教会へと向かう石畳の坂道を 僕は君の肩をしっかり抱いて歩いた 昨日まであんなに近くにありながら 触れたくても叶わなかった君を 愛しく心に刻みながら・・・ あなたはその途中、小さな花屋に寄った 「待ってて・・・」 出て来たあなたが後ろ手に隠したものを 私の目の前にそっと出した その手には ・・・紅い薔薇が一本・・・ 結婚式のブーケの代わりに・・・と そして、もう一本を小さく茎を折って 自分の胸ポケットにさした ・・・僕のブートニア・・・そう言って 「嬉しいわ・・・ドンヒョクssi 今までのプレゼントの中で一番嬉しい」 教会に入ると天井まで延びたステンドグラスが 目の前に広がって私は大きな溜息をついた 「素敵・・・」 ここであなたはいつも苦しい胸のうちを懺悔し 祈っていたのね・・・ 「私と離れていた時も来てたの?」 「毎日・・・・・君の幸せを祈ってた」 「祈りが足りなかったわね・・・ 私ちっとも幸せじゃなかったもの」そう言ってジニョンは横目にドンヒョクを睨んだドンヒョクは彼女のジョークに声を上げて笑った そうよ・・・ あなたのその笑顔が見えなければ 私に幸せなんてあるわけないわ 神様はよくわかってらっしゃるのよジニョンは祭壇の前でひざまずき、ドンヒョクにも隣に座るよう促した 「ドンヒョクssi・・・さあ、懺悔なさい 今まで私を悲しませたんだから・・当然よ」 「わかったよ・・・」ドンヒョクも同じようにひざまずき、二人は手を組み目を閉じた 「・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・」 しばらくして私が横目にあなたを見ると あなたはまだ目を閉じ祈っていた あなたの横顔が綺麗だった 見つめる私の熱い視線にあなたがやっと気が付いて ちらりと私の方へ片目を開けた 「懺悔した?」 「したよ」 「本当?・・・何て?・・・ 私の心に届かないわよ」 「君を悲しませてごめんなさい、って・・・」 「それだけ?」 「それだけ・・・」 「そんなの懺悔じゃ・・・・」 あなたは私の言葉をさえぎり 突然くちづけた 私はそのままそっと目を閉じた ドンヒョクssi・・・・ あなたの柔らかいこの唇が 私を優しく宥めるように 辛かった日々を忘れさせてくれる・・・ ずるいのね・・・・あなた あなたは・・・それを知ってるのね ジニョン・・・ 君がくれる大きな愛に 僕は懺悔しただけでは到底償えないだろう 君が抱き締めてくれるという 君が守ってくれるという その想いに僕は甘えていいかい? 君に心から降伏した僕を・・・ どうか許して・・・互いを確かめるように・・・互いの想いを受け取るようにふたりは耳に届く小さなキスの音にさえ酔いしれていたそして二人は改めて祭壇の前に向かい合わせに立った 「ドンヒョクssi 誓いの言葉覚えた?」 あなたは声を出さず 「んっ 」 という表情をする あなたのその表情、私好きよ・・・・ドンヒョクはジニョンの腰を抱き寄せた 「ドンヒョクssi・・・ これじゃ誓いの言葉が言いにくい」 「いいんだよ 誓いのキスが直ぐ出来るように」 「誓いのキスって・・今まで・・」 「あれは誓いの前のキス・・」 そう言ってあなたは悪戯っ子のように笑った 「ふふ・・」ジニョンは彼の言葉に微笑んで、同じように彼の腰を抱いたそして彼は、自分の頬をジニョンの頬にピタリとつけて耳元に囁くように誓いの言葉を奏でた 「私、シン・ドンヒョクは、ソ・ジニョンを妻とし、 順境にあっても逆境にあっても 病める時も、健やかなる時も、生涯変わらぬ愛で・・・・ 君が寝坊して朝起きれない時は・・ 「ドンヒョクssi 違う・・・」 「シー」 ドンヒョクは歯の隙間から小さな音を漏らし、ジニョンの言葉を遮ると、先を続けて言った 「君が寝坊して起きれない時は 僕のキスで目覚めさせ 君の好きなオムレツを朝食に用意し 君の好きな映画や美術館を一緒に観て歩き 君の好きなものを僕も出来るだけ好きになるように努力し 例え、君が僕を嫌いになったとしても、絶対に離れないで いつも いつまでも そばにいて 君に抱かれていることを・・・・・誓います」ジニョンはドンヒョクの至って独創的な誓いの言葉にクスッと笑うと彼の後に続けた 「んっ・・ん・・私、ソ・ジニョンは・・・ シン・ドンヒョクを夫とし、順境にあっても逆境にあっても 病める時も健やかなる時も、生涯変わらぬ愛で・・・ たまには・・・えーと・・・ たまには・・私が早起きをして あなたを私の甘いキスで起こし あなたの好きなスクランブルエッグを上手に焼いて あなたの好きな退屈な映画もたまには付き合い あなたの好きなものを私も出来るだけ好きになるよう努力し あなたが私を置いて逃げても どこまでも追いかけて いつも いつまでも そばにいて あなたを抱きしめていることを・・・・・・誓います」ふたりは互いが見える位に顔を後ろに引くと、少しの間互いに肩を震わせ笑っていたが、直ぐに真顔になって見詰め合った 「ジニョン・・・・・愛してる」 「私も・・・・・愛してるわ」そうしてふたりはマリアの前で今度こそ本当の誓いのキスを交した ・・・あなたを 愛してる・・・そう心に唱えながら・・・ ドンヒョクssi・・・・愛してるわ 今・・私はあなたの妻になったのね あなたをこの手に取り戻したのね もう何処にも行かないで 私をこうして抱き締めていてね あなたは私がいないと生きていけないと言ってくれた 私だって同じよ あなたがいないと 私は好きな仕事だって楽しくなかった 好きな食べ物も少しも美味しくなかった あなたがいないと何もかもが嫌になったわ もう私を置いていかないでね あなたがいなければ 私はこの世のものすべてを 恨んで生きていきそうよ・・・ ジニョン・・・・・愛してる 君のいない世界がどんなに辛いものか 知っていたはずなのに・・・ 僕は大きな過ちを犯すところだった 僕は君のそばにいるべきではないと 本気でそう思っていたんだ でも違っていたんだね 僕が君を必要とするように 君にもこの僕が必要だったことを 気づかせてくれた 僕は生まれて初めて 僕を必要としてくれる人に出逢ったんだ 神様は僕を見捨てなかった きっとそうなんだね 僕が暴走したら、君は必死で手を握ってくれると言った 僕を抱き締めて、火を消してくれると言った 僕はそんな君に永久に抱かれて生きよう 永く 永く 幸せな日々を君とふたりで歩んでいこう そして ジニョン・・・ひとつだけお願いがある いつか・・・訪れるだろう最期の日 どうか 一秒でもいいから 僕を先に逝かせてくれないか それでないと僕は・・・僕の心はまた ・・・壊れてしまうから・・・------------------------------------------------