【 I'm loving you. 5話 】 そのまま車に乗り込み 自宅のマンションへ …地下にある駐車場に駐車するまで車をとめた記憶がない。この時間帯 いくら車が少ない ひとけがない時間帯とはいえ、 かなりのスピード 信号無視でよく無事に着いたものだ。どんな時でも沈着冷静と周りからの評価を耳にする。自分でも穏やかな性格だと今の今までは思っていた。今まであまり関係のない文字の証明をしているかのようにこれが放心状態という状態なのか?しばらく車中でハンドルを握る手に頭を載せ涙した。頭の中が真っ白にということも耳にするが今まさに …部屋までやっとたどりつき、 部屋に入るなり白衣を床に投げ捨て、 ネクタイもシャツも床にたたきつけ 浴室に …全開で勢いよく流し出るシャワーを顔に … 壁に両手の手のひらを …頭をうなだれ後頭部首筋に …水を含み脱ぎにくくなったズボンと下着靴下を脱ぎ捨て、浴室を出た。腰にバスタオルを巻きタオルで濡れた髪の毛をふきながら、 受話器を手にした。外科の医局にだれかいるのではと直通電話を入れた。誰も出なかった。外科病棟の詰所にかけ直すと昨夜の当直医がいた。少し横になりたかった。午前中には出勤するが少し遅れると伝えるとえっ! と聞きなおしされた。そのぐらい長く休暇をとったり 遅出というか遅刻などここ数年なかった。お酒をのみたい心境だった。今日手術をした患者の様態が変われば病院に行かなければならなかった。コーヒーを立て 匂いだけで数日部屋にも帰れず寝ていなかった事もありソファーで眠ってしまった。眩しい日差しで目が覚めた時には10時を少し回っていた。何かあれば携帯に連絡が入るはず。術後患者も緊急手術もなく落ちついているのだろう。しかし、携帯の呼び出しすら気がつかないで爆睡?まさかと思いながら携帯をチェックした。着歴もメールもなかった。大きな吐息をひとつつき、 浴室へ …少し熱めのシャワーを …手早く身支度をして脱ぎ捨てた白衣だけを手に取り駐車場へ …エンジンをかけたがすぐには発進しないで何を考えているわけでもなくぼーっとしていた。ふと 以前 それも相当前の以前 ふらっと実家に立ち寄った際丁度 母が旅行から帰えり荷物の整理をしていた時だった。私へのお土産がないからと自分に買ったきれいな色紙をいらないというのに強引に渡された。どこかにあったはずだ。母は千代紙と言っていた。鍵を抜き部屋に戻った。机の一番下の引き出しに入っていた。それから、 音楽はジャングを問わずよく聞く。気に入った曲だけを10数曲 自分用にまとめたCDを手に車に乗り込んだ。しばらく車を走らせたが いつもの道路を走っているはずだが見慣れたはずの景色が違った。路肩に車を止めた。携帯を取り出しダイヤルボタンを …私の 「 もしもし … 」 の 一言で相当動揺した母の声が返ってきた。「 どうしたの? 何かあったの? こんな時間に … 」そのあとまだ言葉が続いた。前回かけたのは思い出せないぐらい前だ。それも留守番機能に残されたメッセージの返事だったと思う。時折元気に暮らしているかの確認電話はかかっては来るがこちらからかけるということがなかったので驚くのも無理がない。「 あのさ~ あ目玉だけど … 」「 えっ! あ目玉? 」「 うん。 そう … あめだま … あのあ目玉どこで買ってたの? 」「 突然何かと思ったら、少しなら家にあるわよ。 あのあ目玉 予約してからでないとお店に行っても買えないと思うわよ。」実家に取りに行くには往復2時間はかかる。お教えてもらった店舗は少し遠回りする程度の場所にあった。とにかくのぞくだけのぞいてみようと思った。この行動にも自分自身を驚かした。確か壺のような形の小さなガラス容器でかわい入れ物に …邪魔にならない場所にいつも数個並べられていた。母が何かの折に人に喜ばれるからとあげていたようだ。どうしてこんな時に思い出したのかは今でもよくわからない。飴玉にまつわる古い思い出はあった。小学校に上がるまでは のぞにつめてはと母がいつも小さくくだきお皿にのせられたものを食べていた。しかし、 ある日 もう小学校に行くのだからとその日を境にまん丸のそのまま 口に …その時は大きく感じ口の中ではパニック状態でよだれをだらだら流したのを今も鮮明に思い出される。それまであまい破片が大変な戦いだった。それからしばらくは逆に私の方から小さなお皿に飴をのせ母のもとへわってほしいと持っていたように思う。雨の日に縁側でガラス越しに外を眺めていると 母が勘違いしていたように思う。外で遊べないから元気がなくて外を眺めていると …そうではなかった。私は雨が降るとその場所から外の庭を眺めるのが好きだった。特に何かがあるわけでもないが木々にはねかえる雨。地面をたたきつける雨。見ていると飽きなかった。そんな時きまってお盆に載せてガラス瓶入りの飴をお盆にのせ「 あめ玉食べようか? どのいろがいい?」と、 声をかける。口に頬張り口の中を行ったり来たりさせながら最後までかまないでおかしな話だか本当にちいさくなったあめ玉を指の先につけお互いに見せあい微笑む。そんな光景がいつまでか続いた。いつも我が家にあったように記憶する。電話の様子ではいまだに置いてあるようだ。店舗の前に車を止めた。店に入ると品のいい着物を着た夫人とご主人だろうか?そして若い女性がいた。店に入り 商品をを眺めていたら いらっしゃいませのあとにどのようなものをと声がかかり説明した。現在もそのようなものは販売をしているのかと質問した少し容器はかわったが扱っていると答えた。それをひとついただきたいと申し出たがやはり予約商品と説明があった。この時点で予約してもかなり先だった。店側の言い分としては手作りで一度にたくさん作れないといういう理由だった。店を出かけると失礼ですがの言葉をつけ添えられ名前を聞かれた。母がいつもお世話になっているようでと言葉をつけ加え名を告げると お母さまからお電話をいただきました。 今、 母から電話がありお切りしたばかりでまさかこんなに早くお越しになられるとは思わなかったと詫びられた。お母様がほとんど電話がない子供がそちらのお店のことで電話を入れてきたからひょっとして訪ねるかもあるかもしれないというお電話でした。と、 丁重に説明された。もう一度希望を聞かれ記憶をたどり小さな容器に入ったあ目玉をひと瓶といったらすぐにご用意させていただきますと奥に姿を消した。これでよろしいでしょうか? と 確かに記憶とは少し違ったがうなずくと 体裁のいい手提げの袋に納められ、 お徳用の袋をひと袋いれ手渡たされた。料金はとってもらえなかった。あとで知ったのだか、私からの電話を切った母がその手で店に電話を入れ、先日購入したものが家にあるから、もしお店に顔を出したら在庫があれば渡してほしいと依頼したらしい。多くでなければ店側で何とかしてくれるということだったっらしい。医局につくと私のことで話が大きくなっていた。よほどの事が起きたのだと … 病気? いや病気でも仕事に来る人。両親まで重病人に … それでも仕事にくるよね~などと …そこへひょこっとあらわれたから蜂の巣をつつくかのようにどうしたのだと皆から声がかかった。袋からいただいたお徳用サイズの袋を机におきそのまま奥のロッカールームへ …小さな手提げ袋の中に CD 折り紙 もいれロッカーにしまい医局秘書に新しい白衣を出してもらい手を通しながら机の上の連絡メモに目を通した。後ろのソファーでひとりが 「 うわ~ 先生このあ目玉どうされたのですか?これって予約して半年以上待ちでしょう~ 」それまで振りむかなかった者も口に入れ、 お徳用の袋の中のあ目玉はひとつづつ包装されていた。ひとつふたつとポケットに入れるものもあり あっという間に袋は空になったようだ。まず外科病棟に顔を出し回診に行おうと思い席を立ちその後彼女にの病室に …ロッカーをあけ先ほどのちいさな手提げ袋を手にしかけたが きれいな和紙仕立ての袋を提げて歩くのもと思い 秘書にそれが入りそうな茶封筒をもらいロッカーに戻りその中に収め持ち運んだ。回診をすませ彼女の部屋に …ノックをしたが彼女の返事がなく少しあけ のぞくといなかった。もしやと思いあの場所へ …ドアを閉めかけると 後ろに人の気配が …彼女がいつもの紙袋をさげ立っていた。紙袋の片側の持ち手を彼女の手から外し 袋の中に茶封筒から取り出した小袋をその中に入れその場をあとにした。