ラビリンス-過去への旅-8.目覚めた朝に
カーテンの隙間から差し込む光で、ジニョンは目覚めた。 まだ見慣れない部屋の天井が視界に入って、一瞬、何処にいるのだろうと 寝ぼけた頭に記憶を巡らせた。
「フィレンツェ・・」 ジニョンは呟いた。 その瞬間、彼女はハッとしてベッド脇の時計を見た。 そして、慌てて起き上がりベッドを降りると、シャワー室へ急いだ。 ジョアンが迎えに来る時間まで、あと30分しかなかった。
ジニョンが手早くシャワーを浴び、簡単に身支度を済ませ、 コーヒーでも入れようかとした時、玄関の方でエレベーターの開く音がした。 「お邪魔しても宜しいですか?」 ジョアンの声が聞こえた。
「ええ、今コーヒーを入れようかと・・」 すると、トレイを両手で持ったジョアンが、にっこりと笑って現れた。 「コーヒーとサンドウィッチをご用意しました」
「・・・・気が利くのね」 ジニョンは起きたばかりで余裕の無い自分との違いに苦笑いしながら、 珈琲豆の容器に入れ掛けたスプーンを元に戻した。
「よく言われます」 ジョアンは笑って頷いた。
ジニョンはフィレンチェのドンヒョクの家で、初めて朝を迎えました 初めての場所での目覚め、やはり最初に目に入るのは「見慣れない天井」 そして目覚めた一瞬は自分は何処にいるのか、と・・・ 目覚めの悪いジニョンさんなら特に、きっとこんな目覚め方をするだろうなと(笑)
そして、ジョアンの迎えまで30分しかない
私ならすっごくすっごく慌てます(笑)
でもほら、ドンヒョクに起こされ、5分で彼の元へ降りて行けるジニョンさんですから 30分なんて、余裕でしょう、きっと^^
しかし彼女の周りの男達は、完璧人間ばかりなので(羨ましいですが) 女性らしい心遣いなんて不要みたいです^^(何でもしてくれちゃう^^)
ドンヒョクは目覚めた後、いつものようにホテルの周辺で汗を流した。 彼が滞在するホテルはドゥオーモ駅のそばにあった。 ホテルから近隣の公園を経由して、ミラノの象徴ドゥオーモへ向かった。 早朝人っこひとりいないその周辺で走り込むのは爽快だった。
その景色を眺め、大きく深呼吸しながらドンヒョクは、心の中で呟いた。 ≪ジニョン・・今度は君も一緒に走ってみるかい?≫
打って変わって、ドンヒョクの目覚めはいつものスタイルを崩しません きっとジニョンを想いながら走っただろうドンヒョク、夢の中と気遣い電話をしなかった頃 ジニョンは企みを持って起きていたわけです^^
この回では、ルカという新しい登場人物も出てきます
最初、ルカは本当に女の子の設定にしようと思っていたのですが、 物語を構築していく内に男の子に変わり、そうすると女装に無理の無い十代で 顔立ちが綺麗な子、とするしかなく、そんなことを考えている内に 5年前の事件の内容が途中で具体化してきたわけです^^
この物語は書きながらルカやエマとドンヒョクの関わり方、トマゾの人間性を 決めていった感じでしたので、相関図に無理が無いように懸命でした(笑)
kurumi 2012.7.19
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