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OFFICE K&T IZM CLUB
OFFICE K&T IZM CLUB(https://club.brokore.com/izmclub)
Hotelierが好きで ドンヒョクに落ちて DONGHYUK  IZM が好きな方 一緒に遊ぼう\(^○^)/
サークルオーナー: tomtommama | サークルタイプ: 公開 | メンバー数: 335 | 開設:2006.11.13 | ランキング:30(12728)| 訪問者:3853641/4697267
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ラビリンス
創作
No 9 HIT数 5873
日付 2011/05/15 ハンドルネーム kurumi☆
タイトル ラビリンス-過去への旅-9.ミラノへの途
本文















「フランク・・・あなたに話しておきたいことがあるの」

エマにはドンヒョクに、話したい大事なことがあった。
それは、どうしても話さなければならないことだった。

彼にはそれがわかっていた。
しかし、彼はそれを無視し続けていた。いや拒絶していた。

「5年前のことなら・・・聞く必要は無い。」
ドンヒョクはエレベーターのドアが開くと同時に、そう言い残すと、
その場を去った。
エマは結局、胸の閊えを取り除くことを許されないまま、彼の後を
追うしかなかった。


会場前には既にトマゾの姿があった。まだ9時を回ったところだった。
「どこにも先回りが得意か。」 
ドンヒョクは皮肉交じりに言ったが、彼は表情すら変えなかった。
そのトマゾがドンヒョクの後ろを歩いて来たエマに向かって
僅かに柔らかな口元を見せた。





「ルカ・レリーニと申します。Ms.グレイス?」 
彼女は質問したジョアンにでは無く、彼の後ろのジニョンに向かって言った。

「いや・・彼女はグレイスではありません。」 ジョアンが直ぐに答えた。
「グレイスは不在中ですが・・君は?グレイスに何の用なのかな?」

「あ・・私・・実はグレイスさんに雇っていただいたんです。
 彼女のお仕事のお手伝いを・・」

「仕事の?・・・聞いてないな・・・
 あ、僕はグレイスの同僚のジョアン・・キム・ジョアンです。」

「そうですか、よろしくお願いします。」 
ルカと名乗った女が、人懐っこい笑みを向け、突然ジョアンの手を取ると
握手した彼の手を大きく振った。

「ちょ・・ちょっと、君。
 あー・・あの・・グレイスはしばらく戻って来ないんだ。
 僕も直ぐに出掛けるし・・この事務所誰もいなくなるよ。
 悪いけど今日のところは帰ってもらえませんか?
 グレイスには伝えておきますから」
ジョアンはルカの突拍子も無い振る舞いに、少し迷惑そうに言った。

「・・・・・・・・」 
ジョアンの言葉に衝撃を受けたように、ルカからさっきまでの笑顔が消え、
彼女は沈黙してしまった。

「悪いんだけど・・・」 それでもジョアンは重ねて言った。
するとルカの目から、みるみる涙が溢れ出た。「・・君・・・・・」

「・・・・・私・・困るんです・・・
 ここに来るのに、アパート解約して来たし・・あ・・グレイスさんが・・
 住む所も紹介してくれるって・・言ってたし・・
 困るんです・・・私・・行く所・・無いんです」
ルカはこぼれる涙を懸命に掌で拭きながら、訴えるように言った。

「そう言われても・・・」 
ジョアンが困り果てていたところに、ジニョンが突然口を挟んだ。

「いいじゃない。一緒に連れて行きましょう、ジョアン・・」 

「ジニョンssi」

「私達、これからミラノに行く所なの。一緒に行く?
 その内、Ms.グレイスとも会えるだろうし」

「いいんですか?」 ルカは涙でいっぱいの目を輝かせた。

「ジニョンssi・・困ります」 ジョアンがジニョンを制するように言ったが
ジニョンは彼に掌を見せ、にっこり微笑んだ。

「ありがとうございます。Ms.ジニョン?
 あなたもMs.グレイスの同僚の方ですか?」

「彼女は・・」 
「ええ、そうよ。」 ジョアンの言葉を遮って、ジニョンは答えた。
「荷物は・・・あー必要なものだけにして・・・ 
 後は事務所に置いて行っても・・いいわね?」
そして彼女はルカが持って来たらしい大きな荷物を見ながら言った。
「これ・・階段を持って上がったの?・・全部?」

「はい。下には置いて置けないので・・・三回位・・往復しましたけど・・」

「若いのね」 ジニョンは感心したように言った。

「はい。」 
ルカは満面の笑顔で答えた。その時にはもう彼女の目に涙は無かった。

ジョアンはそのそばで呆れたような視線をジニョンに向けた。
「ミンアに確認も取ってないのに、勝手に決めては・・」

「だって、可哀相じゃない。このまま放っていけないわ」

ジョアンは天井を仰ぎ、『誰でも信用する』とハングルで呟いた。
「えっ?」 ジニョンはジョアンを見上げた。

『ボスがそう言ってました。ジニョンssiは「誰でも信用する」と・・』
彼はハングルで続けた。

『この子悪い子じゃないわ・・・目を見ればわかるもの』

『それがあなたの口癖だと、ボスから聞いたことがあります』
ジョアンはわざとらしく大きな溜息を吐いて、そう言った。

ジニョンは無言で口を尖らせて見せた。

『気をつけてください。』 ジョアンはそう繋げた。

ハングルが今や、ジニョンとジョアンふたりの共通語になっていた。




ジョアンは仕方なく、というように、ルカを事務所に迎え入れた。

ルカはジニョンより少し背が高く、イタリア系の綺麗な顔立ちで、
ウエーブの掛かった赤い髪を後頭部で一束にしているスタイルが
とてもキュートだった。

「あなた・・ルカ・・だったわね、よろしくね」 ジニョンが言った。
「はい」 
ルカはジニョンのそのひと言と彼女の笑顔だけで緊張を解いたようだった。

「荷物はその辺に置いて?」 ジョアンが傍らで部屋の隅を指して言った。
「ありがとうございます」 無愛想なジョアンに、ルカは笑顔で答えた。

ルカが大きな荷物を部屋の片隅にまとめている姿を目で追いながら、
ジョアンは必要な資料をパソコンに移す作業に取り掛かった。
「グレイスとはどういう縁で?」 
彼がパソコンから目を離さないまま聞いた。

「知り合いの紹介です。」 ルカは直ぐに答えた。

「知り合い?誰?」

「あー大学の教授です」

「仕事の経験は?」

「いえ、まだ大学出たばかりで・・・勉強の為に・・
 資料整理の仕事を下さると」

「そう・・・さっき彼女に電話してみたけど、繋がらないんだ。
 後で掛かってくると思うけど」

「はい。」 
ルカはさっきから、ジョアンという男が何とか自分を連れて行くのを
回避したがっていると察していた。

「ジニョンさんはここでどんなお仕事を?」 
ルカはジニョンに向かって、首を傾げ、満面の笑顔でそう聞いた。
ルカは頼みの綱が彼女であることを直感で悟っていた。

その為に彼女に取り入ろうとしているのだと、ジョアンは疑っていた。

「その人は・・」 ジョアンが口を挟んだ。
「ああ。私はね、ジョアンの助手なの」 ジニョンはすかさず答えた。

「じゃあ、私と同じですね。」

「君とは違う。」 ジョアンが思わずパソコンから顔を上げた。
「そう、同じよ。私も知り合いの伝で、ここで働かせてもらってるの」

ジョアンはジニョンが適当なことを言っているので、呆れてしまった。
≪まったく・・ジニョンssi≫
しかしジニョンがボスである“フランク・シン”の妻だということを、
余り吹聴したくないと考えたジョアンはジニョンの話に合わせることにした。






「本日のところはこの辺で」
ドンヒョクは立ち上がり、交渉相手であるサイモンの方へと向かうと、
胸の内を悟られぬよう、好意的な笑みを向け、彼に握手を求めた。

「それでは・・また明日、よろしくお願いします」 ドンヒョクは言った。

「ええ。お目にかかれて良かった。次回はお食事でも」 サイモンも応えた。

「是非。具体的なスケジュールは、こちらのビアジからお伝えします」
ドンヒョクはエマに視線を向けながら言った。エマはにこやかに頷いた。
そして、サイモン一行を出口まで案内し見送った。


「上手くいったわね。感触がいいわ」 
資料の片づけをしながら、エマはドンヒョクに言った。

「・・・・どうかな」 ドンヒョクは俯いたまま答えた。

「どうして?」 
エマが訊ねると、彼は変わらず彼女に視線を向けることなく答えた。
「まだ警戒している」

「どうしてそう思うの?」

「何となく」

「何となく?・・・だとしたら、その通りね。
 あなたの“何となく”は外れた試しはないわ」 エマは頷きながら言った。

「それはどうも」 彼は淡々と答えた。

「ランチは?」 エマは書類の片づけを終え、バックを手にして言った。

「部屋で摂る」 ドンヒョクも同じくブリーフケースを手にした。

「久しぶりにあなたが選んだワインを戴きたいわ」 
エマはしっとりとした声で言った。

「・・・・・今夜のミンアとのディナーの時にでも」 ドンヒョクが応じた。

「部屋で一緒に・・・とは言ってくれないのね」

「後で届けさせよう・・君の部屋に」 
ドンヒョクはそう言いながら、彼女の横を通り過ぎた。

「それはどうも。」 エマは俯き苦笑して答えた。

ドンヒョクもまた口元に小さく笑みを浮かべ、ドアノブを握ると、
そのままひとり会議室を出て行った。





ジニョンとジョアン、そしてルカの三人は、ジョアンのミニクーパに乗り込み
一路ミラノへと向かった。
結局一時間経ってもミンアからの連絡は無く、ジニョンの口利きがある以上、
ルカ・レリーニという素性の知れない女を同行するしかなかった。

ジョアンにはミンアから何も聞かされていなかった疑念が残っていたが、
ルカという女の子の愛らしさに、次第に警戒心が薄れているのも事実だった。
≪それに・・・≫
数時間の長旅を、ジニョンと二人で過ごすよりはいいような気がした。

何よりもルカと打ち解けたジニョンが明るく、楽しそうにしていることが
ジョアンにとって嬉しいことだった。

「ミラノはどの辺へ行くの?」 
ジニョンが観光ガイドを開きながら運転席のジョアンに訊ねた。

「ドゥオーモのそばです。でも僕・・実はミラノは余り詳しくないんです
 イタリアに赴任してまだ一年経ってないですし
 フィレンツェ在住で仕事してましたから・・・」

「そうなの?」 ジニョンは少しだけ不安そうに言った。

「でも大丈夫です。安心して下さい。向こうでガイド雇いますから」

「あの・・・」 その時ルカがふたりの会話に口を挟んだ。
ジニョンが「ん?」という顔を彼女に向けた。

「私・・ミラノ育ちなんです。2歳から11歳位までいて・・
 二年前からまたミラノに戻って暮らしてました。」

「そう」

「ですから、ミラノならご案内できます、私」

「ほんと?まあ、ジョアン、素敵じゃない?」 ジニョンは嬉々として言った。
ジョアンはルカの顔を振り返って、黙って頷いた。

「お役に立てるんですか?私」

「ええ、とっても。」

「良かった!良かったです・・ほんとに」 ルカは目を輝かせて喜んだ。

「頼むよ」 ジョアンも多少不服に思いながらもそう言った。

「はい!」
ジニョンは嬉しそうに返事したルカを見て、自分も嬉しくなった。

≪そうよ。人の役に立つことほど嬉しいことはないわ。それなのに・・・≫

ジニョンはドンヒョクが自分に対して、「イタリアを満喫していたらいい」と
蚊帳の外にしたことに、少なからず腹を立てていたのだった。
≪私だって・・・あなたの役に立ちたいのに≫


「ジョアン・・疲れたら言って?運転、代わるから」 ジニョンが言った。

「結構です。」 

ジョアンは心の中で思っていた。
≪ここまでの行いでもう何度ボスに殺されただろう≫

ジニョンがおとなしくしていてくれることをジョアンは切に神に祈った。


   ・・・≪お願いです・・ジニョンssi・・・≫・・・

















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kurumi☆
ノランさん、ルカが何ものなのか…それはもう少し後(笑)「ルカの秘密」という副題が付いた回を確認したら、18話でした^^ 2011/05/25 22:49
kurumi☆
miyukierikaさん、ありがとう^^そうです^^これからわかって来ますが、ミンアとジョアンが連絡取れるような状況下では、ルカをジニョンに近づけられない…その為誰かが綿密に計画を練っているようです 2011/05/25 22:45
ノラン
ルカという新しい同行者も加わり、ジニョンのミラノ行きはいったいどうなるんだろう!?それに、ルカっていったい何者!? ジョアンならずども心配になりますね〰(^^); 2011/05/18 22:00
miyukierika
ミンアとエマの交換はルカを送り込むためにされたことなのですか?なにもわからない不安な気持ちがふくらんで、脳天気(すみません^^;)なジニョンが心配になります。 2011/05/17 08:08
 
 

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