*そして、パソンが拉致される場面: ドラマではタルビと一緒に拉致されますが、原作にはタルビは登場しません。パソンが愚痴っているので聞いてやって下さいまし~^^
今がパソンにとって一番忙しい時期だった。いざ、戦闘が始まった時は兵器を手入れする間もないので戦闘が終わって兵士達が休んでいる間にやり終えねばな らなかった。野戦の臨時天幕ではなくきちんとした鍛冶設備が整っているクァンミ城の鍛冶屋作業場を利用できて、仕事がもっとし易くなると思っていたのが 大きな誤算だった。兵士達が預けた兵器が山のようにたまっていた。パソンは続けてハンマーを叩きながら愚痴に余念がなかった。
「私が例え信頼出来る王様だと思ってついては来てみたものの、もう一方で考えてみれば、愚かなことだったのか、それでなくても仕事がどっと押し寄せてい る女がいくら仕事が良いとは言えここに来ただろうか。お父さん、私が兄貴だけだとしてもここまで来なかったですよ。陛下が兄貴を捜してくれと頼めるだけ の王様でなかったら来なかったでしょう。それで、あの世でこんな私の苦労を分かってくれますか?いや、後で兄貴は分かってくれるかな?」 パソンがぶつぶつ言っている間、人影が一つ近づいてきた。何を悩んでいるのか躊躇する足取りだった。しかし、パソンは人の気配を感じることが出来なか った。ハンマーが槍の刃を叩く音が響いていたし、身の上を嘆くのに気を取られていたからだ。
その後はドラマと一緒ですので、文字数制限の為に割愛しました^^
*そして、何と原作ではパソンの拉致シーンにスジニとチョロが絡んできます。 上の原作から続いて書かれています。
メックン矢にひどくおかしい箇所があるのではなかったが、思った時に手直ししてもらうとパソンを訪ねたスジニが鍛冶屋を急に飛び出したパソンをみて立ち 止まった。パソンはスジニが来ていることも気づかず男と一緒に足を速めた。パソンがついていく者の姿は全く見慣れないものだった。スジニは首を傾げなが らどこかで見たことがあるのかと思っている間に2人が少し離れたところに行ってしまった。スジニが鍛冶屋の中を見るとやる仕事が山のようにそのままの成 っていた。スジニはパソンが仕事を後回しにする性格ではないことを知っていたのでどこにそんなに急いでいくのか気になった。そして、思わず2人の後をつ けた。
店員がパソンをクァンミ城の外れに連れてきて待ち伏せていた火天会の人間に拉致されます。その描写はほぼ同じですので割愛しました。
*パソンの後をついてきたスジニの行動シーンに続きます: 路地の曲がり角からパソン一行を見失ったスジニがやっと道を探しあてると一目みても武術を身につけている男達がのたくる袋を車に積んでいた。焦った気 持ちで矢を探そうと背中を触ったが、直ぐに矢筒を持ってこなかったことに気がついた。その間にもう一つの車が合流した。車が開いて出てきたのは漂う気配 は威圧感だけでも高段者分かる武士達だった。彼らはとても短く何かうち合わせして車の方向を変え移動し始めた。
スジニはもう我慢できず腰の小刀を抜き出して前に飛び出そうとした。その瞬間頑丈な手が背中から伸びてきて小刀を持っていた手をギュッと握られ口を塞 がれた。スジニは首を左右に振ったが相手の力はそれよりもずっと強かった。 パソンを拉致した奴らが消えるとすぐに、触れていた手の主はスジニを放してやった。 スジニは自由になった体になってすぐに後ろを向いて小刀で狙った。口を塞いだ人間は長身の男だった。高句麗軍の身なりに頭には兜を被っていた。スジニは 兜の奥の眼を覗いたが知らない者だった。
「何だ、お前」 チョロは自分に武器を向けるスジニを見ながら、全てを明らかにしたかった。しかし、どうしてスジニの後を付けてきたのか説明する自信がなかった。前に相 対した時、スジニに何をしたのか。無理に拉致し木の力を借りて両手を縛り上げたのは他ならぬチョロ自身だった。その時も理由を説明できなかった。間違い なく見覚えがあった。起源が分からないが遙か遠い記憶にスジニがいた。しかし、クァンミ城で育った幼少時期よりもずっと昔に会った事があると説明しても 信じられるはずがなかった。チョロ自身も納得し難かった。 だから、チョロは身分を隠すことにした。そして答える代わりに自分の口を示して頷いた。 「しゃべれないのか?」 チョロは頷いて肯定した。
スジニは目の前の口のきけない者に敵意も殺意もないことが分かった。たった今の行動も多数の武士達と1人で向かう状況を防ごうとした事は確かだった。 「そして、私が怪我すると思って防ぐようにと、ってことだろう?」 口のきけないチョロは今回も頷いた。 「見るまでもなく王様が送ったんだろう。私を思って護衛を付けてくれたと言う事は涙が出るほど有り難いけど、、、今、それが問題ではなく、パソン姉さん がいないと、、、こんなことしている場合じゃない。百済の奴らではないみたいだし。いずれにせよ、ここは百済なんだがら、奴らも百済のものでなければ思 うようには動けないはずだし。追いかけなきゃ。さっきは奴らの人数が分からなかったので危なかったけど、今は違う」
スジニは未だ慣れていないクァンミ城の道をあちこち狙いを付け馬屋に向かって走った。 普通の人ならばついてこられない速度だったが、チョロはそんなに大きな力を入れずスジニが向かうところに移動した。 スジニが馬を引いて出てきた。1人ででもパソンを拉致していった奴らを追いかけるつもりで手綱を握られるままに無理矢理連れ出してきた馬だった。スジ ニは自分に視線をやる人間がいないところですぐに馬の背中に乗ろうと片手をかけた。そうこうする内に一息ついて後ろを振り返った。 「ちょっと、どこまでついてくるの?」
スジニの視線の端にいる普通の兵士と変わらない身なりをした人影が足を止めた。パソンを拉致しようとした奴らとの衝突を邪魔した後、ずっとついて来てい たチョロだった。 「あんたもホント、ご苦労なこった!王様がそんな命令をされたから。スジニ、あいつは何時どこで何をしでかすか分からない。又どこかで捕まったら、全て をそっちのけにして助けにいかねばならない。そのようにして私も天寿を全うできなくなる。だから、便所に行ってもそのまま放っておかずついておけ、そう だろ?私の言うことが合ってるだろう?」 チョロは無表情な顔でスジニの眼をみた。 「そのままずっとあっちこっちついて下まで来るつもりなのか、拉致した奴らは普通ではないのだ、ずっと見ていれば分かってくるんだよ。あいつらがその気 になって身を隠したとしたら、どこを探せると思うの?無理だろうが。しかし、私は違んだ。隠れて探すのが専門だからね。だから、私が行ってみるから分か った?」
スジニが話し終えてつま先に力を入れて馬に乗ろうとした瞬間、チョロが口笛を吹いた。すると馬はスジニをまるで梱包された荷物のように放りだしてチ ョロの方に蹄を響かせながら歩いて行った。 「こら、戻れ」 スジニが慌てて手綱を引っ張ったが馬は構わず(頑として)チョロの方に向かった。チョロは馬の小鼻を一度撫でてスジニに背中を向けて遠のいた。馬も又チ ョロについて行った。 「こら、お前、このやろう」 スジニが普段の実力を発揮しチョロの手首を捕まえたが、チョロは既に予見していたように一足先に腕と体をひねって避けた。身動きには自信のあったスジニ は呆然として自分の手とチョロを交互に見た。 「あんた、何もの?」 チョロが他の音色の口笛を吹くや馬が馬屋の方に走って行った。もう2人の間を遮るものはなかった。チョロはスジニの方に大股で近づいて口を開いた。 「怪我をするな」 「、、、、何?」 「お前が私にとって何者かが分かる前に怪我をするな」 「あんた、、、、あんた口がきけないのではなかったのか?」 「すぐに決着がつくことになる。なまじっか出ていって怪我するだけだ」 スジニはもう目の前の男がタムドクの部下だとは思えなかった。近くで覗いた男の目には普通ではない何かが込められていた。スジニは一歩下がって体重を移 した。手は既に小刀の握りを掴んでいた。チョロは少しも動かなかった。 「スジニ!」 スジニが声のするほうを見た。飴ウリのヒョンジョだった。 「いや、おじさんがどうしてここにいるの?国内城にいないといけないのに」 飴ウリが泣き出しそうに成りながら話した。 「俺のせいだ。俺があいつを連れて来たのだが。あいつも居なくなり、パソン鍛冶屋も居なくなって。間違いなく火天会の奴らが拉致していったんだ」 「何、火天会!だから普通の奴らではなかったんだ。だから私が言っただろ」 スジニが自分の考えが間違っていなかったことを認めさせようと後ろを振り返った。しかし、チョロはいつのまにか消えていた。
*そして、チュムチがパソンが拉致された事でタムドクと意見が対立します。ドラマではフッケと一緒に助けに行くことをタムドクが許可していますが、原作は 違っています。 助けに行くというチュムチに対してタムドクのセリフの箇所から:
「今が平時なら私もそうする」 チュムチが喧嘩を仕掛けるかのように顔をしかめた。 「何を言う?」 「どこに行ったか分かって追いかけるというのか。それも高句麗ではない百済の地で。人を追いかけることにおいては後に追随を許さないスジニも見失った奴 らだ。無条件に力だけを信じて追いかけるものではない。」 チュムチが荒い息づかいで言った。 「それで、そのまま黙って待とうという事ですか?パソン姉さんが殺されるかもしれないのに。そのために連れてきたのですか?」 チュムチの最後の言葉がタムドクの胸を突き刺した。誰よりも聞きたくない言葉だった。しかし、聞かねばならない言葉でもあった。 「誰が黙っていると言ったのか。奴らがパソン鍛冶屋をすぐに手出しする事はない。神器を探す為に連れていったのだから。最小限、神器を探す時までは無事 であるだろう。神器が早く持って行けと待っているものでもないから、未だ、時間はある。だから、先ず、国内城に行って戦列を再整備した後、ホゲがどこに 行ったのかを分かってから助けに行かねば。いずれにせよ、ホゲが連れて行ったはずだから。」 タムドクの言葉は間違っていなかった。チュムチは黙るやいなや息を上げて腹いせをする場所を探して足に引っかかった椅子一つを蹴飛ばした。 「あ、本当に気がおかしくなる。行くならさっさと行きましょう」
ヒョンゴが後ろ手に組み、両手に杖を横に握って部屋の中をぶらついた。 「国内城に行かれるとか?しかし、チュシンの王に成られるなら先に契丹に行くべきではないですか?朱雀は既にホゲ側に立ちました。これ以上それを隠そう とはしないでしょう。国内城が陛下のお戻りを喜ばないこともあります。ヨン大家が何か企んでいるかも知れません。そこにホゲが白虎の神器を先に手に入れ たら?私は王様がチュシンの嫡流(正当の血筋)有ることを信じて疑ってはおりませんが、そうなれば両方に神器が二ヶずつ持つことになります。ホゲも又自 分がチュシンの王だと自任するでしょう。それでも国内城に行かれるのですか?」 「行きます。」 「理由が何かお聞きしてもよろしいでしょうか」
タムドクは机の角に腰掛けてヒョンゴを見た。 「先生、チュシンの王が何なんですか?神器の守護神を部下として従え天の意志ばかりを眺めていれば王ですか?神器が東にあると言えば東に向かって走り、 南にあると言えば水路もはばからず(嫌がら)南に泳いでいくのがチュシンの王ですか?そのような事だけをすれば天の選択を受け王に成るというのですか? 少なくとも私はそんな考えはしていません。勿論、そうだと言ってホゲに神器を黙って渡す事は有りませんが、神器で首をつるつもりはありません。いや、果 たして神器が何か、どんな意味が有るのかという事は先生が私に教えてくれなければ成りません。」
タムドクが懐を探してチョロの体から抜き出した青龍の神器を取りヒョンゴに投げた。 ヒョンゴはひょっとして神器が壊れるかと思って慌てて走って青龍の石の塊を受け取った。片手には玄武の杖、もう片方の手には青龍の神器だった。しかし、 どちらも神技を発しなかった。ただ白く錆ついた石の塊と平凡な杖だけだった。青龍の神器を触っていたヒョンゴは懐に仕舞いながら訊いた。
「分かりました。私が例え玄武様の選ばれたものとは言え平凡な人間、コムル村の者とはいえ偽の易者に過ぎないでしょう。どうして陛下の深い意志を全てお 察しできるでしょうか。ただ、一つだけお聞きしないわけには参りません。国内城に戻られると言う事が全くキハという女人と何ら関係はないのですか」 タムドクは自信もって手短に答えた。「ありません」 ヒョンゴが恭しく頷いた。
如何でしたでしょうか? ドラマは人間、タムドクの悩み、弱さが描写されていましたね(チュムチとのシーンは原作にはありませんが) 原作はタムドクが思い描いている真の王に対する考えを細かく描写していますね。テサギの魅力はここにあるような気がしますが、、、、
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