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OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
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ラビリンス
創作
No 14 HIT数 5838
日付 2011/06/16 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル ラビリンス-過去への旅-14.最後の晩餐
本文









 

 

 


「教えてください、Mr.レイモンド!」

「何でもない!」 レイモンドはソファーに、乱暴に音を立てて座った。

「お願いです。先ほどからずっと・・不思議に思っていたんです。
 あなたがイタリアへ渡っていらっしゃるなんて・・
 ボスから何も聞かされておりませんでした。
 しかもジュリアーノ会長と取引なさるなんて・・・
 ボスが知らないわけありませんもの」

「やつが知らないこともあるさ」 レイモンドは顔を背けて言った。

「いいえ。」

ミンアが余りに自信満々に言うので、レイモンドは面白くなさそうに
肩を上げて見せた。

「まさか・・・あなた自身が動かれるということは・・・・奥様に?
 ジニョンssiに何かあったんですか?」

レイモンドはソファーから立ち上がり、ミンアの声を背中に聞きながら、
窓の外に視線を向けた。

「教えてください。ジニョンssiにいったい何が・・・」
ミンアは白を切ろうとするレイモンドにしつこく詰め寄った。

彼女はジョアンを信用してはいたが、少なからず不安も抱いていた。
ジョアンは自分自身が見つけ、採用を推した自分の部下でもある。
常に彼の仕事の責任も自分が負う覚悟は持っていた。

今回彼に任されたことは、彼の仕事からはかけ離れたものだったが、
重要な任務であることに違いは無い。
とにかくボスは・・・
≪自分達を信用してボスは大事なひとをお任せになった。≫
そんなボスの信頼を裏切りたくない、ミンアは胸の内で祈っていた。

「心配するな。何も起きてはいない。」

 

 


「ミンアさんから連絡が無いわね」 ジニョンが言った。

「ええ・・可笑しいんです。何度電話を入れても、留守電だけで・・
 今までこんなこと一度だって・・」 ジョアンも表情を曇らせた。

ルカが部屋のテレビを点けて、ふたりの会話の邪魔をしないよう
視線を外していた。

『彼からも無いの・・・』 ジニョンはハングルで呟いた。

『大丈夫です、ボスは』 ジョアンは微かに笑ってジニョンを慰めた。

 

『そうね』 ジニョンも笑顔を返した。

そんなふたりに背を向けていたルカの表情に陰りが指した。

 

 

 

「心配するな。何も起きてはいない。」 
レイモンドはミンアの肩に手を置き、優しく言った。

「・・・・なら・・どうして?」

「起きる前に手を打ちたかっただけだ」

「どういうことです?」

「ジニョンが裏で何かやってる」

「えっ?どういうことです?ジニョンssiのそばにはジョアンがついて・・」
そう言い掛けてミンアは、ジョアンもまたそうなのだと察した。

「ひとりじゃないことはわかっていたが、あいつはフランクのためなら
 何をするかわからない。怖いもの知らずだから。・・・君と一緒だ。」
レイモンドはそう言って小さく笑った。

「それで・・あなたが・・・」

「フランクに密告すれば、彼の仕事の妨げになると思ったんでね
 あいつはジニョンが絡むと常軌を逸するところがある」
そう言いながら彼は愉快そうに両肩を上げて笑ってみせた。

「それでどうなさるおつもりですか?」

「ジニョンを探す。彼女のそばにいないと」
レイモンドはそう言いながら、また窓の外に広がるミラノの街を眺めた。

≪この方はまだジニョンssiを・・・≫
ミンアは胸の内でそう思いながら、レイモンドの背中を見つめた。

「ところで・・・」 レイモンドが振り返り言った。

「はい」

「フランクとの対面まで一時間はあるな。・・・チェスでもどうだ?」 
レイモンドは腕時計を見ながら言った。

「・・・・はい。でも・・・」 

「でも?」

「私はかなり腕がいいですが・・・」

「だから?」

「泣きは無ですよ」

「そのままお返ししよう。」 
レイモンドとミンアは向かい合って胸を張り、互いに口元だけで笑った。

実はこの三日間、ミンアにとっても緊張の日々だったのだ。
ジュリアーノの身辺を探りながらも、決して油断できる相手ではないことは
充分過ぎるほど理解していた。
今こうしてレイモンドがミンアに、フランクの仕事を優先できるよう、
大義名分を作ってくれたのだ。

ミンアは、暗中に太陽の光を届けられたような気がして、安堵していた。

 

しかし案の定、レイモンドはミンアに陥落した。

チェスの駒で彼女を指し、まるで子供のように“もう一回”とねだる
彼の姿が可笑しくて、ミンアはお腹を抱えて笑っていた。

彼女は思っていた。

≪ボスとジニョンssiの為に、どんなことでもする・・・・
 怖いもの知らずって・・・
 それはあなたのことではないですか?≫
 

 

 


「ジニョンさん、ミラノ見学しませんか?」 食事中にルカが言った。

ジニョンはこの数日で次第に、ルカがいったい何者なのか、
わからなくなっていた。

「見学?」

「ええ、落ち着いてイタリア見学なんてなさってないでしょ?」

そう言ってにっこりと微笑んだ彼女を見ると、とても愛らしくかったが、
時に見せる隠された何かを感じ取るようになっていたことも事実だった。

「そうね、私はともかく・・ジョアンは疲れてると思うわ。
 休息も必要かもね」

「『最後の晩餐』は是非観て頂きたいです」 ルカがそう言った。

「ダ・ヴィンチね」

「ええ、お薦めです」

「そうね、観に行きましょうか、ジョアン?」
ジニョンは席に戻って来たジョアンに向かって言った。

「えっ?」

「最後の晩餐」

「ああ。そうですね、では午後はミラノ見学でも」 ジョアンも同意して言った。

「良かった、実はそう思って昨日予約しておいたんです。
 普通は急には予約なんて取れないんですけど・・
 偶然取れたものですから・・」

「気が利くのね」 ジニョンはルカの頭を撫でた。

 

 

ドンヒョクはソウルにいるレオに電話した。
「調べは付いたか?いつになったら結果が出る?」

「ボス、もう少し待ってくれ。
 今回は特に慎重にやってるんだ。念には念を入れて・・
 失敗は許されないからな。」 レオは苛立ったように答えた。

「わかってる。しかし時間は掛けられない。三日が限界だ。」

「ああ」

「それで・・お前はいつこっちへ?」

「レイモンド次第と思ってたんだがな・・・」

「どうした?レイはとっくに・・」≪韓国に渡っているはず≫

「ジョルジュの話だと彼の訪韓は当面延期らしい。
 それでこっちの作業も少し遅れてるんだ」

「聞いてないな。」 ドンヒョクは怪訝そうに言った。
「俺も聞いてなかったさ。さっきジョルジュに聞かされたところだ」

「・・・・とにかく急げ。」 ドンヒョクはレオを嗾けるように声を荒げた。
「わかってる。焦るな。」 レオは苛立ち紛れに先に電話を切った。

「焦るな?」 フランクは切れてしまった受話器を睨んでいた。
そしてその受話器を投げるように置くと、先に切られてしまった腹いせに、
思わず机に拳を叩きつけた。

 

 

「こっちはどこまで進んでるんだ?」
三回目の泣きを入れたレイモンドが、自分の駒を何処に進めようか
思案して言った。

「七割です。本当でしたらもっと早く進められたんですが・・・
 ご存知のように私もジョアンも動けなくて・・」
ミンアはそう言いながら自分の駒を進め、迷わず置いた。

「あ・・ちょっ・・それは待て。」 レイモンドはミンアの駒を浮かせ持った。
「駄目です。誰にも手は抜かない。師匠の教えですから。
 例え子供のような腕前の相手であっても・・」

「こ・・」 レイモンドは一文字に口を結んで、彼女の駒を元に戻した。
「・・・・・・・それで?」 レイモンドは無愛想に話の続きを要求した。

「えっ?」 

「上手く行っているようか?
 君がそばにいなくて、フランクは困ってるんじゃないか?」

「エマが付いています」

「エマ?・・・・エマって?」

「エマヌエール・ビアジ」

「エマヌエール?・・・あの?」

「ええ。あのエマです」

「どうして彼女が?」

「今や彼女はジュリアーノ陣営の主任弁護士です」

「ジュリアーノ側に付いたのか・・・待てよ・・彼女・・私を知っていたか?」

「たぶん。少なくともお名前だけは。」

「そうか・・失敗・・・だったかな」 レイモンドはそう言いながら、
自分の駒をなかなかチェス版に下ろそうとしなかった。

「大丈夫だと思います。・・・降参ですか?」

「まさか!・・・何故そう思う?」

「昨日会ったんです。その時に感じました・・・
 彼女の心はまだボスにあると・・・」

「5年も経ってるのに?」 
レイモンドはまさか、という顔をした後、やっと駒を下ろした。

ミンアはレイモンドの顔を一度じっくりと見つめた後、小さく溜息を吐いた。
「10年。想う人を忘れられなかった人を・・二人知っています。
 ・・・・チェックメイト。」 ミンアは美しい姿勢でゲームの終焉を示した。

「・・・・・・・。」

「もう泣きは無しです。時間ですから」 そう言ってミンアは時計を指した。

「・・・・・Ms.グレイス・・・師匠に似て性格悪いな。」 
レイモンドはまだチェス版から顔を上げられないまま、そう言った。

「お蔭様で」 

「治した方がいいぞ。」 
レイモンドはやっと椅子の背もたれに背中を付けて伸びをした。

「残念ながらご期待に添えそうにありません」 ミンアは得意そうに笑った。

 

 

≪最後の晩餐≫
レオナルド・ダ・ヴィンチの珠玉の名作といわれる壁画。
その作品がある「サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会」に三人は出掛けた。

「ジニョンssi、この辺からご覧になるといいですよ」
壁画の部屋に入ると、ルカがそう言って、壁画から少し離れた位置を示した。
「絵の奥行きがわかります」

「・・・・・・」 ジニョンがルカの顔をまじまじと見ていた。
「どうかなさいましたか?」

「ふふ・・“ジニョンssi”って・・」 ジニョンがそう言って笑った。
「あ・・いけませんでしたか?ジョアンさんのが移っちゃたみたいです」
「いいのよ・・・・遠近法ね」

「ええ」

「素敵ね・・・」 
ジニョンはまるで体いっぱいに光を浴びるように胸を張りながら、
その偉大な絵を眺めた。

「ねぇ、ジニョンssi・・」

「えっ?」

「・・・この絵が何を語っているか、ご存知ですか?」

「ええ、何かで読んだことがあるわ。確かこの絵は・・
 キリストが自らの死を悟って、裏切り者を糾弾している場面よね」

「ええ、そうです。・・ジニョンssi?どの人物が裏切り者かわかりますか?」

「ユダよね」 そう言ってジニョンは「ユダ」であろう人物を探し始めた。
「うーん・・カンニングしてもいい?」 ジニョンが解説プレートを指差して笑った。

「ふふ・・ヒント・・左側にいます」 ルカが笑った。

「あ・・わかっ・・」 
見つけたジニョンがルカに振り向くと、彼女が神妙な顔をして
こちらを向いていたので、ジニョンは怪訝そうに小首を傾げた。

ルカの眼差しはジニョンやジョアンの方を向いていたが、その心は
彼らを通り越しているように見えた。

「・・・・ユダは・・・イエスに心から心酔し・・愛していたんです・・・
 なのに・・どうして裏切ったりしたんでしょう・・・
 でもこの時はきっと・・後悔していたのかもしれませんね」
遠い眼差しで絵を見つめながら、ルカはしみじみとそう言った。

ジニョンとジョアンがその言葉を聞いて、無言でルカを見つめていた。

するとルカは、たった今彼らの視線に気がついたかのように、
作り笑いを見せた。



    ・・・「・・・・・見つけました?」・・・

 


 


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miyukierika
ルカって何者?パート3 ハングルもわかるの?何かが知らないところで起きてるようでドキドキ感が止まりません(〃m〃*) 2011/06/20 14:44
hiro305
えっ?ルカって何者?② 何か危険が迫っていそうですね? レイを簡単に負かしてしまうミンアも凄いけど、この2人が誰より大切に思うD&J、窮地を脱出するためにどんな手立てをするのかしら?楽しみです^^ 2011/06/19 23:03
ノラン
ルカって何者?ますます興味が湧いてきます☆ミンアの「10年。想う人を忘れられなかった人…」になんだか過去が蘇って胸がキュンとなります。それに、ミンアとレイもそれぞれ想う人の事を考えたのかも… 2011/06/19 20:46
 
 

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