2話 【 四月の雪 を ドンヒョク と … 】
「 どうして! たかがバーガーよ?
」
店の外でジニョンを待たせドンヒョクが
「 あっ! お客様 …
」
店員の掛け声も無視し店内に入っていった。
しばらくして 「 さあ~
」
「 えっ! いいの? 今 だめっていわれたのに? 」
ドンヒョクに手をひかれ店内に
…
M&Aとしては席のひとつやふたつ朝飯前のお仕事。
それにしてもドンヒョクどんな手を?
ジニョンが いつもいくバーガーショップとは全くレベルが違う。
メューは バーガーのみで
すべての材料は吟味され 調理にもこだわりを持ち
ワインも特殊なものを除けば 揃えられており
選ばれし客層は満足しているようだ。
ジニョンが初めてドンヒョクにつれてこられた時
最初に驚いたのはフォークとナイフがテーブルに並べられ ていたとである。
しかし ジニョンには不要のものであった。
まわりも気にせず バーガーは いつもの調子で
…
”
ガブリ ”
二人の前には 注文したバーガーは並べられ
飲み物は フレッシュジース。
また! このフレッシュジュースも と語りだすときりがない!
ドンヒョクが ジニョンをじっとみつめている。
「
どうしたの? 」
「 どうして食べるか? まさかこのバーガーは両手で持ち
” ガブリ
” は 無理でしょう。
それともジニョンさんには愚問かな~?
どれくらい大きな口を開けて食べるのかなあ~
見せてもらっているんだ。
」
「 もぉ~
ハンバーガーよ。 ハンバーガーがフォークとナイフ?
ハンバーガーよ。 ハンバーガーステーキ と パン サラダが
じゃないのよ。
ハンバーガーよ。
」
と、 言いながら ジニョンが 両手でバーガを持ち
バーガーの一点を
ジーッ と みつめたかと思うと
そこをめがけて ” ガブリ ”
と ひとかぶり!
勿論! 口の周りにソースがつきそれも手馴れたもの
指でふき かわいくぺろっとなめ
その様子を ドンヒョクは目を細め 口いっぱいに頬張るジニョンに
「
ブラボー 」 と 軽く拍手を …
「 ねえ~ ドンヒョクさんは食べないの? 」
「 いただきますよ。
」
ドンヒョクは ホークとナイフで小分けに切りながら スマートに口に運ぶ。
ジニョンはその様子をみながら 休まず ”
ガブリ ” と 口に運ぶ。
「 ねぇ~ ドンヒョクさん もうひとつ頼んで半分ずつしない。 」
「
いいよ。 」
ドンヒョクは意味ありげな笑みを浮かべ 追加注文をした。
「
ねえ~ ジニョン! 半分ずつだよねえ。 」
「 そうよ半分ずつよ。 」
「
じゃ! この半分先に そして 注文したバーガーを
僕がひとつ全部食べるから … 」
ドンヒョクはちょっと意地悪を
… 案の定ジニョンは
「 ダメよ。 それはドンヒョクが食べなくちゃ~
あとで注文した分を半分こよ~
」
いつものことながら追加注文したバーガーは
ドンヒョクにまわってきた事がない。
お皿が運ばれてくると それはそれは素晴らしい笑顔で
両手でバーガーを持ち上げ 大きな口を開け 口一杯に頬ばる。
その時点で 半分ずつなどと言う言葉は
すでにジニョンの中では通り過ぎた過去の言葉である。
最後の一口を口に入れ チラッと腕時計を
…
「 ドンヒョク! 大変! 時間よ~
」
ドンヒョクは苦笑しながら
” 追加しなければ十分まにあっていただろう
”
と 思いつつ席を立つ。
「 ドンヒョクさん 時間大丈夫よね。 どこで狂ったのかしら?
」
ドンヒョクはその一言に ” えっ ” と 言う表情を?
そして苦笑へと
…
「 余裕をもってというわけにはいかないだろうが まにはあうよ。 」
「
そう! よかった。 でも急いでね。 」
「 はいはい! お姫様。
」
ドンヒョクは腕時計に目をやり 開映15分前である事を確かめ
エレベーターの前に立つ。
冷静なドンヒョクとは反対に ジニョンはドンヒョクの腕を握り
子供がお漏らししそうな時を思わせる
落ち着きのない足踏みの行動にドンヒョクは
「
大丈夫! 落ち着いて … 」
「 遅いわね。 このエレベーター! 階段でいく … 」
「
僕はいいけど8階だよ。 ジニョンは大丈夫。 」
にこやかにジニョンを見るドンヒョク!
「 8階
…
」 落胆するジニョン!
エレベーターを待つ二人のまわりは ドンヒョクの他
数人の男性でほとんどが女性ばかりだ。
目線は一点に
…
エレベーターが 1階に止まり降りてくる人が
ドンヒョクに気がつくと 皆 同じ方向に顔が向けられ
からになったエレベーターが何だかおかしい現象に
…
どうも降りるはずの顔ぶれが Uターン?
ドンヒョクがジニョンに 「 どうする~ つぎに …
」
と いいかけると ジニョンはそれでなくても気がせいていたので
「 のりましょ~
」
そのあと数名が乗り込むと ” ピー
” と 鳴った。
ドンヒョクとジニョンはお互いの顔を見合わせ
さすがホテリアー ジニョン
ドンヒョクの横腹を指でつつき合図し降りた。
すると数十人がぞろぞろと
…
ジニョンが 「 じゃ! 乗らせていただこう 」 二人が乗るとまた
…
ドンヒョクは口を一文字に 軽く目を閉じ 溜息をひとつ!
そして ジニョンの耳元で
…
「 もう 時間がない … 」
「 えっ!」
「とにかく 階段で
…
」 と 耳打ちする。
ジニョンも時間がないという一言で やたら元気になり
そこは何でも前向きなジニョン!
3階まで 一気に
… 後ろを振り返ると数人が階段組が!
” チン!
” と 言う音が?
ドンヒョクがいち早くエレベーターの入り口の昇降ボタンを押し
ジニョンを待ちエレベーターに乗り込んだ。
二人は 顔を見合わせ何だか満足感に慕っているようにも思えた。
勿論 乗り込んだエレベーターの中ではざわざわと 目線は一点に
…
おっかけ隊はまにあわなかった。
何とか8階に着き 係員が
「
7時30分の入場券をお持ちの方はお急ぎください。
」
と 呼びかけている。
ドンヒョクがチケットを係員に渡した。
係員の女性が半券を手渡し
「
お席にご案内させていただきます。 こちらでございます 」
と 係員の女性が案内を
…
チケットを手渡す時にその場で指示されるが、
係員はドンヒョクからチケットを手渡された時は手元だけをみており、
半券を手渡す時に、 ドンヒョクの顔を
…
席までの案内はしていないはずだが
係員はドンヒョクを誘導しようとしている。
ドンヒョクが振り返ると後ろにいるはずのジニョンがいない。
少し目線を遠くに写し探していると 小さなかごを手に走ってくるジニョン。
ドンヒョクは不思議に思ったが とにかく時間がないので
席についてからという事で
先ほどの係員の女性のあとをついていった。
席に着いたドンヒョクが その女性がいつまでも席の横に
立っているのに気がつき
「
ああ~ ありがとう。 まだ何か? 」
「 いい … いいえ~
」 係員の女性は離れていった。
通路側にドンヒョクが そしてジニョンは横の女性に軽く会釈し席に着く。
パンフレットを見ていた女性は 軽く会釈を返し
頭を上げるときに少し横に顔を向け
視線はジニョンの横のドンヒョクに目をやった。
「
ねえねえ~ ドンヒョクさんさすがねえ。 プレミヤ席 見てみて!
飲み物の置く場所もあるわよ。 イスもゆったりしているし …
」
ドンヒョクが小さな声で
「 ジニョン離れる時は声をかけていかないと …
」
「
ああ~ン! ごめんなさい。
でも 映画をみる時は ポップコーンでしょう。
そして飲み物と
… 温かいコーヒーが冷めるとおいしくなくなるから
最初から冷たいのにしておいたわよ。
」
話している途中で暗くなり ジニョンはドンヒョクの横腹をつつき
「 良かったわね。 まにあって
…
」
そういいながらも 大きな紙コップに入れられたポップコーンを口に。
ドンヒョクは ジニョンにまだ一言二言 言いたい事があったが
今のジニョンは聞く耳を持ち合わせていないと
判断したドンヒョクは吐息ひとつ!
ドンヒョクの視線に気がつき照れ笑いしながら
ドンヒョクの口にポップコーンを
…
ドンヒョクの肩をポンポンとたたき小さな声で
「 自分でとって食べてね。
」 と
ドンヒョク側の手にポップコーンの入った紙コップをもちかえた。
甘いものは別腹というのは聞くがジニョンはどうも関係ないようだ!
「
僕はいいから … 」
「 そう! じゃ~ 時々口に入れてあげるわ。
」
暗くなったがすぐには始まらなかった。
他の映画の予告編があったり! 企業のコマーシャルなどが流され
それからしばらくして 待ちに待った映像が放映された。
場内は静まり返った。
ジニョンの 忙しく口に運び込まれたポップコーンと
往復していた手もピタッと止まりジニョンは見入った。
ドンヒョクは そんなジニョンがかわいく 長い足を組み
やや7(しち)・
3(さん)の構えですわり、ジニョンを眺めていた。
だが 上映されている内容が進むにつれ
ドンヒョクの様子が明らかに変化が現われだした。
ドンヒョクはこの映画の題名すら 勿論内容など知るはずはない。
さほど時間もかからずして ドンヒョクは内容の大筋は感じ取った。
ドンヒョクはとにかく 1分・1秒でも早くこの場所から
ジニョンを連れ出そうと
…
ジニョンの耳元に顔を近づけ 「 ジニョン!
」 と 声をかけた。
ジニョンは少し反応したが無視した。
少したちまた 「 ジニョン!
」 度々繰り返す。
ジニョンは ハンターのあの鋭い目つきにも負けない鋭い
目つきでドンヒョクを睨みつけ 肘でドンヒョクの
横腹を2~3回つつく。
その時だけは 少し間があくが尚も
「
ジニョン! 」 と声をかけ続けるドンヒョク。
ドンヒョクは それぞれの夫と妻が親密に
…
心中定かではなくなっている。
ましてや! 今 ときおそしと! 女性のスカーに手がかかり
ジニョンの方も ドンヒョクの繰り返される行動に 怒りの頂点に
…
ドンヒョクはドンヒョクで
…
ドンヒョクの尺度では この映画の流れが
ジニョンには不適切と判断したらしい。
映像の創り話と 割り切ればいいものの
ドンヒョクに映像の世界であってもとんでもないことなのだ!
こうなると ドンヒョクは あらゆる場面が許せない。
大きな溜息もジニョンの耳には不快なものに変わっていた。
「
ジニョン! 」
と 声をかけジニョンがこちらを向き返事があった時点で
「 帰ろう …
」
と 提案と言うより帰ろうと断言しようとドンヒョクは待ち構えている。
だが ジニョンに思うように意思が通じず
すぐ横にいるのに 温もりも すぐそばで感じているのに
ジニョンは 一瞬にして君が君ではなくなりつつある。
あるのは誰も寄せ付けないジニョンの世界。
僕が この
シン ・ ドンヒョク が ここにいるのに
…
そんなことを考え ふと画面に目をやると何ということだ!
それぞれの夫と妻が
…
ジニョンがこの私を無視し 瞬きひとつしないで
画面と一体となりこの私の存在を削除し
…
そう思うと ドンヒョクはむくっと立ち上がり
ジニョンの腕をつかみまるで 拉致?
いや それ以上にひどいかもしれない。
ジニョンの 「
やめて! 」 と 言う叫びも振り切り
一瞬にしてフローアーへ …
尚も ジニョンの腕を強くにぎったまま
…
その腕をジニョンが すごい力で振り払い
何も言わず怖い怖い怖い目で睨みつけ!
涙を流しながら 階段をかけ降りていった。
ドンヒョクは その場から一歩も動く事が
… 呆然と! 愕然と …
肩を落とし大きな溜息を … ああ~ 何てことを …
ジニョン!
…… 僕が悪かった?
許して欲しい …
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ドンヒョク 映像の世界と現実を同居させてどうするの?
ドンヒョク ジニョンを このままにしていていいの?
ドンヒョク さあ早く … おいかけて!
........... 影の声 .............