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OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
サークルオーナー: tomtommama | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 335 | 開設:2006.11.13 | ランキング:30(12728)| 訪問者:3853644/4697270
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ラビリンス
創作
No 3 HIT数 5542
日付 2011/03/19 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル ラビリンス-過去への旅-3.時空を超えて
本文

 










                collage by tomtommama



                   story by kurumi








            
3.時空を超えて






「君のホテル」

ドンヒョクの声が風に流されて、ジニョンの耳に微かに届いた。

「ス・・ストップ!」
ジニョンの叫びに反応した瞬間、ドンヒョクはバイクのブレーキに手を掛けた。
バイクが急に止まって、思わずドンヒョクに回した腕に力が入ったジニョンは
しばらくそのままの姿勢で沈黙していた。

そしてジニョンは、混乱した頭の中が整理できないとばかりに首を傾げ、
ドンヒョクの体から腕を離すと、ヘルメットを外しながら言った。
「何て言ったの?今・・」 

「君のホテル・・そう言った」 ドンヒョクは前を向いたままそう答えた。

「それって、どういうこと?」

「厳密に言えば、五年前に僕が手に入れたホテル・・
 半月前、君の名義に変えた」

「・・・・・・あ・・あのホテル?・・全部?」

「ああ、僕達が使っているあの階はプライベートスペースだ。
 だから・・値段は無い。」

≪この部屋っていくらくらいするの?≫
ドンヒョクは、ホテルの部屋でのジニョンの質問に今答えた。

「あの階って・・・あ・・あの階全部・・プ・・プライベート?・・」

「ああ、ワンフロア全部。
 他の部屋は遊戯室やトレーニングルーム、エステルーム・・・
 大浴場も作ってみた。君とふたりで入るために・・
 帰ったら全部見てみるといい。あーそれから・・
 喧嘩した時の為に君だけの部屋も用意しておいた」 

そう言ってドンヒョクは笑い、肩をすくめて続けて言った。
「ここからジェニーのところに逃げるわけにはいかないだろ?」

「・・・け・・・」

「とにかく、セキュリティーや掃除の名目以外で、あの階へは
 誰も入れない。君と僕以外は・・・。
 だから言っておくけど、決してサービスが悪いわけじゃない。」

≪ソウルホテルならお客様を丁寧にお部屋までご案内するわ≫
先刻のジニョンのソウルホテル自慢に対抗して言った。

「・・・・・・・・・」 ジニョンは言葉を失っていた。

「どうしたの?・・君の質問にちゃんと答えたけど」

「だ、だって、あなたついこの間・・・ソウルホテルの為に全財産を・・・」

「だから・・あそこは君の名義。僕のじゃない。そう言ったろ?
 それにソウルホテルの為に処分したのは僕の資産であって
 会社や君の資産は処分してない。」

「まさか・・他にも?」≪あるの?≫

「ん。ソウルの家とNYの家も君の。」 とドンヒョクは満面の笑顔で頷いた。

「あ・・あの・・・・・」
開いた口がふさがらないというのは、きっとこんな感じなんだろうと
ジニョンは心の中で思っていた。

「どうして私?・・それに・・何も聞いてない。」
ジニョンはそう言いながら、バイクから降り、ドンヒョクの横に立った。

「『どうして私?』・・・君が僕の妻だから。
 あー正確にはその時は妻になる予定の人だったから。
 『何も聞いていない?』・・・教会で言った。・・・君は寝ていたけど。」

「チィ・・」

「君と別れた後、僕は我武者羅に仕事した。
 10年を掛けて、アメリカやヨーロッパを中心にマーケットを拡大したし
 必然的に・・望むも望まぬも資産は増えていった 
 僕の所有物件はイタリア全土だけでも50は超えていた。
 ところが数ヶ月程前から、それらが狙われ始めた・・
 気がついた時には幾つかの物件が人手に渡っていた
 その頃僕はたったひとつのことに集中していたんでね」
そう言いながらドンヒョクはジニョンを見て苦笑して見せた。

「無論その為に、この二・三ヶ月で自ら処分したものも多い。
 しかし自分で処分するのと、他人に奪われるのでは意味が違う。
 ただ他のことに注意を払う余裕が僕に無かったのも事実だ。
 だから或る程度は止む得ないことだと諦めもした。
 それに・・・別に物に対して執着が強かったわけでも無い。
 奪い奪われる・・そんなやくざな世界に身を置いている僕としては、
 そんなことは本当にどうでも良かったんだ。しかし・・・」

「・・・・・・」

「あのホテルだけはどうしても失いたくなかった。」 
そう言ってドンヒョクはジニョンを熱く見つめた。

「・・・・・・」

「・・・・・君の為に買ったホテルだったから・・・」 
そしてドンヒョクは少しの沈黙の後にゆっくりとそう言った。

「私のため?」

「ああ・・僕がこの5~6年、ホテル専門のM&Aに専念したのは
 君の夢が・・“ホテリアー”・・・だったから。
 そう言ったら信じるかい?」

そう言いながらドンヒョクもバイクのエンジンを切って、そこから降りた。
ジニョンはまだ声を出せないまま、ドンヒョクを見つめていた。

辺りには川が流れ、川向こうには城のような建物が見えた。

「少し歩く?」 ドンヒョクはバイクを川沿いの脇に駐車して言った。

ジニョンはまだ事の次第を飲み込めないような複雑な表情のまま、
ただ頷いた。

「君がホテリアーになる。・・・僕がホテルを舞台に仕事する。・・
 それだけが君との繋がりのような気がしてた。
 真剣に・・・そう思ってた。」
ドンヒョクは歩きながら、まるで回想するように天を仰ぎ話を続けた。

「・・・・・・」

「10年間ずっとそうだったわけじゃない。
 仕事に追われて、君のことを思い出さないことも事実あったと思う。
 自分自身にそう言い聞かせて来たから・・・。
 それまでホテルに興味があったわけでもないし・・
 それを仕事にしようと思ったこともなかった。
 でも数年を掛けて世界中の多くのホテルを見て歩く内に、気がついた。
 僕がいつもその中にいる君を見ていたことに・・・。」

「・・・・・・」

「丁度その頃君が夢だったホテリアーになったことを知ったんだ。
 それからはいつもホテルの中で・・君の働く姿を想像してたよ
 君はどんなホテリアーになっているだろう。
 あの輝くような笑顔で、きっと人の心を暖かくしてるだろう。
 僕自身が君にそうしてもらったように・・・
 そんなことを想像するだけで、僕も幸せな気分になれたんだ」

ジニョンはそんな話をするドンヒョクの背中を愛しげに見つめていた。

「そしてあのホテルに出会った時、ホテルの魅力に取り付かれて
 自分に抑制していたはずの君への想いが更に止まらなくなった。」
ドンヒョクは少し歩いて、橋のたもとで立ち止まった。

「いつしかあの部屋で君と過ごすことを夢見た
 君が好きなアンティーク家具をひとつひとつ用意しながら
 君だったら・・ここに何を置くだろうか・・・
 君だったら、ここで何をするだろうか・・・
 いや、ホテリアーとしての君だったらどう考えるだろう
 あのホテルで働く君を想像してみたりもした
 僕の休息の場所だった・・・君を夢見る・・場所だった。」

彼の過去の告白がジニョンには無性に悲しく心に響いた。
ジニョンは立ち止まったドンヒョクの背中に額を付け、目を閉じた。
涙が知らず知らず込上げ、いつの間にか彼のジャンバーを濡らしていた。

≪いつもそう思う。
 ふたりが離れていた10年の月日が恨めしいと。≫

そして知るのだ。
いつの時もふたりは遠く離れた地で、互いを想い合っていた。
ドンヒョクはジニョンとふたりで過ごす夢の城を築き上げ、ジニョンは、
ドンヒョクの生まれた地を巡り、彼の幼い日の時空に身を置いて
いつも彼を悲しく求めていた。

「綺麗」 ジニョンが突然、空を仰いで言った。

「ん?」

「空が綺麗」

今日はことのほか天気が良くて、本当にドライブ日和だった。
ローマの空は広いと何かで読んだことがある。
その通りだとジニョンは思った。透き通るような色のせいだろうか。
≪同じ空のはずなのに・・・≫

「笑わないって約束する?」 ドンヒョクが突然、ジニョンに振り向いて言った。

「な・・何?・・」 ジニョンは慌てて涙を拭った。

「昔・・・この同じ空の何処かに君がいる・・そう想うとね
 時間を駆け戻りたくて仕方なかった・・
 もしかしたら叶うかもしれないって・・
 この川沿いを思い切り走ってみたことがある。」

ドンヒョクは笑い話でもするような言い方でそう言った。

「私も・・・」
「・・・え・・」

「私も・・・戻りたかった。」

突然ジニョンが真顔で返したのでドンヒョクは戸惑い、口を噤んだ。

ドンヒョクはジニョンの切ない眼差しから逃れるように向きを変え、
背中にジニョンを感じながら聞いた。「・・・・・きらい?あのホテル・・」 

「私は・・・あんな贅沢な部屋より・・・何よりも・・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・あなたにそばにいて欲しかった。」

それがたったひとつの真実だった。

「・・・・・・・・・・・・・ごめん」

わかっていた。時は戻ることは無い。
しかしふたりは再び結ばれた。それはとても幸せなことだった。
ふたりでいればいるほど、離れていた時間の流れの中に置いて来てしまった
それぞれの孤独を見つけてしまう。
その度にふたりは、心をえぐられるような悲しみを味わうのだろうか。
あまりに苦し過ぎて、その度に泣くのだろうか。

それでも離れたくない。
≪だからこそ、一時も離れていたくない≫
ジニョンはドンヒョクの背中を強く抱きしめて、そう思った。

「ドンヒョクssi・・・」
「ん?」

「あのベッドは・・・・ちょっと派手過ぎるわ」

「・・・・そう?」 ドンヒョクは背中で笑った。





「明日の夜には会長の元へお連れできるかと。」

フランク・シンが即刻動かねばならないよう、手を回した結果報告は
ジュリアーノの気分を多少なりとも上昇させた。

「ん。エマには連絡したか」

「はい。明日の夜8時には事務所にと。」

「喜んでいたか?」

「・・・・さあ、そのようなことは。」

「フッ・・喜ばないわけがあるまい。あいつの夢が戻ったんだ。」





「・・・・・いいところね、ローマって・・」

「ああ、いいところだ」

「来て良かった」

「ん・・・そろそろ戻る?」
そう言ってドンヒョクはバイクが置いてある方角を指差した。

「今度は何処へ?」

「内緒」
ドンヒョクはジニョンの手を取って、今歩いた道を引き返し始めた。
「え~」
ジニョンは彼に引かれるまま小走りに付いて行った。

そして駐車しておいたバイクに戻ると、ふたりはヘルメットをかぶり
揃ってバイクに跨った。

「ねー!何処に行くの?」 
ジニョンがドンヒョクの腰に腕を回しながら、またも尋ねた。

「僕達が2000年前に出逢った場所。」 

「え?」
ジニョンのその声は直ぐに風にかき消されてしまった。




しばらく走ってドンヒョクがエンジンの音を止め、辿り着いた場所は
パラティーノの丘と呼ばれる場所だった。
この場所からフォロロマーノやコロッセオを見渡すと、まるで古代ローマに
タイムスリップしたような錯覚に陥る。

「ここ写真で見たことがあるわ」 
ジニョンもまた、今まで写真で見たことがあるだけの遺跡を見渡すと、
瞬時に時空を超える感覚にとらわれ、感動の溜息を吐いた。「すごい・・・」

「ああ」 
ドンヒョクもまた、ここに立つ度に覚えてしまう感動を顔に描いていた。

「それで?」

「ん?」

「ここなの?・・私達が2000年前に出逢った場所って」

「ああ」

「その時代、あなたは皇帝だった?」
ジニョンはドンヒョクの浮世話に合わせるようにそう言った。

「ん。きっとそうだろうな」

「そして私は・・」
「そして君は・・・僕が飼っていたシャム猫」

「!・・・シャ・・ねこ!?」

「そ。これが気が強くて、言うこときかなくて大変だったんだ」
ドンヒョクは腕を組み、本当に困ったという顔をして見せた。

「フランク!」

「はは・・でも当たってる感じしない?」

「もう!・・・・・・でも、当たってるかも」
ジニョンはそう言いながら、壷に嵌ったかのように突然笑い出した。

「だろう?」 

「あなたはちゃんと可愛がってくれてた?」

「ん。いつも一緒に寝てたよ」

「お后様はいなかったの?」

「んー」

「いたの?」

「君が時々お后に化けてくれた」

「え?・・私って・・まさか化け猫?」

「ん。そのまさか・・」

「チィ・・」

ジニョンは舌打ちをしながらも、ドンヒョクの腕に自分の腕をからめた。
ドンヒョクは微笑みながら、ジニョンの腕を自分の腕から外して、
彼女の背中を自分の胸に包み込むように抱きしめた。

「僕達は、何処にいても・・・どの世界で生まれ変わったとしても・・・
 必ずそばにいた・・・僕はこうして君を抱きしめていた
 ・・・ここはね、そんなことを信じさせてくれる場所なんだ」

「ここが?」

「ああ・・・この丘に立つと・・不思議とそう信じられた
 だから・・・生きられた。」 それはドンヒョクの心の叫びだった。

「・・・・・・」

静かだった。
不思議と観光客の姿も無く、緩やかな風と、時空を超えた空気と・・・
そこに・・・ドンヒョクとジニョンだけだった。

「愛してる」 彼女を抱きしめた腕に力を込めて、彼は言った。

「・・・愛さないんじゃなかったの?」 
彼の胸に自分の背中を強く押し当て顎を上げ、彼を見上げて、
彼女は言った。

「愛してる。」 彼は彼女の肩に唇を落とし、愛しさを込めて言った。

そして・・・

ふたりを撫でる風までも、優しくささやいた


     ・・・愛してる・・・


















【次回予告】 第四章 ドンヒョクの街

   「何が可笑しいんだい?」 
 
   「ふふ・・結婚式の時のことを思い出してたの」

   「ああ・・あの日は最悪だった」  

   「最悪?」


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ノラン
その後でで読んだkurumiさんの脳内想像の言葉に、なるほど!しっかり私もできてるじゃない☆と、笑ってしまいました^^呼吸困難の一歩手前!?又、ハラハラ・ドキドキの日々が続くのかしら〰 2011/03/25 23:11
ノラン
ごめんなさいm(-)mカメです(^^);Jだけじゃなく、読んでる私もDの言葉にはビックリの連続です!ローマの休日ごっこ☆画像をみながら、きっとこのあたりにいるのね〰と楽しく想像していました☆ 2011/03/25 23:06
joonkei
ドンヒョクのこの上ないような愛情表現が描かれれば描かれるほど、この先の危機感が忍び寄ってきている気がして・・もう呼吸困難の一歩前デス☆ 2011/03/23 06:53
kurumi☆
これからはジニョンを抱いて敵と戦っていかなければなりません。そんなドンヒョクを描けたら、そう思って書いています^^ 2011/03/23 00:07
kurumi☆
ドンヒョクはジニョンと別れていた10年間の間に、アメリカ、イタリア、フランス、アジア、世界を股に駆けて事業を展開していきました。その為に敵も少なからず作っています。今までは孤高の狼だったわけですが、 2011/03/23 00:06
kurumi☆
あの有名な「ローマの休日」あの映像の中に、皆様の脳内でふたりの映像を重ね合わせてもらえるだけで充分です^^ 2011/03/23 00:03
kurumi☆
ローマの休日ごっこ、しかし、敢えてあの映画のシーンに出てくるような場面は描いていません。映像なら描いていたかもしれませんが、文章にする必要はないと考えたからです^^ 2011/03/23 00:02
kurumi☆
皆様レスをありがとうございます^^ふたりが古代ローマの地で、まるで風とともに去りぬのように抱き合っているイメージを抱いていただけたでしょうか^^ 2011/03/22 23:58
hiro305
2人のローマの休日ごっこ、お互いへの想いがどれほど深いかを実感する回ですね。重苦しいニュースと映像に涙することが多いこの頃、なんか・・・ホントにホッとします。有難うございます^^ 2011/03/21 22:43
hchizuko
やっとこちらに~ん~いいですねぇ~この雰囲気心慰められました~コマォウヨ~ 2011/03/21 17:36
常念
ヨンジュンさんの大きな愛に報いるべく 自分の出来ることは 何か。 考えながら実行していかなくては と思う日々です。。。ジニョン 何があっても ドンヒョクを信じて付いていけますね。 2011/03/21 12:01
常念
D&Jの 深い深い 愛に あらためて涙です。過酷な震災の情報に 何も出来ないもどかしさ・・幾多の愛が悲しみにくれているのでしょう・・。こうしてD&Jに浸ることの出来る私。本当に感謝の日々です。ヨンジ 2011/03/21 11:56
ジェニー・S
K&Tさん楽しませていただきました、毎日の災害のニュースで私の心が不安感で辛くなり、此処に来て、ホッとします、シャム猫とは可愛い、そして、ジェニーの名前が出てきたので、嬉しくなりました。 2011/03/21 08:08
 
 

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