ストリー
雪が降っていた。
ソウルのコンサート制作会社の照明チーフ・ディレクターとして働く男インス(ペ・ヨンジュン)が、妻スジン(イム・サンヒョ)の交通事故の知らせを受け取ったのは、会場の照明の仕込みの真っ最中のことだった。彼はこの時まで、何人かに一人は必ず見まわれる不幸を背負った、妻を愛する平凡なひとりの男だった。雪原を貫く高速道路、そしてその先にある東海岸の小さな町、サムチョクに着く前までは。サムチョクの救急病院の手術室の前、清潔さをことさらに強調するかのように白く塗られた廊下で、無造作に置かれたベンチに所在無く体を預けている女ソヨン(ソン・イェジン)は、既に深い悲しみの底にいた。インスは、 ソヨン(ソン・イェジン)に出会う。ソヨンは自立することなく、親の薦めで夫ギョンホ(リュ・スンス)と結ばれた彼女にとって、夫が交通事故で生死の淵にあることは絶望を意味した。しかし、彼女は知らなかった。絶望より深い悲しみのあることを。そして、ふたりに残酷な現実がつきつけられる。それぞれの妻と夫は同じ車に乗っていたのだ。口に出してしまうことは、それを認めることになってしまう。しかしインスもソヨンも同じことを感じていた。重傷を負ったスジンとギョンホはなかなか意識を回復せず、インスとスヨンは事故処理の過程で、スジンとギョンホが特別な関係であることを知る。デジカメ、携帯電話-互いの信じていた伴侶の裏切りを証明する品々が、 知りたくもない現実を突きつけてくる。インスとソヨンにとってこの事実は、残酷な事故よりさらに受け入れるのが難しい。「 いっそ、死んでくれればよかったのに 」意識の戻らぬ妻に向かい、インスの唇からそんな言葉が思わず漏れ出す。ふたりは真実を確かめずにはいられない。インスとソヨンは互いの伴侶のことを語り合う。そして、 それぞれが結婚する前、大学時代からの知り合いであることを知る。何時から欺かれていたのか?悲しみは憎しみとなり、そして無力感だけが残った。他の誰にも語ることのできない真実を、はからずも共有することになったインスとソヨン。配偶者を恨みながらも、無事に目覚めることを希望する二人は、少しずつお互いの存在を意識し始める。病院前のホテルに長期宿泊した二人は、ずっと一緒に時間を過ごし、そしてお互いを愛するようになる。配偶者の背信に混乱していた二人は、同じ状況に陥り、同じ苦痛を味わうようになったのだ。 ふたりは互いの支えとなっていることに気付く。しかし、その想いが募ればそれは自分たちがかつて愛した者たちと同じ過ちを犯すことを意味する。しかしそんな逡巡も愛に渇いたふたりにはどうでも良いことだったのかもしれない。傷の深さの分だけ、それを埋めるかのようにインスはソヨンの、そしてソヨンはインスの愛を求める。肉体が傷ついた者たちよりも、心を傷つけられたふたりこそが癒しを必要としていた。その時、インスの妻が意識を取り戻す。スジンが意識を回復する。インスは涙を流す妻を無視できない。そんなインスを見守るソヨンは、またそれぞれの席に戻らなければならない時が来たことを悟る。そして、最後になるかもしれない二人だけの外出を計画する。しかし、出口の見えない中、転機は唐突に訪れた。ソヨンの夫はさらに状態を悪化させてゆく …