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『she is kind to everyone 7 calling』
どこかで、何かの音がする。
ジニョンは夢うつつで、その音を聞いていた。
あれは・・・電話のベル?・・・いいえ・・・あれは・・部屋のチャイムの音?
ジニョンはゆっくりと夢から現実に戻った。
部屋の中を、インターホンの音が何度も響き渡っていた。
「・・は、はい・・・今あけるわ」
ジニョンはなんとかベッドから起き上がると、よろよろとドアに向かった。
ドアを開けると、ドンヒョクが立っていた。
「ドンヒョクssi・・・」
ドンヒョクはバスローブ姿のジニョンをちらっと見ると、そのまま黙って部屋に入ってきた。
「行こうか」 「えっ?」
「もう仕事は終わったんだろう。だったらここを出て帰ろう。」 「そ、それはそうだけど・・」
ジニョンはこんな深夜にいきなりやってきて、帰ろうと言い出すドンヒョクを少し不思議な気持ちで眺めていた。
ジニョンがぼうっとたたずんでいる間にもドンヒョクは、手当たり次第に、ジニョンの持ち物をジニョンの鞄に詰め込んでいった。
「ちょ、ちょっと待ってよ。今起きたばかりでまだシャワーも・・」
結局ジニョンは先ほど戻ってきた時、あまりの疲労感でバスローブに着替えただけで、つい眠ってしまったのだった。
「シャワーなら家で浴びればいいよ」 「ドンヒョクssi?」
ドンヒョクは、動きを止めることなく、どんどん用意をしていった。
ジニョンは仕方なくバスルームで着替え始めた。
慌しく部屋を出て、深夜のホテルの中を歩いてドンヒョクの車に向かう。
ホテルでは、まるで今日のあの喧騒が嘘のように、静かに、かわらない日常を刻んでいた。
でも、明日も誰かの大切な瞬間がここでは起こるかもしれない。
Calling・・・今日私は神様に呼ばれたかしら・・・
ジニョンが感慨深げにホテルの中を歩いていると、いきなりドンヒョクに腰を引き寄せられた。
「ドンヒョクssi?」
驚いてドンヒョクを見上げる。
ジニョンの腰を抱いたまま足早に歩き続けるドンヒョクからは、たとえようのない気配が感じられた。
・・・・何を考えているの?ドンヒョクssi・・それとも何か怒っているの?・・・
「ドンヒョクssi・・ちょっと待って・・そんなに早く歩けないわ。」
ジニョンの言葉にドンヒョクははっとしたように一瞬足を止めた。
白い湿布がはられたジニョンの足首に目を落とすと小さく溜め息をついた。
「ごめん・・・」
その後、ドンヒョクが送ってくれたのはジニョンのアパートではなく彼のマンションだった。
何も言わず車から降りたドンヒョクに続いて、ジニョンもドンヒョクのマンションの中に入っていった。
ドンヒョクが少し乱暴に部屋のドアを開けるとジニョンを中に招き入れた。
ばたん、と大きな音がしてドアが閉まった。
いつにない彼の少し乱暴なふるまいにジニョンの胸も、もやもやとしてきた。
・・・なんでそんなに不機嫌なの?やっと仕事も終わって二人っきりになれたのに・・
部屋の鍵を無造作にその辺に投げると、ドンヒョクはくるりと振り返りジニョンを見つめた。
「ドンヒョクssi・・どうかしたの?」
ジニョンの問いかけにもドンヒョクは黙ってジニョンを見つめている。・・・・
「ドンヒョクssi?」
最初戸惑っていたジニョンもだんだん腹が立ってきた。
「一体どうしたの?何かあったの? 大体、こんな夜遅くに迎えに来てくれるのなら、先に電話してくれればよかったじゃない。」
「電話?」
ドンヒョクの冷ややかな声がした。
「それはどうかな・・」
そう言うと、ドンヒョクはスーツの内ポケットから例の赤い携帯を取り出した。
「えっ?どうしてそれが、ドンヒョクssiのところにあるの?」
驚いて問い返すジニョンを見て、ドンヒョクの目が掠められた。
「それを聞きたいのはこっちの方だよ。」
「待って・・・夕方・・・ミンジョンssiと海に行って・・・・私がよろけて・・ ミンジョンssiが助けてくれて・・その後・・・・」
ジニョンは独り言のようにつぶやきながら、先ほどのを思い出していた。
・・・そう言えば、ミンジョンssi、あの後、ドンヒョクssiに挨拶に行くとかなんとか言ってなかったかしら・・・
そんなジニョンの様子を見ていたドンヒョクが鋭い声を出した。
「ジニョンssiはいつもそんなに無防備なのかい?」 「無防備ですって?」
「じゃなければ、浅慮?」 「はあ?どういう意味よ!」
「大体携帯を落とすという事自体が軽率すぎる。 その上、落としたことに気づいてもいない。誰か悪いやつに拾われていたらどうするつもりだったんだ。」 「そ、それは・・・」
「彼と・・・ミンジョンssiと二人で海に行ったとか?その行為も考えが甘いと思わないか?」 「な、なんですって?」
「よく知らない男と二人で、そんな所に行くなんて、考えが甘いといわれても仕方ないと思うけど」 「よく知らない人ですって?ミンジョンssiとはずっと一緒に仕事してきたのよ。よく知っているわよ!」
「プライベートも?」 「そ、それは・・」
「それは仕事なのか?それともプライベートなのか?」 「・・・し、仕事上の知り合いと、ちょっと個人的な時間をもったというか・・・なんというか・・」
「ジニョンssiがあの仕事を無事終えるまで、僕は随分我慢してきた。 自分がこんなに我慢強いとは思ってもみなかったよ。」 「なんですって?」
「大体ホテルに滞在するという事も、事後承諾だ。 少しぐらい相談してくれてもよかったんじゃないのか?」
「今更、そんな事・・」
「今回は随分とプライベートが混じっていたようだからね」
「何よ!それを言うならドンヒョクssiだってそうじゃない! あのナヨンssiと二人きりで随分とあちこち行かれていたみたいですけど! 大体あのレストランだって、クライアントとだなんて嘘ついて・・お二人きりのようでしたけど!」
「僕は仕事上の付き合いだ。」
「だったら、私だってそうよ!」
「夜の海に二人きりで行くのも仕事なら、それは随分と忙しかっただろうな」
「誰とどこへ行こうと私の勝手でしょう!」
「本気で言っているのか?」
ドンヒョクの眼差しが怒りで燃え上がった。
ジニョンはそのあまりの剣幕に、言葉につまり、ふんと横を向いてソファーに深く沈みこんだ。
そのまま気まずい沈黙が続いた。
ドンヒョクは一度大きな溜め息をつくと、ソファーで膨れ面のジニョンを見た。
「お互い少し冷静になった方がよさそうだ。このままでは勢いで思ってもない事まで口にしそうだ。」
ジニョンは、まだ、黙ったままだ。
「コーヒーでも淹れてくるよ」
そう言ってドンヒョクがキッチンに向かった後、ジニョンは我慢できないくらい腹が立ってきた。
やっと大仕事を終えた今、くたくたに疲れきっているというのに・・・ 一方的に責められ、非難される。
自分だってあの綺麗な実業家の人と、仕事だかプライベートだか区別できない時間を持っていたくせに!
「もう帰るわ!」
ジニョンはそう言うとソファーから立ち上がり、玄関に向かった。
しかし・・
・・・靴がない!!
玄関には先ほどジニョンが脱いだ靴がどこにも見当たらなかった。
慌ててあちこち見渡してみても、ドンヒョクの靴が2,3足あるだけでジニョンのパンプスはどこにもない。
・・・な、何?どうして?・・・
混乱してあちこち開けてみるジニョンを後ろからドンヒョクの大きな手が捉えた。
背中からぎゅっと力一杯抱きしめられる。
もがくジニョンなどお構いなしに、ドンヒョクはそのまま寝室を目指した。
「ちょ、ちょっと・・ドンヒョクssi!」
ドンヒョクはジニョンをベッドに押し倒すと、その大きな体で組み敷いた。
「ホテルの支配人という仕事は実に多岐に渡るんだな!」
言い返そうとジニョンが大きく息を吸ったところで・・・
キス!
熱い唇がジニョンの唇を塞いだ。
そのまま息もできないほど激しいキスが続けられた。
「あの食事だって、僕は何も聞いてなかった!」
今度こそ言い返そうとジニョンが口を開いた瞬間・・・・
キス!
激しく熱く情熱の全てを込めたキスが続いた。
その間もドンヒョクの両手はジニョンの身体を少し乱暴に探っていく。
「僕は嘘をついた覚えはない。詳細を省略しただけだ。それに比べて君は何も言わなかった!」
口をふさがれて何も言い返せないジニョンは、ドンヒョクの大きな体の下でありったけの力で身をよじった。
ドンヒョクは、さらにジニョンの上にのしかかると、両手でジニョンの顔を挟み込んで、またしても激しいキスを重ねた。
息ができないほどの激しさでドンヒョクはジニョンの唇を奪った。
そのまま長い長いキスが続いた。
ジニョンは、悔しくて何か言い返そうと息を継ぐ度に、ドンヒョクにキスされて、まだ一言も言い返せていなかった。
頭の中に数々の怒りのフレーズが浮かんできたが、久しぶりのドンヒョクの熱いキスに溺れかけている自分も感じていた。
・・・・このまま、一方的になし崩しにされてたまるもんですか!言いたいことはこっちにもたくさんあるのよ!
ようやく、ドンヒョクが唇を離した。
ジニョンは、少し首を傾けて、思いっきり息を吸って、ここぞとばかりに、言い返そうと口を開いた。
その瞬間・・・・
「寂しかった」
ドンヒョクのその一言でジニョンは抗議の言葉が喉の奥で止まった。
ドンヒョクはジニョンの少し戸惑った瞳を見つめた後、その柔らかな首筋に顔を埋めた。
「寂しかった・・・会いたかった・・・・話したかった・・・触れたかった・・・抱きしめたかった・・・キスしたかった・・・抱きたかった。」
「・・・ドンヒョクssi・・・」
そこでドンヒョクは、顔を上げると、もう一度しっかりとジニョンの目を見つめた。
「ジニョンssiに会えなくて寂しかったし、こうしてジニョンssiに触れられなくてすごく辛かった。 仕事だと分かっていたけど・・・仕事ばかり優先させるジニョンssiに正直腹が立った。
僕はこんなにジニョンssiに会えなくて辛い思いをしているのに、平気な顔で仕事しているジニョンssiを見ると・・・ それも・・・他の男といつも一緒にいるジニョンssiを見ると、理不尽だとは分かっていても無性に腹が立った。」
「わ、私だって平気だったわけじゃ・・」
ジニョンの言葉はいつの間にか抗議から弁解に変化していた。
ドンヒョクの眼差しが切なさを帯びてジニョンの胸を打った。
「寂しかった・・・」
「・・・喧嘩の途中でそんな事を言い出すのは、ルール違反よ。まだ私何も言えてないわ。」
ジニョンの唇がちょっと尖り、ドンヒョクを甘く睨んだ。
ドンヒョクはジニョンのよく知る、ちょっと困った顔で微笑むと、もう一度ジニョンの首筋に顔を埋めた。
「喧嘩にはルールがあるだろうけれど、仲直りにルールはないよ。」
ジニョンはドンヒョクの首にゆっくりと腕を回した。
「これは、仲直りなの?」
「どう思う?」
ジニョンの首筋に埋められたドンヒョクの唇がゆっくりと動き出した。
その掠めるようなそっと触れるような、もどかしい動きにジニョンの口から甘い溜め息が零れた。
「ん・・・そうね・・これはやっぱり・・・仲直り・・・かしら?・・」
ジニョンの言葉の最後はもう聞き取れないほどの甘い呻きに変わっていた。
ドンヒョクはジニョンをしっかりと抱きしめると、耳元で囁いた。
「ずっと・・こうしたかった・・・欲求不満で死にそうだったよ・・」
「ド、ドンヒョクssi・・欲求不満って・・」
ジニョンはあまりにストレートなドンヒョクの告白にすっかり上気した頬をもっと赤く染めた。
「会いたいという欲求、話したいという欲求、触れたいという欲求・・」
そこまで言ってドンヒョクは熱く唇を重ねた。
そのまま唇を離さずに言う。
「キスしたいという欲求・・・そして・・抱きたいという欲求・・」
ドンヒョクの唇がジニョンの唇の上で動き擦れて、ジニョンを熱くさせていった。
ドンヒョクの手が少し乱暴にジニョンの両脚の間に差し込まれた。
「ジニョンssi・・・きっと・・優しくできないと思う・・」 「ドンヒョクssi・・」
ジニョンの瞳が少し悪戯っぽい光を帯びた。
そのままドンヒョクの首に回した腕に力を入れて、引き寄せる。
ドンヒョクの耳にそっとキスを落として、甘く囁いた。
「・・・抱いて」
ドンヒョクの体がピクリと震えると、顔を上げてジニョンを見つめた。
「ジニョンssi・・・」
ドンヒョクの瞳の切ない色が濃い情熱の色に変化していくさまを、ジニョンはドンヒョクの大きな体に包まれながら見上げていた。
ずっと何かで凝り固まっていた心が、やっと溶け出し、愛しさと優しさが溢れ出してジニョンをしっとりと濡らしていった。
そして、ドンヒョクの中で行き場を探して渦巻いていた激情が、一気にジニョンに向けてほとばしり出した。
ドンヒョクは、もう一度息もつかせぬほどの激しいキスを浴びせかけた。
ドンヒョクの香りに包まれて全身で彼の重みを感じる。
ドンヒョクの手がすばやく器用に動いて、ジニョンを生まれたままの姿に変えていき、 敏感になった胸とそのピンク色の頂きに触れるとジニョンは喘ぎながら、身体をのけぞらせた。
久しぶりの甘い興奮が次々とジニョンを襲い、甘美な拷問に身を任せた。
ジニョンの全身が熱く蕩けだし、その甘い喘ぎがドンヒョクを煽りだした。
そして、乾ききった藁に火がつくように、二人の情熱の炎がたちまち恐ろしいほどの勢いで燃え上がっていった。
「あ・・・んん・・ドンヒョクssi・・・」
ジニョンの甘い要求にドンヒョクが全身で答えようとする。
「ジニョンssiの全てが欲しい・・どこまでも僕のものにしたい・・・」 「ドンヒョクssi・・・ああ・・・・ん・・・」 「いつでも、どんな時でも独り占めにしていたい。」
ドンヒョクの甘い囁きが、ジニョンの体の隅々にまで行き渡り、新しい息吹を吹き込んだ。
ドンヒョクの指先がジニョンの最も熱い部分を探り当てて、唇は胸の頂を弄んだ。
その甘美な責め苦に、ジニョンは全てを手放し、ただ与えられた強烈な快感に身をゆだねた。
そして身悶えるジニョンをしっかりと捉えて、ドンヒョクの情熱が熱く深くジニョンを貫いた。
「あっ・・・・・」
ドンヒョクが、そのまま原始のリズムを官能的に刻み始める。
苦しいほどの快感に支配されてジニョンはその情熱に呑み込まれてゆき、 やがて熱い興奮が渦を巻いて今にも爆発しそうに高まっていった。
一瞬動きを止めてドンヒョクはジニョンをじっと見下ろした。
「僕を見て・・・」
ジニョンはうっすらと目を開いて、その端正な顔を見上げた。
「ドンヒョクssi・・・」 「そう・・・今だけは・・この瞬間だけは僕だけを見て・・・」
そう言うとドンヒョクは、またジニョンに震えるような快感を与え始めた。
「ああっ・・・んん・・・もう・・・」
ジニョンが一気に恍惚の階段を昇りだし奔放な情熱に身を預けた。
ドンヒョクもその後を追う。
そして、ジニョンの中で世界が弾け飛び、電流のような衝撃とともに忘我の楽園に放り出された。
やがてゆっくりと崩れ落ちたドンヒョクが、ジニョンをしっかりと受け止め二人してただ夢のような安住の地にたどり着いた。
気だるい幸福感に包まれて、ジニョンはたゆたうように現実に戻ってきた。
満ち足りた緩やかな時間がやっと二人に訪れた。
ドンヒョクはジニョンの頭の下にそっと腕を差し入れて、優しく自分の方に引き寄せた。
乱れた髪にキスをして、片手でジニョンの唇をなぞる。
「ずっと、こうしたかった。ジニョンssiの仕事の事は理解していたつもりだったけれど、頭と心は別ものだな」
「ドンヒョクssi・・・」
ジニョンは、温かなドンヒョクの全身に包まれ、心からいろんな想いが・・嫉妬や虚勢や強がりや背伸び・・・ が洗い流されてゆくのを感じていた。
・・・・こうしてドンヒョクssiの側にいると、素直な自分に戻れるわ・・・
「あのね・・ドンヒョクssi・・」 「うん?」
・・・深く優しいドンヒョクssiの声・・・いつでも私に答えてくれる・・・
「私、ちょっと見栄を張っていたの」 「見栄?」 「そう・・」
ジニョンはもっと身体を寄せて、ドンヒョクの胸に頭を預けた。
「あの人・・・ドンヒョクssiと一緒に仕事しているナヨンssiに・・・ なんていうか、一人前のホテリアーとして認めさせたいというか・・そんな気持ちがあったの・・」
「どうして?」
「だって・・あの人は綺麗で頭も良くて仕事もできる・・・まさに完璧よ。 だから私よりドンヒョクssiにお似合いな気がして・・だから、私だってちゃんと仕事ができるのよ。 プロなのよ・・って所をみせたかったのかもしれないわ・・・・・ 格好悪いけどジェラシーを感じていたんだと思うの。」
ドンヒョクはふっと笑うと、ジニョンをぎゅっと抱きしめた。
「私はホテリアーとしてもまだまだよ。 だからいろんな才能に恵まれた彼女に対抗して、柄にもなく背伸びをして、見栄を張っていたんだと思うわ。」
ジニョンがちょっと情けなく笑った。
「格好悪いわね・・」
ドンヒョクはそんなジニョンの頭の下に差し込んだ腕に力を込めて、しっかりとジニョンを抱き寄せた。
「人格と言う魅力に勝る才能はないよ」
ドンヒョクの言葉が静かにジニョンの胸に響いた。
「どういう意味?」
「このソウルにいくつのホテルがあるかわからないが、ただ施設の豪華さや便利さを優先させるなら、 何もソウルホテルでなくたっていい。 同じようなホテルはたくさんあるだろう。でも、どうして客はソウルホテルを選ぶんだと思う?」
「それは・・サービスとか・・雰囲気とか・・・・」
「同じようなサービスでも、ジニョンssiから受けたいと思う人がいるからじゃないかな。 ジニョンssiの笑顔や言葉に癒される人がいるからだろう。 目に見えないサービスというものを提供するという事は、実はとても難しい仕事だと思うよ。 それはサービスする人の人格を反映して、ごまかしのきかないものだと思う。 ジニョンssiはそんな才能にとても恵まれた人だと思うよ。」
「ドンヒョクssiが言うともっともらしく聞こえるわね。」
ジニョンは、やっと心のつかえがとれて、体中から余計な力が抜けた。
やがてゆっくりと瞼が落ちてゆき、温かで幸福な眠りがジニョンとドンヒョクを包み込んでいった。
「これは、株主として正当な抗議だ・・・・いや・・僕は仕事に私情ははさまないよ」
まだ夢うつつのジニョンの耳にドンヒョクの声が聞こえてきた。
「そうだ・・・・従業員の待遇改善を要求する。 今言った事を真剣に受け止めて、対策を講じてくれ。以上だ」
ドンヒョクssi・・・・電話中?
カチッと音がして、ドンヒョクが電話を置いた。
「・・・・ドンヒョクssi・・電話してたの?」
まだ、はっきりと目覚めていなジニョンの声がした。
「ごめん。起しちゃったかな?」 「ううん・・・・何か仕事のトラブル?」
ジニョンは部屋の時計を見た。
まだ夜が明けて間もない時間だ。
「いや・・なんでもないよ」
そういうとドンヒョクは、ジニョンをたくましい胸に引き寄せた。
「ドンヒョクssi・・・」
ドンヒョクがジニョンの乱れた髪を優しく梳かすと微笑んだ。
「ハネムーンは中止にしようかな」
ドンヒョクの思わぬ発言に一気にジニョンの目が覚めた。
「えー!何ですって?」
驚いて、思わず身体を起してドンヒョクを見つめた。
肩から薄い上掛けが滑り落ち、少しピンクに染まったジニョンの素肌が現れた。
さらされた白い胸をドンヒョクは満足げに眺めた。
「いい光景だな。」
その目が意図する事を察して、ジニョンは慌てて上掛けに潜り込んだ。
「もう!」
少しふくれっ面で、ドンヒョクの胸に顔を埋めた。
「ハネムーンを中止にするって本気で言ってるの?」
ドンヒョクがジニョンの少し不安げな問いかけに、ジニョンの身体を自分の上に引き上げた。
「ドンヒョクssi・・・・」
ぴったりと自分の身体に密着させると、不安げな表情をしているジニョンを下から眺めてドンヒョクはふっと悪戯っぽく笑った。
「どこにも行かずにジニョンssiと、ずっとこうしていたいな。 だから、ハネムーンは中止にしてこのベッドの中から一歩も出ないでおこうかな」
「もう!ドンヒョクssiったら・・」
ほっと安堵の息を吐きながらジニョンは怒った振りをした。
「そうだ!私の靴・・・」
といいかけたジニョンの唇をドンヒョクが慌てて塞いだ。
そのまま、キスを深めてゆき、両手がまた快楽の海原を目指しだした。
ジニョンも思わず、自分の胸にぴったりと押し当てられたドンヒョクの広い胸に両手を這わせた。
ドンヒョクはどこかおずおずと自分を探り出したジニョンの手をつかむと、しっかりと自分の胸に押し付けた。
「僕に触れて欲しい・・・」
自分を見上げるドンヒョクの瞳が欲望をはらんで微かに煙った。
ドンヒョクに促されてジニョンの両手が次第に大胆になっていった。
胸から、肩へ、首筋へ、背中へ、引き締まった腹部へ、そして脚へ・・・
軽くのけぞったドンヒョクの甘い呻きに勇気を得て、ジニョンはドンヒョクの全てを覚えたいと思った。
自分と同じようにドンヒョクを感じたい。
半身同士で、完璧な一人になりたかった。
ジニョンの柔らかな手がドンヒョクの全身を彷徨い出し、いつもドンヒョクがする行為を真似て、 その手の後を追った唇が繊細な快感を与え始めた。
・・・calling・・・ねぇ、知っている? ・・・私のもう一つの天職はドンヒョクssiを幸せにする事よ・・・
・・・いつも、どんな時でも私を呼んでいるドンヒョクssiの声は、ちゃんと私の胸に届いているのよ。 時には・・今度みたいに、少し待たせる事はあっても、ドンヒョクssiの声はいつも私に聞こえているわ。
だから・・・永遠に私を呼び続けてね・・ 私を呼ぶドンヒョクssiの声に、これからもしっかりと答えていかなくてはね・・・
そして、ジニョンの初々しい愛の探索が、またしても二人だけの世界を創り出し、果てしない楽園へと二人をいざなっていった。
ガチャンと大きな音を立てて、テジュンは受話器を置いた。
・・・あの野郎・・俺を脅しやがった・・・
「君のホテルは従業員の安全も守れないのか。今度こんな事があったら、君のホテルを訴えてやる」
何が、ビジネスに私情をはさまない・・だ!
公私混同していることすら、分からないほどジニョンに溺れやがって・・・
全く!朝っぱらから、嫌な電話で人をたたき起こしやがって!
今、何時だ?
起き上がって腕時計を手にした、テジュンは夕べ、やりかけのままデスクに広げられた書類に目を留めた。
そうだ・・・
この仕事をジニョンにまわそう。
にやりと笑うと、すっかり起されてしまった頭をふってベッドから起き上がった。
“一流ホテルの支配人と検証する噂のホテルの実力” 企画 第一新聞社 イ・ジョンウォン
2泊3日の取材旅行を含むこの仕事を結婚後の初仕事にしてやろう。
まあ、たしかにジニョンは忙しい。
でもあいつのことだ。
頼むと拝み倒せば嫌とは言わない。
向こうのたっての希望でお前を指名してきているといえばなおさらだ。
きっと引き受けてくれる。
そうさ。
彼女は皆に親切だからな。
(2005/08/03 サファイアUP)
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