ラビリンス-過去への旅-4.ドンヒョクの街
ドンヒョクのイタリアの事務所は、フィレンツェの大聖堂広場から 少し奥に入った通りにあった。
「この街は歩いて巡るに越したことは無い」というドンヒョクに従い、 S.M.N駅周辺の駐車スペースに車を止め、ふたりは肩を並べ歩いた。
赤い屋根に白壁や石壁、街並みの均整の取れた色合いは、 ローマとはまた別の趣があり、柔らかな風情を醸し出している。 ジニョンは時に深呼吸して街の空気を味わいながら、麗しき ルネッサンスとの出会いを楽しんでいた。
フィレンツェは、街全体が美術館だと言われているほどの美しい街だ。 こうしてこの街が、その評価を維持し続けている事実は、元は いつの時代かの、だれそれかの意思が強く働いたに違いない。 ジニョンは勝手な空想の中の、その誰かに感謝の気持ちで一杯になった。
ふたりは途中、※“サン・ロレンツォ”という教会に立ち寄った。 事務所に一番近い教会らしく、彼がよく訪れていたのだという。 「素敵な教会ね」 ジニョンは中に入ってやっとその言葉を使った。 外観からは想像できない優雅さがそこにはあったからだ。
聞くと、この教会の※ファサードは未完のままなのだという。 それもまた、ドンヒョクがここを好む理由のひとつなのかもしれないと、 ジニョンは思った。
この出だしで始まる第四話、ドンヒョクが好んだ街として、 「フィレンチェ」を選んだのは、やはり街全体の美しさ 案内図を立体化して頭で歩きながら、この辺にドンヒョクの事務所を置こう 事務所は四階建てくらいで、エレベーターも無いところ という設定を思い描き、登場人物たちをその中で動かしました
そしてこの回で、passionの後、挙げたはずのふたりの結婚式の様子を ジニョンの回想という形で描きましたが、自分の中では、この回が一番好きなんです^^
ふたりだけの結婚式を望んだドンヒョク それを許さなかったレイモンドやソフィア 嫌な顔をしながらもきっと心ではドンヒョクも嬉しかったはず
10年前結ばれるはずだったふたりを、きっとレイモンドとソフィアが一番見たかった それをドンヒョクも判っていたはずだし、ジニョンも彼らに囲まれて挙げる誓いに 感慨深いものがあったかと思います^^
またここでは、フランクとレイモンドやソフィア、リチャードとの固い絆を描き、 後半で彼らがフランクを助ける付箋としたつもりです
2012.7.17 kurumi
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