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OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
サークルオーナー: tomtommama | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 335 | 開設:2006.11.13 | ランキング:30(12728)| 訪問者:3853435/4697061
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ラビリンス
創作
No 6 HIT数 5869
日付 2011/04/11 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル ラビリンス-過去への旅-6.置き去り
本文













フィレンツェのドンヒョクのアパートは川を渡って車で5分ほど走った
小高い丘にあった。
五階建ての小さな建物の前まで来ると、ジョアンはそのガレージの扉を
車の中から自動で開けた。
扉が半分程開いた時にはジョアンは既に車を中へと進入させ、
車が入り切ると同時に、その扉は入る時と同様に自動で閉められた。
同時に明かりが灯り、そこが数台分の駐車スペースであることがわかった。

ジョアンは車を降り、ジニョンの方のドアを開けるために急いで回った。
「ありがとう」 ジニョンは礼を言って、車から出た。

「ではご案内します」 そう言ってジョアンはエレベーターに向かった。
「ここはエレベーターがあるのね」 ジニョンはそう言って笑った。

「外観は古い建物ですが、中はかなり近代的に改築されています」
ジョアンはエレベーターにカードを差し込み、扉を開けると、
まずジニョンを中へ入れ、後から自分が入ると、五階のボタンを押した。

「私の部屋はこの二階にあります」

「そうなの?」

「はい、このアパートの住人は我々だけなんです
 イタリアでの仕事の時だけ使います
 レオさんの部屋が四階、ミンアさんの部屋が三階」

「各階に一部屋ずつだけなの?」

「はい、一階スペースはご承知のように駐車場です」

五階に着いてエレベーターの扉が開くと、そこは直ぐに広い玄関だった。
大理石張りの玄関ホールを進んで行くと、同じ床面が更に続き
広いリビングルームが開けていた。

正面はすべてガラス張りで、その向こうに少し前にドンヒョクと歩いた
フィレンツェの街並みの絶景が開けていた。。

「素敵」 ジニョンは思わずその景色に声を漏らした。

「すごいでしょう?・・ここは丘に建っていますので、
 私の部屋からの眺めも絶景です・・ここは更に・・ですね
 あの川がアルノ川・・川向こうの左手の奥に今日到着された駅
 少し手前に我々の事務所が近いドゥオーモが見えます」
ジョアンは指を差しながら、説明した。

「・・・・それから、あの橋がヴェッキオ橋ね、映画で見たことがあるの」 
ジニョンも指を差して見せた。

「はい。後で歩いてご案内致しましょう」

「ええ、ありがとう」

「お部屋をご説明します。間取りは各階違ってるんですが。
 あちらのドアが寝室、奥の部屋が書斎で使ってらっしゃると伺ってます。」

「ええ、彼に聞いているから大丈夫よ」
 
「そうですか・・では・・お疲れでしょうから、少しお休みください
 私は部屋に戻っております」

「ええ」

その時、ジョアンの電話が鳴って、彼はジニョンに断って電話に出た。

ジニョンはその間、ひとりテラスに出て、手すりに手を掛けると、
大きく深呼吸した。

≪この国は感動の嵐だ≫ドンヒョクの声が聞こえた。
「ほんと・・そうね」 ジニョンはその声に清々しく答えた。

 

ふと気がつくと、ジョアンがテラスに出てくるところだった。
彼が何か言いたげな表情をしていたので、ジニョンは首を傾げた。
「ん?・・」

「あ・・はい。ミンアさんからでした。ミラノに向かうと」

「えっ?明日じゃなかったの?じゃあ、急いで用意しないと・・」


「あ・・あの・・もうお発ちになりました」


部屋へと向かおうとしたジニョンの足を、ジョアンの声が引き止めた。

「どういうこと?」

「我々は留守番だそうです。ミンアさんから・・移動中の電話でした」

「・・・・・・」 ジョアンの言葉にジニョンは瞬時に表情を硬くした。
そして、彼女はリビングに戻ると電話を取り出し、ドンヒョクに掛けた。
しかし、それからは空しいアナウンスが繰り返されるだけだった。
“この電話は電波の届かない所に・・・”「・・・・・・・・・」

「あの・・・」
「何!」 
ジョアンは振り向いたジニョンを見て、思わず後ずさった。
目に涙を潤ませた彼女が、見事に恐ろしい顔で彼を睨みつけたからだ。

「緊急だったんです。」 
「置いていくことないわ。」

「止む得なかったんです・・きっと」
「慰めてるの?」

「いえ・・そんな・・」
「ひとりにして」

「しかし・・・」
「ひとりにして。」

「・・・・わかりました」
ジョアンはジニョンの余りに寂しげな後ろ姿にそれ以上の言葉を掛けられず、
すごすごと玄関の方へ向かった。

しかし、彼は立ち止まった。
気を取り直し、思い切って踵を返すと、そのままリビングへと戻った。

その気配に気がついて、ジニョンは振り向かないまま言った。
「何?・・ひとりにしてと言ったでしょ?」 強がって放った声が涙に揺れた。

「・・・食事に行きませんか」 ジョアンは彼女の背中にそう言った。
「・・・・・・・・・」 ジニョンは答えなかった。

「この辺は美味しいものが沢山あるんです」
ジョアンはそれでも、優しい口調で食い下がった。

「・・・・・・・・・」

「お腹・・・すきませんか?」 

「・・・・・・すいた。」

 


「奥様、かなり怒ってらっしゃるようです」 ミンアが困った表情で言った。

ドンヒョクは口の左端を上げただけで、何も答えなかった。

『ヤ!シン・ドンヒョク!アニ・・フランク・シン!・・・
  よくも私を置いて行ったわね!』

彼は10分程前に、留守番電話でジニョンの声を聞いたばかりだった。
≪君に言うと、いつも押し切られてしまうからね≫

ドンヒョクはミンアに悟られぬよう、俯き苦笑した。

 

時間は夜の7時を回っていた。
ジニョンとジョアンはアパートのエントランスで落ち合い、徒歩で
ヴェッキオ橋の方へ向かった。
目的の店はその橋の近くにあるトスカーナ料理の伝統料理店だった。
「これからご案内する店は小さな店ですが、歴史があるんですよ
 料金は安いのに・・料理は絶品なんです」 
ジョアンはジニョンを元気付けようと声を張った。

「楽しみだわ」 ジニョンもそれに応えて、努めて笑顔を彼に向けた。

「寒くないですか?」 ジニョンの薄着を見て、ジョアンは言った。

「そうね、少し・・」 ジニョンはそう言って自分で自分の肘をさすった。

「これを羽織ってください。」 
ジョアンは手に持っていたカーディガンを彼女に渡して言った。
「用意してくれていたの?私に・・」 
彼が既に上着を羽織っていたのを見て、彼女はそう言った。

「先ほどお話するのを忘れましたから・・・。
 日中と夜の気温差が激しいですから、お出掛けの時は
 必ず上着を持って出られるといいです」

「ありがとう」 ジニョンは彼の細やかな心遣いに感謝して微笑んだ。


目的の店には10分も掛からず着いた。
ジニョンはジョアンにお薦めの料理を適当に選んでくれるよう頼み、
料理が運ばれてくるまで、彼女は無言で待っていた。
ジョアンは、彼女が突然見知らぬ地で、夫に置いていかれた寂しさと
静かに戦っている間、邪魔をするまいと彼女から視線を外した。

その内に鼻先にいい匂いのパン粥が運ばれ、ジニョンの沈んだ顔が
一瞬綻んで見えた。
「美味しそう」 ジニョンがそう言うと
「美味しいです」 ジョアンが即座に微笑み答えた。

ジニョンは早速、スプーンを手に取り黙々と食べだした。
そんな彼女の様子にジョアンは心の中で安堵し、心から喜んだ。
≪そんな風に食べられるということは、大丈夫ですね≫


「話して。」 
メニューがデザートに差し掛かった時、ジニョンが突然そう言った。

「何をです?」 
「彼の仕事のこと」

「それは・・・」
「言えないの?」

「話してもおわかりになりません」
「わからないかどうか・・わからないでしょ?」

≪仕事なさい。そしてあなたが会社にどれ程必要なのか
 彼に教えてあげるといいわ。≫

ジョアンはジニョンが先刻自分に言ったあの言葉を思い出していた。
≪まさか・・本気で?≫
そう思いながら彼女を見ると、真剣な彼女の眼差しがジョアンを刺していた。

「駄目です、ジニョンssi・・・あなたを仕事に巻き込んでしまったら
 僕はボスに殺されます」 ジョアンは半分本気で眉を下げた。

「ジョアン。確認するわ。
 あなたは私の面倒を見るように彼に命令されているのよね」

「はい」

「ということは私の命を守るのがあなたの指名ね。」

「はい。・・ですから。」
「あなたの命は私が守るわ。」

「えっ?」 ジョアンは何か聞き違えたのかと確認するように首を傾げた。
「フランク・シンから、あなたの命を守る。約束するわ。」
ジニョンは、真顔で繰り返した。

「あの・・・」 ジニョンのその言い様が可笑しくてならなかった。
「つべこべ言わない。」 
ジニョンは有無を言わさないというように、そっぽを向いた。

≪ボスにそっくりだ≫とジョアンは思った。
そう思うとまた可笑しくなって、心の中で笑っていた。
しかも、その可笑しさが、彼には不思議と心地良かった。

「・・・・・わかりました。でもこういうところでは・・
 部屋に戻りましょう」 ジョアンは店内を見回し言った。

「いいわ。」 ジニョンはデザートもそこそこに直ぐに席を立った。

 

 

ドンヒョクがミラノに到着すると、三日前にローマ空港に出迎えた車が
待ち構えていた。
「会長がお待ちかねでございます。フランク様」 
空港で出会った、男が意味ありげな笑顔を作って言った。

「君は?」 ドンヒョクは初めて彼に名前を尋ねた。先日空港で会った時から
気になっていた男だった。

「トマゾ・アルビノーニ。ジュリアーノ会長の秘書を努めております。」
男はそう言って、頭を下げたまま、目だけでドンヒョクを見上げた。
「トマゾ・・・前に何処かで会ったか?」

「先日空港で・・」

「いや・・もっと前に」 フランクはトマゾの目を射るように見た。

「5年前にお目に掛かったやもしれません」 トマゾは穏やかに言った。

彼がジュリアーノの側近であれば、確かに5年前に会っていても
可笑しくはなかった。

「そうか・・」

 

「まず教えて。
 今回のイタリアでの彼の仕事は何?ローマに着いた時
 物々しい出迎えがあったわ。あの人たちはいったい誰?
 彼はミラノに何をしに行ったの?誰に会いに?」

「ジニョンssi・・・一気に質問なさらないで下さい」
ジョアンはキッチンでコーヒーを入れると、ジニョンの待つリビングへと
カップを運び、テーブルに置きながら言った。
「・・・ありがとう・・じゃあひとつずつ・・」
そして、自分もまたジニョンの目の前のソファーに腰掛けた。

「空港に出迎えていたのは、今回のクライアントである
 ビアンコ・ジュリアーノ会長の部下です。
 当初我々がおふたりを出迎えるはずでしたが、会長から申し出が。
 ボスもそうおっしゃいましたので、お任せしました。
 本当は彼らは直ぐにおふたりをミラノへお連れしたかったはずです。
 ボスは敢えて彼らに出迎えさせた上で、ミラノへは行かず、じらしたんです」

「どうしてそんなことを?」
「もちろん、こちらが優位に立つために。」

「ふ~ん・・・じゃあ、ジュリアーノ会長って何者?」

「ビアンコ・ジュリアーノはイタリアの有力者です。
 この国で外国人が仕事をする場合、彼の息が掛かっているか
 いないかでは、雲泥の差があります。」

「なら、彼は・・フランクはどうして優位に立ちたいの?
 その会長をじらしたりするなんて不利でしょ?」

「ボスは・・・・・・・」 ジョアンはその後を、口ごもった。
「フランクは?・・・」 ジニョンは前のめりになって彼の答えを待った。

「ボスは・・・会長が嫌いなんです。」 
ジョアンはふたりだけなのにヒソヒソ話でもするかのように言った。
ジニョンはジョアンのその言葉が嘘っぽいと思ったが、それ以上は
追求しなかった。
「確かに・・彼は好き嫌いが激しいわ」 そう言って笑って見せた。

ジョアンは少しホッとしたように、話を続けた。
≪何か・・・私に言いたくないことがあるのね≫ジニョンはそう思った。

「今回我々は、イタリアとアメリカの交易に係わる仕事をしています。
 ボスに依頼されたことは、ジュリアーノ会長に有利に事が運ぶよう
 アメリカの企業との交渉を担うことです。」

「じゃあ、今彼はミラノで会長に会ってるのね」

「はい、おそらく」

 


ドンヒョクはその頃、ジニョンの想像通り、ジュリアーノに会っていた。

ミラノ郊外の広大な敷地の中央に建てられたジュリアーノの邸宅は、
ルネッサンスを見事に意識した造りで、贅沢を極めていたが、
ドンヒョクには悪趣味としか映らない装飾品が、目障りでしかなかった。

ドンヒョクが通された広間は、壁面に本棚と巨大な絵画以外は
空間にひとつの大きなデスクとひとつの椅子が置かれているだけだった。
その椅子にはそこの主であることを誇示するように、ジュリアーノが
悠然と座っていた。

当然、他に椅子など無い広間の中で、ドンヒョクは立たされたままとなる。

『お前を支配しているのは自分だ』と言わんばかりのジュリアーノの眼光が
ドンヒョクを執拗に捉えていた。
それがジュリアーノという男なのだと、ドンヒョクは口元だけで笑った。

「フランク・・・久しぶりだな。何年ぶりになる?」
ジュリアーノは椅子の背もたれに背中を押し付け、葉巻を手にしながら
ドンヒョクを一瞥して言った。

「さあ、数えたことはありませんが・・」 
ドンヒョクはそう言いながら、ジュリアーノという男を真っ向から見据えていた。
そして少しばかりの社交辞令を装った笑みに、自分の心の声を強かに隠した。

≪いいや・・・

  こうしておまえの前に立つこの日を・・・
  どれほど数えたか・・・


          ・・・知れやしない≫・・・

 

 










【次回予告】 第7章 白い手

「フランク・・今日から彼女が君と行動を共にする。」

「私は自分の部下以外をそばには置かない。」 

「君の意見は聞いていない・・そう言わなかったか?」 



「ミラノへ行きましょう。」 

「ミラノへ?・・ここで留守番するように言われてるんですよ」

「大丈夫よ、電話は携帯。私は自由にイタリアを満喫してる。そうでしょ?」

「ですが・・・」

「早い方がいいわ。ね。明日の朝」







 


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kurumi☆
miyukierikaさん、ありがとうございます^^そのアパートはドンヒョクの、というより、私の理想の建物として書きました^^最終的に身内をそんな建物に住めたらいいなと^^ 2011/04/26 12:09
kurumi☆
ノランさん、ありがとう^^そうです、ドンヒョクのアパートはミケランジェロ広場の上の方を想定して書きました^^といっても、私も知らないから、その辺にそんな建物があるかどうかはわかりませんが(笑) 2011/04/26 12:08
kurumi☆
joonkeiさん、ありがとう^^そうそう、きっとジニョンは詰めが甘いわね^^そこがまたいいと思う^^フランクに似ていても、結果まで完璧な人間ならフランクは惹かれなかったかと^^ 2011/04/26 12:06
kurumi☆
ジェニーさん、ありがとうございます^^私が書くジニョンやドンヒョクが、本編の彼らだと思っていただければ書き甲斐があります^^ 2011/04/26 12:04
miyukierika
美味しいものを食べると怒ってたことも忘れるジニョンは可愛いですね^^4人だけのアパートというのもドンヒョクのジニョンに対する気持ちが感じられて~ドンヒョク최고 ヽ(*’-^*)。 2011/04/14 13:04
ノラン
今回のツボ、「ボスのそっくりだ」には、私も笑ってしまいました♪大胆の行動を起こしそうなジニョンにジョアンも振り回されそうな予感が… 2011/04/12 22:12
ノラン
なんだかサスペンスっぽくなってきましたね☆ドンヒョクのアパートはアルノ川をはさんでドゥオーモと左手奥に駅が見える高台にある〰というと…ミケランジェロ広場のあたりかな!?なんて想像しています(笑)☆ 2011/04/12 22:09
joonkei
ホント、食べ物や気遣いのカーディガンに弱味を見せるとこは可愛いさありますね、強引なところは確かにボス似だけとどジニヨンの場合詰めが甘そうな。トマゾの存在が不気味~ 2011/04/12 00:09
ジェニー・S
留守番をさせられ怒っていても 美味しいものには弱いところが可愛いですネ、ジニョンはミラノへ行ってどんな展開になるのか楽しみです。  ボスにそっくりだ  も面白いです。 2011/04/11 08:37
 
 

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