ブロコリ サイトマップ | ご利用ガイド | 会員登録 | メルマガ登録 | 有料会員のご案内 | ログイン
トップ ニュース コンテンツ ショッピング サークル ブログ マイページ
IZMCLUB別館
IZMCLUB別館(https://club.brokore.com/kurumitom2)
IZM CLUB 
サークルオーナー: kurumi☆ | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 261 | 開設:2007.10.18 | ランキング:66(6784)| 訪問者:1362902/1595584
開設サークル数: 1238
[お知らせ] 更新のお知らせ
容量 : 69M/100M
メンバー Total :261
Today : 1
書き込み Total : 1134
Today : 0
izm MV
izm MV
No 11 HIT数 3346
日付 2009/10/12 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル izm創作 4 “いつのまにか”後編
ファイル
本文


 



 

 

翌朝、僕の目覚めはとても心地いいものだった
時差などに普段から影響されない僕の身体は自然に6時前には目覚める

    いつもの朝と変わらぬ朝・・・

    しかし、いつもと違った朝だった・・・

    その理由が君であることにも・・・僕は少しずつ気づいていった


    いつものように、ジョギングで汗を流し

    自分の心臓を少しいじめてみる

    そうすることで生きている証を得たような満足感を味わう

    いつ・・どこへ行っても必ずこなす・・・僕のスタイル・・・


ところが今日は少し違っていた・・・
走っている間中、吹きつける風があまりに心地よくて・・・
清清しい開放感を味わっていた・・・

    こんなこと・・・初めてのような気がする・・・


サファイアへ上る坂の手前で、
エプロンをつけた従業員らしい人達と話をしている君を見かけた
あの日僕に見せてくれた輝かんばかりの笑顔を添えながら
何やら指示を出しているような君が凛々しかった

また新しい君を見つけたようで・・・僕はしばらく君の働く姿に見とれていた

君がひとりになった時、声を掛けようとチャンスを伺っていたけれど・・・
なかなか君のそばから人がいなくなることはなかった

   結局僕は・・・

そのまま君の笑顔を背にして、部屋のある坂の上へとダッシュをかけた


部屋の前でミネとタオルを持って僕を待ち構えていたレオが
早速僕が命じた調査結果の報告を始めた
僕にはここに来たもうひとつの目的を片付ける必要があった

               

    残念なことに僕は・・・

    君との再会の喜びだけに浸っているわけにはいかない・・・

僕はまだ完全には掴めていない標的に向かって、一歩ずつ近づいていった

 

         「レオ・・・今日のランチにルームサービスの手配頼む
          フランス料理を二人前」

         「ボス、俺はフランス料理より、韓国料理の方が・・・」

         「あ・・・悪い・・お前のじゃ・・ない・・・」

         「誰と?・・・あぁ・・・彼女?か・・・」

         「・・・・・・・」

         「オーケー・・・・・ボス」 

レオのトーンが勝手にしてくれ、と言っていた

     勝手に・・・するさ・・・

 

君はまた、遅れて僕の元へやってきた
でも、構わない・・・来てくれた・・・それだけでいい・・・

僕はとっくに君の後ろで君を見ている
でも君は僕に気づかずレオが消えたドアの方に僕を探していた


         「ん、んっ・・・」

         「オモッ!」

    君の驚いた顔がまた可愛い・・・

         「また・・・遅れましたね・・・」

         「すみません・・・急用があったものですから・・・」

         「お昼まだですよね・・・一緒に食べましょう・・・フランス料理を用意しました」

         「あ・・・申し訳ありません・・ホテル内でお客様と個人的な時間を
          過ごしてはいけない規則に・・・」

         「あーそれじゃ、外でなら大丈夫ですね」

         「えっ?・・・・あぁ・・もう・・・お昼ですね・・・」

    断る理由は・・・ないね・・・良かった・・・

         「案内してください」

 

僕はどこかしゃれたレストランで、君とゆっくり再会を祝いたかった
それなのに、君が僕を案内してくれたのは、白い湯気が漂う
大衆食堂のようなところだった

君とゆっくり過ごすどころか、隣に座る人間との間隔すら狭くて
とても窮屈に感じた

    ・・・君とゆっくり話も出来ない・・・

君にとってはそんなこと・・・どうでもいいことなんだね・・・きっと

    
        「お口に合いませんか?」

        「あぁ・・いただきます・・・」

        「これ・・・とても美味しいんですよ・・・あ、こうして・・・
         この薬味を入れて、混ぜて食べるんです・・・
         イタリア料理も顔負けです・・・」

    そうなの?

        「あなたに会うと・・何故か・・・」

        「私・・可笑しいですか?」

    いや・・・きっと僕が可笑しい・・・

    君を知ってしまってからの・・・僕が・・・可笑しいんだ・・・


僕にはこの国にいた頃の食生活の記憶はほとんど残っていなかった
僕の潜在意識がこの国での生活をまるで思い出させたくないかのように
僕の記憶からひとつひとつ抜き去っていったように思う

アメリカでの生活では、韓国料理を敢えて避けてもいた
だから正直・・・君に薦められた料理にもあまり馴染みがなかったんだ

僕は少し戸惑いながら一口ほおばってみた・・・

    イタリア料理とは言い難かったけれど・・・

        不思議と・・・懐かしい味がした・・・

 

        「ホテルのお仕事大変でしょ?いろんな人の相手をして・・・」

        「大変です・・・・・・シンさんのお部屋・・一泊で、
         私の給料より高いんですよ・・・
         そんなお客様のお相手をしながら、自分は安い食堂でお昼を・・・
         お客様の前では嫌な顔も出来ないし・・・
         手足が疲れるほど走り回って・・・
         それでも、返ってくるのは不平不満ばかり・・・
         なのに・・・やりがいを感じるんです」

        「不公平だとは思わない?・・・・・
         一ヶ月の給料より高い部屋を使う人がいる・・・」

        「はじめはそう思いましたけど・・・
         私には私の人生がありますから平気です・・・
         いくらお金があっても、他の人に私の幸せは買えません・・・・」


     他の人に私の幸せは買えません・・・

そう言った君はこよなく美しかった・・・

     他の人間に買えない君の幸せを覗いてみたい・・・

     君の幸せに近づきたい・・・

そう思いながら、いつのまにか僕は・・・

     君の瞳の奥に輝く未知の何かを探していた

     そこに僕がいる場所があるだろうかと・・・探していた・・・


        「ソウルは初めてですよね・・・観光は如何ですか?」

        「いいですね・・・」

        「今度パンフレットをお届けします・・・それじゃ・・・
         お昼ご馳走様でした・・・」

君は僕に何度も振り返ってお礼を言いながら、
坂を転がるように速く仕事に戻って行った

僕は君のその後姿を追いながら・・・
君という人をまたひとつ知ることが出来たことに・・・

    そして・・・   君という人が・・・

今まで僕が見てこなかったもの・・・
簡単に捨ててきたものを・・・大切に抱えている・・・

    そんな人だということに・・・

僕自身の心が少しずつ心酔していくことの・・・

       心地よさと・・・

       不思議な充実感を味わっていた

 

        「レオ・・・幸せって何だ?・・・」

        「どうしたんだ?急に・・・」

        「いや・・・何でもない・・・」


幸せが何かなんて・・・考えたこともない・・・

人生が何かなんて・・・一縷の興味もない・・・

    そう思って生きてきた・・・

    そんな僕が・・・


君と出逢って・・・僕の中の見えない何かが・・・

    間違いなく変わっている・・・


何が変わっているのか・・・それすらまだわからない・・・


ただ・・・  君に・・・  「お客様」と呼ばれるたびに・・・

    僕の胸が切なくうずく事実があった・・・


    いつのまにか・・・   この僕の心を・・・

    少しずつ占領していく君という存在が・・・

      
        何故だか僕を・・・

                  余計に・・・

 

               ・・・寂しくさせていた・・・







 











  


前の書き込み izm 5 “とまどい”
次の書き込み izm創作 4 “いつのまにか”前編

 
 

IMX