【 I'm loving you. 追憶 】 11話やはり彼女からの電話だった。かけるのを迷ったが心配していると思い帰宅したというだけの連絡だったと私に報告した先輩は嬉しそうだ。携帯を出しいじっている。「 あなたの携帯の番号は先ほどの電話で分かりましたので、 一応僕の携帯の番号を …では … 」それだけを話切ったあとも携帯を眺め笑みをこぼし「 はあ~ やっと彼女の携帯番号を知ることができた。」と 少年のように喜んでいる先輩はかわいかった。私は 「 番号知らなかったの~ 」といいながら ワインの栓をあけかけたが手が止まった。「 先輩 このワイン … あけていいの? 」「 こんな時に飲まないでどうする~ 」少し戸惑ったが栓を抜いた。コルクの匂いを嗅ぎながら ” これが シャトー・ぺトリュス の香か ”と 思いながら グラスに注いだ。先輩の自慢のワインのコレクションの中の1本だ。本来ならこの高級ワインはデカンタージュをしてから飲みたいところだが先輩はそれどころではないようだ。「 そうなんだ! たかが携帯の番号 されど … だがなかなか聞くことができなかったんだ。本当によく彼女をつれてきてくれたよ。」またうれしそうに携帯を眺めている。少し表情が変わり「 ということは、お前の彼女とフラワーショップの彼女に僕たち同じ時期に二人にあっていたということだな~…… まさかな~ 」「 ……… 」「 ということはだな~ それぞれの知らない彼女をそれぞれが知っているということかあ~?僕がお前の彼女の元気だった彼女の事を …そして、 お前はお店に花を持ち込み飾り付けていく彼女じゃない彼女を知っているということだ。」「 そういうことになるかな~ 」「 なあ~ お前から話さない限り触れないでおこうと思っていたが聞かないとわからないから聞くが、 やはり今の心境は相当複雑かあ~その辺りがよくわからないんだよなあ~ 」「 そうだな~ 相当複雑かな~というか複雑なのかどうかどうかが分からないんだ。」 「 なんだ? 言っていることが見えないなあ~ 」「 そうだろうな~ 僕自身が分からないんだから … 」と 話したあと午前中先輩の差し入れをしてくれた後に祖父母にあったことの一部始終を話した。祖父母が帰る前に話した『 このように孫の事を忍んでまた大切な貴重なお時間をなんて申していいやらありがたい限りです。しかし、われわれは過ぎた時間(とき)を思い なつかしがり過ごす日々。 あなた様はまだまだこれからのお方。誰も知りえない 輝かしい時間(とき)が刻まれていくでしょ~今回の夏休みをすべて孫にいただいた時間を最後にと願っています。是非そうしていただきたい。本当にありがと~ 』と 言われ そうだな~ 今すぐでなくても考えてみよ~ と …考えだした矢先だったんだ!」「 そうかあ~ 今回 夏休みと言ってお前が現れた時 少し安心してたんだ。もっとやつれて大変なことになっているのではと勝手に想像していた。確かに少し痩せたかな~ と思いもしたが引き締まったいい顔立ちになっていた。今日 彼女と現れた時、それ以上にすがすがしいいい顔立ちだった。今の話で多分祖父という方のせいだな~ 何かがふんぎれたのかもなあ~今はしょぼくれているぞ~ なあ~ こう考えたらどうだ!今日 彼女とレストランにきた時のお前で一区切りということで前に進め …フラワーショップの彼女が話したことは別物で考えろ。時間が過ぎ去った中の出来事と割り切れないか~割り切れ!彼女はもういない。今までが大変だったと思う多分大変だったんだろ~そこにもう戻るな。」「 先輩にはいつかは彼女のこと話すことになると思っていた。多分 この夏休み中 …先輩は知っていたようだけど どうしてどこまで知っているの~? 」先輩は少し考えこんでから「 あれは話の内容から考えると彼女が他界して2-3ヶ月ぐらいは過ぎたころかな~お前の同期のいつもの連中3人が店に来たんだ。いつも連中がこの店に来る時は個々で家族や知りあいで来ることがあっても同期が複数でこの店にお前抜きということはなかった。店に入ってきた時から様子がおかしかった。従業員が対応していたが、奥のカウンターにいた僕が挨拶に出ていき担当したんだ。いつものように食事かと聞いた。すると3人が顔を見合わせ、お腹はすいていると思うが食欲が …飲ませてくれるかな~と 言われてつまみを少しボリュームのあるものでみつくろった。とにかく 3人が3人共様子がおかしかったな~お前がらみで何かあったのかと感じ 上に案内しようかと思ったがお前抜きで上にあげるのもと思いなおし店の奥の応接室に案内したんだ。お前も知っているように10人ぐらいはゆったりくつろげるし、庭に面しているから少しはゆっくりできるのではと思い案内した。従業員がそれぞれの希望の飲み物と軽食風のおつまみを並べられたあと僕が顔を出し、ごゆっくり … 何かありましたら添えつけの電話でご連絡ください。と 部屋を出ようとしたら もしよかったら一緒にと声をかけられた。雰囲気的には気が進まなかったが何かありそうだったので同席したんだ。最初会話されていることがお前絡みということはわかったがまったく話が見えなかった。かと言っていちいち聞き直すというわけにもいかず気持ち的には 少しいらいらしながら話を自分なりに組みたてながらしばらく聞いていた。声をかけに行ったが声をかけられなかった。” この集りにお前を誘いに行ったが 声がかけられなかったということか? ”今はそっとしておいた方が …時間が必要だとかそんな感じで つぎつぎと…” ??? 時間 … ”『 驚いたよな~ そんな彼女がいたなんて …? 』と話された時には” えっ! お前に彼女~ おいおい聞いてないぞ~ ”と 思いながら ほら 同期の飲み会を約束しても間際にお前と血液内科といっていたかな~キャンセルが多いといっていた先生が主に他の先生方から質問されているような感じで答えていた。あのグループって長く見てきたがいない人の話題ってしないよな~それがあの日は お前の話というかお前と彼女の話だった。勘違いするなよ。単なる好奇心ではなくお前をなんとかしてやりたい。しかしどうすればいいのかという先生方の思いやりというか心配をしていた。」先輩がワインをひと口飲み「 うわ~ これはデカンタージュがいるなあ~ 」私はおかしかった。この高級ワインを手にした時からわかっていることなのに相当 フラワーショップの彼女のことを思い気が漫ろに…席を立ち容器を持ってきてワインを瓶から移した。ああ~ またいつもの 「 いいか。 高級ワインは長期熟成によってワイン内に澱がたまる。ワインと澱を分ける為にデカンタージュというのをするのだ。ただ、 澱を取るだけがデカンタージュの目的じゃないんだ。もう一つデカンタージュをするととても素晴らしい事があるんだ。ワインをほかの容器に移し替える事をデカンタージュと言うのはわかるな。このときにワインは空気に触れる。この空気に触れるとワインは酸化する。ほら! リンゴの皮をむいて少し時間をおくとリンゴが茶色くなってくるだろ~あれが酸化している状態。ワインはこの酸化する事で(空気に触れること)眠っていた香りや少し固すぎたタンニンがやわらかくなる。ワインによっては次の日の方が香り高く美味しくなることもある。」と コレクションの中から1本だすたびに覚えてしまうぐら能書きを聞かされている。確か今お店で購入すると10万円はすると言っていたワインだ。先輩は私と先輩のワイングラスの分も容器に移した。残念だが数時間はお預けだ。しかし今日の先輩は触れなかった。そして話の続きをし始めた。あれ~ 今日はいつものワイン講義は? と思いながら耳を傾けた。