ラビリンス-過去への旅-10.過去の影
ルカはジニョンとジョアンの会話を聞いて、首を傾げていた。 「ボスって・・私達のボスでしょ?」 と彼女が言った。
「僕のボスだ。まだ君のボスじゃない。」 ジョアンは勘違いするなというように語気を強めた。
「そのボスと、どうして会うとまずいんですか?」 ルカはジョアンの言葉を聞き流して重ねた。当然の疑問だった。
「あのね、ルカ・・私達は独自に仕事をして、ボスの手助けをするの。 でも実は、ボスはそんなことして欲しくないと思ってる」
「つまり、ボスに内緒で動くんですね。私達だけで。」
「そういうこと。飲み込みが早いわね」
「それって・・何だか、かっこいい」 ルカが手を合わせて、浮かれるように言った。
≪軽いやつ・・・≫ ジョアンは思ったが、今はそうであってくれる方が遣り易いと思いホッとした。
フィレンチェからミラノまで車で約3時間という時間は、ジニョン、ジョアン、ルカの 三人の心を少し近づけて行きました。それはジニョンの持って生まれた太陽のような 温かさが、知り合って間もない人達の心をも温めていったのだと思います。
ただ、ジョアンにとってはルカという存在はまだ胡散臭いものであったでしょう。 それでも、ジニョンとふたりだけの旅よりは、緊張しないで済んだと、 内心ルカに対して有り難く思っていました。
私の中ではこの三人の絡みは軽快に書いたつもりで、好きでした^^
kurumi 2012.7.23
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