《 続 》【 koko の Valentine's Day♪ … 白いページ
… 】 3話
「 実は、呼子とすなおは結婚できるのどすえ~ 」
さらっと! 言いのけた直穂子とは正反対に
みなの驚きはただ事ではなかった。
「 いややわ~ おかあはん。 何をいいだしはんのん?
気はたしかどすか?
あの時のお話の他に何があるといいはるのどすか? 」
呼子と直は今まで直視(ちょくし)する事が出来なかったが、
この時ばかりはお互いに見つめ合っていた。
「 この事は何があってもお墓までと思っていました。
私だけではないのどす。 おばあ様もおじい様も …
この二人はまもりはりました。
実は、 呼子は加賀美のおとうさんの子でも、
私の子でもないのです。」
「 いややわ~ おかあさん。
何をいってはりますの~ 気が変になりそうどすわ~
小さい頃から、 呼子は私よりお母さんに似ているとみんなから … 」
そこまで言いかけた光子は涙声になり言葉につまった。
「 そうなんよ。 呼子が成長するにつれ、 おばあ様もよく話していたわ。
血のつながっている光子が大きくなるにつれ
どんどん顔立ちが違っていき、呼子が私に顔だけではなく
しぐさもよく似てくるのには不思議で不思議で …
何につけ、手こずった光子とちがい、聞きわけもよく、
何ひとつ手に余る事もなく、いつも、いいお子どした。
おばあ様も 『 呼子は、直穂子から生まれてこなかったけれど
加賀美家に神様からの贈り物どす。』 と … そやさかいに … 」
直穂子は大きな溜息をついた。
「 はあ~ 私もつろおすわ。 おばあ様やおじい様をを恨みます。
先に旅だって、 私の口からこんなむごい話を
しなくてはいけないなんて …
それでも、 話さなくてはと思った私の気持ちは呼子わかってね。
今日、 久しぶりにあった直と呼子を見ていて、 思ったんよ。
くら~い二人をみていて、 どうしても幸せに … 」
「 おかあ~はん。 ええからはよ~ 話しておくれやす。」
光子は呼子の方をちらっとみた。
呼子は正座してひざの上においていた手を強く握り締め
まさか自分の出生を、疑う事などなかっただけに
冷静に受け止める事など出来ないでいる。
今にもなきそうに直を …
そんな呼子のそばに移動し小さな声で
「 大丈夫 …?
」
と、 声をかけ背中に手をあてがえた。
呼子は我慢しきれず涙が一筋
…
直は指で涙をふき取り、 ポケットから取り出した
ハンカチを呼子の手に握らせた。
呼子は頬をつたう涙がどういう涙なのかわからない。
胸が苦しく、身体の奥底から涙としておしだされてくる。
身体が小刻みに震えているのも感じたが、
一生懸命に耐えている自分にも気がついた。
何が、 ふりかかろうとしているのだろ~?
何が
… なにが …? 私の知りえない …?
血の気が引いていく
…
呼子の横に座る直と反対側にすわる光子も呼子をのぞきこみ
「
呼子ちゃん! 大丈夫ではおへんやろけど、大丈夫?
気をしっかりしなさいよ。」
強い口調で声をかけた。
そして、 母の方に向きをかえ、 怖い顔でにらみつけた。
直穂子はその視線を感じ弱弱しく語り出した。
「
私は、すなおからひきさかれ、
ますます産後の回復も悪い上、 光子も感の強いお子で
思うように育児ができなくて、暗い毎日でした。
すなおの事があきらめられなくて1日何回も涙にくれてました。
離乳食がはじまったらすなおは
…?
夜鳴きする光子をあやしながら、すなおもこうして泣いていないか?
光子が歩き出すと、 すなおもあるいているかしら?
日増しに落ち込んでいく日々どした。
おじい様やおばあ様は勿論、特におとう様には随分迷惑をかけました。
口にしてはいけない言葉も口にするようになりお父様は
辛い日々だったと思います。
そんな折、妊娠の兆候があり、 つわりと戦いながら、
新しい命が私の中で
… と思うとこんないつまでも、
いじいじしていてもと、 少しずつ元気を取りもどしてきたのです。
「
も~~ はがいいな~ そんな事どうでもよろしい!
呼子ちゃんの事を … 」
もともと、 てきぱきとした性格の光子はいらいらが頂点に …
「
なんでも、 筋道があります。」
と、 もともとゆったりとした直穂子は年を重ね、
ますますのんびりとした、 穏やかな性格に輪をかけた。
「
はいはい。 出来るだけちゃっちゃと(はやく) お話をしておくれやす。」
直穂子は、 こくんとうなずき、話を続けた。