園田家では、 直
が リビングで新聞を読みながら
自分で入れたコーヒーを口に運んでいた。
華子 と 客間に布団を並べ床に入る
直 は
この数日の疲れですぐに深い眠りについた。
華子は、 なかなか寝付かれず何度も寝がいりを
繰り返した。
うっすら夜が明けかけた時、 直 はのどの渇きで目がさめ
キッチンでのどを潤し床へはいろうとした頃に華子は、
やっと、 うとうとしかけた。
7時過ぎに
直 が 目がさめ、 そ~っと床を離れ懐かしい
自分の部屋で少し過ごし 濃紺のパンツに
薄いベージュにブルー系の濃淡の 縞模様のシャツを
…
そして、 新聞を入れリビングで読んでいたが、
華子が起きてくる気配がないので、 コーヒー豆をひいた。
多分この役目は父がと思いを馳せながら手を動かした。
外で、 車の止まる音が聞こえた。
今度こそはと玄関へ急いで
…
何度か車の音で玄関へ行き、 玄関横の窓から少し先の
門扉を眺め、 呼子 達ではないと肩を落としリビングへ
…
車の止まる音がした。
ドアのしまる音がきこへ 耳慣れた女性の声が聞こえた。
この声は、 光子
だと思い玄関をあけ、
門から入ってくる
光子たち を 出迎えた。
新聞を取りに行った時に門扉のカギを開けておいた。
玄関にたった 直 を見た
光子 が いたずらぽく口元に笑みを浮かべ
「 そんなに待ち遠しかったの。 私達… 」
直
に そう話しかけたが、 直 は 上の空で、
目線は門扉のあたりにいっていた。
「 も~ すなお! 呼子
どすか? 呼子 は 一緒やおへん。」
直 は ” えっ!” という表情を隠しきれなかった。
「
さあさあ~ 入らしていただきますよ。」
と、 直
の 背中を軽くたたき 直穂子と玄関に入った。
玄関に入り雰囲気の違いを感じた 光子 が、
「
華子ママさんは? 」
そう言いながらリビングにはいって行った。
コーヒーの香り
…
飲みかけのコーヒーと新聞に目をやり その後、 キッチンへ …
直
が コーヒーカップにコーヒーを注ぎお盆にのせた。
その様子を見ながら 光子 が …
「 すなお 。
朝ご飯食べてないの~ 華子ママは~? 」
再度、 直 に 聞く。
直
は、 昨夜 光子達が帰ったあと、 数時間話しこみ、
その後、 客間で 直
と 華子が、 床をならべて休んだ。
華子は寝つきが悪く 朝方やっと寝付いたようなので
そのまま寝かせていると
光子 に 説明をした。
「 そうどすかあ~ 」
光子
が 掛け時計に目をやり、 少し考え込んで、
「 そやけどいつまでもそのままでは
…
昨日よりはお越しになる方は少なおすやろけど、
お部屋はそろそろ整えとかないとね~
9時まで待ちましょか。
9時になっても起きてきはらへんようでしたらお声かけましょ~
少しバタバタすることになりますけどしかたおへんな~
お部屋を整えるまでにお人が来られたら
洋間の応接室にご案内しましょか?
おおきに
… あんた朝ご飯まだやったらおなかすいたでしょ~ 」
お盆に載せられた 直が入れたコーヒーをひとくち口をつけ
光子
は 着物の裾を帯にはさみ台所に立った。
「 コーヒーよばれます。
おかあはんに声かけてきてくれますかあ~
」
直 は 直穂子を呼びに行った。
直 は 光子 の ように実の母の 直穂子を ” 母 ” と
呼ぶことができず、
「
あの~ キッチンにコーヒーが入っています。」
と、 声をかけるのが精一杯だった。
キッチンに入るとおみそ汁と焼き魚の匂いが漂っていた。
まな板の上では、
光子 が 糠づけの白菜やニンジン
大根等を切りそろえていた。
手早く用意され
「
さあ~ どうぞ … 」
直 を 前に
光子 と 直穂子が少しさめたコーヒーを口に運んだ。
直が箸をつけないで何か言いたげな様子を光子は気がついた。
「
そうそう。 ちょく ごめんごめん。 朝食どころではないねえ~
呼子ちゃんの事が気になって
… 心配いりまへん。
そやけど、 すなお そんなに心配する
呼子のこと
10年もほっときはったな~
呼子ちゃん お休み今日まででしかとってきてないとかで、
手続きにしてくるというてました。
」
直 は 安堵したのか、 心持、 顔が晴れやかにかんじた。
「
も~ かなんな~ まあまあ~ おそばせながら
そんなに思うてもろて
呼子ちゃんも幸せですやろ~
少しはやおすけど そろそろ 華子ママおこしてきますわ~ 」
菜穂子も席を立ちかけると
「
お母はんは、すなおのお食事のお世話お願します。」
直 は 箸が止まった。
光子
が キッチンを出かけると
「 おはようございます。 寝過してしまいました。
もうこんな時間に … 」
「 華子ママ。 丁度よかったです。 今、 朝ご飯用意します。 」
直
の 席の横に朝食を用意された。
光子が客間を整え それぞれが昨日の作業を続けた。
そうこうしていると、 もういいと言っていたのに
12時前に筒井の料亭から昼食が届けられた。
4人は昼食をありがたくいただきながら、
直
の 目線は 呼子 の 食事に …
そんな 直 の 様子を 光子
が 見逃すわけがない。
「 も~ あんたは 呼子
の ことしか頭にないのどすかあ~
そうやね。 それにしてもちょっと遅いかな~
連絡ぐらいしてきてもいいのにねえ~
あんた。 食事済んだら、 電話してみなさい。
呼子
の ことやから、 言いそびれて仕事しているのかなあ~ 」
直 は 食事の途中だったが席を立った。