ブロコリ サイトマップ | ご利用ガイド | 会員登録 | メルマガ登録 | 有料会員のご案内 | ログイン
トップ ニュース コンテンツ ショッピング サークル ブログ マイページ
OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
サークルオーナー: tomtommama | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 335 | 開設:2006.11.13 | ランキング:30(12728)| 訪問者:3853646/4697272
開設サークル数: 1238
[お知らせ] 更新のお知らせ
容量 : 89M/100M
メンバー Total :335
Today : 0
書き込み Total : 1988
Today : 1
ラビリンス
創作
No 5 HIT数 5837
日付 2011/04/04 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル ラビリンス-過去への旅-5.ボディーガード
本文





        



         collage by tomtommama



                   story by kurumi












ジニョンは怒っていた。

≪それじゃ。って・・・キスのひとつくらいしない?≫
彼女はドンヒョクが消えたドアをもう一度激しく睨みつけたかと思うと、
今入って来たばかりの部屋のドアを憤然と押し開けた。
そして、怒り心頭の顔付きで廊下を突き進み、つい今しがたやっと
上って来た螺旋階段を恨めしそうに眺め下ろしながら、無言で下り始めた。

途中、ドンヒョクに対する余りの腹立たしさに、ジニョンは思わず
自分の髪をくしゃくしゃと掻いた。≪もう!≫

ジョアンはというと、そんな彼女の後を、こちらも無言で付いて下りていた。
ジニョンは二階に差し掛かった時やっと、自分を追って来る
ジョアンの存在を思い出した。
螺旋階段のカーブで、横目に彼の不満げな表情を盗み見た時、
ジニョンは心の中で呟いた。≪私だって嫌なのよ!≫
ジョアンが彼女の視線に気が付いた瞬間、ジニョンはフンと顎を上げた。





「それで?」

「はい。この数日、他の案件のキャンセルが相次いでいます。
 イタリアだけではなく・・ヨーロッパ全土・・アメリカもです」

「これがそのリスト?」

「はい。しかも既に着手していた案件までもです」

ドンヒョクはデスクの端に軽く寄り掛かるように腰掛けて、
ミンアに渡された資料を手に取ると、それを手早く捲りながら、
次第に眉間に皺を作っていった。

「これは憶測ですが・・ジュリアーノ会長の仕業としか・・」

「ん・・・一部はそれもあるだろう・・しかし・・それだけじゃないかもしれない」
ドンヒョクはそう言いながら唇の左端を上げた。

「と申しますと?」

「信用を無くしたんだ。僕が。」 

「あ・・・」

「しかし・・韓国の一件がこれほど早く影響するとは・・・誤算だったな」

「・・・・・・」
「心配するな。大丈夫だ」 
ドンヒョクは沈黙したミンアに向かって笑って見せた。

「あ・・はい。・・・いえ・・心配なわけではありません。」
ミンアは本気でそう言った。
フランク・シンという男がこのまま手をこまねいているわけがないことを
充分承知していたからだ。
「ただ・・あの、ひとつよろしいですか?」

「ん?」

「今後ですが・・・やはりジョアンの穴は大きいです」
ミンアは思い切ってそのことを口にした。

「何とかなる。」 ドンヒョクは資料から目を離さずにそう言った。

「・・・・・」

「君も不服なの?彼を外したこと」 

「あ・・いいえ。ただ・・」

「ただ?」

「彼もこの仕事に賭けていましたから」 ミンアは言った。

「それで?」 

「彼にしかできない仕事があります」

「だから?」 
相変わらず視線を向けないドンヒョクの声は終始冷ややかだった。

「いいえ・・何でもありません。余計なことを申し上げました。」
ミンアはドンヒョクの抑揚のない受け答えに、自分でも予測した通り、
簡単に屈した。

「これをレオに送って。」
ドンヒョクは資料に何やら手早く書き込むと、ミンアに渡した。

「承知いたしました」
ミンアは深く頭を下げて、部屋から出て行った。





もう直ぐ一階に着くと思った時、突然後ろからジョアンがジニョンを追い抜き
先に表へと走り出て、ジニョンに振り返った。
「奥様、申し訳ございません。駐車場まで少しお歩き願えますか」
彼はジニョンに向かって、丁寧に頭を下げそう言った。

「え・・ええ」
ジニョンは結局このジョアンという男に付いて歩くしか無かった。

「恐れ入ります。この辺は生憎駐車場が少ないものですから」
彼の馬鹿丁寧な物言いは、ジニョンを余り心地良くさせてはくれなかった。

「承知してるわ。」
ジニョンはイタリアに渡る前に、この地の交通事情も含めて、
一通りの知識をドンヒョクから聞かされていたので、少々のことでは
驚くことも、困惑することもないと思っていた。
しかしこうして突然、親交も無く、親しみも沸かない男と見知らぬ街に
放り出されるとは思いもしなかった。





ドンヒョクは窓辺に向かうと、数年ぶりに眺める懐かしい街の景色に、
ホッとしたように溜息を吐いた。
ふと見下ろすと、通りを歩くジニョンとジョアンの姿があった。

ジニョンの歩き方を見て、彼は思わず苦笑した。
≪随分、怒ってるね・・ジニョン≫

ドンヒョクはぎこちなく連れ立つふたりの姿を追いながら、
微かに笑みを浮かべ呟いた。

『彼にしかできない仕事があります』先ほどのミンアの言葉が頭を過ぎった。

「彼にしかできない仕事・・・」 ≪だから、頼んだんだ≫





ジニョンとジョアンのふたりが無言のまま連れ立って、5分程歩くと
駐車場に着いた。

「どうぞ」 ジョアンは後部座席のドアを開けて、無表情ながらも
ジニョンを卒なくエスコートした。

前と後ろに別れていても、小さな車のせいか、二人の距離は妙に近かく、
そのせいで否応なしに、ジョアンの表情が視界に入ってくる。

「聞いてもいいかしら」 
ジニョンは居心地の悪い沈黙を敢えて破り、彼に尋ねた。

「はい?」 ジョアンはバックミラー越しにジニョンに視線を送った。

「ジョアンさん、あなたは・・
 夫から私の面倒を見るように言い付かったのよね」

「警護するようにと。」

「私といることが、あなたのお仕事なのね」

「はい。」

「あなたもそれを納得なさっている・・」

「もちろんです。」 ジョアンは力強く言った。

「・・・・そうは見えないけど。」 
ジニョンは助手席の背もたれに頬杖付いて彼を軽く睨んだ。

「えっ?」
「納得しているようには見えない」

「奥様・・・そんなことは・・」 
ジョアンは内心を見透かされたとばかりに、言葉を淀ませた。

「いいのよ。気を遣わなくても」

「そうではありません」

「でもひとつお願いがあるわ・・・私を呼ぶ時に奥様は止めて。
 私は奥様という名前じゃないの・・ソ・ジニョンという名前があるわ・・・
 “ジニョン”・・・言ってみて。」 ジニョンは命令口調で言った。

「・・・・・・」

「早く。」

「ジニョン・・さ・・ま」

「ジ・・ニョ・・ン」

「それは・・・」

「だったら・・“ジニョンssi”・・あなた韓国籍よね」

「・・・・・ジニョン・・ssi」

「いいわ。」 ジニョンは満足そうに微笑んで言った。

「・・・・・・」 
ジョアンは怒った表情の彼女が突然自分に笑顔を向けたことに困惑して、
思わず視線を逸らしてしまった。

「それから・・彼が・・フランクがどう言ったか知らないけど、
 あなたは私に四六時中付いている必要はないわ」

「それは駄目です」

「どうして?・・私はご覧の通り大人よ、自分のことは自分で守る」

「それは無理です」

「無理?」

「はい。ここでは・・特に我々の仕事は」

「ねぇ、ジョアン・・・そう呼んでもいいわね・・・
 フランクは・・・あなた達はそんなに危ない仕事をしてるの?」
ジニョンはそう言いながら、助手席の背もたれを抱くように腕を回して
ジョアンの顔を覗き込んだ。

「いいえ、そうではありません。しかし・・・・・」
ジョアンはジニョンが突然顔を近づけて来たことに驚いて、
思わず顔を窓際に背けた。

「あなた・・この仕事・・私のその・・警護?
 納得して無いでしょ?」

「・・・・いいえ・・」 ジョアンの顔は「Yes」と答えていた。

「わかり易いのね・・あなた」 

「・・・・・・」

「どうして嫌だって言わなかったの?フランクに」

「・・・・・・・・言いました。」 
ジョアンはしばらくの沈黙の後、観念したように答えた。

「それで?」
「・・・・・・」

「有無を言わさなかったのね」 
ジニョンは“想像できるわ”というように頷いて言った。

「・・・・・・ボスは・・常に起こるであろうことを想定なさいます
 それが稀有なことであったとしても、予知できる危険であれば・・
 そのお陰で、我々は今まで仕事上、危険に遭遇したことがありません。
 正直申し上げて、慎重過ぎると思うことさえあります
 どうしてそこまで警戒なさるのか・・・わからないことも時にあります。
 しかしボスは万事、どの場面であれ、物事を軽視することを
 私達にお許しになりません
 僕は・・その・・奥様の・・いえ、ジニョンssiをお守りすることが
 嫌なのではありません。
 ただ、今まで進めていたプロジェクトは僕も・・いえ私も・・
 少なからず係わって来たものです
 それが先日突然、半年間、あなたをお守りするように・・
 ボスに命を受けました。
 S.Jはボスとレオさん、ミンアさん、そして私。4人だけです。
 もちろん、頼りになるブレーンや忠実な現地スタッフはいますが
 決して人手が足りている状態ではありません
 それなのに・・・ボスは私を・・・私に・・・」

「自分の妻の警護を命じた・・・」 
ジニョンがジョアンの言い憎いであろう言葉を代わりに繋げた。

「いいえ・・それはきっと口実なんです。
 ボスは・・私がそのプロジェクトに必要無いと。
 ・・・つまり、ボスに見切られた。・・そう思っています・・あ・・」

ジョアンは胸の内を吐き出すように、ジニョンに向かって本心を語った。
しかし、その直後にジョアンは自分を嫌悪した。
決して言ってならないことを、言ってはならない相手に言ってしまった。
彼女の寛容さに、本心を簡単に引き出されてしまったことを後悔した。

「申し訳ありません。あなたにこんな話をするべきではありませんでした
 どうかお願いです。今僕が言ったこと・・忘れてください。」 
ジョアンは突然車を停めて、ハンドルを強く握り締めたまま言った。

「一度耳に入ったものは消えないわ」 ジニョンはサラリと答えた。
「・・・・・・・・・」

「ふふ・・ありがとう。良かったわ、話してもらえて・・・」
ジニョンの柔らかなその言葉にジョアンは顔を上げ、彼女を見た。

「私ね、知らない人と四六時中一緒にいるなんて息が詰まるの。
 でもあなたはもう知らない人じゃないわね
 あなたの胸の内を知ったから・・・」

「・・・・・・・・・」
「そうでしょ?」 ジニョンは満面の笑顔で微笑んだ。

「あ・・・は・・はい」

「ねぇ、ジョアン?あなたはフランクのプロジェクトを進めていたんでしょ?
 だったら、進めたらいいわ、これからも」

「進めるって・・」
「彼の仕事を裏からサポートすることならできるでしょ?」

「サポート・・ですか?・・」
「ええ、私も手伝うわ。」 ジニョンは大げさに腕組して見せた。

「あの・・ジニョンssi?」

「だってあなたは私と一緒にいることが仕事でしょ?
 逆を言えば、私があなたのそばにいればいいことよね」

「まあ・・そうですが」

「だったら。仕事なさい。・・わかった?
 そしてあなたが会社に、いいえフランク・シンにどれ程必要なのか
 彼に教えてあげるといいわ。」 そう言ってジニョンは腕組をした。

「・・・・・・」 ジョアンは正直ジニョンの言葉に困惑していたが、
満足そうに微笑み頷く彼女に、何も言えなかった。

「ところで・・」 ジニョンは話を変えて言った。「社名の、S.Jって何かの略?」

「社名・・ですか?・・アー英語で“Steal”“Jesus”
 この国の魂を盗むという意味が込められているんです
 もちろん、それは我々だけの隠語ですが・・」

ジョアンはそう言いながら、出会ってから初めて笑った。

「その方がいいわ」
「えっ?」

「笑っている方が素敵よ」 そう言ったジニョンの笑顔の方が・・・
≪ずっと素敵だ≫と、ジョアンは心の中だけで呟いた。





ドンヒョクはこれまでミンア達が集めていた資料の確認を終ると直ぐに、
受話器を取り、内線でミンアを呼んだ。

「はい、ミンアです」 
隣の部屋で待ち構えていた彼女は、直ちに受話器を取った。

「・・・ミラノへ行く。・・手配を頼む」 
「はい。準備は整っております。」

「ん。」
「奥様とジョアンは如何なさいますか」 ミンアは聞いた。

「置いていく」
「ジョアンに任せておいて大丈夫でしょうか」

「・・・あいつはそんなに信用無いのか」 フランクは笑った。

「いえ、そういうわけでは・・・そうですね、大丈夫。」 
ミンアは最後は自分に言い聞かせるように呟いた。

「10分後に出よう。夜には向こうに着きたい」
「承知いたしました。」

ドンヒョクは受話器を置くと、座ったまま椅子をくるりと窓側に回した。

≪ジニョン・・・君の怒りは頂点を極めるね、きっと≫
彼は心の中でそう呟きながら、小さく笑った。

さっき別れた後、ジニョンがさぞかし自分を睨んでいただろうことを、
彼は承知していた。
だからこそ最初から、彼女の顔をまともに見ようともせず、
そそくさと部屋に入ってしまったのだった。

ドンヒョクはこのイタリアにジニョンを連れて来たことを、最初から後悔していた。
その後悔が、自分の中で時間を追うごとに増していることもわかっていた。
そしてそれがもう、遅過ぎるということも。

ドンヒョクは椅子の背もたれを背中で強く押して天井を見上げると、
上に向かって大きく溜息を吐き、静かに目を閉じた。

≪本当に・・・≫


    ・・・「連れてくるんじゃなかったよ」・・・

















【次回予告】 第6章「置き去り」

  「止む得なかったんです・・きっと」

  「慰めてるの?」

  「いえ・・そんな・・」

  「ひとりにして」

  「しかし・・・」

  「ひとりにして。」


 



前の書き込み ラビリンス-過去への旅-6.置...
次の書き込み ラビリンス-過去への旅-4.ド...
 
kurumi☆
賢くて、凛とした人、本編のジニョンさんよりちょっといい子に書いたつもりでした^^でもmirageのジニョンはそこに強さと自分勝手さを入れて、本編に少し近づけた、と自分では思ってます^^ 2011/04/07 00:59
kurumi☆
ノランさん、「こいびと」の時のジニョンと、mirage-passion-ラビリンスのジニョンは少し違うんですよね~^^「こいびと」を書いた時は、ジニョンという人は、ドンヒョクが選んだ人だから、とにかく 2011/04/07 00:56
kurumi☆
hiro305さん、私はふたりがあまり苦しむようには書くつもりはないんです(笑)書いてしまわないと何とも言えないけど、きっとそんな気がする^^ 2011/04/07 00:53
kurumi☆
でも普通ならドンヒョクはやきもちをやきそうですが、こういう状況下でありますので、ジニョンを護るためなら、利用できるものは何でも利用する、というところでしょう^^ 2011/04/07 00:51
kurumi☆
yukitanpooさん、ありがとです^^ジニョンとジョアンはきっと相性がいいんでしょうね^^お互いの思うことが、直ぐに理解できる^^ドンヒョクはきっとその辺も察してるのかな~^^ 2011/04/07 00:49
kurumi☆
何せ、しばらくはあれほど気になっていたはずの韓国行きを断念するんですから(笑) 2011/04/07 00:47
kurumi☆
joonkeiさん、うん、あまり我慢できないかも(笑)しかもあまり長い物語にはしないつもりなので、かなり短いジェットコースターかと(笑)イタリアは間違いなくいい思い出よ^^ 2011/04/07 00:47
kurumi☆
だけだから^^;)そしたら、結構新しい発見というか、こんなシーンもあったのね~と^^;このジニョンはきっと本編のジニョンさんに近いかなと思いながら書いていますので、本編を観ながら想像してくださいね^^ 2011/04/07 00:42
kurumi☆
ジェニーさん、BSでホテリアー観てるんですね^^私は正月にじっくりとDVD観ました(MV作りのためですが^^)でも今回は他のシーンで使えるのがないかと、飛ばさないで観たんです(いつもはDの出演シーン 2011/04/07 00:39
ノラン
なんだかジニョンが強くなってきたように思います☆フランクとの間の数々の出来事が彼女の強く、逞しくしてきたのかな!?そんなジニョンにジョアンも惹かれていくのかな!?<ずっと素敵だ>のジョアンの呟きが… 2011/04/06 21:45
hiro305
何か、どんどん風も嵐も吹いてきそうな気配。弱みになるジニョンが結果的にフランクを支えてくれる事を願いますが、うーん、2人とも苦しみそう^^; とっても心配になる予告もあるし・・・ 2011/04/06 21:13
yukitanpoo
相変わらず、ジニョンて聞き出すのがお上手!! 見習いたいくらい・・・ジョアンも安心してお仕事できますね。 2011/04/05 16:09
joonkei
いよいよですね。これから先ウィークポイントのジニヨンをどれだけ愛していない振りができるか?後悔が杞憂に終わり(なんて訳ないか)イタリアがいい思い出として終わるよう祈るばかりです^^; 2011/04/05 04:27
ジェニー・S
ジニョンは置き去りにされるの? 次回がたのしみです。今日から、BSでホテリアーが始まりジニョンの可愛い仕草を楽しみました。 2011/04/04 22:50
 
 

IMX