見上げた。


「すごく会いたかったです…」


柚子の頬がほんのりとピンクに染まる。


「ちゃんと勉強してきた?」


永瀬はどこか優しげに柚子を見つめる。


「もちろんです! これで成績が下がったりしたら
 お母さんに何言われるかわかりませんから」


「そう、くれぐれも留年しないように」


「大丈夫、まかせてください!
 それよりも、永瀬さん! 今日は嬉しいニュースがあるんです!」


「いいこと?」


「はい! 今朝、お母さんが あと5回、永瀬さんが家に通ってくれたら
 認めてあげるって言ってくれたんです」


「お母さんが?」


「はい。 これって、もう お付き合いしてもいいってことでしょ?
 また永瀬さんに家に来て欲しいだけなんだと思います」


「………」


「だって、今度はいつ来るの?とか、永瀬さんは何が好きなの?とか
 何度も聞くんです」


「そう… じゃあ、近いうちにまたお邪魔するよ」


「はい、そうすれば お母さんも…  ……」


突然、柚子のお喋りが止まった。


「…もしかして お客様ですか???」


やっと、佳奈子の存在に気づいた柚子は 慌てて永瀬から離れた。


佳奈子は 真っ赤になった永瀬の恋人を呆然と見つめていた……。

 

 



 












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aoi32
bitaminさん、ありがとうございます。お返事が遅くなってすみません(^_^.) 周りが見えないほど 恋に夢中になってる柚子です。私も羨ましい~かも(笑) これからも またお付き合いくださいね^^ 2011/01/05 17:48
aoi32
大人の永瀬がリードしてるように見えますが、実は屈託のない柚子に振り回されている永瀬です^m^これからも見守ってね^^ 2011/01/05 17:45
aoi32
Gelsthorpeさん、ありがとう~。年越しのお返事ですみません(^_^.) 柚子は美月に似てますか?そう言っていただくと とても嬉しいです♪はい、確かに航平のような人はいませんね(*^_^*) 2011/01/05 17:43
bitamin317
扉をあけて回りもみないで永瀬の胸の中に飛び込む柚子ちゃん! そういう若さと行動力が羨ましいです 行動力というより自然なのかな・・・ 2010/12/31 15:15
Gelsthorpe
永瀬ペースでゆずはあたふた…って感じだけど、そのうち永瀬さんが無邪気なゆずに振り回されるなんて事もあるかなぁ?きっとこのあとはラブラブ…ですよね~?^^ 2010/12/30 17:06
Gelsthorpe
ご無沙汰しちゃって…最近読み逃げばかりでごめんなさい>< ゆずって美月に似てると思うのです。一生懸命で、素直で、前向きで元気…でも今回ゆずには航平君みたいな人はいなくて永瀬さん一筋だから大丈夫よね^^ 2010/12/30 17:03
aoi32
kutauniさん、ありがとうございます。やっと二人も正式にお付き合いを始めました。この後は やっぱりラブラブ~? でも、相手は永瀬ですから どうなるでしょうか(笑) 2010/12/28 16:25
aoi32
あきちんさん、ありがとうございます。はいー、永瀬にとって お試し期間はもう終わっていたんですね^^でも、何かと複雑に考えてしまう性格なので 行動が回りくどくなってしまって(笑)永瀬の悪いクセ…です^m 2010/12/28 16:22
aoi32
でも、そんな二人の間も 普通の恋人同士のように(わお) 少しずつ変わっていくと思います。これからも見守ってくださいね^^ 2010/12/28 16:18
aoi32
ちのっちさん、読んでくださってありがとうございます!コメントもいただけて嬉しいです^^ 永瀬にとって16歳の年齢差がある柚子は きっと可愛くて どうしても保護者みたいに かまってしまうんですよね(笑) 2010/12/28 16:15
aoi32
かえどんさん、ありがとうございます。安心してもらえて良かった♪ 新年に向けて もっとハッピーな二人にしたいと思っていますので、次回もお付き合いくださいね^^ 2010/12/28 16:09
aoi32
pichuuさん、ようやく(笑)読んでもらえて嬉しい!です。ありがとう~!今までいろいろなことがあった永瀬にとって 柚子は新鮮で心休まる存在です。これから二人がどうなっていくのか見守ってくださいね^^ 2010/12/28 16:05
kutauni
おつきあいできるようになってよかったです。ゆずちゃんと永瀬さんのこの先が楽しみです。 2010/12/28 14:15
あきちん
永瀬さんらしいっていうのか、一歩引いて大人ぶってるっていうか(大人なんだけど)・・・とっくにお試し期間じゃなかったのよね(笑)。でも慌てふためく永瀬さんも見てみたいような・・・。 2010/12/27 10:09
ちのっち
今まで読み逃げでごめんなさい(^_^;) 正式におつきあいが始まってよかったです^^ でも彩に「保護者みたい・・」と言われるのは問題ですねぇ(-"-) ふたりの恋が本物になるのは、まだ少し先かな? 2010/12/26 23:26
かえどん
あ~良かった!!読んでてとても幸せな気持ちに・・・・次回も楽しみにしてます。 2010/12/26 19:47
pichuu18
ようやくゆっくり読ませてもらいました。ゆずちゃんの素直な気持ちにおされちゃったんでしょうね。でも、そんな永瀬さんも素敵です。 2010/12/26 14:20
 
 

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