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IZMCLUB別館
IZMCLUB別館(https://club.brokore.com/kurumitom2)
IZM CLUB 
サークルオーナー: kurumi☆ | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 261 | 開設:2007.10.18 | ランキング:66(6784)| 訪問者:1363316/1595998
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izm MV
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No 4 HIT数 4796
日付 2009/10/08 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル izm創作 1 “孤独”
ファイル
本文


 









 



「あなたは私に・・・どんな幸せをくれるの?フランク」

「幸せ?」

「私はとうとう・・・・・
 彼が拘置されているのは・・私の裏切りのせいね・・・
 これでもう私には何も無い・・・」

「全て無くしたわけじゃないだろ?
 奴の財産の5%があなたに入るように手を打った・・・
 それだけでは不服かな?」

「5%?」

「かなりの額だ・・・」

「判ってるわ・・・そんなこと・・・
 私が10年もの間、彼に尽くしてきたことからすれば、
 それくらい、当然のことよ・・・そうでしょ?

 私が言っているのはそんなことじゃない・・・
 フランク・・・あなたが・・・私に・・・何をくれるのか・・・
 今・・・私が欲しいもの・・・ずっとずっと欲しかったもの・・・
 そのために・・・私は・・・こんなことを・・」


   女は僕の唇に自分の唇を触れるほどに近づけて、そう言った
   僕は女のその行為を前に、至って冷静だった
   透けるほどに美しいその憂い顔を僕はただ冷たく見下ろしていた


「どうしてそんな目をするの?
 私の気持ち・・・知らなかったわけじゃないでしょ?」

女が静かな口調で僕に問うた


「ああ・・知っていた・・・」 僕もまた、静かに答えた


「それで・・・利用した?」

女は冷静だった
まるで、僕の答えを知っているかのように・・・


「・・・・・」

「聞いてもいい?どうして私と寝なかったの?
 そうすれば・・・もっと簡単に利用できたかもよ・・・」


   どうして?・・・女と寝ることの方が簡単だ・・・


「仕事絡みの女とは寝ない・・・」

「仕事?・・・そう・・・仕事・・・だったのよね・・・
 私がそのことに気がつかなかっただけ・・・
 簡単に・・・その目に囚われてしまった・・・」

「・・・・・・」

「ねぇフランク・・・私をその気にさせて・・・期待を持たせて・・・
 そして・・・彼を裏切らせるように・・・裏で仕組んだ?」

「裏切れと言った覚えはない・・・」

「そうね・・・言われた覚えはないわ・・・
 あの日・・偶然に出会って・・・あなたに恋をした
 その時はお互いにそうだったと思った
 あなたも・・・私に恋してると・・・
 そうね・・
 あなたは何も告白したわけじゃない・・・
 私が勝手に・・・あなたに惹かれて・・・溺れただけ・・・
 あなたはただ・・・優しかっただけね・・・」

 

   どうしても、会計士の立場であるあなたの証言が欲しかった
   だから・・・女としてのあなたにアプローチをかけた

   
「あんなに優しくされることに慣れてなくて・・・
 ちょっと・・血迷ったかしら・・私・・・」 女は自嘲しながらうつむいた


「あの出会いも・・・偶然じゃなかった・・・そうね・・・」


フランクのまなざしにその事実を見つけて女の目に小さく力が入った 
それと同時に女の白い平手が彼の頬の上を音を立ててはじいた


「・・・今のは・・・情けない自分への・・・罰・・・」

「悪いことは言わない・・・ほとぼりが冷めるまで
 遠くに身を隠すことだ・・・奴はマフィアとも繋がっている・・・
 しかしあなたの身の安全は保障する・・・」

フランクはそう言いながら、唇の端の血を指で拭った


女はあきらめたように下を向き、ため息をひとつつくと
顔を上げて少し悲しげにフランクを睨んだ


「何のために・・・私は彼を裏切ったのかしら?
 せめて・・・あなたのためだったと・・・言ってはくれないの?・・・」

「あなた自身のためだ・・・」

「私の?・・・・フフ・・・確かに・・・そうね・・・
 あのまま彼といても私は何一つ得ることなく、
 彼の元を去らなければならない運命だった・・・
 それをあなたが・・・私のためにご丁寧に画策して
 一財産残してくれた・・・そう言いたいのね・・・」


女の眼差しは迷惑だと言わんばかりにフランクの目を貫いた

「でも・・・」

「・・・・・・」

「でも覚えておいて。女はね・・・お金だけでは動かないわ・・・
 愛する人の心さえあれば・・・どんなことだってできる
 それは男だって同じじゃない?・・・私はそう信じてる
 あなた・・・女を・・・いいえ人を愛したことが・・・ないのね・・・

 可哀想な人・・・

 ジャクソンは心をくれたわ
 彼が全てだった・・・だから、彼のために何だってやってきた・・・

 そんな私を変えた人がいたの・・・このひと月で・・・私を・・・
 彼を裏切ってもいい・・・そんな気持ちにさせた男が・・・いたの

 でも、その男は・・・私に・・・心をくれないみたい・・・
 心をくれない男のために・・・
 心をくれた男を裏切った・・・笑えるわね・・・
 私はこれからいったい・・・・・・・いいえ・・・何でもないわ・・・」


「ミッシェル・・・」


「お願い・・・冷めた声で・・・名前を呼ばないで・・・
 あなたの優しかった声を忘れてしまいそうになる・・・」


    僕は女へ慈悲の・・・欠片すら見せなかった


    僕はこれから先もあなたと共には生きられない

    あなたにとって、そんな僕のくちづけが何の慰めになる?


    
女は潤んだ瞳でフランクをしばらく見つめた後

全てを悟ったように彼から目を逸らして、潔く背中を向けた

そして・・・決して彼を振り返らなかった


  

    僕はただ・・・黙って・・・その背中を見送っていた


    人を・・・愛したことがない?・・・

    それがどうした・・・

    愛したところで・・・何が残る


    奴が心をくれていた?

    奴の心はあなたにはなかったよ

    奴もまた・・・あなたを利用していただけだ

        
    僕は女の流す涙に哀れみさえ感じない

    この冷めた自分の心が・・・


    今日は少し・・・恐ろしかった・・・

 

     
 

「さあ・・・取引をしよう・・・」

    僕はジャクソンの前に最終宣告のバインダーを滑らせた
    目の前で彼の顔が醜く引きつり、鋭い眼光が僕に向かった


    これで・・・ゲームオーバー・・・

 

       ボス・・・やったな・・・

    レオの得意満面な目がそう言って僕を見た

   
    レオ・・・僕は時にお前が羨ましくなる

    どうやったら、そんなに感動できる?

    何がそんなに心を震わせてくれる?


    僕にとって今日という日は・・・


    面白くも無いゲームがひとつ・・・終わっただけのこと・・・

    勝つか・・・負けるかの勝負

    そして僕が、勝ったまでのこと・・・

    既に、勝つと判ってもいたゲーム

    勝つことが当たり前のことに・・・感激などあろうはずもない


    ジャクソンという名の獲物が僕の目の前を逃げ回り・・・

    僕はいつものように・・・四方を固め・・・相手を・・・

    射程距離まで追い詰めて・・・

    そして躊躇なく引き金を引いた

    ただ・・・それだけのこと・・・


 

    重く響く鉄の扉の音が・・・

    このゲームの終了の合図・・・

    奴が暗い箱の中で・・・僕は冷たい闇夜に開放される


    いったい・・・どっちが・・・いいんだろう・・・


    奴は今格子の中で、胸をかきむしるほどの悔しさにのた打ち回り

    恨みと・・・憎しみの炎をきっと・・・胸に燃やしている・・・


    この僕を・・・殺したいほどに・・・


    ジャクソン・・・僕は構わない

    いつでもここにいる

    他人の顔したこの街で・・・ただ息をして・・・

    ただ・・・生きている

    恨むなら・・・憎むなら・・・

    僕の息の根を止めに来るといい


    人生なんて・・・いつ終わろうが・・・未練などさらさら無い

 

 

「ボス・・・結婚しないのか・・・」

    フッ・・僕にする質問か?


「仕事より夢中になれる女がいればな・・・」

    そんなもの・・・現れるはずもない・・・


    つまらない人生・・・

    つまらない店・・・


「レオ・・・今度は他を探せ」

 

「Excuse me!」

その甲高い声に囚われて思わず視線を向けると、
アジア系の女がこのレストランの支配人らしい男に噛み付いていた

美しいが気が強そうで、曲がったことが何よりも嫌いだと顔に描いてそうな女・・・


「5回呼んで!コーヒーのお代わりを2回頼んだわ!

 このナイフとフォークいったいいつ取り替えたの?
 刃が欠けていてステーキが切れないのよ

 パサパサのレタスに熟れ過ぎたトマト
 メニューには新鮮な野菜とあるけど・・・

 それにこのグラス・・・ひびが入ってる!
 小さな衝撃でも割れてしまうわ!
 ここは一流レストランじゃないの!?」

 

     おもしろい・・・女・・・

     綺麗な顔が台無しじゃないか・・・


     しかし、ごもっともだな・・・お嬢さん


「韓国女みたいだが・・・たいした女だな・・・」

     僕はレオに言葉を返さなかった


     ・・・何を見てるんだ?・・・


     僕は彼女から一度視線を外した

     それなのに・・・

     何故か僕の視線がまた彼女に向いた・・・


怒りを露にした彼女が財布から取り出したカードを
テーブルの上に乱暴に置くと、これが支払いだと言った 
そして、小さなコインをわざとらしく掲げて“これはチップ”と強調して置いた


     その小さ過ぎるチップはきっと彼らにも堪えるよ・・・

     
     僕は彼女の行動から目が離せなかった・・・

       
     何故だろう・・・  
         
     いつもなら・・・街で繰り広げられる目障りなトラブルなど・・・

     気に留めることは無い・・・

     いつもなら・・・こんな他愛も無い騒ぎなど・・・

     視線を投げることすら無い・・・


     それなのに・・・

        

     彼女の憤然たる美しい顔を・・・

     彼女が乱暴に・・・汚れたスカーフを投げ捨てる様を・・・

     彼女が周りのざわめきに気を留めることなく立ち去る後姿を・・・

     何故か・・・
          
     僕の視線が追っていた・・・


       気になる?

 

             ・・・何故?・・・

 

 

 

「韓江流通の件だが・・・」

「小遣いでも欲しいのか」

「確かに規模は小さいが」

「しかも韓国・・・興味は無い」

「しかし・・・ジミー経由だ・・・断るわけにもいくまい
 アメリカの国会まで手が回っているようだ・・・」
             
「フィラデルフィアのように・・・」

「高値であきらめさせる?」

「事前調査は前払い・・・乗っ取った後の株18%を頂く
 もちろん、滞在先や車、全ての経費は別払い」

「OK」

 

「しかしボス・・・韓国は懐かしくないのか・・・
 人間というのはな・・・」

「LAへの出発は?」

「あさっての朝だ・・・ジミーが女と酒をヨットに用意して待ってるそうだ
 成功した後は誰もがお前に会いたがる

 ボス・・・ジミーがどんな女がいいか、お前に聞いてくれと言ってきたぞ」


      女?そんなもの・・・どの女も同じ・・・

      求める女は・・・

      ただ冷めた体を温める柔らかい肌であればいい

        
     
「この前紹介した女がまたお前に会いたいと言っているらしい」


      いつの女だ・・・うるさい女はごめんだ

      一度寝ただけの女が、したり顔で寄ってくる

      二言目には「愛してるか」と聞いてくる
       

      自分を知らない馬鹿な女には吐き気がする


      愛なんて・・・邪魔なだけ・・・


      お願いだ・・・

      頼むから・・・僕の傍らに無駄に寄り添うな

      頼むから・・・僕の耳元に唇を寄せて・・・

      愛してるなどと・・・ささやくな


         心は・・・いらない・・・

 

  

 「もう休め・・・」

 「ああ・・・good nitgh ボス」

 

    韓国が懐かしくないのか・・・


       懐かしい?どこからそんな言葉が出てくるんだ・・・

            とっくの昔に忘れた国・・・


       僕には・・・故郷はない・・・
              
            余計な感傷は・・・止めろ・・・


       ”人間というのは”・・・何だ?・・・

               レオ・・・

            ありきたりの説教など・・・ごめんだ

 

       誰もいない冷たいベッドの中・・・


            そこが僕の・・・帰る場所・・・

 

                望むものなど・・・何も・・・


                    ・・・ありはしない・・・







  

 
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sumirehime
フランク目線でのホテリアー、kurumiさんの世界にどっぷりつかります。 2009/10/10
4ジュナ
思わずのめりこんで読んじゃった。クールで、でも本当は寂しさを抱えているフランクがたまらないわ・・・冷たいことを言いながらも、本当は真実の温もりを渇望している姿が透けて見えてくるのよね・・・ 2009/10/09
fei
大切なものがどこにもなければ これ以上強いものはない、このフランクは無敵ですね。そして おもいっきりいやな奴でもある、敵にとっても彼にこころ惹かれる女性にとっても… 2009/10/09
yukitanpoo
>望むものなど何もありはしない・・って強がって・・・ホントは淋しいと叫んでいたのね・・ドンヒョク~~ 2009/10/09
フック
「心は・・・いらない・・・・」この氷のような冷たさと孤独感の裏にある、愛を渇望するフランクの想いが心に迫ってジ~~~ンとしてきます。 2009/10/08

このフランクのクールさがたまらない・・・・。そして・・ドンヒョクの情熱へ・・・ 2009/10/08
きみりん
うわぁ~今夜はフランクがいっぱいで・・・苦しい^^;でもシアワセ・・・冷たくされてもスキ(∩。∩;)ゞテレテレ・・ 2009/10/08
tomtommama
Frankとkissできるなら・・・ミッシェルにでもなんでもなっちゃいたい ^^; この冷たさと孤独感がたまらないわぁ~♪ 2009/10/08
 

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