【 koko の Valentine's Day 】 23話
「
今日、 こうして急に、 帰ってくる事になったから、
お仕事途中で … 気になるから … 」
不器用な koko
は言葉もたどたどしく次の言葉に迷っていると、
気がそぞろの祖母が …
「
そうどすか~ お仕事では仕方おへんな~
koko
は、 昨夜、 志乃さんと華子さんとはお逢いしているしね。」
祖母が、 軽く答えた。
koko
は、 三人と目を合わせず席をたちキッチンに
…
母と、こお子がテーブルの上の物をキッチンに運び 片付けだした。
祖母も、
ソファーのクッション等を並べ直したあと、 キッチンに入ってきた。
「
そしたら、 片付いたら余りあまたせしても悪いから、
園田様宅にお邪魔致しましょか? 」
祖母が、 koko
の方を見た。
koko は、 あわてて、 「
お見送りさせてもらいます。
そのあとすぐに、私もでかけます。」
「 そうどすかあ~ お帰りはおそおすかあ~
」
「 今からだとかなり遅くなるかな~ 」
祖母が、 娘、 直穂子に
「
なあ~ 直穂子。 そしたら私ら園田様のご自宅から
そのまま京都に帰りましょか?
園田様のご住所で 江藤お迎え大丈夫ですやろかあ~? 」
「 こお子。 ほら!
いつもの地図。 パソコンでしておくれやす。
江藤にファックスするさかい …
」
直穂子が、こお子に園田家の住所を書いたメモを渡した。
「 koko ちゃん。 してあげて
…
京都では、 おばあちゃんとお母さん相手やから、
私がもたもたしながらパソコンさわっていますけど
koko ちゃん
にお願いして … 」
koko は キッチンから 書斎に …
パソコンにむかい
簡単な操作なのですぐキッチンへ …
ぐずぐずしているこお子に
「
はい。」
と、 数枚のペーパーを渡した。
koko
は、 ちょくさんの住所はアドレス帳でわかっていた。
母が、 「 1枚でよかったのに …
」
横から、 こお子が …
「 はや~ ほらね。 文系と理系の違いが
…
いや~ koko ちゃんすごいね。
お母さん! いややわ~ ほら見て …
これはやね。 普通の地図で、 こっちは、 園田さんの近辺地図で、
こっちは、 もっとそばの地図です。
これやったら、 3枚とも江藤に送信したら江藤も迷わんと
お迎えきてもらえますえ~
」
と、 こお子は やや興奮気味に話している。
「 そうかあ~ koko
ちゃんありがと~
おかあさん、 電話かけます。」
直穂子が加賀美家のおかかえ運転手の江藤に電話をかけ、
江藤も電話を待っていたのだろう。 すぐに受話器があげられた。
受話器を母に渡した。
「
ご苦労さんどす。 koko
のマンションではなく、
今、 ファックス送りますさかいにそこに、 お迎えお願いします。
あわてなくても、 私達は今からそちらにお邪魔します。
待ってもらうかもしれませんけど、 頼みます。
ついたら、 直穂子の携帯に電話入れてもらえますか?
その電話には出れへんかもしれませんけど着信でわかるから
数回ならしたら、 切ってください。」
八重は江藤に指示をして受話器を置いた。
祖母が電話をしている間、母は何度も鏡の前に立った。
こお子は、 koko
に
「 koko。 弟ってどんな子や~ 変な感じどすわ~ 」
と、 話しかけてきたが、 koko
は、 聞こえていたが
聞こえていないかのような振るまいをした。
koko
の複雑な心境など気にするわけでもなく、
数十分後の出来事に、 三人の心は動いている。
祖母が江藤と話している間に母が、 タクシーに電話を入れていた。
7年間もマンションに通いなれているだけに手際はいい。
そうこうしていると、 インターフォンでタクシーの到着が知らされた。
「
今、 おりていきます。」
こお子が答え、 母が園田家に電話をかけている。
店で扱っている和菓子の包みとバッグを持った母と
祖母から、 他の物は
マンションにおいておくようにと言われた
こお子はバッグをさげドアを出た。
この時の、 三人には koko
を思いやる気持ちの余裕は消えていた。
「 そしたら、 私はここで … いってらっしゃい … 」
と、 koko
が 声をかけた。
母と、 こお子は数歩踏み出していた。
母、 直穂子は2週間とはいえ、 こお子とは違いすなおは、
小さな身体で、力強く吸った乳首の感触
小さいとはいえ、 こお子とは違った感触が 今なお、 残っている。
こお子は、 よくなき扱いにくい子だったが、 ほとんど泣き声を聞く事もなく、
手のかからなかった その子との再会が数分後にとおもうと
…
華子から、 年明けにチョコレートが送られてくる時に、
写真が一枚と中学までは身長と体重。
便箋 2-3枚に近況を書き記されたものが送れてきて
ありがたかった。
こお子は、
加賀美の父にたっぷりの愛情をそそがれ育ったせいか?
生まれ持った性格か? 園田家の人との再会?
は 不思議なぐらいに冷静だった。
ただ、 双子と聞き、 自分とうりふたつなのか?
それともまったく
…?
などと頭をよぎり楽しんでいるかのようだ。
「
ほんならいってきます。 お仕事ご苦労様どす。 」
と、 祖母からかえってきた。
koko
は、 複雑な心境で後姿をみおくっていた。