《 続 》 【 koko の Valentine's Day♪ … 白いページ … 13話 】キッチンに戻った 呼子 は 大きく深呼吸をし、 椅子に腰おろした。しばらくしてバスロープ姿でタオルで髪の毛を拭きなら 直 が入ってきた。直 は 以前座っていた席につき、なつかしいマグカップにコーヒーを注がれるのを眺めていた。呼子 は、 バスロープ姿の 直 を コーヒーを注ぎながら ちらっと 横目で見ていた。直 が、 そんな 呼子 に 気がついてたのか「 これ着たけれど … 置いてあった下着も … 」「 そうなの。 以前、 光子 ちゃんがお父様のために京都から持ってきたのを思い出して …お父様は年に数回いらっしてもすぐに帰られるから一度も着ることはなかったのよ。 」と付け加え「 買い置きあまりしないからこんなものしか用意できなかったわ。」「 おいしそうだ。 いただきます。」
と、 呼子 に微笑みかけコーヒーを一口飲み「 なつかしいな~ 」と、 マグカップを眺めては コーヒーを口に運んだ。そんな 直 を 眺めながら 呼子 は こみあげてくるのを気がつかれないように席を立ち 蛇口をひねった。涙を拭い、 すぐに席に戻り、 呼子 もコーヒーを口に運んだ。静かなひと時もつかの間。 電話の呼び出し音が鳴った。「 おはよ~ おきた。呼子 ちゃん。 すなお 独占しないで、 はよ返してね。葬儀にこれなかった方が来られるかもしれへんし、何かと、 まだ すなお と相談しないといけない事がたくさんあるさかいに …呼子 ちゃんは 少しぐらいなら遅れてきてもいいよ。ほんなら、 お願いね。」いつものことながら、 光子 は 言いたいことだけ言って
電話をきった。直 は、 呼子 が用意した朝食を口に運びながら 呼子 を眺めていた。呼子 が席につき、 光子 の 一方通行の電話の内容を話した。「 あの人も変わらないね。 元気だ~ 」呼子 は、 どきっとした。直 さんが 光子 を ” あの人” という呼び方で …すぐに、 呼子 は 直 の 性格から すぐには ” お姉さん ” とも呼べないだろうし、 かと言って ” こおこ さん ” とも呼べないと理解した。「 食事をすませたら帰るよ。 呼子 は … 」「 どうしたらいいかな~ 」その言葉に 直 は 少し驚いた。呼子 は、 自分の行動を迷う子ではない。あらためて、 はかりしれない胸の内を痛々しく感じた。「 一緒に行くのだったら、 待ってるよ。」「 うん。 どうしょ~ 」直 はそんな 呼子 を 眺めていた。「 呼子 。 一緒に行こう。」そう言って、 マグカップを持ち席を立った。コーヒーを注ぎ席に戻った。「 そうしょう。」「 うん。」呼子 に 直 が、 あとは片付けは自分がしておくから呼子 は 用意してくるように促した。寝室に戻り、 5分程度でお化粧をし、クローゼットから昨夜のスーツではない黒いスーツを出し、 着替えをはじめた。部屋着を脱ぎ、 呼子 は、 ハッとした。なんてことを …
喪にふさなければならないこの時に、 こんな物を身につけた自分に一瞬とはいえ、 恥ずかしさを隠せなかった。あわてて脱ぎすて、 下着をきがえ、 身なりを整えた。リビングのソファーに席を移した 直 に 「 お待たせ。」「 うん。 じゃ! 着替えてくるよ。」直は席を立った。呼子 は 直 の使用した浴室を簡単に片づけようとドアをあけるときれいに片づけられていた。寝室の部屋の前に立ち ドア越しに「 ちょく さん。 カーテン閉めてね。」「 わかった。」キッチンに入った 呼子 は きれい片付いたキッチンをを見て直 の アメリカでの一人暮らしの長さを感じた。人の気配を感じ振り返ると「 行こうか。」呼子 は キッチンの明かりを消し、 直 の 背中をみながら玄関まで行くと、 直 が 振り返り 呼子 を 胸に引きよせしばらく抱きしめた。呼子 も 直 の 胸に身をあずけ、 背中に手をまわした。