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Dear BYJ |
BAE YONGJOONさんに伝えたい・・・ そんな想いを綴る公開掲示板です(非メンバー様も閲覧できます) |
No |
393 |
HIT数 |
1200 |
日付 |
2009/07/16 |
ハンドルネーム |
どこかのともこ |
タイトル |
【創作】古鄒加(コチュガ)の娘 その弐 |
本文 |
続きです。お楽しみいただければ幸いです。
ちなみにこのお話のタイムラインは、 思い出話の時期-タムドク即位から狩りを装って百済遠征までの間 現在-後燕太子救出から百済降伏までの期間のある時点 です。
古参の侍女の一人に袂を引かれて注意を促されるまで、私は目の前の美しい光景に見とれて、御膳を持ったまましばし立ち尽くしてしまっていたらしく…
貴人のご接待には慣れているはずが、一体どうしてしまったのでしょうか。 粗相してしまいそうになる前にすべきことを終えて御前を下がることが出来たのは、幸いでございました。
でも、一時ほどの後父に呼ばれ、再び御前に上がってご挨拶の礼をするまでには、何とかいつもの冷静さを取り戻せたような次第でございます。 そして、ご挨拶を終えて立ち上がろうとしたその時、
「やはりあなたがコチュガのご息女でしたか。先ほどから、もしかしたらそうではないかと思っていたのです。」
低いよく響くお声が頭上から聞こえ、大きく柔らかそうな御手が私の目の前に差し出されました。 そして私の、これもまた父とそっくりの決して美しいとは言えない手を取られ、助け起こして露台に招き上げ、父の隣の椅子を勧めてくださいました。 その途端、やっと落ち着きはじめていた私の心臓は、結局のところまた早鐘を打ちはじめてしまったのでした。
陛下は御手ずからお茶を勧めてくださり、しばらくの間御自らも静かにその香りを楽しんでおいでのご様子でした。そして、ほんの少しだけ躊躇なさった後、
「まずはあなたに、兄上を失わせたことをお詫びしたい。 そしてこれは既にコチュガにもお話ししたことですが、あなたの兄上、そして兄上と共に亡くなった絶奴部の若者達の命を無駄にしないためにも、私はあらゆる努力を惜しまぬつもりです」
と、仰せになりました。 穏やかなご様子とはうらはらに、その御心には強く深いものがおありのようでございました。
兄がテジャ城で自ら盾となって陛下をお守りし果てたことが、ずっと宸襟を悩ませ続けていたのでしょうか。 父や部族の兵たちと共にタルグが初めて王宮に上がった際にも、さらにご心情を吐露なさろうとしたようですが、タルグは「何もおっしゃらなくても分かっております」と申し上げたと言っていました。それまでの陛下とのご交流で、そのお人柄をよく存じ上げていたからでございましょう。
けれどもそのお話の最中に、暖かな陽気に誘われて、あろうことか父はこっくりこっくりと、舟を漕ぎ始めていたのでした! 連日の軍議やご視察のお供で疲れが溜まっていたのでしょうか。 年の割には丈夫な人なのですが…時々こういった、本当に困ったことをしでかしてしまう人なのです。
恐縮してお詫びを申し上げ急いで父を揺り起こそうと致しますと、陛下は御手を軽く上げて私を留められました。 けれどもまさか御前で居眠りなど、放っておくわけには参りません。 なおも言い募ろうとする私の口を、陛下は優美な動作で人指し指を御唇に当てられて封じられると、静かに席をお立ちになりました。
「このまま休ませておいてあげましょう。あなたもいらっしゃい」
再び目の前に差し出された御手を取り、仰せに従った私でございました。
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