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IZMCLUB別館
IZMCLUB別館(https://club.brokore.com/kurumitom2)
IZM CLUB 
サークルオーナー: kurumi☆ | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 261 | 開設:2007.10.18 | ランキング:66(6784)| 訪問者:1363161/1595843
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izm MV
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No 8 HIT数 3897
日付 2009/10/10 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル izm創作 3 “はじまり”後編
ファイル
本文


 




別荘を後にした僕たちはヨットハーバーへと向かった
     
「いったい・・・いくつ持ってらっしゃるの?」

整然と並べられたヨットやクルーザーを前にして
どれに乗りたいか、という僕の質問に君は素直に驚いて答えた

「僕のは二つだけです・・・ただ、ここにあるのは
 全て僕の知り合いのものですから、
 どれを選んでくれても構いません・・・
 あなたの乗りたい船に乗りましょう」

「あ・・・あなたのは?どれですか?・・・」

「僕の?・・これと・・・向こうから二つ目・・・」

「じゃあ・・・これに・・・」

「いいの?」

「ええ・・・あなたのヨットに乗せていただきたいわ」

「そう・・・」

僕はハーバーの管理事務所にヨットの出航準備を依頼し
準備が整うまでの間、僕たちは桟橋を散歩することにした
        
   君がふいに無邪気な質問を僕に向けた

「誰が運転・・・とは言いませんね・・・」

「僕が操縦します」

   君と二人になりたいんだ・・・
   他の人間に操縦はさせられない・・・

「あなたが?」

君が驚いたような顔で僕を見た

「ええ・・どうして?」

「いえ・・・・」

「僕では不安なのかな?」

「いえ・・そんなことは・・・でも私・・・泳げないんです」

君が突然まじめな顔で言った


「ははは・・・泳げないって・・・・・・
 まさか・・・落ちることを考えてるの?]

「あ・・いえ・・・私・・・実はヨットなんて初めてで・・・昔・・・
 子供の頃、海水浴で小さなボートに乗ってて・・・その・・・」

「落とされた?」

「え・・ええ・・」

「トラウマですね・・・大人になった今でも・・・
 海が怖いんだ・・・」

「怖いわけじゃ・・・」

「安心して?僕は免許取得時、成績はかなり優秀でした
 実は・・・実践は今日が初めてですが・・・自信はあります」

僕はわざと神妙な顔つきをして君の反応を盗み見た

「は・・初めて?」

予想した通りの君の反応に僕は本気で笑った

「嘘ですよ・・・冗談です・・・大丈夫経験長いです・・・
 自信も本当にあります・・・」

「ひどいわ・・・からかったんですね」

「ごめんなさい・・・それにもし落ちても・・・助けてあげますよ
 泳ぎにも自信あります」    

君が不安がっていることが可笑しかったのではなくて
僕の冗談を鵜呑みにした時の君の表情があまりに可愛くて・・・
僕の笑いの壺に君という人がすっぽり嵌り込んだようだった

   こんなに笑ったのは久しぶりだ・・・
   いや・・・初めてかもしれない・・・

   おかしな人だ・・・君は・・・


20分ほどして、僕たちが調度ヨットのそばに戻った時
出航の準備が整ったことを管理の人間が合図をくれた

「行きましょう・・・」

僕は自然に君の前に手を差し伸べた
君は一瞬驚いた顔をして、頬を赤らめうつむいた
君のその反応が逆に僕を意識させてしまったんだ

「足場が悪いですから・・・」

   それは本当だ・・・

「あぁ・・・」

君は納得したように、それでも少し戸惑いを残しながら
僕の掌に小さく指を置いた
僕はその白く細い指を壊さないようにそっと握った

君の手を引きながら、僕は自分の高鳴る鼓動が
その手を伝って君に届いているようで気が気ではなかった

   子供じゃあるまいし・・・
   手をつないだだけで・・・どうかしてるぞ・・・

僕は自分の動揺を悟られないように・・・
出来るだけ・・・君の瞳から視線を外して歩いていた・・・
        
約束通り、入り江の少し先までヨットを進めると
エンジンを止めて穏やかな海面に漂った

「ここなら、陸も見えるし・・・落ちても安心?」

僕は少しいたずらっぽく君の顔を覗いて言った

「根に持つタイプですか?」

君が優しく僕を睨む

「ええ・・・凄く・・・」

僕が真顔でそう答えると、君は困った顔をした

   からかい甲斐のある人だな君は・・・

また可笑しくなって僕は声を立てて笑った

「そんなにおかしいですか?・・・私・・・」

「いえ・・・」

言葉と裏腹に僕はお腹を抱えて笑っていた
今度は君も僕につられるようにして笑ってくれた

   僕はこんなに・・・笑い上戸だっただろうか・・・


それから僕たちは甲板に備え付けたデッキチェアーに
腰掛けて潮風を浴びた

君は気持ち良さそうに空を仰ぎ、眩しさに目を細めていた
太陽の陽の光の中で君の白い肌が一層輝いて
                      ・・・綺麗だった・・・

僕も君と同じように眩しさに目を細めていた・・・

   でもそれは・・・太陽のせいなんかじゃ・・・なかったんだ・・・

君の黒髪が風になびいて白い頬にまとわり付いている
直したい衝動に駆られて差し出しそうになった自分の指を
思いとどめて掌にしまった

いつもなら・・・初めて会ったその日でも・・・
そばにいる女の肩を躊躇なく抱き寄せ、くちづける・・・
女はそれを当然のように受け入れた・・・

   なのに・・・
   君にはできない・・・


君の・・・青空と一体化したような輝く笑顔の前で・・・
僕の心は釘付けになって・・・動きを抑制されていた・・・


「ああ・・・とても気持ちがいい・・・
 私、初めてです・・・こんな経験・・・」

   僕も初めてだ・・・こんな想い・・・


「空と海の青さって神秘的で・・・素敵ね・・・
 まるで心が洗われるみたい・・・」

   君の笑顔の方がもっと・・・素敵だよ・・・


時折、君と僕の視線が絡み合うと・・・
君は少し照れたようにうつむいた
      
   君がそうして照れるから・・・

僕までつられて視線を逸らしてしまう・・・

   思春期の子供じゃないんだから・・・

僕は心の中で自分に向かって笑ってやった・・・
    
「今度は、もっと遠くへ行きましょう・・・」

「今度?」

君が少し困惑した表情を垣間見せながら僕を見た
僕はそんな君の続きの言葉を避けるように
空に視線を移して言葉を繋げた


「陸が見えないくらい遠くに舟を止めて・・・
 広大な海の上をゆったり漂っていると・・・
 自分がちっぽけに思えて可笑しくなるんです

 周りには空と・・・海しか見えない・・・その中に・・・
 自分の存在だけを感じてみる・・・

 いつしか僕は・・・
 空や海に飲み込まれそうなほどの恐怖さえ味わう・・・
 この大自然の中で僕は・・・限りなく・・・無力なんだ・・・」


 


二人の間に少しの沈黙を挟んで僕が君に視線を戻すと・・・
君が静かに僕を見つめていた・・・
そして、君が僕に対して言葉を見つけられないでいることが
手に取るように伝わってくる
           
「あ・・・ごめんなさい・・・却って怖がらせたかな・・・
 でも、すごく気持ちがいいんです・・・すごく・・・」

   僕はそう言って、君に笑って見せた・・・

「ええ・・気持ちよさそう・・・いつも・・・おひとりで?」

「ええ・・・その方が多いです・・・」

「邪魔しちゃ・・・悪そう・・・」

「あなたなら・・・邪魔にならない・・・」

僕は君の目をまっすぐに見つめてそう言った

「あ・・・・・・」

君が少し頬を赤らめて言葉を呑んだ

   決してふざけていない・・・

僕は決して・・・ふざけてはいなかった・・・

そのことに・・・この僕が一番驚いていた・・・

「あ・・いえ・・・爽快な気分を・・・
 あなたにも是非・・・味わって欲しい・・・
 そう思って・・・」 

そう言って僕は二人の間の緊張の糸を少しだけたゆませた              

君と僕との間に・・・《今度》という機会が果たして存在するのか・・・
その可能性すらまだ見えていないものを・・・いつしか僕は・・・
まるでそれが当たり前に訪れるかのように話していた・・・

   そんな僕に・・・君は・・・
   ただ柔らかい微笑を返してくれた・・・

   その微笑には困惑も・・・戸惑いも隠されていない・・・

   そう感じたのは・・・きっと・・・

        僕の独りよがりでしかなかっただろう・・・   

          でも・・・ 

   君の・・・その全てを包み込むような笑顔の輝きに・・・

   僕の目は眩むほどだった・・・ 

   まるで暗い闇夜から突然・・・

        陽の差す場所へと・・・放りだされたかのように・・・
   

   このまま・・・ずっと・・・この海の上で・・・

   誰もいない・・・この空間で・・・君といたい・・・

       そう思った・・・

      
   このまま・・・ずっと・・・

   時間が止まってしまえばいい・・・

       そう・・思った・・・





「有難うございました・・・あの・・・楽しかった・・・」

「本当に?・・・良かった・・・僕も・・・楽しかった」

 
       楽しかった・・・

   こんな言葉・・・初めて使った・・・


「送って頂いて・・・有難う・・・ございます・・・」

「いいえ・・・」

   本当はもっと一緒にいたかった・・・

  
「それじゃあ・・・ここで・・・」

「ええ・・・」

   こんなとき・・・
   強く抱きしめて・・・キスのひとつでもして・・・
   直ぐに車に乗り込み女より先に立ち去る・・・

   それがいつもの・・・デートのラストシーン
   それなのに・・・

「・・・・・・」
「・・・・・・」

   言葉が続かない・・・


   君もただ僕に見つめられて・・・困ってるんだね・・・

   そろそろ、開放してあげなきゃ・・・いけないんだね・・・


「さあ・・・行ってください・・・」

君は少しほっとしたように微笑んで僕に再度お礼を言った
そして後ろを何度も何度も振り返って
僕に頭を下げながらホテルの中へ消えていった


   行ってしまった・・・

   何故か心だけが僕の中から取り出されて
   君と一緒に付いて行ってしまったような・・・

   ・・・妙な気分・・・
   この気持ちは・・・何なんだろう・・・


君がエントランスに消えたその後・・・
僕はどれくらいそこに佇んでいただろうか・・・

戻ってくれるはずもない君を待つかのように・・・

僕はしばらく車に持たれたまま煙草を燻らせ・・・
今君が入って消えたガラスの扉を・・・

   ただ・・・見つめていた・・・


別荘に戻ってからも僕の心は・・・
さっきまで君と過ごしていた時間の中を抜け出せずにいた

   結局ルームサービスのわけを・・・聞かなかったね・・・

        何故?・・・


   でも・・・贈った理由は・・・

        僕にもわからない・・・


   君に何故・・・心を動かされるのか・・・

        僕のことなど・・・きっと君の・・・

            心の片隅にも存在しないものを・・・


「レオ・・・この前のソウルホテルの件・・・
 僕が引き受ける・・・連絡を取れ・・」


   何故?・・・聞くな・・・


『それより、ボス・・そろそろ出航だぞ』

「お前たちだけで行ってくれ」

『何言ってる!ゲストはお前目当てだぞ』

「行きたくない・・・切るぞ」

『おい!ボス!・・・』


   行きたくない・・・


   お前は子供か・・・フランク・・・

   しかし何故だか・・・今夜は・・・

                          
   ひとり静かに風に吹かれていたい

     誰も・・・



       ・・・邪魔をするな・・・













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イナバッチ
1〜4まで何度目かの一気読みをしてしまいました-_-;。それ程にkurumiドンとtomさんの映像に惹きつけられます。続き楽しみにしてます♪。 2009/10/12
sumirehime
思春期の様な胸の痛み、狩人ドンヒョクの初恋ですよね。夜更かししても読んでしまいました。 2009/10/11
hiro305
うぅ~、kurumiさん、tomさん、スゴイです。原作の隙間にあったドンヒョクの心の動きをこんなにはっきりとした言葉と画像で現してくださって・・・正にこうだ!と頭の中に映像が流れていきました。幸せ^^ 2009/10/10
 

IMX