【 koko の Valentine's Day 】 10話
道中、 今日の出来事が頭の中をめぐった。
ちょくさんのおばあ様 ・ お母様 ・ おじたんさんの顔が
…
考えてもどうにもならないということだけははっきりしている。
私が知りえない何かがひそんでいるとは思うものの
待つしかないのだと自分に言いきかせる。
重い足取りでマンションにたどりついた。
「
やあ~ おつかれ … 」
と、ちょくさんが目の前にあらわれた。
「
携帯電源が入っていないから心配して帰りによったんだ。」
私の様子がいつもと違うのに気がついたのか
「
つかれてる~? 」
ちょくは内心驚ていた。
長い月日 こんな koko
を見たのは初めてだった。
どこか違う。
二人は 目線はあったがすぐに koko
の方から目をそらした。
「 あれれ …? ますますおかしいなあ~
我が家の女性軍と何かあったの?
」
「 えっ! 」
私は、どういうこと? どうしてちょくさんが …?
「
ずぼしだな。
僕に内緒であっていたという事は、どうしてと聞いても
期待うすしってところだな~
無理にはきかないよ。
その様子では、 koko からは話、 聞けそうになさそうだなぁ
7時前頃かな~ 病院で、 koko の
職場のくろちゃんに会ったんだ。
くろちゃんだとすぐには思い出せなかったんだけれど、
会釈され、会釈だけですれ違ったら、声をかけられ
くろちゃんだと言うことが分かった。
そして
『 先生。 たしか園田と言われましたよね。
ああ~ すっきりした。
昼間から園田と言うお名前がひっかかって
…
どこかで? 身近でと
… 思い出せなかったのです。
加賀美先生とご一緒ではなかったのですかあ~
私が取り次いだのですが昼間、加賀美先生の所に
園田様と言うご婦人がお二人こられて、加賀美先生も珍しく、
5時過ぎにお帰りになられたんですよ。』
と、 言いたい事だけ早口でしゃべって急ぎますからと、
そんなの事聞かされたら聞きたい事も聞けずに別れたんだ。
気になったから、
koko に 電話をいれたけれど、携帯の電源は
入っていないし、部屋の電話は留守電になっているし …
」
私は、あわててバッグから携帯を出し電源をいれた。
「
僕の家の電話も留守番電話になっているし、
勿論、夜でもあの二人は外出する事はあるけれど、
必ず、携帯にメールしてくるんだ。
『
どこそこ方面にお出かけです。
食事用意してあるから … では …
』
こんな感じでね。
今日は、連絡なし。
とにかく、気になってこうしてよってみたんだけれど
…
まあ~
無事にご帰還だから、ひと安心と言うことでひきあげますか~
じゃ~なあ~
」
と、ちょくは koko の頭を軽くたたき帰って行った。
koko
は、オートロック解除の暗証番号を押し、開いた扉を
入ろうとした時、 背後でちょくの声が
…
振り返ると、ちょくに抱きしめられた。
「
一息ついて、落ちついたら電話してこいよ。
何時でもいいから …
何かあったんだろ~
じゃな~
」
ますます、 重い足どりで部屋についた。
園田家女性二人が乗ったタクシーの中では、祖母が華子の手を両手で包みこみ、
「
早い方がいいわねえ~
明日にでも、加賀美様の大奥様にお電話をいれて
ご都合聞いて早急に席をもうけた方がいいわね。
」
華子はうなづいた。
「 あまり早くお電話するのも失礼だけれどかといって
…
10時ぐらい、だったらいいわよね。
ねえ~ 華子さん早ければ明日午後という運びになるかも
知れないけれど、 あなた一緒にお願いね。」
園田家は明かりがついていた。
「
お母様。 電気 ついていますわ。
どちらが帰っているのかしら …? 」
「 あらら
… 私たちそれどころではなかったから、
二人に出かける事と、 お食事のこと連絡をしていなったわね。 」
華子も、 はっと! 口元に手をやった。
「
仕方ないわね。 」
すなおの父、 光太郎が帰っていた。
そして、昨夜の事、今日の流れを祖母が話した。
予測できる今後の事にも話は触れられた。
父、 光太郎は明日が早いからと寝室に引き上げた。
明日早いと言う事は2~3日前から聞いていたから
嘘ではないだろうが、光太郎かなりの動揺は感じとられた。
その場に平常心ではいることができなかったのだろう。
それを悟られまいとその場から退散したのだろうと二人は思った。
入れかわりすなおが帰ってきた。
外出着のままのふたりにすなおは 「
お出かけでしたか? 」
罰が悪そうな二人は顔を見合わせ、華子が
「
お母様軽く何かお食べになります。」
「 そうね~ なおもどぉ~ 」
「 そうだな~ 食べそびれてまだだったな~
」
「 若いのにこんな時間まで食事食べていないなんて身体によくないわよ。」
「 急いで用意するから着替えてらっしゃい
… 」
「 僕も遅いからおふくろ達と同じ物でいいよ。」
「 そ~ … 」
祖母と母は
koko と 会う前に食事どころではなかった。
「 華子さん。 私も手伝うわ。 早くただいてやすみましょ~
」
すなおの母と祖母が並んでキッチンに立つ後姿を見ながら
テーブルに腰をおろした。
小声でなにやら話しながら手際よくつくりはじめた。
そんな様子を眺めながら、携帯の電源を確かめた。
koko
からの連絡はない。
どうしているのだろ~
大丈夫かな~?
普通ではなかった。
いつものように部屋に行けばよかった と
…
今頃、 後悔している自分にいらだちを感じながら、
やはり携帯が気になり何度も見た。
「
あら~ いやだわ。 ビックリさせないでよ!
着替えにいかなかったの? 」
そう言いながらテーブルに多分?
父と僕が帰ってきた時に用意しておいたものだったのだろ~
煮物とお刺身、 お吸い物。
そして、祖母の自慢のぬかづけ。
「
揚げ物がひかえておくわね。」
「 久しぶりね。
こうして揃ってお食事なんてお父様に声かけてこようかしら
… 」
「 まだおきてはいるでしょうが、明日早いと言っていたから
声をかけるのはよしましょ~ 」
「
そ~ 親父さん あすはやいんだ! 親父もいそがしいんだな~ 」
「 さあ~ いただきましょ~
」
三人はそれぞれの思いを胸に箸を進めた。
ちょくはお腹が満たされかけた時、
koko
も
おなかすかしているのでは?
何かたべているかな~ と頭をよぎった。
目の前のふたりもいつもなら交互にあれやこれやの話題で
会話がある食卓が
今日は会話もなく一定のリズムで食べ物を口に運んでいる。
ちょくは箸をおき、お茶をひと口
…
「 ねえ~ 二人で外出していて食事してこなかったの?
」
ちょくは、二人には少し意地悪な質問をしたかな~ と思った。
案の定。 二人の様子はおかしい
…
祖母が 「
そうなの。 だって! 昨夜筒井さんの所でいただいたばかりよ。
毎晩、ご馳走いただけないわ。」
さすが、年の功。 そうきたか~ と思いながらすなおは箸をとった。
二人は、それまでの箸の進み方とは、違うように感じた。
そんな二人の様子を見ながら
「
どうして、今日 koko にあったの?
」
母、華子は箸を落としそうになるし、
祖母はむせ、かなりあせリ出した。
「 koko
さんにあったの? 」
「 うん! 今別れてきたところだけど … 」
「 koko さん。 なんて …?
」
「 あんな koko はじめてみたな~ すごくつかれているようで …
多分、聞いても言わないだろうからきかなかったけど
… 」
「 じゃ~ どうして? 」
「
どうしたの~ 二人共すご~い顔してるよ。
僕達の事だったら何も心配しなくていいから! 」
すなおはこの時は昨夜おじたんさんのお店で会い
その後何も話さなかったのでふたりが気にかけ
koko に 会いに行ったのか?
それも不自然にも思いながらそんな言葉を言ったが
「 今日、
koko の職場まで押しかけたんだって! 」
「 やっぱり koko さんがあ~ それにしてもおしかけたなんて!
koko
さんそんな風に報告したの? 」
「 koko
からは何も聞いていないといったでしょ~
ひょっとして僕に言うなと口どめしたの~?
押しかけたと言う表現は僕が勝手にいっただけ!
病院で
… 僕の病院で koko の職場の事務の人と会ったんだ。
ほら! お袋さん達が koko
に取り次いだ人だと思うよ。
僕と koko と 知り合いだと言う事を知っていて、
僕が園田と言うことも
…
病院で会うまでは僕の事を忘れていたみたいなんだけれど
会ってすっきりしたと言っていたよ。
お袋達が帰ったあと、 園田というのがひっかかっていたみたいで
…
koko が、いつもより早く切り上げて帰ったと言う事も
…
ま~ こんな流れなんだけれど、それでお二人お揃いで
koko に 何のご用でしたのですか?
」
完全に二人の顔色は蒼白気味で僕の一言一言が二人を
追い詰めていると思ったが、まだ手はゆるめなかった。
「
出来ればこう言うやり方はやめていただきませんか?
きちっと家に連れてきて紹介してからにしてくれないかな~
」
母はうつむいたままで、祖母が
「 ねえ~ koko さん大丈夫かしら?
」
「 『大丈夫って!』 どういう事? 」
「 いえ! どういう事って別に~
」
煮えきれない二人にすなおはいらだちを感じながら、
この二人の様子もかなりおかしい
…
これ以上追い詰めてもと思いながら二人の様子から
ますます koko
のことが気がかりになった。
祖母が
「 koko
さんにもお願いと言うか許していただけたらとお詫びしたのよ。
今 あなたにも同じことをお願いしたいの。
koko
さんに 『 ながく時間(とき)を重ねてきましたら、
時として予期しない事柄が
…
しかし、わたくしの一存で事を進めると言うわけにはいかない
事柄もありまして、
出来るだけ早い段階で今日の日の事のお詫びをかねて、
あらためてお席をもうけて、お話をさせていただくと言うことで、
今日のところはご理解いただけないかしら
… 』
と お願をしたのよ。
なお。
ながく時間(とき)を重ねてきたら、時として予期しない事柄が
…
今日みたいにね。
しかしね。
私達だけの一存で事を進めると言うわけにはいかない事柄もあるの。
出来るだけ早い段階で今日の日の事もその他の事も話を
…
今日のところは … 」
koko
に話したという内容をすなおにも語り
話しながら自分自身に言い聞かせているようにも感じた。
園田家の秘密というと 母 華子が義母であるるということ。
しかし戸籍上は父光太郎と母華子の実子のように記載されている。
DNA鑑定でも父の子ではあるが母とは
…
そのことをすなおが知っているということは
両親も祖母も知らないはずだ!
その他に koko
をも含めなにがあるというのだろう。?
すなおは家族に不信をいだきだした。