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IZMCLUB別館
IZMCLUB別館(https://club.brokore.com/kurumitom2)
IZM CLUB 
サークルオーナー: kurumi☆ | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 261 | 開設:2007.10.18 | ランキング:66(6784)| 訪問者:1363104/1595786
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izm MV
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No 7 HIT数 4095
日付 2009/10/10 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル izm創作 3 “はじまり”前編
ファイル
本文


 




LAに入り、リムジンは彼女が予約していたホテルの前で止まった

「本当に有難うございました・・・なんて、お礼申し上げたらいいか・・・」

「いえいえ・・・お気をつけて・・・」

レオが君の荷物を運び出すのを手伝ったあと座席に戻り、
ウインドーを下げて君に愛想よく別れを告げていた

君はレオに再度お礼の言葉を言って、僕の方に向かって深く頭を下げた
僕は軽く会釈で返した


君との別れの時間が刻一刻と近づいていくうちに
僕の胸の鼓動がトクトクと音を立て始め、その高鳴りが次第に大きくなって
隣にいるレオに気づかれるのではと心配するほどだった

そして、
運転手が正面に視線を戻し、車を発進させようと肩が動いた瞬間
僕の口はやっと・・・自分の騒ぐ心に従うかのように言葉を吐いた


「 止めろ! 」


車は一瞬動いて直ぐにバウンドして止まった
僕は車の中で大きく深呼吸した後、ゆっくりドアを開け外に出た
そして僕らの車を見送ろうとその場に佇んでいた君に車越しに声を掛けた

   
「 海は・・・お好きですか? 」

「えっ?」

君は突然の僕の行動に目を大きく見開いて驚いていた

「先ほど、ソウルへ発つのは明日の朝だと・・・」 

「え・・ええ」

 
     僕に話していたわけじゃない・・・

        でも・・・

     君の言葉は全て記憶している・・・     

僕は掛けていたサングラスを外しながら君の前まで移動すると
今度は君の目をまっすぐに見て訊ねた

        
「でしたら、今日一日・・・空いてますね・・・」

「いえ・・・あの・・買い物が少し・・・」

「買い物なら・・・何でも揃う所に後でご案内します」

「でも・・・」

「ヨットで・・・海に出ませんか・・・あー、安心して・・
 遠出はしません・・・少し潮風に吹かれるだけです・・・」

「え・・・ええ・・・でも・・・」


     迷惑そうだね・・・無理もない・・・君にとって僕は・・・
     今日初めて出逢った男だ・・・

     しかも、車の中でも君と話していたのは終始レオだった・・・
     僕は君に対して少し憮然とし過ぎたね・・・

     気になっていた君が予告もなく突然現れて・・・
     らしくもなく・・・動揺してしまった・・・

     そんな心のざわめきを隠したくて無表情を装っていた

     しかし、ここで君とこのまま別れるわけにはいかない
     心の奥深くで何かが僕に指図する

     こんな偶然がこの先、またある保障がどこにある?
     そう言って僕をけしかける・・・

     君を逃がすなと・・・
     何かが僕を強引にさせる


君は迷惑そうにしながらもそれ以上僕の誘いを固辞しなかった

砂漠からここまで送ってもらった、その弱みが君を支配していたんだね・・・

     悪いけど・・・
     人の弱みにつけ込むのは僕の得意とするところ・・・

しかし、誰にでも読み取れる困惑を・・・
言葉に顔に・・・浮かばせる君に少し胸が痛んだ・・・

 




別荘に着くなり僕は寝室へ駆け込むと堅苦しいスーツから
身軽なブルゾンへと着替えを急いだ


「 レオ!僕の車!直ぐ出せるように! 」

遠くからレオの少し呆れたような間延びした返事が耳に届いた
     
僕は正面玄関に用意され、既にエンジンの掛かった車に乗り込みながら
ハウスキーパーに「ランチの用意を」とひと言告げてアクセルを噴かせた

 

僕はぴったり30分後、この場所に戻った
車でここから20分ほどの別荘との往復をポルシェの速度を借りて30分でこなした

     何を・・・やってるんだ・・・

僕は自分のここまでの素早い行動に一人苦笑していた


     ソ・ジニョン・・・
     君の名前を僕が知っていること・・・
     きっと、君は知らない

     リムジンの中でも、君は自己紹介をしなかった
     もちろん、僕の名前など聞く気もなかったね

     さっきここで別れるとき、僕が君の名前すら聞かなかったこと・・・
     気づいていただろうか・・・君がそれに気づいていれば・・・

     『ホテルから出て行かなければいい・・・』

     君はそういう結論を導き出せる・・・
     普通はそれで・・・僕たちの出逢いは終わりだ

しかし君は10分ほど遅れたものの、ちゃんと現れてくれた

     良かった・・・気づかなかったんだね
     それとも気づいていながら出て来てくれたのかな?

     しかし、ジニョンさん、例え出て来てくれなくても
     あと5分もしたら、僕は受付で、「ソ・ジニョンさんを」と
     呼び出していた

君を見つけた時の僕の頬が思わず緩んだのを自分でも感じていた

君はきょろきょろと辺りを見回し、僕を探しているようだった
君に早く見つけてもらいたくて、僕は君に向かって笑顔を向けた


君がやっと気づいて僕に向かって走ってくる
こんな風景が今までに何度もあったような、そんな錯覚を覚えた

「お待たせしました」と息を切らしながら君が言った

「いいえ、僕も今着いたところです」

そして君は、少し驚いた表情を僕に向けていた


「どうかしましたか?」

「あ・・・いえ・・・さきほどと、イメージが・・・」

「僕の?」

「ええ・・・」

「どんなイメージだったのかな」

「いえ・・・」

「正直に言ってくれると嬉しいですが」

「あ・・ごめんなさい・・・さっきまで・・・少し怖い方かと・・・」

「怖い?」

「ええ・・・でも・・・」

「でも?」

「そうでも・・・ないみたい・・・」

「良かった・・・」

君も素直な笑顔を僕に向けてくれた


      なんて輝く笑顔を放つ人なんだ・・・


「おなかすきませんか?
 海に出る前に・・・お食事を・・・」

「ええ」


別荘までの道のりは最初のうち僕も君も少しぎこちなくて
もともと無口な僕はこんなとき何を話せばいいのか正直わからずにいた

運転しながら時折君を覗くと、君と調度視線が合って、
その都度、僕たちは互いに素早く正面に向き直ることになる

君の動揺が僕に伝染したかのように胸をざわつかせていた
それは僕にとって未だかつて経験の無い感情だった

       
      誘っていながら・・・これじゃあ、駄目だね・・・


「お誘いして、ご迷惑でしたか?」

「あ・・いいえ・・・でも・・・」

「でも?」

「どうして・・・」

「どうして・・・あなたを誘ったか?・・・ですか?」

「え・・ええ・・・」

「さあ・・・どうしてだろう・・・あなたがとても素敵だったから・・・
 そう言ったら・・・気障ですか?」

「からかわないで下さい・・・でも・・・初めてお会いしたのに・・・
 私・・・どうして、ここに・・・あなたといるのかしら・・・
 今までの私なら考えられないこと・・・凄く不思議なんです・・・」

「それは・・・きっと・・・」

「えっ?」

「それはきっと・・・あなたと僕が・・・そういう運命だからです」

「運命?・・・まあ、大げさすぎません?面白いことをおっしゃるのね」

君は僕がふざけてそんなことを言っていると思ったらしく、
そのことが逆に君の緊張を解いたようでリラックスしてくれたように見えた


もちろん僕としても、本気でそんなことを言った訳じゃない

      運命・・・そんなわけ・・・ないじゃないか・・・




それからというもの、君は僕に色んな話題を提供してくれた
君はとても話が上手で、僕も君が織り成す話題の展開が
本当に楽しくて、珍しく良く笑った

女性との会話がこんなに楽しいものだなんて・・・初めての経験だった

僕の指は知らず知らずBGMのスウィッチのOFFを押していた


      君の声だけを聴いていたい

      本当に・・・そう思ったんだ・・・


    
別荘に着いてからも、僕たちはテラスに用意されたランチを囲みながら
会話の続きを楽しんだ

今笑ったかと思うと、怒って見せたり、くるくると表情を変えて
話をする君が凄く新鮮だった


その会話の中から・・・君のひととなりも伺えた

そして・・・例の・・・君を置き去りにした“彼”が話の要所要所に
登場していることに僕は気づいてしまった
でも僕がそのことに・・・面白くないという感情を抱くことは・・・

     君の知ったことではないよね・・・
  


「彼のことが心配ですか?」

「彼が心配するべきだわ」

      やはり・・・彼・・・なんだ・・・
    
「何のお仕事を?」

「ホテルに勤めています」

「ホテル?」

「ソウルホテル・・・ご存知ですか?」

「ええ・・・何でも財政が厳しいとか・・・」

「ええ・・・でも、大丈夫です!今度是非いらしてくださいね
 最高のおもてなしをさせて頂きます」

「ええ・・・ありがとう・・・」

 

君は風に崩されたスカーフの位置をそっと直していた

「ルームサービス・・・・
 気に入りましたか?」

「ええ・・・ルームサービス・・・・・・
 えっ?・・・・ルームサービス?」

君は驚きの顔で自分のつけたスカーフと僕の顔を交互に見た


「あなたが・・・・フランク?」

「韓国名は、シン・ドンヒョク・・・」

僕はその時、内心自分に驚いていた

この僕が他人に初めて・・・あっさりと韓国名を名乗った

21年間・・・最初は名乗ることを阻まれていた
 
そして、いつしか・・・自分自身の意思で封印して来た


      “シン・ドンヒョク”・・・遠い日の・・・

      置き忘れてきた・・・僕の名・・・

      それを彼女に・・・

            何故告げた?
 


「あの・・・」


「そろそろ、行きましょうか・・・」


僕は君の困惑と、今度は僕自身の疑問にも背を向けていた

 

      ルームサービスの理由を

      君に訊ねられたら・・・僕は・・・

      いったい・・・


          ・・・なんて答えればいいだろう・・・














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sumirehime
ジニョンあなたどうして此処にいるの?知らない男からのスカーフをして、とスンジョンさんに言われそうだわ。 2009/10/11
tomtommama
ジニョンに対するFrankの心の変化を覗き見て、ドキドキ Frankと一緒に胸の鼓動がトクトクと音を立てるわぁ^^ 2009/10/11
 

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