《 続 》 【 koko の Valentine's Day♪ … 白いページ … 25話 】ホテルに入ると笑みを浮かべ、ふくよかな中年の男性が近づいてきた。直 と その男性は軽くハグをし、 直 が 呼子 に 向かって、このホテルのオーナを紹介し、 オーナーに 呼子 を 紹介した。長いアメリカ生活の中で 直 が 公私ともに心を許す数少ない人であることを 呼子 は 知った。フロントで、 ルームカドーキーを受取り部屋にむかった。直 が このホテルに宿泊する時には いつも同じ部屋が用意されているらしく案内もなく部屋へ …部屋に入ると、 エレガントに落ちついた色調にまとめられ、リビングのテーブルには、 オーナーからの差し入れのワインとフルーツの盛り合わせが用意されていた。「 素敵なお部屋ね。」「 気に入った。」呼子 は、 テラスに出ると植木鉢とプランターで緑が配置され、落ち着けるゆったりとした空間があった。空間の中にテーブルといすが置かれている。少し離れた所に無造作にロッキングチェアーが …あとで知ったのだが、 直 の お気に入りだそうだ。呼子 は 夜景を眺めたいた。直 は、そんな 呼子 を 目で追いながらグラスにワインを注いだ。テラスの 呼子 に グラスを手渡し、直 も、 夜景を見ながらひとくちワインを口にし、後部に置かれたテーブルにグラスを置いた。直 は 部屋に入り、 オーナーからの差し入れをテラスのテーブルにおき、 グラスを持ち 呼子 の 横に …呼子 は、 一刻も早くレストランでの話の続きをと願いながら、 直 から 切り出されるのを待っていた。「 じゃ~ いい … 」呼子 は、 直 の 顔を仰ぎ うなずいた。「 父の初七日法要が終わり食事もすみ、それぞれがというか呼子達は、二階の父の書斎に行ったり、リビングでくつろいでいたよね。加賀美のお父様は、 客間の父の祭壇の前におられたんだ。葬儀の時に初対面で、その日の内に、光子さんの家族と京都に帰られたからご挨拶もそこそこだったし、あらためてご挨拶と両親が何かとお世話になっていたようでそのお礼を …母から聞かされ驚いたんだが、父と加賀美のお父様と時折 外で会いお酒の席をもうけていたんだね。僕は、僕 と 光子さんのことや、 父と 加賀美のお母様の事を聞かされ、アメリカに今から思うと逃げたんだが、その後のこと母から聞いたよ。 母は加賀美家の皆様には感謝してもしきれないと話していた。」そこまで話した 直 が 呼子 の 肩に手をかけテーブルに誘導した。夜景を前に見える位置に二人はテーブルをはさんで腰をおろした。「 加賀美のお父様は僕をしばらく眺められて、『 光太郎君 も 直君のこと。 気にされていたよ。でも、 こうして立派な姿を見て安心されているでしょう。私もひと安心だ。それと、 葬儀のあと私たちが引き揚げ、 直穂子があのことを君たちに話たんだね。ああして、 みなと何気なく行動を共にしている 呼子 を見ていると胸が痛むよ。数日で、 やつれたようだ。無理もないだろう。私たちの身勝手でこれでよかったのか … 』そう言いながらなみだしておられたよ。それから、 座敷テーブルに席を移し、 沈黙が続き、お酒でもいただこうということで、二人して誰もいないキッチンへ行き、お父様は、 日本酒を … 僕はワインを …冷酒でいいといわれたのでグラスの棚からそれなりのグラスに手をかけると、お父様が父とお酒を酌み交わすとき、いつもワイングラスで飲まれていたようで、僕と同じワイングラスを手に取られまた客間へ … お酒の手助けもあって少し場が和んだ感じで話をしたんだ。そうこうしていて、レストランで 呼子 も ひとつだけ気にしていたこと。 僕もそのことは気になっていた。思い切ってお父様に問いかけたんだ。何か心あたりはないかと …加賀美家では、 あの日を境にあの日の出来事は封印され、時間も重なり風化しているかのように、それぞれの胸の内に …父の葬儀のあくる朝。 夜がけかけた時、 加賀美のお母さまから電話があり封印されていたことを皆に話したと …お父様は受話器を置き、 受話器を置いたとたんにスイッチが入ったと表現されていたよ。 時間帯もよく似た時間で あの日の朝に引き戻されたそうだ。その日の朝まで、 1度も気にもされなかったし、思いだすこともなかった。呼子 が 加賀美家のことしてきてくれた時から、幸せなひびだった。呼子 は 自分たちの子として、自然に受け入れていたからといわれていた。しかし、 受話器を置いたとたん僕たちと同じ事を考えられたそうだ。1日が過ぎ2日目 … そのことばかりが気になり眠ることもできず、朝を迎え、同じ時間帯に、寝衣のまま門に出たそうだ。しばらくその場にたたずんでいると、 ふとある女性が浮かんだそうだ。まさか? そんな事が …そこに立つていられなくなりしばらく膝まづいていたらしい …やっと、我に帰り部屋にたどりつき ” そんな馬鹿 ” な と何度も何度も思い 涙が止まらなかったそうだ。」そこまで話したちょくが心配そううに 呼子 に …「 大丈夫 …? 」 と、 声をかけた。呼子 の 様子のおかしいのはすぐわかった。「 続けて! 」 と、 あら声でひと言 …「 …… 呼子 が あの家に来る数年前から、僕が園田の家に引き取られてからというものは、加賀美のお母様は普通じゃなかったらしい …すべて了解のもと結婚したはずだったが、 僕との別れで加賀美のお母様の精神状態はひどくなる一方で …もう、 夫婦の間も修復不可能な状況まで来ていたそうだ。加賀美のお父様は仕事に逃げられる日々が続き、そんなとき、 気がついたらいつもそばにいた女性が …優秀な生徒で、 物静かでしかし人一倍努力家で、考古学に夢をたくし、 卒業後も研究員として研修室に残りよくがんばっておられたそうだ。ある時、 加賀美家ではまったく居場所がないお父様はいったん引き揚げた研究室にもどられたそうだ。すると、 その女性が …月明かりの中でポッンといたそうなんだ。そばに行くと泣いていたらしく痛々しくて声もかけずに抱きしめていたらしい …1度だけ関係を持ちその後、その女性は何も告げず研究室をさられたらしい。その後、 行方が分からないままに… もしかして、呼子 は その時の …そう思われたお父様は、それからあらゆる手でその方を探されたそうだ。葬儀で初めてお会いした時から、1週間しか日がたっていないのに、ひとが違ったようにやつれておられおかしいと思っていたが、そういうことが、 あったなんて … 」ひと息入れワインを飲みかけると、 呼子 が …「 続けて! 」 と …直 は 驚き、 グラスをテーブルに置き話を続けた。「 一日半ぐらいであるかたに行きあたられたそうだ。お父様は、 教え子からの便りは年度ごとに整理していてその女性の同期の前後の人に …お父様も高齢で 時間がない と思われ、恥も外聞も考えないで次々連絡をされたらしい。幸いお父様からの電話で懐かしさでみなが喜ばれ、それとなく話題に乗せ聞くことができたらしい。しかし、 つながる情報はなく、 こんな方法ではと、諦めかけている時によく知っているという人に …そのかたと電話の女性は偶然実家が近所で、電話の女性は早く実家を離れて生活していたらしく、久ぶりに実家に帰り、若くして亡くなったということを聞き驚いてそれで覚えていたらしい。その女性は大学4回生の時、1年の間にご両親が亡くなられ、その後も実家から大学に通われ、 研究室にもそこから …そうこうしているうちに、 毎日家におられた様で …昔からそこの場所に住まれ、 大きなお屋敷だったとか?数ヵ月後に家は売りに出され、どこに引っ越されたかはわからなかったらしい。その後、ひょんなことから電話の女性が医師と結婚されていて電話の女性の実家で集まりがあり、 お茶をしていて、めったにというか殆ど患者さんのことは勿論、仕事のことなど話さないご主人が、 妻である実家の住所と似ていたので、記憶していたらしく、早期の胃がんで、治療を始めようとした時妊娠がわかり、その後どうしたのかな~ という話題に …その後の消息で亡くなられたということまでは聞いたという事らしい … 」呼子 は、 席を立ち戸惑いを隠せないのがちょくには感じ取った。数歩前に進みまた立ち止まり、 おろおろしながら部屋に入りソファーに身を任せた。後ろから 直 が 駆け寄り声をかけた。痛々しい 呼子 の 姿に戸惑ったが、 横に腰をおろし話を続けた。「 呼子。 お父様は号泣して話されていたよ。両親をなくし、 やっと進むべき道を見出し研究に勤しんでいた矢先がんと知り、 多分あの日が … 月明かりの薄暗い研究室で涙していた時。その後、 誰にもつげないで授かった命だけを守り、お父様に託したんだ。 と …無条件でかわいくて、 かわいくて光子とは違った感触で、血のつながりかな~ と 話されていたよ。加賀美のお母さんがあの事を話されたあと、お父様に光子さんと電話で話されたそうだ。光子さんが、すっかりみんなにだまされたわ。それにしても、 お父様と 呼子 他人だなんて …すぐに、 こんな言い方御免と訂正があったそうだけれど、不器用なお父様にしては自然に親子してたよね。 といわれ、そう言われてみれば、 そうだな~と思いに馳せた。とおっしゃられていたよ。」少し沈黙が続いた。